« 災害に強いまちづくり | トップページ | 組合役員の改選期、インデックスⅢ »

2021年10月16日 (土)

総選挙戦の論点は?

私どもの組合の役員選挙が火曜日に告示されています。木曜日には衆議院が解散され、10月31日の投票日に向けて選挙戦モードに突入しています。今回の記事はローカルな話と時事の話題をミックスした内容とすることも考えましたが、すぐ衆院選挙の話に絞った記事タイトルに付け替えています。

いつものことですが、いろいろ書きしるしたい内容が頭に浮かんでいるため、きっと時事の話題だけで相応な長さになるものと見込んだからでした。もう一つの理由として、今回の記事の投稿が公示日前の週末であるという点についても意識しました。

以前の記事「再び、地公法第36条と政治活動」に記しているとおり違法性が問われかねない活動には細心の注意を払っています。そのことを大前提としながら当ブログを通し、等身大の組合活動や私自身の問題意識を情報発信しています。

そのためインターネット選挙解禁となっても、このブログでは選挙期間中に候補者の固有名詞の紹介を控えるなど一定の制約を課しています。私自身が選挙運動を展開しているという誤解を招かないためにも、公示日以降は個別の候補者のお名前を示さないように心がけています。

マスメディアも同様な傾向があり、公示日前と公示日以降、取り上げ方の慎重さに変化があるようです。ある選挙区の話題を報道した際、その時点で予定されている候補者全員の顔ぶれを紹介しています。このような対応を怠ると公平性に欠けるという批判を招きかねないからです。

公示日以降、実際の選挙戦に入れば、ますます公平性という配慮や慎重さが強く求められていきます。公示日前であれば、各メディアの裁量がある程度認められて然るべきですが、次のような記事報ステより〝やさしかった〟NEW23 立花孝志氏「1人目出産で1000万円給付する」』も目にしていました。

衆議院解散を受けて14日、「NEWS23」(TBS系)で9党代表による党首討論が行われた。直前に「報道ステーション」(テレビ朝日系)で党首討論があったが、一部党首の発言が少なかったことが話題になっていた。NEWS23では若者の質問に答えるという形で討論が行われた。進行は星浩氏と小川彩佳アナが務め、一つ一つのテーマについて9党の党首全員に聞いた。

報ステではほとんど発言の機会がなかったれいわ新選組の山本太郎代表や社民党の福島みずほ党首、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反での立花孝志党首らも、自民党の岸田文雄総裁ら主要政党党首と同じように話すことができた。

それゆえに報ステでは出なかった発言もあった。少子化問題のテーマで立花氏が「1人目の出産には1000万円を給付する」と仰天政策をブチ上げたのだ。「20代で1000万円のお金が入ってくればいろんな事業に挑戦できる。1人目に限って1000万円を支給するのがベスト」と持論を述べていた。

ツイッターでは番組に対して「NEWS23の方が報道ステーションより公平だし分かりやすかったし面白かった」「報道ステーションに比べたらよっぽど良心的だなあ」と好評な意見が多かった。もっとも報ステは生放送でNEWS23は収録という事情はあったかもしれない。【東スポWeb 2021年10月15日

懸念している点があります。公平性という配慮を重視した結果、公示日以降、選挙戦に関わる報道の量が減るようでは問題です。とりわけ9党という政党数の多さからテレビで取り上げる場合の時間的な制約が見込まれるため、上記のような党首討論を頻繁に開いてもらえなくなることを心配しています。

選挙報道が少なくなり、総選挙戦に対する関心があまり高まらず、投票率が伸びないようであれば非常に残念なことです。合わせて9党代表の発言が限られた時間での横並びになることで、論点が拡散し、議論の深まりを期待できなくなる恐れもあります。公示後、このような懸念が杞憂に終わる活発な選挙報道を願っています。

今回の総選挙戦における論点に着目した時、立花党首の「1人目の出産には1000万円」は破格すぎますが、各党の公約としての現金給付や減税のあり方が問われています。いみじくも財務省の矢野康治事務次官が月刊文藝春秋 に『財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」』という論文を寄稿していました。

自民党の高市政調会長はNHKの番組で「基礎的財政収支にこだわり、困っている人を助けないのは馬鹿げた話だ」と批判を強めていましたが、財務次官問題、沈静化図る 「バラマキ」合戦、更迭論も 政府』という記事で財務相だった麻生副総裁に矢野次官は事前に了解を得ていたことを伝えています。

矢野次官は論文の中で「バラマキ合戦は、これまで往々にして選挙のたびに繰り広げられてきました。でも、国民は本当にバラマキを求めているのでしょうか。日本人は決してそんなに愚かではないと私は思います」と記しています。

読売新聞の最新の世論調査で、政府の経済政策について「国の借金が増えても経済対策を優先すべきだ」と「国の借金が増えないよう財政再建を優先すべきだ」のどちらに考えが近いかを聞くと「財政再建を優先」が58%、「経済対策を優先」は36%でした。この調査では矢野次官の見込みのとおりの結果が示されています。

一方で『財務次官「バラマキ」寄稿の論理破綻 高橋洋一氏が一刀両断 会計学・金融工学に基づく事実 降水確率零%で台風に備えるくらい滑稽』という記事の中で、菅内閣の官房参与だった高橋洋一さんは日銀と政府を連結対象としたバランスシートで想定すれば資産は1500兆円となるため「無知から出てくる財政破綻論や緊縮論こそ、もう破綻している」と強く批判しています。

矢野次官の論文に興味を持ち、 その号の『文藝春秋』は発売日に購入しています。私自身、過去に「強い財政への雑感」「もう少し「第三の道」の話」「なるほど、国の借金問題」「高負担・高福祉のスウェーデン」「国債問題に対する私見」「消費税引き上げの問題」という記事を投稿しているとおり矢野次官の見方に近い立場です。

桁違いに重要な論点に対し、真っ向から対立する考え方があることに少なからず驚いています。高橋さんは日本のコロナ禍を「さざ波」と称している方ですが、この問題でも決して多数派ではない見方を示しているように思っています。どちらの考え方を支持するかどうかで日本の進むべき道が大きく分かれる論点だと言えます。

いずれにしても各党の公約に掲げられている経済政策の有効性や実現性について、詳しい説明が総選挙戦を通して明らかにされていかなけばなりません。その際、より的確で正しい情報が必要であり、その情報をもとに私たち国民は信頼できる政党や政治家に一票を投じていくことになります。

前回記事災害に強いまちづくり」の中で少し触れましたが、働く者の声を届ける先として連合や自治労は各級議会の議員の皆さんを推薦しています。推薦議員の皆さんと直接お会いした際、率直な思いをお伝えする場合があります。最近の記事「自民党総裁選と野党の立ち位置」の中で衆院議員の末松義規さんと意見を交わしたことを記していました。

つい最近、自治労組織内参院議員の岸まきこさん、地元の衆院議員の大河原まさこさんとも意見を交わす機会がありました。公約として掲げる立憲民主党の経済政策が「バラマキ」と見られないように納得感や説得力の伴う丁寧な情報発信に力を注いで欲しいという思いをお二人に訴えさせていただきました。

やはり長い記事になっていますが、来週以降では取り上げづらいため、もう少し続けます。先ほど『自民党 失敗の本質』を読み終えました。現職の自民党国会議員2名を含む8名の方々からのインタビュー内容をまとめた新書です。顔ぶれだけ紹介すると「いかにも」という印象を抱かれる新書なのかも知れませんが、下記のカスタマーレビューがなかなか的を射ているように思っています。

約9年間にわたった安倍・菅政権を評価した、というより批判した本。何と言っても、アンチ安倍・菅の人達ばかりの意見をインタビューしたものであるから、これは仕方がない。しかし、読んでみると、自民党支持者で安倍・菅政権に声援を贈ってきた私にも、「うーん、なるほどなあ」と思わせてしまう、正鵠を得た論理的な批判がなされている。安倍さんも菅さんも権力の座に酔いしれて裸の王様になってしまったのだなあと振り返って思う。

特に印象深かった言葉を読み終えた新書から少し紹介していきます。それこそ「誰が」ではなく、発言している内容そのものが、どのように評価されるのかどうかが重要なことだと考えています。したがって、あえて誰が発言した内容なのか、発言者の氏名を添えずに掲げさせていただきます。

■今の選挙制度でしたら、3割のコアな支持層をまとめていれば、議席の6割以上を占有できる。だったら、苦労して国民の過半数の支持を集めるよりも、支持層だけに「いい顔」をして、無党派層や反対者は無視したほうがむしろ政権基盤は盤石になる。そのことをこの9年間に彼らは学習したのです。

■アベノミクスは、官製相場によって円安株高にしただけで、結果として日本全体の産業の競争力を弱体化させてしまいました。何よりも、社会保障と財政と金融が独立して機能していたのがどれかが破綻したらすべてが破綻するという状況になりつつあります。今や、名目GDPに対する国と地方を合わせた借金の残高はGDPの250%になっています。しかし、いまだに党内ではアベノミクスの継承などと無責任なことを言う総裁選立候補者がいます。

■規制緩和や民営化など「新自由主義」を志向する中曽根康弘首相が登場したあとも、自民党はそのまま中曽根路線一色には染まりませんでした。保守本流かつハト派といわれる宮澤喜一さんや河野洋平さんが総裁を務めるなど、党の体制に「振り戻し」があった。中曽根さんなどはいわゆる傍流だったといえるのですが、徐々に昔の保守本流のほうに戻らなくなっていきます。経済政策でいえば、新自由主義で小さい政府志向になり、外交・防衛・教育政策では国家主義が強くなっていきました。

■かつて自民党は「権力は暴走する危険がある」ということを常に意識しながら権力を行使していたと思います。しかし、戦争を知らない世代が増え、自民党の政治家も変質してきたのだと思います。それは軍事面だけではなく、個人の権利、尊厳を虐げるような方向で権力が暴走することの怖さを知っている政治家が減ったともいえます。

■最終的に、官僚は政治家に従うべきです。官僚主導はあるべき形ではありません。国民主権である以上、国民に選ばれた政治家が責任を負い、権限を持つというのが、正しい民主主義でしょう。しかし同時に、官僚が専門性に基づいて自由に意見を言える環境は確保すべきです。

■本来、上に立つものの倫理観は「李下に冠を正さず」でなければなりません。しかし、安倍政権の大きな特徴のひとつは、疑われるからやめよう、恥ずかしいからやめようというように、従来は倫理観によって歯止めのきいていたことを、臆面もなくやってしまう点にありました。桜を見る会は、実は法律違反の疑いが非常に強いのですが、「法律に触れなければ何をしてもいい」という倫理観が、さらにエスカレートして、「法に触れないようにうまくやれ」、そして、「捕まらないように証拠を隠せ」ということを官僚にも強いるようになったしまったのです。

■アルゼンチンも戦前は、一人当たりGDPが世界10指に入るほどの富裕国でしたが、今はボロボロになっています。モデルとしてはこの例に近いのではないでしょうか。希望的観測に基づき、艱難辛苦を乗り越えて希望の明日を盲信することがどれほど危険なことなのかを、われわれは東京オリンピック後のコロナ感染大爆発という「失敗」で十二分に味わいました。安倍・菅政権が残した失敗を無駄にすることなく、「目覚め」のための反省材料とすること。まずはこれが一つです。

岸田総理はアベミクスを継承する一方で、保守本流かつハト派というご自身のカラーも打ち出していないため、立憲民主党と自民党との対立軸や総選挙戦の論点が明確化できたのではないでしょうか。このような点も大河原さんらにお伝えしていました。最後に、目を留めた現代ビジネスの記事『石破氏にあって安倍・菅氏に欠けていた、政治家として「決定的な要素」』の中の一文もご紹介します。

歴代の首相は、批判することがメディアの役割と割り切り、一定の距離を置いていたという。元朝日新聞の政治部記者、鮫島浩さんからこんな話をうかがった。「私が見てきた自民党政権の政治家たちというのは、メディアに対する許容力があった。良くも悪くも批判を受けて立ちましょうという感じでした。今の石破さんのような感じです。いろいろ批判されても無視することはなく、まず批判に耳を傾けていました」

一方で安倍氏は、自身を批判する勢力を敵とみなし、たとえば朝日新聞のことは国会で何度も名指しで取り上げて「ファクトチェックしてください」などと発言した。マス・メディアに対する不信感、左翼やリベラルなメディアに歴史を修正され、自虐史観が煽られてきたと思う人たちから、安倍氏の物言いは、なぜか一定の支持を得ていた。

|

« 災害に強いまちづくり | トップページ | 組合役員の改選期、インデックスⅢ »

コメント

はじめまして
今度の総選挙、野党が勝利するカギは統一候補をできるだけ多く擁立し、自公と1対1の勝負に持ち込めるか
これだと思います
そのためには立憲民主党と日本共産党の綿密な連携が絶対条件です
しかしこのブログでは日本共産党に関する言及がほぼなされていないのが不可解です
otsuさんは共産党をどう見てらっしゃるのか知りたいです

投稿: 野党共闘ファースト | 2021年10月17日 (日) 14時35分

野党共闘ファーストさん、はじめまして。コメントありがとうございました。

今回の記事でも触れているとおり「誰が」に重きを置かないようにしています。具体的な理念や政策に対し、どのような政党や政治家に信頼を寄せるべきかどうかという思考に努めています。

したがって、今回の記事で取り上げた最近の自民党政治の問題点が「是」とされないためにも野党共闘に期待している立場だと言えます。できれば国民民主党も加わった野党共闘であって欲しかったという思いもあります。

日本共産党に対しては個々人の見方や評価が大きく枝分かれしているものと思っています。労働組合や産別に関しても、それぞれの歴史や現状が様々であることを認識しています。

私自身、下記のようなサイトで語る志位委員長の言葉も一定理解を示せる立場です。ただ不特定多数の方々に発信しているブログの場では発言の重さを踏まえながら投稿を重ねているため、ご指摘のような傾向があることをご理解ご容赦くださるようお願いします。

>共産主義って怖くないんですか? 志位さんに若者政策を聞いてみた 憲法は変えなくていいと思う理由
https://news.livedoor.com/article/detail/21030735/

投稿: OTSU | 2021年10月17日 (日) 20時07分

上級労働者しか組織しない経団連の下請け組織・連合。
その下部組織である連合東京が公明党候補を支援している。恥を知れ労働者の敵、品性下劣な連合組合員ども!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

投稿: れなぞ | 2021年10月28日 (木) 22時02分

れなぞさん、コメントありがとうございました。

いつもマイナーな当ブログをご注目いただいていることには本当に感謝しています。ご指摘のとおり連合東京が第12区で公明党の候補を支援していることは事実です。

ただ「上級労働者しか組織しない経団連の下請け組織・連合」「恥を知れ労働者の敵、品性下劣な連合組合員ども」という言葉は誹謗中傷の類いとなります。

ぜひ、9月18日に投稿した記事「自民党総裁選と野党の立ち位置」を読み返していただければ幸いです。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2021年10月30日 (土) 06時16分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 災害に強いまちづくり | トップページ | 組合役員の改選期、インデックスⅢ »