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2021年4月17日 (土)

今、ミャンマーで…

少し前の記事「コロナ禍で迎えた節目の900回」の中で、不特定多数の方々に公務員組合側の考え方を発信するとともに一人でも多くの組合員の皆さんにも読んでもらいたいと願いながら当ブログを続けていることを伝えていました。このような思いのもとに組合が方針化している平和の課題について数多く取り上げてきています。

さらに自分自身の主張を広く発信できる自分なりの一つの運動として位置付けています。コメント欄に幅広い視点からの書き込みが多数寄せられていた頃、運動の方向性が偏っているという指摘を受ける場合もありました。一例として「なぜ、中国大使館前では抗議行動をしないのか」という指摘がありました。

そのような指摘に対し、目の前に広がる在日米軍基地の問題に対する具体的な取り組みが多くなり、自国の政府の政策判断に問題があれば抗議する運動に重点が置かれる現状などについて説明しています。特定の国には融和的で平和フォーラムや自治労の平和運動の立場性が偏っているというような見方の誤りを釈明してきました。

どのような理由があろうとも、いかなる国においても、人権を侵害することや非人道的な行為が許されるものではありません。このブログでは「拉致問題を考える」「ルワンダの悲しみ」「チベット問題とオリンピツク」など、そのような問題意識から多様な題材の記事を取り上げてきました。そして「今、ミャンマーで…」という新規記事に向き合っています。

国民による軍政への抗議運動が続くミャンマーでは27日、治安部隊が第2の都市マンダレーで重傷を負わせた住民男性を生きたまま炎の中に放り込み殺害するという惨劇が起きた。オンラインメディア「ミャンマーナウ」が複数の近隣住民の話として伝えており、男性は炎の中で「助けてお母さん」と叫んだ後に絶命したという。

ミャンマーナウによると、惨劇の現場となったのはマンダレー中心部の市街地だった。付近に住む40歳の男性は、抗議運動のバリケードに使われていたタイヤが燃えているのに気がつき、火を消そうと試みた。直後に治安部隊に撃たれ胸部を負傷したうえに、燃えているタイヤの上に乗せられたという。

この間も銃撃が続いていたため、近隣住民らは男性を助けられなかった。男性には4人の子どもがいて、米原料の飲み物「ライスドリンク」を売って生計を立てていたという。【毎日新聞2021年3月28日

同じ国の国民を生きたまま炎の中に放り込むという狂気に戦慄が走ります。『ロケット砲で80人以上が死亡 内戦の危機迫るミャンマー情勢』という報道のとおり日を追うごとに緊迫の度合いが高まっています。武器を持たない民主化を求める多くの市民が殺害されていく事態に強い憤りを覚えます。

NHKスペシャル『緊迫ミャンマー 市民たちのデジタル・レジスタンス』の中で、ミャンマーでは民間のメディアの免許が取り消されたことを伝えています。同時に「しかし国民ひとりひとりがメディアになれば国民が知らない情報はなくなるでしょう」というミャンマーの若者の言葉も紹介していました。

今、何が起きているのか、若者たちの「デジタル・レジスタンス」によって軍による弾圧の実態を全世界に発信しています。軍の非道ぶりを訴え、国際社会からの支援を求める行動です。この行動に呼応し、世界各地からキーボード戦士が続々参戦していることもNHKスペシャルでは伝えていました。

「デジタルで、海外で自分ができること、小さくてもやっていく」、日本に住むミャンマー人の言葉です。週に1回、SNSに関わっている私自身も、本当にささやかな発信媒体ですが、このブログでもミャンマーの現状を取り上げようと考えていました。前回は「東京にも蔓延防止等重点措置」という記事を先に投稿していましたが、ようやく今回、その機会としています。

ミャンマー軍は「頭や背中を撃ち抜かれる危険があることを無残な死の前例から教訓とせよ」とデモを続ける市民に対し、露骨な警告を発しています。それでもデジタルを駆使して抵抗してきた若者たちも街頭に出て抗議の声を上げていました。「仲間どうし諦めないで闘い続けよう」と励まし合っています。

これまで数多くのデモ行進に参加してきましたが、死と隣り合わせの中で民主化を求め、闘い続けるミャンマーの人たちの強い覚悟は最大限の敬意を表さなければなりません。同時に政権批判を繰り返しても生命の心配をする必要のない現在の日本の「平和」は絶対守り続けなければならないものと思い起こしています。

ジャーナリストの猪瀬聖さんは『なぜミャンマー人は日本で抗議デモを続けるのか』の中で、祖国の仲間を応援するためのミャンマーから遠く離れた日本での抗議デモは、ミャンマー国内の民主派勢力を勇気付けると同時に国際世論の喚起を狙っていることを伝えています。特に日本政府に対する期待や不満は大きいようです。

日本政府は、ミャンマー国軍とスー・チー氏ら民主派勢力の両方に太いパイプがあると繰り返し強調しながら、事態の収拾に積極的に動いている様子は今のところ見えない。軍によってすでに700人以上の市民が殺害されたとの報道があるにもかかわらず、日本政府は事実上、軍の弾圧を黙認し続けている。

先月26日には、「在日ミャンマー市民協会」などが外務省に公開質問状を提出し、日本政府がミャンマー国軍の関連企業に経済制裁を行わない理由をただすなど、動かない日本政府に対し不満を募らせている。デモに参加していたカチンの30歳の女性は「日本政府はもっとミャンマーの民主主義を応援してほしい」と訴えた。 

東京外国語大学教授の篠田英朗さんのブログ『日本が米国の同盟国であるかが問われている』では「日本がミャンマー軍を批判するとミャンマー軍がいっそう中国とロシア寄りになるなどということはない、もうとっくに寄っている」という見方が紹介されています。

篠田さんは「現場の駐ミャンマー大使が、ミャンマー国内のあらゆるリソースを活かして外交をしようとするのは当然だし、それは支援するべきだ」と述べる一方で、ミャンマー軍とのパイプを重視した結果、国際法に反した非道行為に対する批判や制裁措置に及び腰になるようでは問題だと訴えています。

弁護士の澤藤統一郎さんは『日本政府は、ミャンマーの民衆の側に立って、実効性のある国軍批判の措置をとれ。』の中で「理不尽な国家の暴力行使に対しては、国際社会がこれを許さないとする、断乎たる意思を表明しなければならない」とし、「内政不干渉」が理不尽な国家の暴力に対する他国の批判を許さないとする理屈として使われる事態を容認してはならないと記しています。

4月8日の読売新聞の解説『混迷するミャンマー 国軍が強権支配 国家崩壊も』はミャンマーの歴史家のタン・ミン・ウーさんが寄稿していました。1988年の民主化運動の結果、四半世紀に及んだビルマ(ミャンマーの旧称)型社会主義は終わりました。国際的孤立と貧困を招いただけの専制でしたが、後継体制も国軍と民主政府が権力を分かち合う新たな軍事支配だったことをタンさんは解説しています。

選挙に勝って2016年に誕生したNLD(国民民主連盟)政権の指導者はアウン・サン・スー・チーさんです。 昨年11月の選挙でNLDが再び大勝し、国軍の威力は縮小しかねない、そのような思いに駆られて国軍がクーデターを起こしています。国軍が全土を真に統治することは難しく、少数民族の武装蜂起に直面すれば国家崩壊の可能性をタンさんは危惧されています。

タンさんの解説によると、国軍は中国を信頼していません。この10年で伸張したアラカン軍(少数民族ラカインの武装勢力)の背後に中国がいると見なしています。日本からの援助と投資があり、中国一辺倒に傾くことはなく、中国の影響力を抑えられていたことを伝えています。

現状は軍事訓練と武器供与でパイプを持つロシアが全力で国軍を支えています。アジアの大国の中国、日本、インドは今、ミャンマーへの対応を決めかねています。ミャンマーの危機対処はアジアの試金石であり、3国は協調し、ミャンマーの更なる悲劇を阻むことが重要であるとタンさんは訴えています。

日本政府が主体的な外交力を発揮し、ミャンマーに平穏な日が戻るのであれば何よりなことです。そのような外交力を期待できないのであれば国際社会の中で足並みを揃えた行動が求められています。「日本政府は軍の弾圧を黙認し続けている」という見られ方だけは絶対避けなければならないはずです。

最後に、香港における民主派への弾圧、新疆ウイグルでの人権抑圧、北朝鮮の強制収容所の問題など、世界の各所で苦難を強いられている人たちが存在しています。それらの事実が正確に伝わっていかない限り、解決の道筋を見出すことも難しいままとなります。前述したとおりの問題意識のもとに今後もSNSと向き合っていければと考えています。

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