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2020年12月20日 (日)

迷走するGoTo 

12月11日午後3時、菅総理はインターネット番組『にこにこ生放送』に出演し、冒頭で視聴者へのメッセージを求められた際に「こんにちは。ガースーです」とあだ名で自己紹介していました。スタジオ内は大ウケで、菅総理はニンマリしていたそうです。

周囲からも「うまくいきましたね」と言われ、菅総理は自信を回復させていたという話が週刊文春最新号で伝えられています。ちなみにネット上で検索したところ「ガースー」は愛称というよりも「茶化し」や蔑称として使われてきたようです。

その番組内で菅総理はGoTo停止を「まだ考えていない」という強気の姿勢を示していました。同じ時間帯、政府の新型コロナウイルス対策分科会を終えた後の記者会見で、尾身茂会長は感染状況が拡大している地域でのGoToトラベル一時停止の提言をまとめたことを発表していました。

菅総理は「アクセルとブレーキを踏みながらやっている」とし、医療と経済のバランスを保ちながら舵を取っていることを強調していました。「いつの間にかGoToが悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていた」とも話されていました。

分科会から提言を受けた翌々日の13日午後4時半、加藤官房長官、田村厚労相、西村担当相との協議中、菅総理は「札幌は緩められないのか」と語気を強めていました。行動の引き締めを協議する場で飛び出した緩和策に対し、西村担当相は色をなして反論し、40分ほど続いた協議は平行線をたどり、結論は翌14日に持ち越されていました。

政府は15日、観光支援事業「Go To トラベル」を年末年始に一時停止する方針を決定したことについて説明に追われた。新型コロナウイルスの新規感染者拡大や、トラベル事業見直しを求める新型コロナ感染症対策分科会の提言などを理由としているが、今までの説明と矛盾する点も多く対応に苦慮している。

菅義偉首相は15日の自民党役員会で、トラベル事業について「(新規)感染者が(1日)3千人を超える中で年末年始に集中的な対策を取るべきだと考え、いったん停止することを決断した」と説明した。同席した党幹部は「首相は眠れないほど考えたと思う」と推し量る。

首相は感染防止対策を取りながら経済回復も図る考えを示してきた。15日も周囲に「移動の自粛を求めたわけじゃない」と語っている。実際、11日午後までトラベル事業見直しには否定的だった。だが、11日夜に分科会がトラベル事業の見直しを求める提言を行って以降、状況は一変した。

「全国で止めようと思う」 首相は13日、官邸に集まった関係閣僚らにこう告げた。決断は前日の12日だった。厚生労働省幹部らから全国の感染状況の報告を受け、新規感染者が3千人を超えたことでかじを切った。閣僚の一人は「急転直下だった」と振り返り、政府高官も「今回は(事前に)知らなかった」と明かす。

ただ、政府は分科会の11日の提言を踏まえ、トラベル事業の全国一斉停止に踏み切ったとも説明している。加藤勝信官房長官は15日午前の記者会見で12回も「提言」に言及したが、分科会がトラベル事業見直しを提言したのは11日が初めてではない。

政府が分科会の提言にもかかわらず事業を継続してきたのは、分科会自体が「感染拡大の主因であるとのエビデンス(根拠)は存在しない」としていたからだ。現在もこの認識に変わりはないが、一時停止に踏み切った。政府は事業の見直しは地域の実態を知る都道府県知事と相談しながら決定すると説明してきたが、今回の決定を前に各知事と相談した形跡はない。

政府高官は14日午前、医療体制に関して「私なんかは大丈夫だと思っている」と語っていた。それでも報道各社の世論調査では、政府のコロナ対策に厳しい評価が下されていた。自民党の佐藤勉総務会長は15日の記者会見で首相の決断について、こう語った。「高度な政治判断だと理解している」【産経新聞2020年12月15日

産経新聞の上記の報道では、菅総理が「全国で止めようと思う」と関係官僚に告げたのは13日だったと伝えています。久しぶりに購入した週刊文春は、前述したとおり13日の段階では側近中の側近である和泉首相補佐官まで菅総理の頑迷な姿勢に「俺も困っているんだよ」と愚痴をこぼしていたと記しています。

菅総理が考え方を急転させた理由はNHKの世論調査の結果だったことも伝えています。14日午前、支持率が前月比14%減、GoToの一時停止を求める声は79%に上っていることを知り、菅総理はGoTo継続を諦めたことが週刊文春の特集記事の中で綴られています。

12日に毎日新聞の世論調査で支持率17%減が発表されていましたが、菅総理はNHKの調査精度の高さを重視していることが書き添えられていました。産経新聞と週刊文春の報道、どちらが事実関係を正確に伝えているのかどうか分かりませんが、菅総理の決断が関係者にとって「寝耳に水」だったことは間違いないようです。

GoToの一時停止を明らかにした後、記者から「GoToに感染拡大のエビデンスはないとの認識が変わったのか」と問われると菅総理は「そこについては変わりません」と答えています。政府の分科会は「エビデンスは現在のところ存在しない」と提言し、さらに様々な専門家の見方があることも確かです。

このブログでは「批判ありき」と見なされるような論調はなるべく避けたいものと心がけています。「支持率が下がったから方針を変えた」と批判される場合がありますが、国民の声を受けとめて臨機応変に判断したという評価もあり得るのだろうと思っています。

最近、小林よしのりさんの『コロナ論』を読み終えています。小林さんは「新型コロナウイルスの脅威を煽りすぎている。経済のほうが命より重い」という主張を続けています。『コロナ論』の中でスウェーデンに関する記述が目を引きました。

スウェーデンは新型コロナ対策でロックダウンのような強硬な「抑圧策」を採らず、規制を緩やかにして経済を回す「緩和策」を採用しています。感染者や死亡者の数が他の北欧諸国と比べて圧倒的に高くなっていますが、多くの国民が「緩和策」を支持していました。

国民の中に「自然なかたちで死を迎える」という死生観があり、経済を回すことを選択しているという背景が小林さんの著書で解説されていました。ただ「スウェーデン 見捨てられた高齢者」という報道もあり、必ずしも国民のすべてが支持している訳ではないため、悩ましい政治的な選択だろうと見ています。

日本の国民の大半も感染対策に留意しながら経済を回すことの重要性は理解しているはずです。確かにGoToそのものが感染拡大につながる訳ではありませんが、人と人との接触の機会が増えれば感染する確率は上がります。会食は4人以下という目安や営業時間の短縮なども、あくまでも感染リスクの確率を下げるための対策だと言えます。

菅総理の「アクセルとブレーキを踏みながらやっている」という言葉は矛盾したもので、国民に誤解や混乱を与えがちな考え方だと言わざるを得ません。パンデミックの終息が宣言されるまでGoToという「アクセル」は時期尚早だったものと思っています。

ロックダウンや緊急事態宣言は避けながら「新たな日常」のもとに経済を静かに回す、このような発想が必要だったように考えています。例えれば「エンジンブレーキ」です。アクセルは踏まず、車を止めないけれども、ゆっくり走行していくという発想が望ましかったのではないでしょうか。

新型コロナ対策の成功国として台湾が心強い手本となります。緊急事態宣言の発令はなく、出入国制限のほか、日本でも励行している生活様式の徹底化に努めています。国内での移動に制限はないため、今年の域内旅行者数は過去10年間での最高記録を更新する見通しです。際立った「抑圧策」を採らない台湾の感染者は759、死者7という数字を今朝の新聞で確認できます。

一方で、新型コロナの脅威を侮ったリーダーを要する国の感染者数と死亡者数は増加傾向にありました。感染対策と経済の両立を苦慮しながら政治的な判断を下す際、ますます国民と政治家との信頼関係が重視されていきます。厳しい「抑圧策」を強いたとしても『日本と真逆。ドイツのロックダウンに「国民が批判しない理由」』という国も見受けられます。

GoToは迷走しましたが、菅総理も「国民のため」に様々な判断を下しているものと信じています。その判断が適切なものだったのかどうかは上記のような問題意識を持っています。いずれにしても『菅首相"5人以上忘年会"の真相』のような批判を招かないように襟を正しながら国民から信頼される政権運営に努めて欲しいものと願っています。

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