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2020年10月 4日 (日)

菅総理へのお願い

このブログをいつもご覧になっている方の助言もあり、まだ何も具体的な結果が出ていない新内閣に対し、あれこれ批判するのは早計かも知れないと考えていました。いずれにしても自民党政権だからという条件反射的な批判は控えてていくつもりでした。

以前から述べているとおり「誰が」に重きを置かず、批判するのであれば「何が問題なのか」という具体的な言動や事例を示しながら問題提起や要望を記すように努めています。もちろん私自身の問題意識そのものが必ずしも正しいとは限らず、読み手の皆さん個々人の評価は様々なのだろうという前提での提起やお願いだと言えます。

このあたりについては少しの前の記事「安倍首相へのお願い」の中でもお伝えしていました。また、より望ましい「答え」を見出すためには多面的な情報に触れていくことが欠かせません。そのような意味で、このブログが幅広い情報や考え方を発信していく一つの場になれることを願っています。

前回記事は「コロナ禍での組合活動、2020年秋」というマイナーでローカルな話題でした。今回、再び一転して不特定多数の方々も目にしている時事の話題を取り上げます。トランプ大統領の新型コロナウイルス感染という衝撃的なニュースから私たち公務員にとっての関心事である人事院勧告の最新情報が伝えられていますが、下記報道の話題が最も気になっています。

政府から独立した立場で政策提言をする科学者の代表機関「日本学術会議」が新会員として推薦した候補者105人のうち、6人を菅義偉首相が任命しなかったことが明らかになった。「学者の国会」と呼ばれ、高い独立性が保たれる学術会議の推薦者を首相が任命しなかったのは、現行の制度になった2004年度以降では初めて。

政府は拒否した理由を明らかにしていないが、6人の中には、安全保障関連法や「共謀罪」を創設した改正組織犯罪処罰法を批判してきた学者が複数含まれている。関係者の間では、学問の自由への政治介入との見方が広がっている。

日本学術会議法は「優れた研究、業績がある科学者のうちから会員候補者を選考し、首相に推薦する」と定めており、推薦に基づき首相が会員(210人)を任命する。任期は6年で3年ごとに半数を改選している。

関係者によると、推薦されながら任命されなかったのは、小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)▽岡田正則・早稲田大教授(行政法学)▽松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)▽加藤陽子・東京大教授(日本近代史)▽宇野重規・東京大教授(政治学)▽芦名定道・京都大教授(哲学)――の人文・社会科学系の6人。

学術会議は今年9月末で会員の半数が任期満了を迎えることから、8月31日に6人を含む計105人の推薦書を首相あてに提出したが、9月末に学術会議事務局に示された任命者名簿には6人を除く99人の名前しかなかったという。新会員99人は1日付で任命された。

1日に東京都内で開かれた学術会議総会で、9月30日付で退任した山極寿一・前会長は「(1949年の)創立以来、自立的な立場を守ってきた。説明もなく任用が拒否されることは存立に大きな影響を与える」と危機感をあらわにした。9月30日に、菅首相に対し文書で理由の説明を求めたという。

一方、加藤勝信官房長官は1日の記者会見で「個々の選考理由は人事に関することでコメントを差し控える。直ちに学問の自由の侵害にはつながらない」と述べた。【毎日新聞2020年10月1日

1983年、中曽根元総理は「政府が行なうのは形式的任命にすぎない」と答弁していました。内閣法制局の『法律案審議録』にも「推薦に基づいて会員を任命することとなっており、この任命は形式的任命である」と記され、形式的任命は内閣法制局の審査によって確定された政府統一見解でした。

当時の国会答弁を加藤官房長官は認識しているとした上で、それ以降「専門領域の業績のみにとらわれない、広い視野に立って、総合的・俯瞰的観点からの活動を進めていただくため、そうした改正がなされてきた。そうしたことを踏まえて、これまでもそうしたスタンスに立って任命してきた。今回、結果において推薦に比べて任命された人数が少なくなってきているということだ」と説明しています。

加藤官房長官、学術会議の任命拒否理由を問われ“不明瞭な”答弁(会見詳報)』を確認する限り、納得できる説明責任を到底果たしているとは思えません。加藤官房長官は「政府として判断させていただいた。この判断を変えることはない」と押し通し、菅総理のコメントも「法に基づいて適切に対応した」という一言にとどまっています。

この問題こそ「誰が」どのような主張をしているかどうかではなく、「何が問題なのか」が重要であるため、参考になるサイトの記事タイトルだけ紹介していきます。お時間等が許される際、ぜひ、リンク先のサイトもご覧いただければ幸いです。

学術会議人事介入を重大問題と受けとめる感性を』『菅義偉さん、日本学術会議に介入して面白がられる一部始終』『菅首相が安倍時代もしなかった言論弾圧、「学問の自由」侵害! 日本学術会議の会員任命で安保法制や共謀罪を批判した学者を拒否』『皆さん、この問題を日本学術会議の民営化などの問題にすり替えたり、矮小化したりしないでくださいね』『菅総理による日本学術会議メンバーの任命拒否問題、その論点はどこか?切り分けて整理してみる

仮に日本学術会議側に何か改めるべき問題点があるのであれば、今回の任命拒否を行なう前にしっかり意見交換すべきだったはずです。まして任命のあり方が「形式的」でなくなっていた場合、その時点で合意形成をはかっていなければ不誠実な対応だったと言わざるを得ません。

そもそも内閣法制局とも協議した上、法解釈の変更があったのであれば当事者間の問題にとどまらず、国会への報告も含めた情報公開が求められています。菅総理は国民に丁寧に説明していくことを重視されています。ぜひ、日本学術会議への回答ととも国民に対しても充分な説明責任を果たされるようお願いします。

前々回記事「新しい立憲民主党に期待したいこと」の中で、週刊文春の記事『「菅義偉さん、やっぱりあなたは間違っている」…“左遷”された総務省元局長が実名告発』と慶応大学名誉教授の小林節さんの『「政治に抵抗する官僚は更迭して当然」という大きな誤解』という見解を紹介しました。

左遷された局長は「ふるさと納税の際にはまだ検討の過程で見過ごせない重大な問題があることが分かり、意見を申し上げた次第で菅首相がそれを“政府の政策に反対する官僚”というのであればまともな検討さえもできません」と指摘しています。小林さんは官僚が「政権の下僕」でなく、次のとおり緊張した関係性であることを説いています。

政権交代した与党が、憲法以下の法令と社会状況が変更されていない状況下で、いきなり政策の変更を指示したら、官僚としてはまず「仕事」として抵抗するのが自然である。つまり、政治としては、まず社会状況の変化に関する自己の認識を開陳し、現場の実情を熟知している官僚と合議する必要がある。

もちろん政策が決定した後、その方針に従わないような官僚だった場合、左遷されても仕方ありません。しかし、より望ましい「答え」を見出すための不可欠な議論の過程において異論を唱えたことで、左遷されてしまうようであれば誰も意見具申できなくなります。ふるさと納税には利点もあれば問題点もあり、最後は政治家の判断が優先されたことに異議をはさむものではありません。

しかしながら明らかに間違っている判断だったとしても周囲が政治家を制止できない関係性に至っていた場合、極めて憂慮すべき事態に陥っているものと考えています。そして、多様な意見が耳に入らなくなると、より望ましい「答え」から遠ざかり、結果として私たち国民に不利益が生じることになります。

日本学術会議の任命に際し、政府の考え方に異論を唱えていた候補者を拒んでいた場合、上記のような視点からも非常に残念なことです。加えて、法的な経緯や多様な情報を持っている官僚が声を上げられなくなっているため、このような重大な問題が表出しているのであれば様々な意味で危うさを感じています。

今回の記事を書き進める前に『したたか 総理大臣・菅義偉の野望と人生』を読み終えていました。「はじめに」の4頁が編集部の手で書き加えられた緊急出版であり、本文は2015年以前の内容となっていました。その中で「私は周りにいつも、『耳触りのいい話は上げなくていい。手厳しい話こそ上げてくれ』と言っているんだ」という言葉が目に留まりました。

2013年の年の瀬、著者の松田賢弥さんが取材した時、官房長官だった菅総理が語った言葉です。菅総理へのお願いです。その時、語った思いに偽りがなかったものと信じています。ぜひ、国民のためにも多様な声に耳を傾ける姿勢を強め、官僚や有識者が手厳しい話を萎縮せずに訴えられる懐の深さを示されるよう切に願っています。

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コメント

先日の所信表明演説見ました。特別定額給付金の話は出ませんでした。国民に寄り添う政治をするなら、国民ひとりひとりに給付金年内に配って下さい。政治家さん達と違い、年末もどうしようと悩んでる貧困層は沢山居ます。自殺者も増えるでしょう!
麻生氏は何を根拠に国民は貯蓄があると言うのでしょう?
菅総理は国民に寄り添って出してくれると信じたい。お願いします。年末年始小さい幸せを下さい

投稿: 匿名希望 | 2020年10月27日 (火) 18時00分

匿名希望の方、コメントありがとうございました。

ご指摘のような観点での対策は欠かせません。麻生財務相の言葉はいつものことですが丁寧さが不足しているようです。

菅総理に対しては、この記事に託したような問題意識や願いが届いていないようです。日本学術会議の問題の論点そのものを理解されていないのか、意図的にはぐらかしているのか、いずれにしても極めて残念なことです。

ご自身が「国民の政権への期待もそこそこにある」と述べられていましたが、さらに下降線をたどらなければならない問題だろうと考えています。一方で時間が経ち、うやむやな幕引きとなり、支持率もそこそこに維持されていくような事態だけは決して歓迎できない問題だと受けとめています。

投稿: OTSU | 2020年10月31日 (土) 06時32分

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