グローバルな話題に一言二言
人事院は10月7日に一時金を10年ぶりに引き下げる勧告を示しました。0.05月分引き下げて年間4.45月分とする勧告内容です。月例給は別途月内に勧告するという新型コロナウイルス感染症の影響で一時金だけ先行させた異例な措置でした。その予告のとおり10月28日に月例給を前年と同額に据え置く報告が示されています。
私どもの市をはじめ、三多摩の多くの自治体が準拠する東京都人事委員会の勧告も例年より遅れていました。10月30日に国人勧と同様、一時金を先行させた勧告を示しています。0.10月分引き下げ、年間の支給額を4.55月分とし、やはりリーマン・ショックの影響を受けた2010年度以来10年ぶりの引き下げ勧告です。
そのような中、月例給の水準維持などを求めた自治労都本部統一「2020年賃金改定等に関する要求書」を10月28日に私どもの市当局に提出し、回答指定日を11月6日としています。組合員の皆さんからの期待や関心が高く、労働組合にとって最も重要な賃金・一時金交渉を本格化させる時期に入っています。
前々回記事は「組合役員の立候補者を増やすためには」、前回記事は「組合役員を続けるモチベーション」でした。11月6日に私どもの組合の定期大会を控え、組合役員の改選期を迎えていたため、ARIさんからの問いかけに答えながら私自身が考えていることを綴っていました。ローカルでマイナーな記事内容が続いていましたが、今回、一転してグローバルな話題を取り上げてみます。
多くの労働組合は大会議案書の中で「とりまく情勢」に触れています。数年先に組合の活動を振り返る時、当時、どのような情勢だったのか参考とすべき情報だからです。前述したとおり賃金・一時金交渉も、とりまく情勢の影響を大きく受けていきます。
定期大会当日、出席者に配布する「当面する闘争方針(案)」の内容は日々動きのある最新の情勢を加えていくため、大会前日に印刷する予定です。一方で、組合員の皆さん全員に事前配布している「2021年度運動方針(案)」は外注印刷であり、入稿時期との兼ね合いから情報の鮮度が少し落ちている記述もあります。
私どもの組合の定期大会の議案書の原稿は執筆者を分担しています。分担した内容の議案は執行委員会で討議し、議案書にまとめています。その議案書をもとに組合員の皆さんと議論していく手順となっています。
今回、久しぶりに「とりまく情勢」を担当しました。執筆者が変わっても毎年、国際情勢から国内情勢、東京都、私どもの市を巡る情勢という順番で書きしるしています。綴るべき内容を広げすぎると膨大な頁が必要となりますので、執筆者の裁量で特徴的な話題を選びながらまとめています。
このブログでは「2021年度運動方針(案)」に掲げている国際的な情勢の箇所をそのまま紹介させていただきます。その後、記事タイトルを「グローバルな話題に一言二言」としたとおり私自身が、今、思うことを書き足していくつもりです。
人類の誕生とともに感染症との闘いの歴史が始まっています。中世ヨーロッパの人口の3分の1が死亡したペスト、1918年から流行した「スペイン風邪」は世界中で5億人以上が感染し、死者の数が2,000万人とも4,000万人とも言われています。ワクチンの開発や予防・治療方法が飛躍的に進歩していますが、1976年にエボラ出血熱、1981年にエイズが出現するなど新たな感染症への対応にも追われ続けています。
そして今、2020年、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大しています。ロックダウン(都市封鎖)をはじめ、各国それぞれの対策によって第1波を乗り越えたと見られてもウイルス自体が消えた訳ではありません。効果的なワクチンや治療薬が完成し、パンデミック(世界的大流行)の終息が宣言されるまで予断を許せない状況です。
グローバル化が進んでいる中、新型コロナウイルス感染症が世界経済に与えた打撃もはかり知れません。また、アメリカのトランプ大統領は自らの再選に向けた選挙を控え、ますます自国中心主義を打ち出しています。その矛先は中国に向かい、米中経済戦争と呼ばれるような様相を示しています。
地球温暖化の問題の深刻さも増しています。世界各地で異常気象をもたらし、海水面の上昇や生態系の変化を及ぼしつつあります。このままの経済活動を続けた場合、21世紀末には4度前後の気温上昇が予測され、取り返しのつかない事態に至ることが危惧されています。2015年のCOP21(気候変動枠組条約締約国会議)で採択されたパリ協定の発効に向け、各国が足並みを揃えていかなければなりません。
2020年1月3日、アメリカがイラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を殺害し、5日後、その報復としてイランがイラク国内の米軍基地を弾道ミサイルで攻撃しました。全面的な軍事衝突は回避していますが、アメリカのイラン核合意離脱以降、中東情勢の緊張は増しています。南シナ海では中国が強引に領有権を主張し、周辺国との軋轢が続いています。北朝鮮の核開発の問題をはじめ、国家間の安全保障面での情勢は緊迫化しています。
しかしながら地球温暖化や感染症対策など自国中心主義では解決できない地球規模の問題に直面している今、よりいっそう国際的な連帯が強く求められているはずです。そのような時に「平和国家」というブランドイメージを改めて磨き上げ、日本ならではの国際社会の中の役割を発揮して欲しいものと願っています。
以上が議案書に掲げている文章です。私自身の問題意識であり、私どもの組合の立ち位置として最も訴えたい思いは最後の段落です。地球温暖化の問題や感染症対策は自分の国だけ万全を尽くしても、すべての国で足並みが揃わなければ解決には至りません。
国家という枠組みをなくすことは絵空事なのかも知れません。それでも国家の枠組みがある中で上記のような問題意識を共有化し、対立よりも協調に重きを置く国際的な流れが高まることを心から願っています。
二度の世界大戦の惨禍を反省し、国連ができ、様々な国際法規が整えられています。国連の役割の不充分さを指摘する声もあります。しかし、不充分な点があれば補う努力を重ね、各国からの期待に応えられる国連の役割強化をめざすべきなのではないでしょうか。
かつて宣戦布告すれば戦争も国際社会の中で認められていました。現在、国連憲章で一部の例外を除き、戦争は原則禁止されています。たいへん残念ながら「自衛のため」という理由や集団的自衛権の行使としての戦争は続いています。それでも原則禁止としていることで、国際社会の中で一定の抑制効果は働いているはずです。
日本時間の10月25日、核兵器の開発、保有、使用を禁じる核兵器禁止条約の批准国が50か国・地域に達したことで、来年1月22日に発効することが決まりました。ICANのベアトリス・フィン事務局長は「核軍縮にとって新たなページが開かれた。長年の活動は、多くの人が不可能だと言ってきたことを成し遂げた。核兵器は禁止された」とコメントしています。
ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの川崎哲国際運営委員は「条約は、原爆の被害や苦しみを二度と繰り返してはいけないという被爆国の思いが形になったものだ。被爆者が高齢になる中、核兵器をなくさなければいけないという声を国際法として残す意味がある」と述べ、唯一の被爆国、日本にとって、大きな意味を持つ条約であると強調しました。
そして、日本政府が条約に参加しない姿勢を示していることについては「大変残念で、被爆者の声を聞いてきた立場からすると本当につらいことだ。政府は条約に参加すると、核抑止力の正当性が失われると主張しているが、被爆国である日本は、核兵器は違法であるという立場に転ずるべきだ。
いきなりは難しくても、長期的には条約への参加を目指すということを明確に表現してほしい。核兵器のない世界を目指すと言っている以上、できないはずはない」と述べ、条約の発効後に開かれる締約国会議にオブザーバーとして出席し、条約への参加の姿勢を示すべきだと指摘しました。
上記はNHKの取材に対する川崎さんの言葉です。「核抑止力の必要性」や「アメリカの核の傘に入っているから」という理由から日本政府は一貫して消極的な姿勢のままです。これまでの経緯やアメリカとの関係性を軽視できない事情も分かりますが、川崎さんの言葉のとおり唯一の戦争被爆国である日本だからこそ国際社会の中で、この問題に対して存在感を発揮して欲しいものです。
4年前には「米大統領選と都知事選の違い」という記事を投稿し、次のような記述を残していました。あれから4年が過ぎ、11月3日の投開票の結果、トランプ大統領が再選されるかどうか決まります。アメリカの大統領を選ぶのはアメリカ国民の皆さんですが、国際協調の重要性という観点からの判断も得られれば幸いなことです。
今、日本に限らず排外主義やレイシズムの問題が取り沙汰されています。アメリカの大統領選、ドナルド・トランプ候補が共和党の正式な候補者に決まりました。トランプ候補の「メキシコ国境に壁を建設する」など過激な発言は排外主義という批判を受けています。とは言え、泡沫候補だと見られていたトランプ候補が共和党の代表に選ばれたという結果は、その過激な発言や考え方に共感するアメリカ国民が多いことの表われだと言えます。
最後に、政令市である大阪市が廃止されるかどうか本日の夜に判明します。「東京の自治と大阪都構想」という5年前の記事で都構想の効果や試算結果の問題に触れていました。大阪市のことは大阪市の皆さんが決めることで「グローバルな話題」から少し離れますが、『“大阪市4分割でコスト218億円増”は捏造でも誤報でもない! 松井市長が市財政局長を恫喝し都合の悪いデータ封じ込め』という気になった話題を紹介させていただきます。
| 固定リンク
コメント