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2021年7月31日 (土)

コロナ禍での菅総理の言葉

前回の記事は「57年ぶりの東京五輪が開幕」でした。その記事の最後のほうで「やはり日本人選手を中心に応援したいものと考えています」と記したとおりメダルがかかった瞬間をテレビで連日観戦しています。同じカンセンでも新型コロナウイルスの感染は非常に憂慮すべき事態が拡大しています。

東京都の感染者数は3日連続で3千人を超え、ついに土曜日には4千人を超えています。金曜の夜、大阪、埼玉、千葉、神奈川の4府県に対する緊急事態宣言の発令に伴い菅総理の記者会見が開かれました。同席した政府の分科会の尾身会長は「危機感を国民が共有できていないのが最大の問題」と訴えています。この記者会見の模様はリアルタイムで視聴していました。

日頃から菅政権を批判的な立場のメディアであるAERAdot.は 『意味不明のガースーはぐらかし首相会見を徹底検証 記者席からは大きなため息も』という見出しの記事を発信しています。数日前、東京五輪の中止の可能性について尋ねられた際、菅総理は「人流も減っていますし、中止しません」と即答していました。

このことについてフジテレビの記者から「東京オリンピックを中止しない理由として、人流が減っていると述べたが、その認識は変わりないか」「ワクチン接種も進み、人流も減っているのであれば、首都圏でここまで感染が急拡大することはないのではないか、という指摘もありますが、見解は」という質問がありました。

この質問に対し、菅総理は「開催するにあたりIOCに対して18万人くらい、選手や関係者が日本に来る予定でしたが、それを3分の1にお願いさせていただいた」「視聴率は非常に高いようで、ご自宅でご覧になっている方が多分たくさんいらっしゃるのだろう」「それとこの大会を無観客にして開催をさせていただきました。そうした点から私が申し上げたところです」と答えています。

私自身も視聴していましたが、記者の質問に的確に答えていないやり取りが目立っていました。「ワクチンの効果ばかりを発言して国民の危機感の欠如につながっているのではないか」という質問に対しては「ワクチン接種こそが決め手」と改めてワクチンの効果を強調していました。このような噛み合わなさから前述した見出しに至っているようです。

「もし感染の波を止められず、医療崩壊して、救うべき命が救えなかった時、首相を辞職する覚悟はあるか」という問いかけに対し、菅総理は「水際対策をきちっとやっています」と答え、辞職の覚悟については触れませんでした。質問した記者が再び「辞職の覚悟について教えてください」と尋ね、菅総理は「しっかりと対応することが私の責任で、私はできると思っています」と発言しています。

総理大臣の職責の重さを考えれば「救うべき命が救えなかった時は辞職します」と軽々に答えられないのかも知れません。ただ国民に対する強い決意や覚悟を伝える機会として、もう少し違う言葉を発せられなかったのかどうか物足りなさを感じています。

「そうならないように全力を尽くすことが私の責務であり、結果が伴わなかった場合、最も重い責任は私自身が負うべきものと考えています」というような覚悟が前面に出た言葉を示して欲しかったものと思っています。先々の出処進退を縛られるような言質を残したくないという警戒感から曖昧にしたとすれば感染拡大を阻止する自信のなさの表われのようにも見られてしまいます。

大言壮語は似合わない菅総理の実直さの表われなのかも知れませんが、確かに「これでは会見の意味がない」と批判されても仕方のない記者会見だったと言わざるを得ません。しきりにオリンピックを自宅でテレビ観戦することを推奨されていますが、そもそも関係者以外はテレビでしか観れませんので「外出は控えて」という言葉を必ず前に添えなければ感染対策としてのメッセージ性は薄れがちです。

記者会見での「新たな日常を取り戻すよう全力を尽くしてまいります」という言葉も気になりました。記者との質疑応答ではなく、読み上げた冒頭発言の中のものです。「以前のような平穏な日常を取り戻す」ではなく、マスク着用等が欠かせない「新たな日常」であれば残念な目標であり、「取り戻す」という表現も適切ではありません。

菅総理は「感染拡大とオリンピックとの関連性はない」と言い切られています。この発言も説明が不足し、国民の多くから共感を得られるような言葉ではありません。入国にあたっての水際対策をはじめ、選手や関係者をバブル方式で行動制限するなど対策を講じているため、感染拡大の直接的な原因にはなっていないという説明であることを理解しています。

しかし、それらの対策が万全だったのかどうか問われています。さらに少し前の記事「責任者は誰なのか?」「コロナ禍での雑談放談」「もう少し新型コロナについて」の中で訴え続けてきたことですが、開催する限りリスクゼロはあり得ません。一方で東京五輪の中止を決めた場合、開催に伴う人流はなくなり、東京五輪に関連した感染リスクはゼロとなります。

このような点を踏まえれば「関連性はない」と言い切ることに違和感が生じてしまいます。少し前の記事の中では「もともと過度に社会生活や経済を痛めるロックダウンに近い抑圧策には懐疑的な立場ですので、主催者が納得性の高い説明責任を果たした上で開催を決めるのであればその判断を尊重したいものと考えています」と記しています。

あわせて感染対策を整えて東京五輪の開催を予定するのであれば、感染対策を整えているデパートや映画館などに対する規制を緩和しなければ一貫性がなくなることも指摘していました。同様に感染対策に努力してきた居酒屋等に対する規制も緩和すべきものと考えていました。もちろんマスク着用など必要な感染対策は緩めず、コロナ禍が収束するまで緊急事態であるという認識を持ち続けることの重要性も訴えています。

しかしながら驚きの4回目の緊急事態宣言が発令される事態に至っていました。東京五輪は予定通り開催しながら緊急事態宣言を発令するという支離滅裂な動きでした。残念ながら緊急事態という政府や自治体からのメッセージは色あせ、その効果が期待できなくなっています。「五輪をやっていることが、外出自粛とは逆のメッセージに受け取られている」という指摘のとおりの事態だと言えます。

感染拡大と東京五輪との直接的な関連性は確かに薄いのかも知れません。しかし、東京五輪の開催が国民の意識の変化に影響を与え、個々人の感染対策の緩みをもたらしていることも確度の高い見方だろうと思っています。したがって、菅総理の「感染拡大とオリンピックとの関連性はない」という言葉は勇み足な印象を抱いていました。

「中止はあり得ない」という考え方に固まっているため、東京五輪の質問に限ってはとっさに断定調に答えてしまうのかも知れません。菅総理の心の奥底には日本の感染状況が海外に比べれば「さざ波」に過ぎないというとらえ方を秘めているのだろうと推測しています。実は今回も「スガノミクスと枝野ビジョン」という記事タイトルは早々に差し替えています。

このブログの中で取り上げる予定の『スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』という書籍の著者の一人は内閣官房参与だった高橋洋一さんです。今年5月、高橋さんはツイッターでの「さざ波」が批判を受け、内閣官房参与を辞職しています。菅総理が高橋さんと同じような見方を強めていれば東京五輪を中止するという選択肢はあり得ないのだろうと想像できます。

ここまで感染者数が増えてしまうと強いブレーキも必要なのかも知れません。今さらながら2回目の緊急事態宣言を解除した頃の対応が岐路だったように思っています。東京五輪は感染対策に万全を尽くしながら開催することを宣言し、社会生活や経済に過度な痛手を生じさせる人流抑制策を緩和しながら必要な感染対策の継続を訴え続けたほうが、現状のような急激な感染拡大は防げたように思えてなりません。

菅総理が懸命に動いていることも承知しています。このブログは菅総理を支持している方々もご覧になっていることを念頭に置きながら書き進めています。安倍前総理のことを取り上げる時も意識していたことですが、誹謗中傷に近い個人攻撃や「批判ありき」の記述は避けるように努めています。

私自身の責任で綴る文章であれば「何が問題なのか」、なるべく具体的な事例を示しながら「だから、このようにして欲しい」という懇願的な内容を投稿してきています。今回の記事内容も菅総理に対して僭越で、辛口な論評だったはずです。より望ましい政治の実現を期待するからこそのお願いであり、次回以降「スガノミクス」を改めて紹介しながら、よりいっそう深掘りできればと考えています。

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2021年7月24日 (土)

57年ぶりの東京五輪が開幕

金曜の夜、1964年の第18回夏季大会以来、57年ぶりの東京五輪が開幕しました。新型コロナウイルスの影響で無観客でしたが、マスクを着用した選手団のリラックスさが伝わる開会式だったことに安堵していました。史上初めて1年延期された後、緊急事態宣言下での異例の幕開けとなっています。開催までの異例さや迷走ぶりを上げれば枚挙に暇がありません。

振り返れば大会のエンブレムは変わり、国立競技場のデザインも変更されました。今年2月に組織委員会の森会長、3月には開閉会式のクリエーティブディレクターだった佐々木宏さん、開会式直前には楽曲制作担当の小山田圭吾さんが辞任し、ショーディレクターの小林賢太郎さんは解任されています。

過去の振る舞いや発言が問題視され、責任を問われているケースが目立っています。「問題のない人なんているのかな」という声もあるようですが、国際的な注目を集める舞台に携わる立場の方々である限り、過去の話だったとしても取り沙汰されたような瑕疵は許容できない問題だったと言えます。

宮崎県知事だった東国原英夫さんは小林さんの解任に対して「過去も含め、清廉潔白でならないといけない」と発言しています。その東国原さんはフライデー編集部襲撃事件の際に暴行罪で現行犯逮捕されて不起訴処分、他にも別な傷害事件では罰金刑を受けています。それでも県知事や衆院議員となり、現在もタレントとして活躍中です。

麻生財務相は「ナチスの手口を学んだらどうかね」と語ったことがありましたが、すぐ撤回したことでその後も重責を担い続けています。このように以前の過ちや重大な失態が致命傷にならず、堂々と人生を歩み続けられる場合もあります。今回のケースは東京五輪という世界的な大イベントに向け、本人たちの認識の甘さや組織としてのマネジメントの拙さが顕著だったものと思っています。

前回記事「菅内閣の支持率低迷、されど野党も」の最後に次回以降「スガノミクスと枝野ビジョン」という内容を取り上げたいと記していました。今回、最初の段落を書き始めた時点で新規記事のタイトルは「57年ぶりの東京五輪が開幕」に差し替えています。いつものことながら「東京五輪」を切り口に話が広がりつつあります。

広がりついでとなりますが、夏季五輪が開催された時、このブログの中でどのように取り上げていたのか遡ってみます。たいへん長く続けているブログですが、下記のとおり3大会となり、直接的な題材として取り上げたのは北京大会だけでした。リオディジャネイロとロンドンの時の内容(赤字)も含めて紹介します。

2016年8月6日 (土) もう少し選挙制度ついて

リオディジャネイロ五輪が始まりました。ブラジルとの時差は12時間ですので、テレビの前に釘付けになって寝不足に悩まされる方も多いのかも知れません。4年後の五輪開催を控えた首都東京の知事選挙は事前の予想通りの結果となりました。東京都知事としては初めての女性知事となる小池百合子候補が圧勝し、自民党と公明党が推薦した増田寛也候補、野党統一候補の鳥越俊太郎候補らを退けました。

2012年7月29日(日)  断定調の批判に対する「お願い」 Part2

最後に、ロンドンオリンピックが開幕しました。土曜の夜、柔道や重量挙げなどを観戦し、各選手の活躍に明暗が分かれる姿を見届けながら、このブログの更新に至っていました。ちなみに「議論の3要素」の話まで広げる内容を考えていましたが、結局、前回記事のタイトルに「Part2」を付けるだけの題材に絞り込んでいました。できれば次回以降の記事の中で、そのような話も取り上げられればと考えています。

2008年8月10日 (日) チベット問題とオリンピック

金曜の夜、中国の威信をかけた壮大な開会式が演出され、17日間にわたる北京オリンピックが開幕しました。民族浄化や人権蹂躙を続ける中国政府に対する抗議の意をこめ、オリンピックを観戦しないと話す人たちがいます。個々人の考え方があって、観る観ないも人それぞれの判断だろうと思っています。

「チベット問題とオリンピック」は冒頭のみ紹介しています。さらに横道にそれますが、紹介した2012年7月29日の記事に145件、その前は52件、前々回は102件ものコメントが寄せられていました。現在も多くの方々に訪れていただいていますが、コメント欄の雰囲気は様変わりしています。

2013年9月8日(日) 2020五輪は東京開催

自分自身、正直なところ淡々とした思いで決定の瞬間を目の当たりにしていました。東京で開催できる喜びよりも、よりいっそう国際社会の中で日本は重い責任を負ったという思いを強めていました。ブエノスアイリスで開かれた直前の記者会見の場で、海外メディアから福島第一原発の汚染水漏れの問題が繰り返し指摘されていました。もともとオリンピックは好きなほうであり、汚染水の問題がなければ、もっと素直に東京開催を喜ぶことができたのかも知れません。

上記はIOC総会で東京五輪の招致が決まった直後のブログ記事からの一文です。最終プレゼンに出席した安倍前総理は「(福島第一原発の)状況はコントロールされている。東京にダメージが与えられることは決してない」と強調していました。2年前の記事「福島第一原発の現状」で伝えたとおり汚染水は処理水と呼べるようになっているものと認識しています。

ただ8年前の時点で、汚染水の問題は風評被害にとどまらない現実的な脅威として内外から見られていたことも確かでした。そのため、私自身も安倍前総理の「アンダーコントロール」という言葉には違和感を抱いていました。たいへん残念ながら東京五輪に関わる言葉の違和感や現実との乖離はその後も続きます。「コンパクト五輪」をめざしていたことは忘却の彼方に消え去り、「復興五輪」のかけ声も空しく響いています。

「新型コロナに打ち勝った証」という言葉も完全無観客に至り、もはや打ち負かされないよう無事に終えることだけが最大の目的となっているように思えてなりません。滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」という言葉と現状との乖離が最も空しく、ここまで不安視され、不完全な形で開催を迎えていることに忸怩たる思いを強めています。

開会式の前日、NHKの大河ドラマ『いだてん』総集編が放送されました。日中戦争の勃発で国際世論の日本に対する批判が厳しくなる中、国威発揚に五輪を利用しようとする政府の方針に反発し、主人公はIOC委員の恩師に「今の日本は、あなたが世界に見せたい日本ですか?」と開催返上を訴えます。結局、第2次世界大戦に突入し、1940年の東京五輪は中止となります。

敗戦を経て、主人公らは再び招致に動き、1964年の東京五輪が実現します。それまでの慣例を破り、閉会式は選手が自由気ままに入場する形に変えていました。国籍、人種、性別、宗教、あらゆる壁を乗り越え、選手たちが笑顔で手と手を取り合って入場する姿は感動を呼び、それ以降の閉会式の定番となっていました。

『いだてん』の最終話では閉会式の様子がたっぷり描かれ、涙ぐむ主人公が映し出されます。そこに幽霊となった恩師が現れて「これが、君が世界に見せたい日本かね?」と問いかけ、主人公は「はい」と微笑みながら胸を張って答えます。戦争中の幻となった東京五輪への批判の言葉が、今度はオリンピックの理念を具現化した閉会式への賞賛の言葉として最終話によみがえっています。

昨日、沢木耕太郎さんの『オリンピア1936 ナチスの森で』を読み終えました。1940年の第12回東京大会は幻となりましたが、第11回大会はベルリンで予定通り1936年8月に開催されていました。その年の3月、ヒトラーはロカルノ条約を一方的に破棄し、フランスとの国境に広がる非武装地帯ラインラントに大部隊を送り込んでいました。

1936年夏、ヒトラーはベルリン大会の開会を高らかに宣言した。それはナチスが威信を賭けて演出した異形の大会にして、近代オリンピックの原点となった――。著者は、そのすべてをフィルムに焼きつけて記録映画の傑作『オリンピア』を産み落としたレニ・リーフェンシュタールの取材に成功する。さらに、激しく運命が転回した日本人選手の証言によって大会を再構築した傑作ノンフィクション!

上記は著書を紹介する説明文です。確かにナチスの威信を賭けた異形の大会だったのかも知れませんが、非難声明を出していたフランスからも選手団が派遣され、51の国と地域から4千人の選手と2千人の役員が参加する過去最高規模の五輪となっていました。1936年8月の時点では2度目の世界大戦を回避できる可能性も残されていたのかも知れません。

オリンピックは「平和の祭典」と呼ばれています。当たり前なことかも知れませんが、戦争中であれば開催することは困難です。国連にはオリンピック停戦という原則もあり、五輪開催を通し、平和の維持、相互理解、親善という目標の推進をめざしています。いずれにしても平和だからこそ開催できる、このような思いのもとに今後の五輪開催が途絶えずに続くことを切望しています。

沢木さんのルポはナチスが支配する異形さを伝えている一方、日本人選手を中心に各競技での勝者や敗者の素顔を丁寧に書き記しています。そのような頁を読み進める中において世界大戦を間近にした緊迫感はなく、あくまでもスポーツを通した力や技の競い合いの奮闘ぶりが描かれています。

前畑ガンバレ」を連呼したラジオの実況放送はベルリン五輪の時のものでした。それでも戦争の影を感じる箇所も多く、活躍した選手が数年後に戦地で亡くなったことも子細に書き残されています。さらに朝鮮出身のマラソンの代表選手が表彰台の一番高い所に上がれたことを喜ぶ一方で「君が代」が流され、「日の丸」が掲げられることの無念さなども沢木さんは伝えていました。

今回の東京五輪もコロナ禍の中で開かれる異例な大会となっていますが、選手の皆さんは普段通りの舞台のもとで普段通りの力を発揮して欲しいものと願っています。様々な懸念がありますが、私自身、開幕した後の東京五輪はテレビで観戦し、やはり日本人選手を中心に応援したいものと考えています。そして「今の日本は世界に見せたくなかった」と悔やまないような閉会式を迎えられることを祈念しています。

話を広げすぎて今回も長い記事になって恐縮ですが、もう少し続けます。沢木さんの文庫本の「あとがき」はⅠからⅢまで掲げられています。2021年4月の「あとがきⅢ」には、東京五輪の延長をIOC側が2年後という案を呑むことを辞さない態度だったと言われていながら、安倍前総理がかなり強引なリーダーシップを発揮して1年後にしたことを伝えています。

沢木さんは「安倍氏の側にそうしたい事情、たとえば1年後ならまだ首相として開会式に臨めるだろうという期待、のようなものがあったからではないかと思えなくもない」と苦言を呈しています。選手のことや施設跡地の問題など総合的に判断されたのかも知れませんが、2年の延長案が主流だった中、安倍前総理が1年延長で押し切ったという話は事実であるようです。

この時期に「新型コロナに打ち勝った証」として完全な形で開催できていれば安倍前総理の判断が称賛されていたことになります。ここは結果論としての政治責任を問われる局面であり、あまり強く批判できるものではありません。しかしながら「歴史認識などで一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の開催に強く反対している」という決め付けた認識はいかがなものかと思っています。

その安倍前総理は開会式に欠席することを決めていました。東京五輪は菅総理にとって安倍前総理から引き継ぎ、必ず開催しなければならない重要な課題の一つだったはずです。それでも現在、最も重い責任と役割は菅総理に託されています。最後に、経済ジャーナリストの磯山友幸さんの 『「残念ながら最悪のシナリオを辿っている」東京五輪後に国民が被る大きすぎる代償』の中で気になった箇所を紹介します。

「菅首相は選挙しか興味がない」と自民党のベテラン政治家は言う。「会って飯を食っても選挙の話しかしない」と言うのだ。菅首相は、緊急事態宣言を出すかどうか、オリンピックをやるかどうか、無観客にするかどうか、もすべて「選挙に有利に働くかどうか」で決めてきたのかもしれない。菅首相からすれば、ワクチン接種を進めて「ゲーム・チェンジャー」にして、オリンピックを実施し、成功裏に終わらせれば、内閣支持率は一気に回復すると期待したのだろう。だが、残念ながら菅首相の思うようには進んでいない。

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2021年7月18日 (日)

菅内閣の支持率低迷、されど野党も

前回記事「驚きの4回目の緊急事態宣言」の中で「菅総理が懸命に動いていることは理解しています。しかし、国民から共感や信頼感を得られるような言葉が決定的に不足していることも確かです」と記していました。このような思いは広まっているようであり、土曜朝の『ウェークアップ』でアナウンサーの中谷しのぶさんの発した一言が話題になっていました。

菅義偉首相が17日、日本テレビ系朝の情報番組「ウェークアップ」にリモートで生出演した。西村経済再生相の発言に端を発した新型コロナウイルス緊急事態宣言下の飲食店酒類提供禁止に伴う一連の問題について「飲食店や酒の販売事業者に不安や混乱を与え大変申し訳ない」と発言。ワクチン接種や東京五輪への意義や9月末の任期満了に伴う自民党総裁選に立候補する意向を明かした。

首相の出演時間の最後に読売テレビ・中谷しのぶアナウンサーが「ぜひ、これからも国民の心に届くメッセージをお願いできればと思います」と要望したことがツイッターなどで話題になり「『心に届く』とかでは、それこそ菅首相の『心に届』かない。『聞かれたことに答えて』と訴えて欲しい」「テレビでこれからも心に響く発言を~とかいってたのがすごい皮肉に聞こえた」「首相への要望は『これからも』では無く『これからは』でしょう」などのコメントが寄せられた。【中スポ2021年7月17日

ちょうど私もその番組を見ていましたが、「国民の心に届くメッセージ」という言葉に対して「これからは」という中谷さんの叱咤激励の意味合いを感じ取っていました。番組の中で菅総理は酒類提供禁止に伴う一連の問題について謝罪しています。届け方の問題にとどまらず、具体的な対策に関しても迷走していると言わざるを得ません。 

酒の提供を続ける飲食店への「2つの対策」が撤回 第5波とみられる感染拡大をどう食い止めるのか?という中で出てきたのが、緊急事態宣言下でも酒の提供を続ける飲食店に対する「2つの対策」です。1つは「金融機関」などから飲食店に対して、酒の提供停止などに従うよう働きかけることを要請するというものです。

もう1つは酒類の「販売業者」に、酒類の提供を続ける飲食店への取引停止を要請するものです。これらの案はどちらも相次いで「撤回」に追い込まれました。この2案を出した責任者の西村大臣は14日、改めて国会で陳謝しました。西村経済再生担当大臣「飲食店の皆様、また酒販の業界の皆様に大変なご不安を与えることになりまして、深く反省をしております。申し訳なく思っております」

どこに問題点があったのか? まず、金融機関からの働きかけの方ですが、元々は8日、西村大臣が会見の中で、酒の提供を続けたり、時短要請に応じない飲食店に対して、取引先の金融機関から働きかけを要請するという考えを示したものでした。これは、お金を貸す立場の銀行などから飲食店への圧力を促したともとれる発言で、直後から問題視されていました。

企業経営者の団体からは「法的根拠がないなら大変まずい」という声や、強い立場の銀行などが働きかけるなら「優越的地位の乱用」につながるとの批判が相次ぎました。金融庁を所管する麻生大臣からは、「『融資してください』と言ってるのに『融資を止める』って話だろ。普通に考えればおかしい。だから『ほっとけ』と、それだけ言いました」とのことでした。

では、法的に大丈夫かという事前のチェックはしなかったのか?ということについてですが、14日になって、この要請について金融庁が事前に了承していたことがわかりました。事前にどのような検討を行ったのか、14日、国会で金融庁に野党がただしたところ、金融庁の審議官は、一般的な感染症対策を呼びかける趣旨で、特定の飲食店への融資に影響をきたすような趣旨ではない、優越的地位の乱用には当たらないと考えていたと答えました。金融庁は、新型コロナ対策の推進室と事前にすりあわせて了承していたとのことです。

業界団体から猛反発 もう一つ撤回となったのが、酒の提供を続けるお店に対して「販売業者」に「酒類の取引停止」を求める要請です。これについては、実際に今月8日付で、文書で要請が出されていました。13日、わずか6日で撤回にいたりました。「今回は堪忍袋の緒が切れた」「官ができないものを民でやらせるというのは非常にナンセンス」という、業界団体から猛反発がありました。

卸売業者も混乱 14日、赤坂にある酒の卸売業者にお話を聞きました。小林謙一店長「要請があってから各所から問い合わせが相次ぎ混乱していた」 問い合わせの内容は「買えるのですか?」「買えないのですか?」「まとめ買いしましょうか」ということです。また、今回の撤回されたことについては、「見切り発車でやっている印象を受けます。お酒が悪みたいな感じになっていて腹立たしいし、お客さんも怒っている」とのことでした。そして、緊急事態宣言で客は減っていて、撤回されたとしても厳しい状態は変わらないと嘆いていました。

業界との信頼を損なう話が、なぜ出たのか? 西村大臣は14日、「なんとか感染拡大を抑えたい、できるだけ多くの皆様のご協力をいただきたいという私の強い思いからの発言」と答えています。政府関係者からは、「言うことを聞かない店への対策としてやるなら、あれしかない」さらに「まさか、あの発言があれほどの波及力があると、みんな思わなかった」という声が出ています。

では、問題になった2つの要請は西村大臣が単独で推し進めたものなのか?14日、野党は責任の所在について追及しました。立憲民主党・今井雅人議員「(要請の前日に行われた)関係閣僚会合、いわゆる5大臣会合とおっしゃるんですかね。このときに事務方からこのことにおいて説明が行われて。やっぱりその場でみなさんが了解したんですよ。これは菅総理の責任は非常に重いと思いますよ」

西村経済再生担当大臣「具体的な要請の内容につきましては、私の責任でコロナ室が関係省庁と調整をして決定をしたというものでございます」 西村大臣は「私の責任で決定した」と強調しました。こうすることで、菅総理に責任が及ばないようフォローした形です。

今回、撤回された政府の案は、どちらも弱い立場の飲食業界の人たちをさらに追い込むようなものでした。大変な中で、なんとか頑張っている、要請を守っているお店や会社を支援する方に全力を注いでほしいです。【news every 2021年7月14日

上記はテレビ報道をテキスト化した『酒対応めぐり相次ぐ“撤回”方針転換の背景は』という解説ですが、何が問題だったのか、分かりやすくまとめられています。組織のカバナンスの問題としても強く危惧しなければならない事案でした。菅総理が事前に認めていれば西村大臣はハシゴを外されたことになり、本当に知らなかったのであればそれはそれで大きな問題だったと言えます。

前々回記事「政治家の皆さんに願うこと」の中で「正しいと信じている判断や対応も別な角度から指摘を受け、誤りに気付ける機会があれば何よりなことです。政治家の皆さんの側近にそのような進言や諫言をされる人物がいるのかどうか、たいへん重要な点だろうと思っています」と記していました。

西村大臣と部下との関係は『「パワハラ疑惑」西村康稔大臣の秘書官が6月末でまたも交代 』という報道のとおりであれば進言や諫言を到底期待できるようなものではありません。部下の意見にも謙虚に耳を傾ける素地が日常的に築けていれば、もしかしたら今回の問題も異なる展開をたどれたのかも知れません。

ワクチン供給不足で予約停止拡大 首相、自賛も見通せぬ混乱収束』という失態も一定水準の情報収集や先々を予見する能力を備えていれば、もう少し混乱を最小化できたはずです。河野大臣は全国知事会との意見交換の場で「ハシゴを外した形になってしまいまして、たいへん申し訳なく思っております」と謝っています。

一方で『河野太郎はまだ国民に謝罪していない! 新「謝ったら死ぬ病の男」がワクチン不足を隠すためについた嘘と”知の崩壊“発言を検証』という辛辣な批判もあり、自らの失態を全面的には認めない姿勢であるように見受けられます。リンク先の記事に「自分は絶対に間違えない」という無謬性を問題視する記述がありますが、そのような点については誰もが自戒していかなければなりません。

菅内閣の支持率は37%となり、昨年9月の内閣発足以降最低だった前回(6月4~6日調査)の37%から横ばいだった。不支持率は53%(前回50%)に上がり、内閣発足後で最高となった。不支持率が支持率を上回るのは今年5月から3回連続。

支持率低迷の背景には、政府の新型コロナウイルス対策や五輪対応への不満があるとみられる。政党支持率は自民党36%(前回33%)、立憲民主党5%(同5%)などの順で、無党派層は43%(同48%)だった。全国世論調査は、読売新聞社が9~11日に実施した。【読売新聞2021年7月12日

上記は読売新聞が実施した世論調査の結果です。菅内閣の支持率は前回と同じ過去最低の37%、不支持は過去最高の53%で、支持する理由は「他の内閣より良さそうだから」が50%を占めています。政党支持率は自民党36%に対し、野党第1党の立憲民主党は5%にとどまり、大きく水をあけられています。

NHKの世論調査も菅内閣の支持率は先月から4ポイント下がり、昨年9月の発足以降最も低い33%となっていました。不支持は1ポイント上がり、発足以降最も高い46%です。支持する理由は「他の内閣より良さそうだから」が41%、政党支持率は自民党34.9%、立憲民主党6%で、前回6月は自民党35.8%、立憲民主党6.4%でしたので、ともに下げていました。

時事通信は『菅内閣支持29.3%、発足後最低 初の3割割れ』と伝え、内閣支持率は30%に届いていません。立憲民主党は1.6ポイント増やしながら4.5%という数字であり、読売新聞やNHKよりも低い政党支持率です。昨日発表された毎日新聞の調査結果は「菅内閣の支持率30%、発足以来最低」という見出しを付けています。

毎日新聞の特徴的な点として政党支持率が自民党28%(前回30%) 、立憲民主党10%(前回10%)であり、他よりも立憲民主党の支持率が高めに出ています。それでも自民党との差が大きいことに変わりありません。菅内閣の支持率低迷は前述したとおり具体的な理由が列挙できます。

各メディアの世論調査で菅内閣の支持率が低迷する中、立憲民主党の支持率が軒並み1桁台にとどまっていることについて次のように見られています。政権批判の受け皿として世論の期待が集まっていないためであり、このような現状を「旧民主党政権の印象を拭い切れていない」と分析されています。

枝野代表や福山幹事長など主だった幹部の顔ぶれは旧民主党時代から代わり映えせず、2012年の野党転落以降「スキャンダル追及など政権批判ばかりで自民党に対抗する旗印がない」という声が立憲民主党内からも聞こえてきています。「立憲民主党 支持率低迷」でネット検索し、見つけた御田寺圭さんの『立憲民主党が「ただしい」のに支持されない理由』という記事の中の一文を紹介します。

立憲民主党のSNSアカウントが「きっと多くの人(とくに若者)が自分たちと同じ問題意識を持っているはずだ」と想像し、世界で話題になっている最新のエシカルなイシューを善かれと思ってクローズアップしようとしているのは理解できる。

だが、それは傍から見れば、自分たちと同質な人たちの政治的態度しか想像できず「タコツボ化」しているようにしか見えない。彼らが、自分たちと知的・経済的・社会的・文化的に同質的な者以外の姿――つまりは一般的な国民の生活や意識、価値観が見えなくなっている、あるいは想像すらも及ばなくなっている状況を端的に示しているように思える。

上記の他にも興味深い記述が多い中、「自民党やその支持者たちを知的・政治的に批判したり嘲笑したりすることばかりにかまけて、「外側」の人びとに語りかけるための言葉を忘れてしまったからだ」という言葉に注目しています。この言葉から派生していく私自身の問題意識は機会を見て掘り下げさせていただきます。

最近の記事「コロナ禍で問われる政治の役割」の冒頭で「判断の誤りが続くようであれば政権の座から下ろされる、このような緊張感ある政治的な構図が欠かせないはずです」と記したとおり野党第1党である立憲民主党が政権批判の受け皿として認知されていくことを期待しています。そのためには受け皿となる中味が肝心であり、そのアピールの仕方も重要な要素となります。

実は今回の記事タイトルは最初「スガノミクスと枝野ビジョン」でした。いつものことですが、書き進めるうちに導入部分の内容が膨らみ、すでに相当長い記事となっています。そのため、菅内閣と枝野代表の政策理念を対比した記事は次回以降に先送りしています。最後に、少しの前の新聞記事ですが、次のような見方があることも紹介させていただきます。

時の政権への信任投票となる衆院選の結果は、世論調査の数字と一致しない。世論調査では「支持政党なし」が44.9%、比例投票先で政党名を挙げなかった人は40.4%。こうした層が与野党どちらに振れるかが重要で、ワクチン接種の進展や五輪の成否に左右されるとみられる。

江田憲司代表代行は17日の記者会見で、立民支持ではないが自民党には投票したくない人が立民に投票するかどうかが結果を分けると指摘し、「いかに投票日までに積極的な支持に変えていくか。そのために骨太の政権公約を出していく」と語った。

立民は289選挙区のうち67選挙区で共産と立候補予定者が重複している。「反政権」票が複数の野党候補に分散すれば与党に有利に働くため、野党間の候補者一本化も鍵となる。【産経新聞2021年5月18日一部抜粋

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2021年7月10日 (土)

驚きの4回目の緊急事態宣言

先週日曜、東京都議会議員選挙の投開票日でした。前回記事「政治家の皆さんに願うこと」の中で伝えていた連合地区協議会が応援した2人の候補者の明暗は分かれてしまいました。候補者の資質や人柄が素晴らしくても万単位の得票での競い合いとなる選挙の場合、所属する政党の看板等が当落に大きく影響します。

政党の訴える政策や実績が高く評価されるべき内容だったとしても、そのことを不特定多数の方々から評価してもらえない限り、残念ながら票の上積みにつながることはあり得ません。日曜の夜、NHKの開票速報に注目していました。午後8時、発表された出口調査による各党の議席獲得予想の数字に愕然としました。

国民民主党は0、全体的に幅を持たせた各党の数字が示されている中、「0から1」でもなく8時の時点でNHKは立候補者4名全員の落選を断じていたことになります。この瞬間、連合地区協の応援した候補者の敗北が知らされたことになり、たいへん忸怩たる思いを強めていました。

都議選の後『連合より共産が「リアルパワー」 都議選で安住氏「組織の建前の話に付き合ってられる状況じゃない」』という報道を耳にし、連合東京の関係者の神経を逆撫でするような発言であり、感情的な溝が広がらないかどうか危惧していました。今週末に投稿する新規記事は都議選の結果を踏まえ、もう少し政治状況の話を掘り下げるつもりでした。

その中で最近読み終えていた『スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』や『枝野ビジョン 支え合う日本』について触れようと考えていました。しかし、東京に4回目の緊急事態宣言が発令されることになり、「驚きの4回目の緊急事態宣言」という記事タイトルを付けて書き進めています。

政府が新型コロナウイルスの感染再拡大が続く東京都に4回目の緊急事態宣言を発令する方針を固めた7日夜、営業時間短縮などを強いられる見通しの百貨店や飲食店の間では、「またか」と落胆と諦めの声が広がった。

人の移動も制限される見込みで、夏休み需要を当て込んでいた航空大手は「ショックだ」と失望を隠し切れない様子だ。都では6月下旬に宣言がまん延防止等重点措置に切り替えられ、時間や人数の制限付きながらようやく酒類の提供が認められてまだ2週間余り。再度の提供禁止の可能性に、居酒屋大手は「客観的な根拠を示してほしい」と悲痛な叫びを上げた。

都内の百貨店では「緊急事態とまん延防止措置の違いが分からない」「要請の内容が分からず不安だ」と、具体的な対応方針が見えないことへの警戒が強まる。航空業界は、東京五輪・パラリンピック開催に伴う7月22日からの4連休や、夏休みに人気の沖縄路線で利用増加を見込んでいたが、先行きが暗転。大手幹部は「また苦しい(利用)状況になるかもしれない」とため息をついた。【JIJI.COM2021年7月8日

まさか東京五輪を緊急事態宣言期間中に開催することになるとは考えてもみませんでした。発令するという方針を知った時、本当に驚きました。この驚きが国民の安全や安心のためのサプライズや英断だと受けとめられれば清々しい思いを強められたはずです。

しかしながら『古市憲寿氏、東京都の緊急事態宣言に本音 「バカなのかな」に共感相次ぐ』という受けとめが残念ながら多数を示しているのではないでしょうか。報道内容等の全文の転載を繰り返していくと非常に長い記事になって恐縮ですが、下記の『東京五輪「全会場無観客」案が政府内に浮上 8日にも判断』はそのまま紹介します。

23日に開幕する東京オリンピックについて、政府内で全ての会場を無観客とする案が浮上した。これまで大規模会場や夜間に実施される一部競技を無観客にする調整をしていた。新型コロナウイルスの感染拡大を懸念する世論を受けて、方針転換が必要との見方が政府・与党内で強まっている。政府は、東京都や大会組織委員会などと8日にも5者協議を開き、観客の取り扱いを最終判断する方針だ。

五輪の有観客を主張していた閣僚の一人は「もう、有観客は厳しい」と述べた。無観客の場合でも、国際オリンピック委員会(IOC)の関係者らの入場を認めることも検討している。4日投開票の東京都議選で、自民党が事実上敗北したことを受け、党幹部は「世論には政府の新型コロナ対策への不満がある。科学的には一部無観客で良かったが、もはや政治的に持たない」と指摘した。

6月21日の5者協議では、五輪観客数を「最大1万人」としつつ、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が出た際は「無観客も含め検討」と合意していた。現在、東京など10都道府県に、まん延防止措置が適用され、沖縄県には宣言が発令されている。政府内では「全国の会場で無観客にするのが分かりやすい」との声も出ている。五輪を盛り上げるために、菅義偉首相は、一部無観客にとどめたい考えとみられるが、外堀は埋まりつつある。

公明党の山口那津男代表は6日の記者会見で、東京で感染拡大が続いていることを踏まえ「感染を防ぐ観点から無観客を視野に入れて決定をしてほしい。最も大事なことは、観客を入れる開催で感染拡大をもたらしてはならないということ」と強調した。一方、開会式は観客の有無によらず、天皇陛下や菅首相、衆参両院議長らが出席する方向で準備を進める。【毎日新聞2021年7月6日

自民党幹部の「世論には政府の新型コロナ対策への不満がある。科学的には一部無観客で良かったが、もはや政治的に持たない」という言葉が政権の迷走ぶりを象徴しています。都議選で敗北しなければ無観客とせず、緊急事態宣言も発令していなかったという内幕を明かしていることになります。

このような思考回路や判断自体が誤りであり、国民からの批判を招きがちな点について充分理解されていない感度の鈍さにも驚いています。様々な判断に至った科学的根拠や納得できる説明の不足が問題視されているのにも関わらず、「政治的にもたない」という発想に至る現政権の司令塔の能力不足が残念でなりません。

国際カジノ研究所の所長であり、エンタテインメントビジネス総合研究所客員研究員の木曽崇さんの『五輪無観客開催:「人流を抑える」がブーメランになって政府の脳天に突き刺さった件』というBLOGOSで目にした記事内容に首肯しています。全文はリンク先を参照いただき、ここでは木曽さんの記事の一部を紹介します。

政府やオリンピック委が感染リスクを抑えるため、科学的見地に基づいてあらゆる対策を採ってきたことは事実でありますし、同様に様々な対策をとってきた国内のスポーツ競技場においてこれまで大規模な集団感染が発生したことはないというのも事実であります。

ただ、同じことは多くの民間のレジャー産業においても言えることであるわけで、その様な科学的見地に基づいたあらゆる民間側の努力を、「人流を抑える」なるマジックワードで十把一絡げに営業制限の対象とおいてきたのは他でもない政府自身であるわけです。

二階幹事長はコロナ対策で「懸命にやっている。これ以上やりようがありますか?」と菅総理を擁護していました。菅総理が懸命に動いていることは理解しています。しかし、国民から共感や信頼感を得られるような言葉が決定的に不足していることも確かです。さらに重要な判断が極めて遅く、後手後手に回っている印象が拭えません。

今回の無観客の判断も一日でも早く下していれば混乱や無用な出費を少しでも緩和できたはずです。加えて、東京五輪の開催判断等は自分にはないような説明を繰り返していましたが、上記報道の「政治的にもたない」という言葉が事実であれば最も重要なキーパーソンは菅総理だったことになります。

ワクチン供給不足で予約停止拡大 首相、自賛も見通せぬ混乱収束』という失態も、やむを得なかったというレベルの問題ではありません。確実なワクチン供給の見通しを把握するのは政府の責任です。その見通しが曖昧なまま「1日百万回接種」というような前のめり気味な強い指示を発し続けたのは菅総理自身です。

未曾有の世界的な危機の中、総理大臣が誰だったとしても、どの政党が政権を担っていたとしても試行錯誤を繰り返し、結果が伴わなければ国民から批判を受けていたはずです。それでも列挙した事態は一定水準の情報収集や先々を予見する能力を備えていれば、もう少し混乱を最小化できたように思えてなりません。

ワタミ会長「我々だけがずっと犠牲に」 東京都へ再宣言方針に』の報道にあるとおり外食大手ワタミの渡辺美樹会長は「お酒だけが原因とされ、我々だけがずっと犠牲になっている」と述べ、「徹底したロックダウンの形を取ってほしい」と人出が減らない中で酒類提供だけを制限していくことに苦言を呈しています。

3回目の時に「3回目の緊急事態宣言」「3回目の緊急事態宣言 Part2」「3回目の緊急事態宣言も延長」という記事を投稿していました。それらの記事の中で、他国に類する感染爆発に至っていない日本は社会生活や経済を大きく停滞させるロックダウンに近い措置は極力避けるべきという私自身の考え方を表明してきています。

長期戦を覚悟するからこそ持続可能な対策を心がけていくべきであり、例えればアクセルは踏まず、車を止めないけれども、ゆっくり走行していく「エンジンブレーキ」という発想です。社会的な制約は2回目の緊急事態宣言レベルにとどめた上、路上での集団飲酒の問題など改めるべき点があれば補強していく必要性を訴えていました。

少し前にも記しましたが、東京五輪がコロナ禍に重なってしまったことは日本の運の悪さです。五輪の開催がなければ、もう少し分かりやすいメッセージを政府は出し続けられたのかも知れません。さらに2年の延長案が主流だったのにも関わらず、安倍前総理が1年延長で押し切ったという話は菅総理の胸中を複雑にしているのではないでしょうか。

やはり長い記事になって恐縮です。最後に、4回目の緊急事態宣言が決まった直後の街の声を伝える記事を紹介します。「五輪をやるならこっちもやらせてくれよと思う。納得しろと言われても難しい」「国の感染対策は毎回甘く、ずるずるとここまで続いてきた。今回の宣言も意味がなさそう」という意見が多く、政府の判断を評価する声は皆無に近いようです。

新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、政府が4回目の発令を決めた緊急事態宣言。またも酒類提供の自粛を余儀なくされる東京都内の飲食店では8日、「五輪はやるのに」「また酒が悪者にされるのか」と怒りの声が渦巻いた。宣言下で行われる東京五輪は都内会場の無観客開催が決まり、二転三転する判断に観戦チケットを持つ人たちからも批判の意見が相次いだ。

文京区の居酒屋「海山和酒なるたか」店長、阿久津貴秀さん(48)は「五輪をやるならこっちもやらせてくれよと思う。納得しろと言われても難しい」と落胆を隠せない様子。「お酒はお客さんを入れる大事な武器。取り上げられたら売り上げが立たない」と憤った。「私たちが五輪の犠牲になっている」。港区新橋で居酒屋「やきとんユカちゃん」を営む藤島由香さん(45)は宣言期間中も酒の提供を続ける方針といい、「政府の対応は場当たり的。自分の身は自分で守る」と言い切った。

宣言決定により東京五輪は、開幕が2週間後に迫った土壇場で都内会場の「無観客」が決まった。開・閉会式をはじめ、競泳やサッカーなど100枚近くの観戦チケットを押さえていたという渋谷区の不動産経営者滝島一統さん(45)は「努力して予定を空けたのに。政府の判断は遅過ぎる」と不満をあらわに。女子サッカーのチケットを持つ30代の女性会社員も「当選してからずっと楽しみにしていた。無観客は残念」とこぼした。

後手後手の政府の対応には、街行く人たちからも疑問の声が。JR渋谷駅前にいた大学生、長尾汰知さん(20)は「国の感染対策は毎回甘く、ずるずるとここまで続いてきた。今回の宣言も意味がなさそう」と語った。中野区の男性会社員(51)は「政府は感染者数を減らし、どうしても五輪を開催したいのだろう」と推測。「飲食店は規制するのに、五輪はできる理由が本当に分からない」と語気を強めた。【JIJI.COM2021年7月8日

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2021年7月 3日 (土)

政治家の皆さんに願うこと

いつも連絡がなく、遅刻を繰り返している人が定刻に現われなくても、あまり心配されません。いつも時間を守っている人が定刻に現われなかった場合、何かあったのか、いろいろ心配されがちです。当たり前なことですが、日頃の行ないが周囲からの評価を左右していきます。

小池都知事が過労のため6月22日から入院し、退院後も一昨日まで自宅静養していました。都議選告示日の前日からの入院だったため「都議選から逃げるためか」「国政進出をにらんだ動きでは」などという憶測が飛び交っていました。

女帝 小池百合子』という書籍が伝えているような事実関係が誤りであれば「この大事な時期に過労で入院だなんて、よほど具合が悪いんだ」と周囲から物凄く心配される局面です。

この報道があった後、麻生財務相の「自分でまいた種でしょうが」という毒舌や舛添前都知事の「過労くらいで1週間も戦のときに休むのは政治家失格」という手厳しい言葉に対しては不適切さが逆に批判を受けていました。いずれにしても早く元気になられ、小池都知事におかれましては「自分ファースト」と揶揄されないような今後の頑張りを心から願っています。

前回記事「コロナ禍で問われる政治の役割」の冒頭で「私が議長代行を務める連合地区協議会は2人の候補者の応援に力を注いでいます」と伝えていました。インターネット選挙は解禁されていますが、特定公務員(徴税吏員)という立場上、この時期に各候補者の氏名等を紹介することは控えなければなりません。

ちなみに前回記事では「政党を問わず、候補者が掲げる政策を吟味し、信頼を寄せられる候補者かどうか、個々人の見識や資質を見極めていけることが理想です」という言葉も残していました。地区協が応援している2人の候補者に対して私自身は直接的な有権者でありませんが、身近に接する機会に恵まれていたため、まさしく理想的な距離感で評価できる関係性です。

2人とも市議会議員と都議会議員を経験されています。連合地区協議会が地域ミーティングを催した際、市政のことも都政のことも精通し、参加者からの多様な質問に詳しく答えている姿をたびたび拝見してきました。何よりも誰に対しても物腰が柔らかく、誠実に対応されている政治家であり、ぜひとも都政の場で活躍されるよう強く願っています。

一方で身近に接する機会に恵まれたことで、かえって政治家としての資質に疑問を抱くような場面もあります。連合東京主催の研修会に区部選出の都議会議員が講師として招かれていました。講師が用意してきたパワポの画面に「施行裁判所は、平成27年12月16日に合憲の判断」という内容を映し出していました。

質疑応答の時間、参加者が「最高裁判所の誤りではないですか」と指摘しました。すると講師は「参考にした資料が手元にありませんので改めて確認し、後ほどお伝えさせていただきます」と答えていました。この瞬間、たいへん驚きました。「申し訳ありません。最高裁判所とすべき所を誤りました」という答えを当然視していたからです。

まず自分で作成したパワポ画面の内容を推敲せず、講演会に臨む安易な姿勢に諫言したくなります。それでも多忙な中、ケアレスミスを一切なくすことの難しさも理解しています。しかし、施行裁判所が誤りだったと即答できない都議会議員と間近に接し、驚きながら落胆していました。普段はお会いできない方ですので、今回の事例だけで評価することは早計なのかも知れません。

ただ前回の都議選は強烈な追い風の中、当選を果たした方ですので、よりいっそう重責ある立場であることを意識しながら努力して欲しいものと願っていました。もし身近な方々も私のように落胆していた場合、今回の選挙は厳しい逆風に見舞われているのではないかと危惧しています。

そもそも森羅万象、すべてに精通し、完璧な人間は皆無に近いのではないでしょうか。政治家の皆さんも同様です。重い職責を果たすため、日々努力し、より望ましい政治的な判断を重ねられるよう研鑽に励んでいるものと推察しています。加えて、より望ましい「答え」を見出すためには幅広い情報や考え方に触れていくことが求められています。

自分自身にとって耳が痛く、不愉快な話だったとしても、いったんは受けとめていく度量も欠かせないはすです。正しいと信じている判断や対応も別な角度から指摘を受け、誤りに気付ける機会があれば何よりなことです。政治家の皆さんの側近にそのような進言や諫言をされる人物がいるのかどうか、たいへん重要な点だろうと思っています。

赤木ファイルで不満爆発 麻生財務相「その程度の能力」と記者批判』というような報道を頻繁に目にしているため、やはり総理経験者である麻生財務相の側近にそのような人物は残念ながら見当たらないのかも知れません。麻生財務相以上に重責を担っている菅総理に対しては、よりいっそう多面的な情報をもとに重要な判断を下して欲しいものと切望しています。

以前の報道で「最近の総理はいつもイライラしていて怒鳴り散らすので、誰も近づきたがりません。官邸内もイエスマンばかりで、総理に厳しい意見を言う人が周囲にいないことが、後手対応を招いている一因でしょう」という官邸関係者の話が紹介されていました。新型コロナウイルス感染症への対応や東京五輪の開催に向け、難しい判断を迫られる中、少しでも好転していくことを願い続けています。

しかしながら『菅首相お得意の「強権人事」で官邸から“安倍派”を一掃 長期独裁の足場固め』という報道をはじめ、東京五輪「開催ありき」のパソナグループの竹中会長と最近面談したという話などを耳にすると、たいへん残念ながら菅総理は私自身の願いとは真逆の方向をめざしているように思えてなりません。

実は最近『スガノミクス 菅政権が確実に変える日本国のかたち』という書籍を読み終えています。私自身、多面的な情報を把握した上で菅総理を評価しなければならないものと考えていたため、少し前に書店で購入していました。

必ず当ブログで触れるつもりでしたので読み進めながら興味深い箇所に付箋を貼っています。今回も「雑談放談」な話が長くなっていますので、その書籍の内容は次回以降の記事で取り上げる予定です。

最後に、特定公務員の立場からも声を大にして訴えることのできる言葉です。明日日曜、東京都議会議員選挙の投票日です。東京都在住の有権者の皆さん、まだ投票されていない場合、必ず投票所に足を運びましょう! よろしくお願いします。

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