不戦を誓う三多摩集会、2020年冬
「『ゴー・ホーム・クイックリー』を読み終えて」から「憲法論議に願うこと」という記事を投稿し、2週続けて日本国憲法について取り上げてきました。今週末に投稿する新規記事も戦争と平和について考える内容となります。
土曜日の午後、三多摩平和運動センターが主催した不戦を誓う三多摩集会に参加しました。コロナ禍の中、感染対策に留意し、広い会場を確保して催されています。組合ニュース等で案内し、組合役員の他に組合員の方も参加されています。
一人でも多く集めたいと願う主催者の方々には申し訳ありませんが、私どもの組合では「動員」という言葉が消えています。少し前の記事「組合役員を続けるモチベーション」の中で次のような現状を説明していました。
かつて私どもの組合も各職場何割という動員割当を要請していました。現在、動員要請という言葉自体使っていません。広く参加者を募る集会やイベントは組合ニュースで呼びかけ、あくまでも個々人の判断での参加です。このような関係性のもと組合役員も各種集会に参加するかどうかは任意に選べるようになっています。
決起集会などは参加者の数の多さが成否の目安となり、桁違いの数が集まった場合、社会的な影響力を発揮できる可能性も高まります。また、関心のなかった方が「動員」で参加したことで、何か新しい発見や問題意識を触発する機会につながる可能性もあります。
このような意義や効果が「動員」にあることも確かですが、組合員の皆さんとの関係、組合役員の担い手問題を考慮した時、義務感の伴う参加要請は何年も前から見合わせています。一人でも多く集めたい場合、組合ニュースで広く呼びかけた上、個人的な人間関係で誘うように努めています。
今回、参加された組合員の方は「沖縄のことに関心があり、この映画を観たかった」と話されていました。企画内容によって自発的に参加を希望される方々も少なくありません。昨年は知名度の高い講師による講演があったため、例年よりも参加者が多くなっていました。
組合員の皆さんには組合ニュースを通して参加を呼びかけましたが、いつもより多い参加人数を得られていました。東京新聞の記者である望月衣塑子さんの講演「破壊される民主主義~安倍政権とメディア」が注目されたからでした。当日の会場は満杯で300人ほど集まりました。催しをお知らせすることで組合員の皆さんが個々の判断で足を運び、このように盛況となる取り組みが望ましいことです。
上記の記述は昨年の記事「不戦を誓う三多摩集会」の中に残したものです。昨年12月のバックナンバーを確認したところ「不戦を誓う三多摩集会 Part2」まで続けていたことを思い出していました。それぞれ読み返してみると次のような内容を伝えていたことも思い出しています。
講演の最後のほうで幣原喜重郎元首相の言葉などを紹介されたことを伝えていました。日本国憲法の平和主義は制定に関わった当時の首相だった幣原さんがGHQに提案したと言われています。したがって、「占領されていた時代に押し付けられた憲法だ」という見方自体、間違っているという説もあります。
このような説に対し、中路啓太さんの著書『ゴー・ホーム・クイックリー』の中では、幣原首相が「戦争放棄」に疑念をはさんでいたことを伝えています。このブログで、よく使っている言葉ですが、「誰が」ではなく、「何が望ましいのか」という視点を重視しています。つまり幣原元首相の提案ではなかったからと言って、憲法の中味に対する評価が変わるものではありません。
今年「2020年冬」の集会の内容に入る前に前置きの文章が長くなって恐縮です。個人の責任で運営しているブログであり、「書きたいことを書く、伝えたいことを伝える」という自由度があるからこそ、ここまで長続きしているものと思っています。
ますます前置きが長くなりましたが、不戦を誓う三多摩集会は三多摩平和運動センターが主催し、太平洋戦争に突入した12月8日前後に毎年開いている集会です。今年、40回という節目を迎えていました。
コロナ禍の中、今年8月の原水禁大会は規模が縮小されていました。子ども派遣も中止されていたため、代わりの企画として小・中学生に「平和を願う!」作文や絵を募集していました。今回の不戦を誓う三多摩集会の冒頭で、入賞された子どもたちの表彰式が行なわれています。
今年のメインとなる企画は映画『GAMA 月桃の花』の上映でした。沖縄戦から75年、沖縄県民を巻き込んだ激烈な地上戦を繰り広げた悲惨な史実をもとにした映画です。キャストなど詳しい内容についてはリンク先のサイトをご参照ください。そのサイトでは「語れない恐ろしい秘密…」という見出しを付け、次のように物語が紹介されています。
宮里房(72)は海辺の村で琉舞を教えながら幼稚園を経営している現役の園長である。同世代の沖縄のアンマーの例にもれず地獄の戦場を体験した一人である。十数名の家族や親兄弟を次々と砲爆撃に奪われ、最後に追い詰められた摩文仁岬の洞窟から母と娘だけが奇跡的に生還してきた。
敵は米兵だけではなかった。兵隊と避難民が雑居した洞窟の中では、いまわしい惨劇が繰り広げられていた。だが、彼女はこれまでのあの洞窟の中で目撃した真相を誰にも語ったことがない。語るに語れないおそろしい秘密が房の胸の中には畳み込まれている…。
映画は1996年に制作されています。その前年、沖縄戦集結50年記念事業として、沖縄戦で亡くなった23万余の人々の名前が国籍を問わず、黒い石版に刻銘されました。沖縄本島南部、摩文仁の丘の平和記念公園に黒い石版「平和の礎」は海に向かって立ち並んでいます。
「平和の礎」の建設が進められた中、沖縄の文化人や一部の財界人など戦争を体験した人々が協力し、沖縄の心や沖縄戦の実相を映像化しようと試み、映画『GAMA 月桃の花』が完成しています。沖縄県民だから伝えていかなくてはならない平和への強い願いが込められた映画だと言われています。
ひとたび戦火に見舞われると年齢や性別に関わらず、生き続けたかった人々の命が奪われ、数多くの悲劇が生み落とされます。このような戦争を誰もが二度と起こしたくないと願っているはずです。しかしながら平和の築き方に対する考え方は人によって差異が生じがちです。
映画を上映することで平和が近付くものではありません。しかし、より正しい「答え」を模索する際、このような史実を知った上で考えを巡らすのと、知らないまま考えを巡らすのと、どちらが望ましいのか、やはり前者ではないでしょうか。映画を観たことで、その人が次に何を考えるのか、そのような意味合いの大切さを感じています。
実は『GAMA 月桃の花』を観るのは2回目です。ある程度の筋書きは覚えているつもりでしたが、記憶は薄れるもので新鮮な気持ちで鑑賞できました。エンドロールとともに主題歌『月桃』が流れている時、今回も思わず目がうるんでいました。
前回、この主題歌を知ってから時々YouTubeで視聴しています。作詞作曲は海勢頭豊さんです。リンク先の映像は沖縄の青い海と空、モノクロの沖縄戦の場面が対照的であり、ぜひ、ご覧ください。最後に、『月桃』の歌詞も紹介させていただきます。
月桃ゆれて 花咲けば
夏のたよりは 南風
緑は萌える うりずんの
ふるさとの夏
月桃白い 花のかんざし
村のはずれの 石垣に
手に取る人も 今はいない
ふるさとの夏
摩文仁の丘の 祈りの歌に
夏の真昼は 青い空
誓いの言葉 今も新たな
ふるさとの夏
海はまぶしい キャンの岬に
寄せくる波は 変わらねど
変わるはてない 浮世の情け
ふるさとの夏
六月二十三日待たず
月桃の花 散りました
長い長い 煙たなびく
ふるさとの夏
香れよ香れ 月桃の花
永久(とわ)に咲く身の 花心
変わらぬ命 変わらぬ心
ふるさとの夏
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