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2021年5月23日 (日)

責任者は誰なのか?

前回記事「コロナ禍での政治の役割」の最後に「東京五輪開催の是非など、もう少し掘り下げたい内容を書き残しています」と記していました。『IOCコーツ調整委員長、緊急事態宣言下でも五輪開催?「答えはイエス」』という報道なども耳にしているため、今回の記事でも東京五輪について触れるつもりです。

ただ今回の記事タイトルは「責任者は誰なのか?」としています。最近、いったい誰が責任者なのか、権限を持っていたのか、しかるべき責任の取り方など、いろいろ考えを巡らす事例を立て続けに目にしています。

まず『「誰かが嘘をついている」二階幹事長に続き甘利明氏も関与否定した“1億5千万円”の闇』という報道です。参院選広島選挙区の公職選挙法違反事件を巡り、自民党から河井案里陣営に1億5千万円もの多額な資金が提供されていました。

自民党の二階幹事長が「私は関与していない」と話し、会見に同席していた林幹雄幹事長代理は「実質的に当時の選挙対策委員長が広島に関しては担当していた」と説明していました。当時の選挙対策委員長は安倍前総理の盟友である甘利明税調会長でした。

その後、名指しされた甘利税調会長も1億5千万円もの選挙資金について「1ミリも、正確に言えば1ミクロンも関わっていない。関与していない以前に、党から給付された事実を知らない。これがすべてだ」と語っています。

通常の10倍だったと言われる1億5千万円という多額な選挙資金の支出について幹事長や選挙対策委員長が、まったく知らなかったとは考えられません。新聞記事の見出しのとおり「誰かが嘘をついている」と思わざるを得ませんが、本当に二人とも知らなかったとすれば役職上の管理監督責任が問われることになります。

それ以上に現場の責任者である二人に相談や報告もなく、多額な資金が支出されていた場合は組織のあり方を問題視しなければなりません。そもそもオープンにできない資金だったため、専権的な判断のもと限られた役職者のみで対応したのでしょうか。

いずれにしても幹事長と選挙対策委員長が関与できなかった問題に関与できるとしたら当時の自民党総裁、安倍前総理が責任者だったという見方につながります。有罪判決に至った問題に際し、押収品が戻った後、二階幹事長らは率先して全容を明らかにする努力を尽くして欲しいものと願っています。

続いて『署名偽造容疑で田中孝博事務局長ら4人を逮捕、全容解明へ 愛知県知事リコール不正』という報道です。愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡る署名偽造事件で、地方自治法違反(署名偽造)の疑いで元愛知県議でリコール活動団体事務局長の田中孝博容疑者ら男女4人が逮捕されています。

この問題も最も重い責任が問われなければならない「責任者は誰なのか?」という疑問を抱かざるを得ない不可解な事件です。LITERAの記事『愛知リコール不正で逮捕されたのは維新の衆院選候補、共犯も維新支部の会計責任者! 2億円選挙資金が不正の動機の見方も』の中で次のような事実関係を伝えています。

田中事務局長は逮捕前の4月21日に会見を開いているが、そのなかで、昨年10月中旬に河村氏に「署名が思うように集まらない」ことを相談したところ、河村市長から「約10年前の市議会リコールでも多数の不正、無効署名があった」と聞かされ、それを受けて今回も「白紙以外のすべての署名を提出した」と語っている。

木曜の読売新聞の夕刊には『愛知リコール、逮捕の事務局長「必要数届かなくても一定数の署名を」…実績作りか』という記事が掲載されていました。田中容疑者は「必要数集まらなければ署名簿は調べられない。選挙管理委員会は数を数えるだけだ」と話し、制度上、リコールが成立しなければ署名簿は精査されないため、「水増し」は発覚しないと考えた可能性があることを報じていました。

逮捕前に田中容疑者は「署名が順調に集まらず、高須先生に恥をかかせられないと思った」と語っていました。つまり違法性を認めながら発覚しないから「心配ない」という極めて甘い見通しで署名活動を取り仕切っていたようです。たいへん気になるのはLITERAの記事が伝える河村市長の助言の真意です。

もし田中容疑者の甘さを誘導しているような発言だった場合、河村市長の責任は非常に重いように感じています。リコール活動に費やした6千万円のうちクラウドファンディングや寄附では足りなかった分を活動団体の会長である美容外科の高須克弥医師が立て替えていました。

距離を取ろうとする発言の目立つ河村市長とは異なり、高須医師は「最終的な責任は会長である僕にあります」という発言を繰り返しています。しかしながら不正についての関与は否定し、これほど多くの「水増し」署名があったことも知らなかったという釈明に終始しています。

弁護士の澤藤統一郎さんは『高須克弥よ、大村知事リコール運動代表としての責任をどう考えているのか。』の中で「高須のいう責任とはいったい何に対するどのようなものなのか。そして、具体的にどのように責任をとろうというのか。そもそも、責任をとることが可能なのか、それを問い質したい」と厳しい口調で問いかけています。

東京五輪の話に入る前に相当な長さの記事となっていますが、もう少し続けさせていただきます。冒頭で紹介したIOCのコーツ調整委員長の緊急事態宣言下でも開催するという発言に反発する声が上がっています。コーツ調整委員長は緊急事態宣言下で5競技のテスト大会が行なわれたことを例にあげて「イエス」という答えに至っています。

NPO法人「食の安全と安心を科学する会」理事長の山崎毅さんは『東京オリパラのリスクを誰が評価したのか?~感染原因はイベント自体にあらず、感染対策の甘さにあり~』の中で楽天の三木谷会長の「開催は自殺行為だ」という批判に対し、次のように主張しています。

このニュースをみた筆者が一番疑問に思ったことは、三木谷氏がどんな手法でリスク評価をされたうえで、東京五輪のリスクがそんなに大きいと判断されたのか?ということだ。いまのところ、日本国内の都市部を中心に各種スポーツイベントが開催されており、箱根駅伝・春の甲子園大会・国際体操・バレーボール国際マッチ・国際陸上大会・ゴルフなど開催されているが、最近大きなクラスターが発生したとは聞かない。

三木谷氏がオーナーである東北楽天ゴールデンイーグルスもヴィッセル神戸も、観客をいれて試合を実施しているではないか。ソフトバンクの孫さんも東京五輪のリスクを懸念しているというが、自分たちの運営するプロスポーツの観客をいれた開催はリスクが小さく安全で、東京五輪はリスクが許容できないくらい大きいという科学的根拠は、どこにあるのだろうか?

新型コロナの感染リスク低減策がしっかりできていればイベント開催は十分可能・・とリスク評価したから、国内のプロスポーツ開催は許容したのではないのか? だとしたら、東京オリパラも、いま東京五輪組織委員会が綿密にリスク評価をしたうえで、最善のリスク感染対策を施して、安全・安心な大会の運営を目指しているのを、日本の経済界のTOPがなぜ応援しないのか・・不思議だ。

山崎さんは「帰省して兄弟から新型コロナをうつされた、という場合に、帰省や旅行が原因だ・・というメディア報道にもあきれる。兄弟が隣に住んでいても感染予防が甘いとうつされるわけで、感染原因は旅行ではない」という見方も示しています。

私自身、過度に社会生活や経済を痛める抑圧策には懐疑的な立場です。そのため、山崎さんの考え方には賛同できる点が多々あり、感染リスク低減策自体を重要視しなければならないものと理解しています。一方で、人と人との接触の機会を減らすことが最も望ましい効果的な感染対策であることも確かだろうと考えています。

感染対策に留意した「新たな日常」のもとに経済を静かに回す、例えればアクセルは踏まず、車を止めないけれども、ゆっくり走行していくという「エンジンブレーキ」という発想を重視しています。そのような発想に照らした時、3回目の緊急事態宣言の目的と要請内容の中途半端さが気になっています。

野球やサッカーなどは多くの外国人選手が来日してプレーしているのにも関わらず、東京五輪中止という声が高まる理由は「嘘ばかりで信用できず、国民のほうを向いていない政府が主導しているからだ」という意見を目にしました。科学的根拠や客観性からは程遠く、感情的な意見だと言えますが、世論調査の結果を説明する見方としては的を射ているのかも知れません。

いずれにしても東京五輪の「責任者は誰なのか?」など不明確な点が多すぎます。東京五輪を「アクセル」の一つと見なすのであれば、ただちに中止を判断することが「不要不急の外出自粛」などの感染対策に大きく寄与するはずです。それでもプロ野球や大相撲などと同様、感染対策に留意しながら開催できると責任者が判断するのであれば、その結論は尊重したいと思っています。

しかしながら開催できるという説明が不充分なままであれば、ますます国民の多くから不信感は高まっていくのではないでしょうか。IOCのバッハ会長は「日本人が粘り強さや、へこたれない精神を持っていることは歴史が証明している。これまで逆境を乗り越えてきたように、五輪だって厳しい状況でも乗り越えられる」と発言し、批判を受けています。

バッハ会長の発言から最近読み終えた『ノモンハンの夏』の話につなげることも考えましたが、たいへん長い記事になっていますので機会を見て次回以降触れさせていただきます。最後に、東京五輪の責任者は誰なのか、横並びなのかも知れませんが、精神論や楽観論を排した議論のもとに開催の是非を改めて判断して欲しいものと願っています。

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