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2021年8月 7日 (土)

コロナ禍での菅総理の言葉 Part2

スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』という書籍を読み終えたことを紹介した記事は1か月前に投稿した「政治家の皆さんに願うこと」でした。その後『枝野ビジョン 支え合う日本』も読み終えたため「スガノミクスと枝野ビジョン」というタイトルの新規記事を投稿しようと考えてきました。

新規記事の冒頭に時事の話題を触れ始めるとその内容だけで話は広がり、途中で記事タイトルを差し替えることが続いていました。このところ新型コロナや東京五輪のことなど触れたい内容がいつもわき上がってくるからです。今回も同様なパターンになりそうですが、欲張らずに後段で「スガノミクス」だけは触れてみるつもりです。

放送プロデューサーでタレントのデーブ・スペクター氏が5日、自身の公式ツイッターで、名古屋市の河村たかし市長が、東京五輪女子ソフトボール代表の後藤希友投手(20)の金メダルにかみついた行為による謝罪会見についてつづった。

河村市長は4日に後藤の表敬訪問を受けた際、後藤の金メダルを首から提げ、いきなりかみ付く行為を行い、SNSなどで批判の的になった。河村市長は5日に謝罪会見を行ったが、紙で用意した謝罪文は棒読みだった上に、言葉まで“かんで”しまう始末だった。

この会見についてデーブ氏は、たびたび棒読みぶりが指摘される菅義偉首相の会見とかけ、「河村たかし市長の棒読みと比べて菅総理がまだアドリブに聞こえる」とツイート。2人を一気にいじり、皮肉った。

このツイートに、フォロワーからは「菅総理の方が『うまい棒』なのか」、「作文、読み慣れてるから」、「えー、棒読みの上手がいたんですね→総理がホッとしている?」と、大喜利めいたコメントが寄せられている。【Sponichi Annex 2021年8月5日

河村市長の非常識な行為は強い批判を浴び、謝罪会見の模様も上記のとおり皮肉られていました。デーブ・スペクターさんから「河村たかし市長の棒読みと比べて菅総理がまだアドリブに聞こえる」と評された菅総理はその原稿読みで信じられないレベルの大失態を犯しています。

菅義偉首相が広島市の平和記念式典で行ったあいさつの際、事前に用意した原稿の一部を読み飛ばし、野党からは6日、「非礼だ」などと批判する声が上がった。昨年9月に就任した首相にとって初めての原爆忌だったが、その後、謝罪する失態となった。

首相が読み忘れたのは「わが国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていく」などのくだり。この後の記者会見の冒頭で、首相は「あいさつの一部を読み飛ばしてしまい、この場を借りておわびする」と陳謝した。

首相周辺は「(原稿の)紙がのりでくっついていた」と釈明するが、首相は読み飛ばしの結果、前後のつながりが不自然だったにもかかわらず、そのままあいさつを続けていた。

共産党の志位和夫委員長はツイッターで「まさか読み飛ばしとは。原爆死没者、被爆者に対して礼を失している」と非難。立憲民主党幹部も「論評以前の問題。首相は心ここにあらずなのだろう」と語った。政府関係者は「準備不足だ。政治のメッセージを軽視している」と肩を落とした。

一方、自民党のベテラン議員は「言い間違いは誰にでもある。魔が差したのだろう」と首相を擁護。首相は昨年の臨時国会などでも用意された原稿の読み間違いが相次ぎ、周囲が休養を勧めたことがあった。同党幹部は「相当疲れている。ずっと休んでいないので、1日ゆっくりしたほうがいい」と語った。【JIJI.COM 2021年8月6日】 

確かに激務が続き、疲れもたまっているのだろうと思われます。しかし、首相周辺の「紙がのりでくっついていた」という釈明などは論外であり、ご自身の式典に臨む重要な立場を考え、被爆者の皆さんの辛苦に少しでも思いを寄せているのであれば絶対あり得ない失態だったと言わざるを得ません。

国民の命と生活を守るため最も重い責任と役割を負っている総理大臣は、どれほど疲労していたとしても常に最適な判断を下し続けなければなりません。仮にそのような激務が耐えられない健康状態であれば身を引くことも決断しなければならないほどの重責だろうと思っています。

たいへん残念ながら前回記事「コロナ禍での菅総理の言葉」に示したとおり菅総理の言葉は国民の心に響かなくなっています。言い間違いや読み飛ばしという問題にとどまらず、その政策判断に至った理由や真意を的確に発信できないため無用な混乱を生じさせ、本質論から外れた批判を受けがちです。

新型コロナウイルス感染者の入院を制限し、軽症なら自宅療養を基本とする政府の方針転換について、加藤勝信官房長官は3日の記者会見で「若い世代での感染が急拡大している」と危機感を示し、「重症患者が確実に入院できるようベッドを確保する」と述べた。

政府は今回の方針転換を2日の関係閣僚会議で決めた。これまで入院とされていた軽症患者らは原則として自宅療養とし、感染急増地域での入院は重症患者を基本とするよう都道府県に求める。ただ、軽症でも症状が急変するケースもあるなど、政府方針への懸念がすでに浮上している。

加藤氏は今回の方針転換について「感染者が増えており、新しい考え方を打ち出した」と説明。「すぐに入院できず自宅療養の方も増えている」として重症者向けの病床確保を急ぐ必要があると強調し、「今後は入院患者以外は自宅療養を基本とし、家庭内感染などの事情がある方には宿泊療養を活用する」と述べた。【朝日新聞2021年8月3日

上記の方針転換に関する発表に際しても物議を醸し、メディアの大半が批判的な論調で伝えています。日頃から菅政権を批判的な日刊ゲンダイは『菅政権「自宅待機」はご都合主義の極み “入院拒否なら牢屋行き”から一転の無為無策』『「入院制限」は誰の発案なのか “独断会議”の出席者は5人、与党内からも突き上げの嵐』という見出しを付けて報道しています。

政府対策分科会の尾身会長にも知らせず、与党に対する根回しもなく、唐突な方針転換でした。そのため公明党とともに自民党内からも見直しを求められ、当初の方針案の内容は一部手直しされています。今回、菅総理は「撤回しません。引き続き丁寧に説明していく」と答え続けています。

その説明の内容は「重症患者や重症化リスクの特に高い方には確実に入院していただけるよう必要な病床を確保します。それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなれば、すぐに入院できる体制を整備します」とし、「感染が拡大している地域では、中等症でも症状によっては自宅療養とすることを決めました」というものです。

必要な病床を確保と言いながら絶対数を増やした訳ではありません。さらに感染拡大の地域に限るということは本来であれば受け入れたくなかった方針転換だったという説明を加えていることになります。このような説明で感染拡大地域の方々の不安が取り除かれるものと本当に考えられているのでしょうか。

このブログを長く続けている中で多面的な情報をもとに判断していくことの大切さを強く意識するようになっています。夕刊フジは『深刻、菅政権の“説得力” 自宅療養方針に与野党から反論噴出 八幡氏「広報力強化を」 木村盛世氏「極めて妥当な措置」』という少し視点を変えた記事を掲げています。

政府が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う病床の逼迫に対応しようと、重症者や重症化のリスクが高い患者以外は基本的に「自宅療養」とする新たな方針を打ち出した。これに対し、与野党から異論・反論が噴出し、4日の国会は紛糾した。政府から与党への根回し不足は否めず、国民への説明不足もあらわになった。コロナ禍で、菅義偉政権の「説得力不足」は深刻だ。

「酸素吸入が必要な中等症の患者を自宅でみることはあり得ない。政府方針の撤回も含め、検討し直してほしい」4日の衆院厚労委員会で、公明党の高木美智代政調会長代理は、こう政府をただした。自民党のコロナ対策に関する会議でも同日、「聞いていない!」と撤回を求め、突き上げる声が上がった。

突然の入院基準の転換に、国民の間には「単身の場合、療養中に容体が急変すれば、誰がどう入院のタイミングを計るのか」「家族がいれば家庭内感染を広げかねないのでは」などと不安が広がっている。

これに対し、田村憲久厚労相は前出の衆院厚労委員会で、「一定程度、ベッドに余裕がないと急遽、搬送ができない。重症化リスクが低い人は在宅でということを先手先手で打ち出した」と理解を求めた。

菅首相も4日夜、「必要な医療を受けられるようにするためだ。丁寧に説明して理解してもらう」と、官邸で記者団に撤回しない意向を示した。対象地域も「東京など爆発的感染拡大が生じている地域で、全国一律ではない」と説明した。

医療行政の専門家はどう見るか。元厚労省医系技官の木村盛世氏は「これまで軽症・無症状でも入院させてきたことが問題だ。いまや高齢者へのワクチン接種も進み、重症化率は下がっている。今回の措置は極めて妥当であり、医療体制も改善される。むしろ、遅すぎたくらいだ。病院に行かなければ酸素吸入ができないというのは誤解だ。在宅医療もかなり進み、実施可能だ。あとは医師会が頑張れば問題はない」と語った。

ならば、これは政府の「説明不足」「説得力不足」ではないのか。評論家の八幡和郎氏は「政府の対応が、狙いとは反対の意味で国民に取られ、誤解が生じることがある。今回は『あくまで訪問看護の充実を目指すものなのだ』と強調すべきだ。菅政権には、コピーライター的な才能を持つスタッフがいない。急いでそろえ、広報・発信機能を強化すべきだ」と語っている。【ZAKZAK2021年8月5日

参考にしたサイトの内容をそのまま掲げていくと、それだけで相当な長さの新規記事となります。今回も「スガノミクス」に触れることは避け、途中で記事タイトルを前回の内容から連なる「コロナ禍での菅総理の言葉 Part2」に変えています。いつも余計な話を差し込み、たいへん恐縮です。もう少し続けます。

木村元技官の問題意識を踏まえた措置であれば「もう少し新型コロナについて」の中で示した感染症の分類見直しの問題につながることになります。そうであれば法的な改正論議が必要とされ、全国一律に適用されていく見直しの問題です。このような背景を菅総理らは理解した上で方針転換をはかったのか、単なる急場しのぎの苦肉の策なのかどうか分かりません。

そもそも今回の政治的な判断の方向性が望ましいものだったのかどうか分かりません。いずれにしても救える命が救えなくなるような医療崩壊は何としても防いで欲しいものと願っています。最後に、今回の問題で「なるほど」と思えたサイトの記事を紹介させていただきます。『Dr.和の町医者日記』で有名な長尾和宏医師の「自宅療養者にも在宅主治医と必要な薬を」です。

国は180度方針転換したが、説明不足なので国民の反発と不安を煽る恰好になっている。3つの前提条件をちゃんと説明するべきだ。たとえば坂上忍さんは、こう発言している。「政府が医療逼迫を認めたに等しい」と。 →こちら

在宅療養に対して洪水のような疑問や反論が出ているが政府の説明不足であり、今からすぐに追加説明すべきだ。政府の代わりに僕が、医療タイムスの8月6日号に書いた。

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医療タイムス2021年8月6日号  在宅療養者全員に主治医と薬を   長尾和宏

8月2日、BSフジのプライイムニュースに2時間生出演した。「開業医による早期診断と早期治療」、「抗体カクテル療法を施設や在宅でも使えるように」、「軽症者の自宅管理は保健所ではなく在宅医が担う」、「五輪後は五類感染症に」など、多くの提案をした。

翌8月3日、さっそく菅総理と田村厚労大臣は「軽症者は自宅療養が基本」と記者会見し、日医の中川会長も同調した。これまでの病院を柱にしたコロナ政策が180度転換されたわけだが、基本的な説明が抜けているために各界から大きな反発が起きている。  政府が早急に国民に説明すべきは以下の3点かと思われる。

1) すべての自宅療養者に地域の在宅主治医をつける。24時間の連絡体制を構築したうえで毎日のオンライン診療を必須とし、必要なら医師の往診や訪問看護を提供する。

2) 軽症ないし中等症Ⅰの患者さんにも必要な医療を提供する。対症療法だけでなく、保険請求できるイベルメクチンや少量のステロイドも使用する。また、感染予防体制などの施設基準を満たした診療所には厚労省が直接、抗体カクテル(商品名ロナプリーブ)を送り在宅で点滴できる体制を整える。対象は50歳以上の基礎疾患を有する軽症患者である。肥満や喫煙などハイリスク者の認定は在宅医が行う。

3) 保健所の指示がなくても開業医がコロナ医療を提供できる。また重症化しそうであれば開業医が直接病院と交渉するなど通常の病診連携をできる体制を整える。そのためには、COVID19の位置づけを現在の「新型インフル等感染症」から「5類感染症」に早急に移行させるため国会審議が必要がある。強制入院の1類相当と整合性が失われるので当然だ。

以上の3点が、「在宅療養を基本とする」の前提条件となる。しかしそのような説明が無いので野党の反発や市民の不安を煽っている。厚労省は自宅療養者への往診に加算を設けた。しかしこれも肝心の前提条件が抜けている。ただただお金で開業医を誘導しようとしても前提条件が整わないと机上の空論になる。在宅療養者全員に在宅主治医と必要な薬を提供することが、在宅療養の大前提である。

さて、今後の開業医はこうした政策転換に乗るのか乗らないのかに迫られる。ただ第四波と第五波の大きな違いは、医療従事者が既にワクチンを打ち終えていることである。それでも感染する可能性はあるが、もし感染した場合は労災適応とともにその日のうちに抗体カクテル療法を提供することを確約すれば新たにコロナ診療に取り組む開業医が増えるのではないか。

内科系開業医の半数以上がコロナ診療に取り組めば感染者が増えても対応できるはずだ。毎日発表される新規感染者数にみな驚くが冷静に考えて欲しい。重症者数や死亡者数はそれほどではない。インフル蔓延時はもっと大きな数字になる。しかも5類ならば定点観測だけで充分だ。また開業医で診断・治療できるので、感染者が増加しても医療崩壊に至らないことを思い出して欲しい。インフルと同様な対応をすることで、「コロナ=死ぬかもしれない怖い病気」という市民の洗脳を解くことができる。また開業医もクラスターや風評被害を心配しなくてもよくなる。

大きな第五波こそ5類への移行のチャンスだと思う。できれば五輪後すぐにやって欲しい。「5輪後は第5波を克服するために5類へ」と、「3つの5」をテレビで提案したが、まずは賛同してくれる医師が増えることを期待する。

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朝からいくつかのメデイアから問い合わせが殺到している。今週、またテレビなどで以上のような説明をすることになりそうだ。

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コメント

長尾先生の、
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もし感染した場合は労災適応とともにその日のうちに抗体カクテル療法を提供することを確約すれば
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だけでは足りない。

もう一つ確約する必要があって、それは
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対応した患者が急性増悪した場合に、後送先が見つからず結果的に落命するようなことがあったとき、「後送すれば助かった命が後送しなかったために失われた」という形での民事上・刑事上の責任を問われないことを確約する
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ということ。

いくら初期対応を広く行っても、後送先が逼迫していれば、どうしようもない。
そして、開業医にフルに動いて貰うほど自宅療養者が増えているなら、間違いなく後送先は適時適切には見つからない。

神奈川県だったか?は、この点に関しても対応するために「行政からの委託によって、開業医が動く」という形式を採ることによって、訴訟リスクや責任の主体を開業医から行政に移転させる方策を採ってると聞く。

開業医に動いて貰うなら、その辺りのケアもいる。開業医というのは、医院の経営者でもあり、訴訟を起こされたら潰れるというリスクを抱えているので。

投稿: あっしまった! | 2021年8月 7日 (土) 20時45分

連投失礼。
もう一つ申し上げておきたいことがあるのですが。

抗体カクテル療法に使う薬剤は、その性質というか製法に由来して、全世界における生産量が限られている薬剤です。
そして、各国での取り合いです。従って、
[手当たり次第に陽性判明者に使えるほどの供給量はありません。]

日本では、政府が今年中に一定量の供給を受ける契約を結んでいますが、先に述べたような事情から今後今年の供給量を増やす契約はほぼ不可能です。

現時点でも「入院でしか使えないと言うだけでなく、入院患者に対しても適用範囲はかなり狭く設定されている」が実情です。

そうした世界規模での供給制約や適用範囲が(そもそも治験の対象範囲が狭かったと言うこともあって)狭いと言うこと。

これらについて何も言わずに、「十分な量を確保したので徹底的に使う」とか総理が言ってしまうので、総理はホントにわかってるんかなぁ?と不安になるところ。

このままでは「使うための態勢は整えたけど、現物の供給がない」というワクチンの二の舞を演じかねないので、
抗体カクテル療法を巡る総理の発言や報道の在り方について、強い危惧を持っています。

投稿: あっしまった! | 2021年8月 7日 (土) 20時52分

あっしまった!さん、コメントありがとうございました。

ご指摘のような問題点が多々見受けられています。なかなか唯一無二の答えは見出しづらい局面だと思っています。

そのような中ですが、せめて菅総理らにはその判断に至ったことを説明する言葉の発信力だけはもう少し磨いて欲しいものと願っているところです。

投稿: OTSU | 2021年8月 8日 (日) 06時12分

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