明日は衆院選、雑談放談
私が勤務する市役所に向かう途中、幅の広い歩道があります。まっすぐに延びている道ですが、木陰か、日なたか、どちらかを選びながら歩けます。10月に入ってからも汗ばむ朝が多く、少し前までは木陰を選んでいました。いつのまにか上着が必要となり、日なたを選んで進む日が多くなっています。
同じ道でも環境の変化によって選ぶ場所が変わっていきます。選挙での判断も同様だろうと思っています。平穏な日常が続き、大きな不満のない生活が送れていれば現状維持を選ぶはずです。環境の変化などによって現状を改善して欲しいと願う場合、政治の変革を求めることになるのではないでしょうか。
ここ数年、10月31日までクールビズ、翌日からウォームビズという極端な衣替えが定着しています。さて、明日10月31日は衆院議員選挙の投開票日です。政治の場面において極端な変革や衣替えに至るのかどうか分かりません。自分一人の一票程度で世の中が大きく変わらないと思われている方も多いのかも知れませんが、ぜひ、投票所には足を運ばれるようよろしくお願いします。
20の質問に答えることで自分の意見に最も近い政党をマッチングさせるという「第49回衆議院選挙 投票マッチング」を試してみました。私自身の結果は意外なようでもあり、なるほどとも思えるものでした。それぞれの設問に「メリット」と「デメリット」の説明も添えられています。選挙に関心を高めるツールの一つとして、参考までに紹介させていただきました。
投票率を高めるための啓発は自治体職員の立場から重要なことであり、国政選挙などの際、このブログでも一言触れるように努めています。前々回記事は「総選挙戦の論点は?」、 前回記事は「組合役員の改選期、インデックスⅢ」でした。4年前には「衆院選と組合役員選挙」という時事の話題とローカルな話をミックスした内容も綴っていました。
今回の記事はタイトルに「明日は衆院選、雑談放談」と付けたとおり気ままに思うことを書き進めています。最近、特に興味深かった報道として『国調達の布マスク115億円分、未配布のまま倉庫に アベノマスクも』という見出しの記事が目を引いていました。未配布の額が115億円という金額の大きさをはじめ、保管費用の6億円にも驚いています。
新型コロナウイルス対策として国が全世帯や福祉施設などに配った通称「アベノマスク」を含む布マスクについて会計検査院が調べたところ、国が調達した計2億9千万枚のうち3割近い約8300万枚(約115億1千万円相当)が今年3月末時点で配布されず倉庫に保管されていたことが27日、関係者への取材でわかった。
保管にかかった費用は、昨年8月〜今年3月で約6億円に上るという。国は新型コロナ感染拡大に伴うマスク不足を受け、当時の安倍晋三首相の肝いり政策として、2020年4月以降に全世帯向けの布マスク約1億3千万枚を調達し配布。アベノマスクと呼ばれたが、配布した布マスクに汚れなどの不良品の指摘があり、納入元が未配布分を回収、検品するなどのトラブルも起きた。
また、同年3〜9月には介護施設など福祉施設向けや妊婦向けに計約1億6千万枚を調達し配布した。検査院がこれらの布マスクについて調べたところ、全世帯向けのアベノマスク約400万枚と、福祉施設や妊婦向けの約7900万枚の計約8300万枚が配布されず、倉庫に保管されていた。【朝日新聞2021年10月27日】
政権と距離を置きがちな朝日新聞のスクープという訳ではなく、読売新聞やNHKも同様な内容の事実関係を報道していました。朝日新聞は見出しに「アベノマスク」と掲げ、読売新聞の見出しは『国の布マスク8200万枚余る 検査院調べ 保管費6億円』とし、記事本文中で多額の調達費用や配達遅れなどから「アベノマスク」と揶揄されたと伝えています。
今回のブログの中では読売新聞の記事を紹介しようと考えていましたが、インターネット上を検索したところ見つけることができませんでした。手元にある新聞新聞の紙面から上記の見出しを確認しています。なお、磯崎官房副長官は「施設向けを一律から随時配布に見直した。調達に問題があったとは考えていない」と説明しています。
特に興味深かったと思った理由は「なぜ、このタイミングで?」という疑問がわいたからです。今年6月には下記のような報道もありました。野党の要請を拒んでいた政権与党にとって、衆院選挙の投票日直前での公表は最悪のタイミングだったように思っています。
東京五輪・パラリンピックの選手ら訪日関係者向けに開発している健康管理アプリ(オリパラアプリ)の事業費や国民から「ありがた迷惑」などと批判の声が上がった、いわゆる「アベノマスク」の配布などを巡り、国会による会計検査院への検査要請が見送られることとなった。参院決算委員会で、契約の妥当性を調べるよう提出した野党の要請案に、「(同院の)検査事項が多い」として与党が同意しなかったためだ。
会計検査院への検査要請項目の決議は、全会派一致が慣例。野党は①全戸に2枚ずつ布マスクを配布した事業の詳細な経費をはじめ、②当初は73億円の事業費だったオリパラアプリなど新システムの契約手続きや管理③給付金事業の事務費④予備費の使用―について検査を求めた。だが、いずれも与党が同意せず、予備費に関しては政府に適切な措置を求める「措置要求決議」にとどまった。
決議に向けた協議は与野党の委員会理事らの間で行われ、要請案や議論の過程は公開されない。理事を務める国民民主会派の芳賀道也参院議員が9日の本会議で「4項目(の要請案)が自民党の反対で削除された」と明かしていた。4項目への反対について、与党関係者は「会計検査院が他に多くの検査を抱えているため」と本紙の取材に回答。オリパラアプリなどは事業が継続中で、検査が行われると担当省庁の負担が増すことも理由に挙げた。
しかし、検査の現状について、会計検査院の担当者は本紙に「検査報告に期限はなく、検査が詰まっているということは特にない」と証言した。元同院局長の有川博・日大客員教授は「(同院の)自主的検査ができなくなるほどの(要請)件数ならともかく、数が多いという理由で項目を絞ることは普通では考えられない」と指摘。その上で「国会で見送られた要請項目でも国民の関心が高いと考えられるものは検査することが十分に想定できる」と期待した。【東京新聞2021年6月17日】
以前「『官邸ポリス』を読み終えて」「映画『新聞記者』」という記事を投稿していました。卓抜した情報収集力と巧みな情報操作によって官邸がマスメディアの報道内容を左右しているという設定で描かれた小説や映画について取り上げた記事でした。『官邸ポリス』の宣伝文句には「本書の92%は現実」と記されています。
言うまでもありませんが、政権与党を評価する際にプラスの情報も、マイナスの情報もオープンにされなければなりません。政権与党にとって不都合な事実関係が隠蔽や脚色されるようであれば大きな問題です。
有権者が一票を投じる際の判断材料を歪める形となり、成熟した民主主義のあり方から遠ざかっていくことになりかねません。今回、政権与党にとってマイナスに働く情報なのかも知れませんが、前述したとおり衆院選挙前の公表はフェアなタイミングだったものと考えています。
もともと官邸ポリスの世界は虚構にすぎなかったのか、官邸の力量が変化したのか、岸田総理の誠実さの表われなのか、そもそも会計検査院の公表のタイミングにまったく意図のないものだったのか、よく分かりません。いずれにしても「アベノマスク」という初期のコロナ対策を改めて評価すべき報道に接することができたものと受けとめています。
最後に、日本のコロナ禍を「さざ波」と称して菅内閣の官房参与を辞任した高橋洋一さんは今回の報道に対し、次のように見ていることも紹介させていただきます。ただ介護施設用の布マスクの在庫だから問題なかったという見方も、会計検査院が指摘した論点をすり替えているように思えてなりません。
元内閣官房参与で嘉悦大学教授の高橋洋一氏(66)が28日、ツイッターを更新。“アベノマスク大量在庫”という報道に苦言を呈した。この報道はアベノマスクを含む約8300万枚のマスクが配布されず、倉庫に保管されていて、その保管費用が約6億円にのぼるとして、28日放送された読売テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」でも問題視された。
しかし、高橋氏は「見出しに騙されている。アベノマスク1億3000万枚準備し400万枚在庫。介護施設用1億5700万枚準備し7900万枚在庫。アベノマスクではなく介護施設用」とその実情を指摘。つまり、8300万枚のうち、ほとんどが介護施設用に備蓄されたマスクだという。
続けて「マスコミの見出しに脊髄反射するのは。アレを曝け出すだけ。そもそもマスコミは見出しでミスリードするものと思ったほうがいいし、読まないのがいちばんいい笑」と皮肉った上で「アベノマスクは予定通り配布完了。介護施設向けは多少在庫が出たが当初のマスク不足時には適切に対応。ともに、会計検査院から不適切意見はないだろう。これをマスコミはきちんと報じないで揶揄印象操作するだけだからね」と特に問題はないという見方を示した。【東京スポーツ2021年10月28日】
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