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2021年8月14日 (土)

スガノミクスと枝野ビジョン

新型コロナウイルスの感染拡大、猛暑、最終盤はトリプル台風という悪条件が懸念された中、ひとまず東京五輪は幕を下ろすことができました。直後の世論調査の結果は「開催されて良かった」が多数となっています。これから年月を重ねた後、本当に開催して良かったのかどうか歴史的な評価が定まっていくのだろうと思っています。

続いて8月24日に開幕するパラリンピックに向け、観客の取扱いから開催できるのかどうかの判断が求められています。中止した場合に「障害者を軽んじているという見方は出てくる」という声もあるようですが、リンク先のサイトで作家の乙武洋匡さんは「オリ・パラを分ける必要はない」というアイデアも添えながらパラ中止論について語っています。

さて、金曜日に全国の新規感染者数が2万人を超えました。東京五輪の閉幕後、政府や小池都知事は人流抑制を強く要請しています。一方でIOCのバッハ会長の銀座散策に対し、丸川五輪担当相は「不要不急であるかはご本人が判断すべきもの」と発言したためネット上では「外出も帰省もすべて自己判断でいいんですね」などと不満の声が高まっていました。

さらに内閣官房参与だった高橋洋一さんは「不要不急というのはもともと本人判断でしょ。何を今更。日本で外出禁止というほどの私権制限は憲法改正しない以上ないのだから」と指摘していました。高橋さんは今年5月、ツイッターでの「さざ波」が批判を受け、内閣官房参与を辞職しています。

今回の発言も現政権を擁護している立場からの率直な感想なのだろうと思われますが、大幅な人流抑制が重要な局面だと認識している政府の足を引っ張る形となっています。もちろん個々人の言論の自由は保障されなければなりません。ただ高橋さんの考え方は菅総理に大きな影響を与えていたはずであり、『スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』という書籍の著者の一人が高橋さんでした。

前回記事「コロナ禍での菅総理の言葉 Part2」の冒頭で伝えたとおり1か月半前に投稿した「政治家の皆さんに願うこと」の中で、その書籍のことを紹介していました。 このブログで菅政権のことを批評するのであれば菅総理を支える方々の考え方にも触れるべきだろうと思い、高橋さんらが執筆した書籍を読み終えていました。

その後『枝野ビジョン 支え合う日本』も読み終えたため「スガノミクスと枝野ビジョン」というタイトルの新規記事を投稿しようと考えてきました。1か月前の記事「菅内閣の支持率低迷、されど野党も」に託した問題意識のもとスガノミクスとの対比として枝野ビジョンを取り上げるつもりだったからです。

毎年、この時期は戦争を題材にした記事を投稿しています。昨年は2週にわたって「平和を考える夏、いろいろ思うこと」「平和を考える夏、いろいろ思うこと Part2」という記事を投稿していました。このような流れから外れますが、今回、ようやく「スガノミクスと枝野ビジョン」というタイトルを差し替えずに書き進めています。

2020年秋の「大阪都構想」では、新聞・市職員・共産党などがコスト増の数字を捏造し、住民の正常な判断を妨害した。こうした既得権を守って甘い汁を吸おうとする人たちを白日の下に晒すのが「スガノミクス」だ。本書は、著者2人が財務省と経済産業省の役人として得た知見をもとに、そして内閣官房参与として政権の内部から、菅首相が推し進める改革の中身を、国民の前に全て示していく。

上記はリンク先のサイトに掲げられた『スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』の紹介文です。もう一人の著者は通産官僚だった政策工房社長の原英史さんで、高橋さんと各章を分担しながら執筆しています。スガノミクスという言葉は広まっていませんが、その書籍の「まえがき」の中で次のように説明しています。

既得権の打破のもと経済関係の施策に限定せず、長期政権を予想した菅政権が行なう九つの具体的な改革をスガノミクスと称したいと記されています。安倍政権は金融緩和政策、積極的財政政策、成長戦略の三つの柱をアベノミクスと称していました。

それに対し、スガノミクスは電波域帯の開放、デジタル教育、オンライン診療、オンライン行政、地方銀行の再編など個別の施策を総称したものとなっています。安倍政権を引き継いでいるため、アベノミクスの三つの柱を維持した上で菅政権は特に成長戦略を最重視しています。

コロナ禍での財政出動が欠かせない中、国債発行に躊躇する必要のない後押しとなる考え方もその書籍には書かれています。高橋さんは日銀と政府をまとめて「広い意味の政府」として連結対象のバランスシートを想定すべきと述べています。

統合政府ベースで見た時、1400兆円程度の資産のうち土地や建物など有形固定資産は300兆円弱であり、国の資産の多くが「売却可能な資産」になると説明しています。これほど多くの資産を温存しながら国民に増税を訴え、国の借金を返済しようとするのは無理筋であると主張しています。

増税に対する忌避感からも「金持ちをより金持ちにすることが社会全体の利益につながる」という新自由主義政策を推し進める立場の著者であることが分かります。新自由主義と言えば「『政商 内閣裏官房』を読み終えて』で取り上げたパソナの竹中平蔵会長が思い浮かび、やはり菅総理の有力なブレーンであり、高橋さんと同様に日本のコロナ禍を「さざ波」だと見られているようです。

成長戦略のためには九つの改革が必要であり、成長を阻害する岩盤規制の緩和が欠かせないという論調で綴られています。岩盤の中に縦割りの官僚機構の問題や既存メディアの既得権などがあり、著書の紹介文にあるとおり市職員や共産党なども「既得権を守って甘い汁を吸おうとする人たち」という2項対立の図式で描かれています。

めざすべき総論的な社会像をはじめ、個々の具体的な施策の方向性についても必ず評価すべき点と懸念すべき点が内在しているはずです。この場で逐次紹介しながら論評しませんが、『スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』の中で掲げられていた個別の課題に対しても同様だろうと思っています。

その上で、より望ましい「答え」を見出すための作法として非常に気になった点について指摘しなければなりません。自分たちの考えが絶対正しく、その考え方に沿って進めようとする改革に反対する勢力は「既得権を守って甘い汁を吸おうとする人たち」と決め付けて敵対視する姿勢に危うさを感じていました。

幸いにも菅総理からそのような過激な言葉は発せられていないようですが、自分が正しいと信じた「答え」に固執し、異なる意見を進言する人たちを遠ざけがちな点が見受けられています。方針決定後には従うという大前提が守られている限り、原さんは著書の中で「異論を唱えたら左遷」などということがあってはならないと記しています。

しかし、残念ながら菅総理にその言葉は届いていないようです。芥川賞の2作品が掲載されていた『文藝春秋』を久しぶりに購入しました。特集記事『「裸の王様」につけるクスリ』の中で、側近が「総理、それをやってはいけません」「この人と会わない方がいいです」と苦言を呈すると遠ざけられるという話を掲げていました。

その結果、冷遇されることを恐れ、取り巻きはイエスマンばかりが増えています。親身にアドバイスする側近はいなくなり、菅総理のそばにいるのは「知人と部下だけ」と言われながら「裸の王様」になっていることに菅総理自身は気付いていないと書かれています。

別な頁の記事には具体的な人物名も明かし、生々しい最近の出来事を伝えています。官房長官時代から連続8年半という異例の長期にわたって菅総理を支えてきた政務秘書官の門松貢さんが6月下旬、出身の経産省に戻されました。

その交代は経済政策などを巡って珍しく菅総理に意見したところ不興を買ったことが切っかけだと記されています。さらに門松さんが経産省に戻った後、親しい官僚仲間に「首相には国家観もなければ、経済に関する知見もセンスもない」と強烈な批判をぶちまけていたことも伝えていました。

菅総理は8月9日の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に1分遅刻し、「少し前に会場に着いていたが、結果的に時間管理上の問題で遅刻してしまった。心からお詫び申し上げたい」と陳謝していました。その後、政府関係者はトイレに立ち寄ったのが理由だと明かしています。菅総理と支える周辺の関係者との連携不足を危惧する事例の一つなのかも知れません。 

月刊誌『Hanada』9月号の中で、菅総理は「いまは、ただやるべきことをやるだけです。自分がやっていることは間違っていないという自負がありますから。そこは何があってもブレません」と語っています。本当に正しい判断であれば何よりなことですが、かつてない危機の中、ぜひ、異なる意見にも率直に耳を傾け、より望ましい「答え」を見出す器量を備えて欲しいものと願っています。

予想していましたが、たいへん長い記事になっています。『スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』に絞った記事タイトルにすべきところですが、冒頭に記したとおり『枝野ビジョン 支え合う日本』と対比した一連の記事内容を考えています。そのため、ここで今回の記事は一区切り付け、次回の記事を「スガノミクスと枝野ビジョン Part2」として続けさせていただくことをご理解ご容赦ください。

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コメント

コロナ第5波で災害レベルの状態と言われています。この2週間、7月初旬に比べ人流を5割おさえることが必要との報道です。
また昨年4月の時のような危機感を持つことが必要と言われています。デルタ株の流行で新規感染者数は歯止めがきかず増大し、一部報道ではマスクをしていても感染するとも言われています。このような状況下で組合は何か新たな対応を考えているのでしょうか?人流が減らない状況下での通勤ですが以前と比べデルタ株の影響で感染するリスクが増大しています。また職場内でも感染リスクは増大していると思います。

投稿: ぱわ | 2021年8月15日 (日) 11時52分

ぱわさん、コメントありがとうございました。

ご指摘のとおりデルタ株等による感染拡大は、よりいっそう強い危機意識を持たなければならないものと考えています。たいへん残念ながら緊急事態宣言の発出による効果が薄れ、東京五輪の開催等による緩みが蔓延し、現在の状況に至っているように見ています。

これまで『組合ニュース』等を通して宣言の有無に関わらず、収束するまで緊急事態であるという認識を持ち続けることの重要性を訴えてきています。このようなコロナ禍の中、よりいっそう必要とされる感染対策に留意していかなければなりません。

組合活動の範囲も慎重に見極めています。三密を避けづらい職場委員会をはじめ、普段顔を合せることの少ない方々が集うイベントの開催は見合わせています。一方で、限定したメンバーで対応できる労使協議や執行委員会は継続しています。

上記のような考え方を踏まえ、今のところ勤務態勢等の見直しを求めることは検討していません。もちろん国や自治体全体で大きな見直しが見込まれた場合、そのような動きには即応できるようにしていきます。

ぱわさんとしての危機意識に必ずしも合致した対応ではないかも知れず、たいへん恐縮です。そのような点も見受けられていますが、ぱわさんから寄せられた声は常に意識し、安全衛生委員会の場で基礎疾患を抱える職員に対するワクチンの早期接種を要望するなど可能な限りの対応に努めています。

ぜひ、これからもお時間等が許せる際、この場をお気軽にご利用ください。ぱわさんのような声があることを受けとめられることで、日常の組合活動を進める際に幅広い選択肢を得られているものと考えています。

投稿: OTSU | 2021年8月15日 (日) 19時24分

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