信頼できる政治の実現に向けて Part3
次の総理大臣を決める自民党総裁選が9月17日に告示され、29日投開票という日程で行なわれます。立候補者の顔ぶれが出揃いつつありますが、今回の記事では深掘りしないつもりです。冒頭で触れ始めると、その内容だけで話が広がり、相当な長さになるのだろうと考えているからです。
前回記事「信頼できる政治の実現に向けて Part2」の最後に予告したとおり「Part3」とし、今回は野党の話を中心に書き進めていきます。前々回記事「信頼できる政治の実現に向けて」の最後のほうでは自宅からWebで自治労大会に参加したことを伝えていました。その際、連合の神津会長と立憲民主党の枝野代表から来賓挨拶を伺う機会を得ていました。
新規記事で「野党共闘の話などを取り上げる際、この時の挨拶内容にも触れていくつもりです」とも予告していました。録音や全文をメモしていた訳ではありませんので、立憲民主党のサイト『枝野代表、自治労第95回定期大会で来賓あいさつ』も参考にしながら要旨を書き起こしてみます。
コロナの気付きによって、この20年余り続いてきた行き過ぎた新自由主義や自己責任論が、いかに誤っていたかが浮き彫りになっている。公務職場のたいへんさ、肩身の狭さ、過度の人員削減や不安定雇用への置き換えが、このコロナの不安を助長していた。
コロナの問題によって気付いたことで日本社会を改革し、持続可能な包摂社会をどう実現するか、働くことを軸とした安心社会に向けて前進できるかが重要である。立憲民主党らと連合が締結した「命とくらしを守る『新しい標準(ニューノーマル)』」が実現していれば、こんなひどい状況にはなっていなかった。
これほどの危機を迎え、分かったはずである。政治の流れを変えるべき総選挙では枝野代表を先頭に政治の流れを変えていかなければならない。来年7月に予定されている参院選挙は自治労組織内予定候補の鬼木まことさんの勝利に向け、自治労の皆さんと連合は連携しながら頑張っていきたい。
上記は連合の神津会長の来賓挨拶の要旨です。続いて、立憲民主党の枝野代表から下記のような要旨の来賓挨拶を受けていました。枝野代表の挨拶は神津会長の挨拶された時間よりも長く、なかなか力のこもった内容だったことが印象深く刻まれています。
政府が公務員削減の方針を示し続け、30年地方公務員を減らしてきた中、そのしわ寄せを最前線で受けながらコロナ対策、自然災害に対応され、医療保健、それ以外でもリモートワークが困難な職の多い自治労の皆さんに心から敬意と感謝を表したい。
政府の強権的、数の力で押し通す政治では現場の思いを実現できる政治になっていない。政治が危機感を持つこと、明確な司令塔を持つことが必要だ。都知事と大臣が違うことを発信するようでは問題である。コロナ対策においては水際対策、徹底した検査、充分な補償、この3つが必要であり、それができる政府を総選挙後に作らなければならない。
民主党、民進党と支援してもらったが、希望の党では遠心力が働いてしまった。自治労の皆さんには立憲民主党結成の時に裏方を支えてもらった。求心力を持って、小異を乗り越えて国民民主党とも衆院選協力の覚書の締結に至っている。
支え合う社会、自己責任ではなく、余力がなくては民間では持てない災害などの対応、保育や雇用など迅速に対応しなければならない役割に対し、政治が納税者との間をマネジメントしなければならない。
10年前の3月11日、私は官房長官として危機管理にあたった。至らない点もあったが、こんなに危機感のない内閣ではなかった。その教訓を踏まえ、もし「また国家の危機があったら」と研鑽と準備を積み重ねてきた。私に任せていただけたら、この危機を乗り越えることができると自信を持っている。
日本の未来のために、日本全体を建て直す、公共サービスを建て直す、そのために我々の仲間を支えていただき、政権を託していただき、この難局を皆さんとともに乗り越えたい。このことを自治労の皆さんに心からお願いしたい。
文意を分かりやすくするため、つなぎの言葉や言い回しは少し手を加えています。ただ枝野代表が語られていない言葉を勝手に付け加えることは避けています。文章に起こすと言葉が不足しているように感じてしまいますが、その場で伺っていた時、枝野代表の熱量が充分すぎるほど伝わってきていました。
特に『枝野ビジョン 支え合う日本』という著書を読んでいたため、枝野代表の問題意識が的確に理解できています。最近の記事「スガノミクスと枝野ビジョン Part2」の中で伝えたとおり新自由主義的な路線が「効率性に偏重した経済」を生み「過度な自己責任社会」を誘発したことを枝野代表は省みています。
「小さすぎる行政」は国民を守る力を失い、そのことが今回のコロナ対応で明らかになったと訴えています。さらに「公務員を減らせば改革だ」などという30年以上前からの発想は、もはや時代遅れとなっていることに気付かなければならないと枝野代表は著書の中で語っていました。
自治労大会での来賓挨拶という場だったとしても、神津会長と枝野代表、それぞれが同様の趣旨で私たち自治体職員らに課せられた役割や期待の高さを強調されていました。コロナ禍に直面したことで、2人とも新自由主義路線と決別する必要性が際立ったことを提起しています。ちなみに自民党の岸田前政調会長も「新自由主義からの転換」を掲げて総裁選に立候補します。
政権交代が果たされなくても与党内で大胆な路線変更をはかり、より望ましい政治が実現するのであれば国民にとっては歓迎すべきことです。しかし、それまでの路線の優位さを信じ、メリットを享受してきた政治家が多かった場合、大胆な転換は容易ではないはずです。党内での発言力や影響力の強い政治家が反対する立場であれば、ますます路線変更は難しくなります。
次回以降の記事で取り上げるつもりだった事例ですが、岸田前政調会長は森友事件の再調査の必要性を問われた際に「調査が充分かどうかは国民が判断する話だ。国民は足りないと言っている訳だから、さらなる説明をしないといけない。国民が納得するまで努力することが大事だ」と答えていました。
しかしながら数日後には「行政において調査が行なわれ、報告がなされた。裁判が続いており、これから判決が出る。必要であれば国民に説明すると申し上げている。従来のスタンスとまったく変わっていない」とトーンダウンしていました。 前者は再調査に前向きという理解でしたが、後者は明らかに再調査に対して後ろ向きな姿勢に変わっています。
どのような党内力学が働いたのかどうか分かりませんが、やはり従来の路線を変更するためには政権交代という選択肢が重要視されていくように思っています。長所を「聞く力とチーム力」とし、「怒鳴ってばかりではチーム力を発揮できない」と述べている岸田前政調会長を評価していましたが、前述したような迷走ぶりを見せられると非常に失望しています。
「信頼できる政治の実現に向けて」という記事タイトルを掲げ、「Part3」まで続けてきました。政治の外側からの立場の一人として「信頼される」という受け身の言葉ではなく、「信頼できる」という言葉を選んでいました。逆に「信頼できない政治」について、少し考えてみます。
偏った情報のみで判断し、そのように判断した根拠が曖昧で、国民が納得するような説明責任を果たせず、結局のところ望ましい結果も出せなかった、このようなことが繰り返されれば政治に対する信頼は失墜していきます。さらに自己の利益を優先した判断ではないかと疑われ、正当化するための釈明も説得力がなく、発する言葉に重みが欠けていくようであれば信頼感は皆無に近くなります。
このようなことのない信頼できる政治に向けて、与野党問わず政治家の皆さんには頑張って欲しいものと願っています。実は2回前の記事を投稿した後、立憲民主党の福山幹事長の総選挙に向けて「信頼できる政府を取り戻す」というインタビュー記事を目にしていました。全体的な方向性として評価できる内容であり、今の自民党では成し遂げられない事例も多いのだろうと見ています。
神津会長と枝野代表の挨拶の話に戻せば、めざすべき総論的な路線のあり方で連合と立憲民主党は一致しているはずです。森友学園、加計学園、桜を見る会、学術会議の問題などを巡る不明瞭さに対する問題意識も同様だろうと思っています。このような点を踏まえ、連合と立憲民主党は7月15日に政策協定を締結しています。
同日、連合は国民民主党とも政策協定を締結していました。本来であれば3者連名の締結が望ましかったのかも知れませんが、それぞれ別立ての協定書となっていました。3日前には下記のとおり野党4党間で政策協定を結んでいます。まだまだ書き足したい内容がありますが、今回の記事はここで一区切り付け、次回の内容につなげさせていただきます。
立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の4党は8日午前、民間団体「市民連合」と参院議員会館で会合を開き、衆院選に向けた「野党共通政策の提言」を受け取った。科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策強化、消費税減税などが柱。野党間の「政策協定」との位置付けで、立民の枝野幸男代表ら4党代表が署名した。
署名後、枝野氏は「政策で一致できた。それぞれの政党、市民の持つ強みを互いに生かして衆院選を戦えば、必ず政権を代えることができる」と強調。共産党の志位和夫委員長も「共通の政策的旗印を高く掲げて協力し、この政策を実行する政権をつくるために頑張りたい」と訴えた。
立民などは2019年参院選でも、市民連合を介する形で「政策協定」を結んでおり、衆院選もこうした形式を踏襲。れいわも初めて参加した。提言には、集団的自衛権の一部行使を容認する安全保障関連法の違憲部分の廃止や、選択的夫婦別姓制度の実現、原発のない脱炭素社会の追求なども盛り込まれた。
衆院選をめぐっては、立民、共産両党の候補者が約70の小選挙区で競合したまま。今回の協定を踏まえて、両党間の候補者調整が進むかが今後の焦点だ。市民連合は、国民民主党にも署名を呼び掛けたが、国民は「脱原発」が提言に明記されていることなどを理由に欠席した。【JIJI.COM 2021年9月8日】
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