3回目の緊急事態宣言
週1回の更新間隔は取り上げる題材に事欠きません。前回記事「今、ミャンマーで…」の続きにあたる内容を考えていましたが、今回も新型コロナウイルス感染症に関わる記事タイトルを付けて書き進めていくところです。
と言いながら『キャリア官僚志願者14.5%減 過去最大、働き方影響』という報道の紹介から入らせていただきます。省庁幹部候補としてキャリアと呼ばれる総合職の志願者の減少に歯止めがかかりません。5年連続の減少で、総合職試験を導入した2012年度以降で最大の減少幅となっています。
人事院の担当者は志願者減の要因の一つに長時間労働を強いられる「霞が関の勤務環境」の影響をあげています。要因の一つであることは間違いなく、働き方の見直しで時間外勤務は大幅に縮減していくべきだろうと思っています。しかし、官僚の長時間労働は最近になって目立つようになった訳ではありません。
NHKのNEWS WEB『なぜ?東大生の‟官僚離れ"』の中では志願者減の要因を多面的に考察しています。この10年ほどの「政治主導」によって官僚の仕事の質が激変しています。高度経済成長期からの霞が関は、官僚が政策を立案し、政治家をリードする「官僚主導」の状態でした。その変革に対する評価は様々なのかも知れません。
ただ学生の多くが官僚を志望する動機とした「働きがい」を減退させていることは否めません。さらに政治家への「忖度」などから不祥事が起きた時、各省庁が対応に追われる場面を見てきた東大生の一人は「組織全体が振り回される様子にげんなりした」と語っています。
そのような背景のもとに「待遇は大企業に比べて低いのに国民の評価は低く、報われない」という声につながっているようです。他にも「景気が回復し、就職先として民間企業の魅力が増した」という声もあり、NEWS WEBからは長時間労働だけが志願者減の大きな要因ではないという現状を把握できます。
記事タイトルから離れた話が長くなっていますが、新型コロナウイルス対策にもつながる問題意識です。要するに問題が生じている原因や背景を的確に把握できていない場合、効果的な解決策を見出しづらくなります。志願者減の問題で考えれば、時間外勤務を大幅に縮減できたとしても「働きがい」の減退した仕事に魅力が戻ることはありません。
新型コロナの新規感染者を減らすためには強制力の伴うロックダウンが効果的であることに間違いありません。中国や欧米での実例が証明しています。しかしながら国民生活や経済に及ぼす強烈な痛手がはかり知れません。欧米の感染状況を下回っていた日本が都市封鎖とも呼ばれるロックダウンに近い措置まで取らず、経済との両立を模索してきた政策判断は穏当なものだと見てきました。
このことは前々回記事「東京にも蔓延防止等重点措置」の中でも触れていました。今月初めの記事「コロナ禍での2回目の新年度」では新型コロナウイルス感染症対策に関わる私自身の考え方や『組合ニュース』を通して組合員の皆さんに周知してきた内容を掲げています。その記事の中では次のような記述も残していました。
ロックダウンに近い緊急事態宣言を短期間に集中することでコロナ禍から平穏な日常に戻れるのであれば国民の大半から最大限の協力を得られるのではないでしょうか。しかし、そのような確証がなく、コロナ禍が長く続くことを覚悟するのであれば経済や国民生活を過度に痛めない持続可能な対策に軸足を移すことは妥当な判断だろうと考えています。
今日から5月11日まで17日間、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に3回目の緊急事態宣言が発令されました。菅総理は「ゴールデンウイークという多くの人が休みに入る機会をとらえ、 短期間に対策を集中して実施することでウイルスの勢いを抑え込む必要がある」とし、短期集中での対策の必要性を強調しています。
一方で、新型コロナウイルスに関する基本的対処方針分科会の尾身茂会長は「5月11日に無条件に解除するということではなく、ステージ3になることが一つの最低条件だ。11日までにステージ3になっていなければ延長もあり得る」という認識を示しています。ちなみに尾身会長らから最低3週間は必要という主張があり、より短い案があった中で17日間という期間に落ち着いたようです。
変異株の拡大に伴い、感染状況の懸念は高まっています。2回目よりも宣言の内容は厳しく、1回目よりも対象範囲は狭く、当初の宣言期間は最も短い今回、17日間で解除できるかどうか極めて不透明です。あまりにも中途半端な3回目の緊急事態宣言に際し、菅総理や小池都知事らに対して訴えたいことが頭の中を駆け巡っています。
私自身の言葉で訴えていくことも必要ですが、ネット上で見聞した情報を中心に紹介していきます。まず「なるほど」と思った記事として、元大阪市長の橋下徹さんの下記のような言葉を伝えた『橋下氏、吉村知事のコロナ対策に物言い「飲食店の営業時間の制限より重要なのはマスク会食や換気』があります。
「飛沫感染を防ぎたいのか、人の流れを止めたいのか、(目的が)混乱していて、みんな言うことを聞かなくなってしまう」と警告。「営業時間の制限はあんまり関係ない。営業時間が短くても、対策ができていなかったら短い営業時間内でも感染は広がる。本当に重要なのはマスク会食や換気」と指摘した。店と客が十分な対策をしている飲食店は、営業を認めてもよいのではないかという持論を展開した。
続いて、朝日新聞は『宣言要請、街にため息』を通し、「百貨店では検温や手指消毒など感染対策を徹底しているので、休業要請は必要ないのでは」「もう3回目でしょ。効果あるんですかね」「うちだけお上の要請に従わないわけにはいかない。もちろん休業要請するなら、補償体制は整えてもらわなあかんけど」などという大阪市民の声を紹介しています。
ある中華料理店の店主は「この1年、同じことの繰り返し。何も変わってないですよ。経営をやりくりしても3人いた従業員を雇えなくなった」と憤り、店内には休日に買い集めたアクリル板が真新しいまま残っているため「休業するなら急いで買わんでよかったね」とため息をついていました。
「蔓延防止等重点措置」では何が足りなかったのか、「緊急事態宣言」に何を期待するのか、デパートなどの大規模小売店舗やカラオケ店、酒を提供する店が何故休業要請の対象となるのか、何故イベントは無観客でなければならないのか。政府はその実証的なデータに基づいた根拠を示すべきですし、メディアもこれをきちんと確認しなければなりません。
マスク着用、手洗い、消毒などを徹底したデパートやカラオケ店、声を出すことも禁止しているコンサート会場で、クラスターが発生したという話を寡聞にして聞きませんし、酔って大騒ぎをするのは駄目に決まっていても、一人または少人数での静かな食事を酒とともに提供することや、「一人カラオケ」までが何故営業停止の対象となるのか、その根拠はよくわかりません。
一方で、鬱、認知症、糖尿病、免疫力低下、家庭内暴力、「産み控え」、果ては自殺が激増し、夜8時以降の閉店・消灯によって街は暗くなり、「路上飲み」とも相まって治安の悪化や犯罪の増加も懸念されています。真摯かつ懸命に対応している政府や自治体の政策に反対するものではありませんが、やるからには説明責任を果たすべきですし、国民が納得できない政策は決して持続可能性も実効性も持ちません。
リスクとは常に相対的なものであり、問題なのは「場所」ではなく「行為の態様」なのではないかと思うところ、行政が民間に対して一律に禁止や要請をすることには少しく違和感を覚えています。
上記は衆院議員の石破茂さんのブログからの抜粋です。このような正論を発するため、石破さんが今の自民党内では非主流の立場に置かれていくのだろうと推察しています。これまでマスク会食や黙食を推奨し、飛沫感染防止や三密対策が重視されてきました。その対策のために飲食店や集客施設等はコストや労力を費やしています。
感染症対策として人と人との接触を断つことが最も効果的です。しかし、社会経済生活を維持していくために100%断つことは非現実的な話となります。人の流れを少なくすることで一定の効果は上がるものと思いますが、今回の緊急事態宣言は1回目の時と異なり、休業対象の範囲は狭まっています。
さらに飲食店を利用できないため、外で飲む人たちが増え、感染対策が怠りがちとなる家で飲む機会も多くなるはずです。日刊ゲンダイの記事『小池都政3度目緊急事態宣言へ “令和の禁酒令”踏み切る恐怖』の中で、政治評論家の伊藤達美さんは「ルールを守っている人と守っていない人を同じ網にかけようとする都の発想は明らかに間違えています」と指摘し、次のように続けています。
そもそも、お酒を一切提供できなくなってしまう居酒屋は果たして居酒屋と呼べるのでしょうか。お店の存在意義にも関わってくる問題だと思います。時短営業より、客同士の座席間隔を空けたり、入店人数を制限したり、アクリル板の設置を徹底した方がコロナ対策に有効だという指摘もあります。そうした効果をきちんと検証せず、いきなり酒類を終日禁止にするのはいくらなんでも乱暴だと思います。
この1年、国民一人一人が「新たな日常」を心がけたことで『今季のインフル患者わずか1万4000人、昨季の500分の1未満に』という結果につながっています。新型コロナウイルスに対する個々人の対策や努力が効果を発揮している証しであり、変異株に対しても同様に向き合うことで一定の成果は得られるはずです。
一方で、個々人の努力では解決できない課題に対しては政治の出番となります。しかしながら「やってる感」だけアピールしがちなワクチン接種をはじめ、医療体制の強化などに大きな進展が見られないことを非常に憂慮しています。『《コロナ医療体制は大丈夫か》東京女子医大で看護師400人が退職希望「ボーナスゼロ、給料減額では最前線で働けない」悲痛告白』という記事などを目にすると落胆します。
危機管理専門血液内科医の中村ゆきつぐさんのブログ『大阪は仕方ない でも東京はオリンピックのための緊急事態宣言? 本当に必要な医療って何?』では東京の緊急事態宣言を疑問視していました。『東京も大阪に続き「緊急事態宣言」要請へ…急展開の裏事情』という記事では3回目の緊急事態宣言に至る政治的な動きを伝えています。
東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて『山梨県知事「極めて常識的」 二階氏の「五輪やめなきゃ」発言に』など様々な声を耳にしています。残念なことですが、開催中止を決める判断を下した場合、一人一人の感染対策に向けた危機意識が一気に向上するのではないでしょうか。
最後に、上記以外にネット上で目に留まった記事も紹介します。『授業は自宅、でも給食は学校で?宣言時の方針に不安の声』『USJ、25日から『臨時休業』 テーマパークへの”無観客”開催の要請に「意図をはかりかねている」』『ヒロミも怒り 「東京都は何にもやってないんじゃないかって…」』『茂木健一郎氏ら東京都の消灯要請に皮肉「消灯するのは知事室だけでいい」 』『東京と大阪のコロナ猖獗の事態は、無能な人物を首長に選んだ民主主義の劣化が招いたものだ。』
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