組合役員の立候補者を増やすためには
このブログの記事更新と私自身のコメント投稿は土曜日曜に限っています。開設した当初、記事本文は週に複数回更新していました。しばらくして週に1回が定着していましたが、お寄せいただいたコメントへのレスはその日のうちに対応していました。
2012年の春頃からは背伸びしないペースとして、コメント欄も含め、土曜か日曜のみにブログに関わるようにしています。このようなペースを基本としているため、ブログの更新を途絶えさせずに長く続けられているのだろうと思っています。
ただ週に1回の更新であるため、旬な話題に対応しづらくなっています。最近、非正規雇用の同一労働同一賃金を争点にした最高裁判決が立て続けに出されています。大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件は原告側の敗訴、その2日後に出された日本郵便の契約社員に対する判決は原告側の勝訴と明暗が分かれました。
前々回記事「菅総理へのお願い」の中で触れた日本学術会議の問題も引き続き注目しています。週に1回の更新間隔は当ブログで取り上げたい題材に事欠くことがありません。いずれにしても個人の責任で運営しているブログですので、自分なりのスケジュール感のもとに新規記事の内容を決めています。
実は最近の記事「コロナ禍での組合活動、2020年秋」のコメント欄で、ARIさんから次のようなコメントが寄せられていました。今回の記事を閲覧されている皆さんに対し、状況や論点を明確にするためにARIさんのコメント内容の全文をそのまま紹介します。
初めまして。ARIと申します。現在30代半ばの市役所職員で、約8年間自治労系単組の執行役員を務めておりました。8年間のうちの3年間は書記長、2年間は副執行委員長を務めておりました。今回、役員の活動に関する記載があったため書かせていただきます。不快にさせたり非常識ととらえられる内容でしたら大変申し訳ございません。
率直に申し上げますと、書記長、副執行委員長の任務は苦痛そのものでした。青字の「■『たいへんだったけど、やって良かった』、組合役員OBの皆さんからよく耳にする言葉です。」の記載について申し上げさせていただきますが、私としては、組合の必要性については理解できますが、精神面で影響してしまったからかやったことを後悔しております。
記事の中に「任務の重さやプライベートな時間が割かれる面もあり、執行委員の定数を満たせない現況が何年も続いています。」ともありますが、私が所属していた単組もそのような状況でした(現在は不明です)。私も書記長時代からプライベートを割かれ散々でした。
そのため、ワークライフバランスを執行部が訴えておきながら自分たちのワークライフバランスを崩していることに矛盾のようなものを感じておりました。結果的には、プライベートが削がれリフレッシュの機会が減ってしまい、カウンセリングを受けるまでに至りました。現在は執行役員を引退しており、メンタル面も安定しましたが、副執行委員長時代の経験等はトラウマになっています。
実際、私以外にも「やらされている」という感覚が強い役員は何名かいました。そこで伺いたいのですが、
・ 役員として(組合活動等)でモチベーションを上げるには
・ ワークライフバランスを崩さずに組合役員を続けられるには
・ 組合役員に積極的に立候補する人を増やすには
についてご意見ご教示等いただけたら幸いです。このような書き込みで大変申し訳ありませんがよろしくお願いします。【投稿: ARI | 2020年10月 7日 (水) 16時24分】
先週の土曜の朝、私からARIさんのコメントに対して取り急ぎ次のようにお答えしていました。今回、たいへん長い記事になりそうですが、私からのコメントもそのまま掲げた上、補足すべき点や具体的な「答え」につなげていければと考えています。
投稿日の夜、ご指示いただいたとおり重複したコメントは削除しました。ただ右サイドバーへの反映は数日を要していたようです。また、たいへん重要な問いかけをいただきながら当ブログに関わるのは週末に限っているため、返信が遅れて申し訳ありません。
「たいへんだったけど、やって良かった」、そのように述べられる組合役員OBの皆さんが多いことも確かですが、私どもの組合でもARIさんのように苦痛な任務に過ぎなかったと思われたまま退任された方も少なくありません。
役員改選期にあたり、そのような話を告げられる時もあり、今回のARIさんのコメントに身につまされる思いを強めています。いずれにしても本務以外の組合役員を務めたことで心身に不調を来すようなことは絶対避けたいものです。
しかし、任務の重さや関与しなければならない時間の膨大さに押しつぶされそうになる現況があることを決して否定できません。さらにARIさんが経験されたように書記長や副委員長という任務の重さに比例する傾向もあります。
今回、3点の問いかけをいただきました。このコメント欄で迅速にお答えすべきなのかも知れませんが、それぞれ端的な「正解」を示すことが難しい問いかけです。そのため、記事本文を通して、私自身の「答え」を掘り下げさせていただければと思っています。
ただ今週末の記事は別な題材で投稿する運びでしたので、来週以降となることをご容赦ください。ちょうど私どもの組合の役員改選期に入るため、私自身の思いや悩みを率直に吐露できればとも考えています。
末筆となりましたが、くれぐれもお体に気をつけてお過ごしください。そして、組合役員を経験した方、誰もが「たいへんだったけど、やって良かったこともあったな」と振り返られるような組合活動にしていければと思っています。【投稿: OTSU | 2020年10月10日 (土) 06時20分】
投稿は土曜日曜に限っていますが、お寄せいただいたコメントはその日のうちに閲覧しています。ARIさんが誤って投稿されたコメントはすぐ削除しましたが、右サイドバーの「最近のコメント」でARIさんの名前が一つになるまで数日かかっていました。リニューアル後によく見かけるココログ側の不具合でした。
ARIさんからの問いかけは記事本文を通してお答えすることをお伝えしていました。先週は連合三多摩の政策・制度討論集会の内容を取り上げようと決めていたため、前回の記事は「子どもの権利を守るために」でした。遅くなりましたが、今回、ARIさんの問いかけに対する私自身の考えを示させていただきます。
■役員として(組合活動等)でモチベーションを上げるには
なかなか難しい問いかけです。個々人でモチベーションの上げ方も異なるかも知れません。一般的には内発的動機(参考記事「ベターをめざす人事制度」)を高めた活動であればモチベーションは維持できるものと考えています。特に非専従の組合役員は無報酬の活動であり、「やらされている」という感覚のままであれば到底モチベーションを上げることは期待できません。
それでは内発的動機を高めるためにはどうすべきか、この点を考えてみます。最初から組合の役割を評価し、組合活動に意義を見出している方は問題ありません。積極的に手をあげた訳ではなく、義務感や順番だから仕方なく組合役員を担った方々を想定しながら考えてみます。
組合活動の面白さは組合役員一人ひとりのアイデアや企画を形にしやすく、その成果や手応えを即時に実感できる経験を積んでいけることです。そして、労使交渉を通して結果を出せた時の達成感があり、組合員の皆さんから感謝の言葉をかけられた時のうれしさがあります。
このようなプラスの成果や評価ばかりであれば「やりがい」があり、モチベーションも常に上がっていくはずです。このプラスの経験のほうが多ければ「たいへんだったけど、やって良かった」という組合役員OBの感想につながっていきます。
しかし、労使交渉では後退を余儀なくされる場面も多く、組合員の皆さんから叱責されがちな現状があることも否めません。書記長や副委員長など任務が重くなればなるほど結果を出せなかった場合、直接叱責される時が増え、ストレスを蓄積していきかねません。
モチベーションを上げていくためには上記のような場面を減らせるかどうかが「答え」の一つだろうと思っています。ちなみに組合員が憤る時、結果を出せなかったことよりも途中経過での連携不足を指摘されるケースが多く見受けられます。
きめ細かい連携として職場懇談会や個別相談などを頻繁に行なうためには組合役員側のマンパワーの充実が欠かせません。そのためにも組合役員の改選期、幅広い担い手を募りながら執行委員定数を充足させていくことが重要だと考えています。
■ワークライフバランスを崩さずに組合役員を続けられるには
組合役員の担い手が増えれば任務分担を細分化でき、個々の担う活動領域や関与しなければならない時間も減っていきます。逆に組合役員の担い手の減少は個々の任務分担の質と量を広げるため、現職のワークライフバランスが疎かになり、ますます組合役員に手をあげることをためらわせがちとなります。
担い手が増えない場合、組合活動の総量を見直すことも必要です。私どもの組合では財政面の厳しさを踏まえ、4年前に活動全体を見直しています。持続可能な組合組織に向け、組合役員の負担面も考慮しながら大胆な見直しをはかりました。しかしながら労使課題に際しては決して手を抜けないため、劇的に軽減化されたかと言えばそうでもありません。
そのため、次に重視すべき点は執行部内での相互理解と支え合いです。組合役員それぞれの事情があることを理解し合い、執行委員会等に欠席することをとがめない雰囲気作りに努めています。場合によってプライベートな用事だったとしても、その人の優先順位を尊重し、欠席する理由は問わないようにしています。
皆さんそれぞれが限られた時間を工面しながら組合活動に関わっています。手が回らなかった場合、手助けできる人が中心になって支え合うようにしています。ここ数年、最も長く組合役員を務めている私自身が手助けしやすいため、いろいろ実務面でも支える場面が増えています。
ただ「手を出しすぎ」と言われ、「委員長がいなくなった時、どうするの」と問いかけられる時があります。言われるまでもなく、私自身が退任する時のことをずっと考え続けています。それでも今、限られた人数で組合活動に向き合っている中、手助けが必要な時、力を貸せる人がサポートしていくという関係性も大切なことだろうと考えています。
■組合役員に積極的に立候補する人を増やすには
上記2点の問いかけに対する「答え」が立候補者を増やす近道になるものと思っています。内発的動機を高められる達成感のある任務だと認められ、ワークライフバランスに留意した活動であれば手をあげる人たちが増えていくのではないでしょうか。
残念ながら一足飛びにそのようなイメージチェンジがはかれないことを前提に考えていかなければなりません。最も重要な点として「組合は大事、つぶしてはいけない」という認識を組合員の皆さん全体で共有化できるかどうかだと考えています。
役に立たない組合はいらない、その通りです。しかし、私自身、組合役員を長く務める中で「組合は必要、だから絶対つぶしてはいけない」という思いを強めています。このような土台をしっかり築くことを日常的に努力する一方、組合役員の立候補に向けたハードルをどのように下げられるかどうか探り続けています。
今回、私どもの組合役員の改選期にあたり、仕組みの問題を市長らと再確認しました。その確認を踏まえ、 最近の記事「コロナ禍での組合活動、2020年秋」の中で紹介した『組合ニュース』の次の一文につなげていました。
これまで組合役員だった部課長は多く、現在の副市長は組合の会計幹事を4年間担われています。また、他の自治労単組では組合役員が係長や課長補佐に昇任する場合もあります。私どもの組合も例外ではなく、今後、組合役員を担いながら係長に抜擢されることも望ましい流れだろうと考えています。
組合は人事に関与できませんので、あくまでも仕組みの問題として以前から確認してきたことです。組合役員を務めると将来「役所の階段を上がっていけなくなる」と思われていた場合、そのような誤解を払拭するために今回から加えた一文でした。
そもそも組合役員が「やりがいのある任務」なのか、ワークライフバランスが疎かになるような「たいへんな任務」なのか、実際に経験してみなければ判断できません。そのため、活動は無理のない範囲で構わないので立候補して欲しいと要請する場合が少なくありません。
長らく執行委員定数12名を充足できていないため使える言葉ですが、次のような言葉を多用しています。「執行委員に名前を連ねてもらえれば1%から100%の幅で活動できる可能性が広がります。担ってもらえない場合は0%であり、執行委員としての役割の発揮は一切できなくなります」という言葉です。
そもそも私自身の組合役員になったイキサツを振り返りながら「1%から100%の幅」の可能性を期待しています。昨年、学校事務職場から4名の方が執行委員となりました。最初「4人で1人分ですから」と話されていましたが、執行委員会等への出席をはじめ、皆さんそれぞれが充分な役割を発揮されていました。さらに3名の方が引き続き務めてくださることを決めています。
決して「名前だけの立候補」を要請してきた訳ではありませんが、務める限りは「より100%に近い任務の重さを求めるべき」という考え方もあります。そのため、私の言葉は「頑張ろうとしている人たちに失礼で混乱させている」という指摘もありました。
そのような懸念があることも理解していますが、「より100%に近い」を原則とした結果、高いハードルだと思われて立候補を見送られてしまってはマイナスだろうと思っています。今回、保育園職場からの選出のあり方を巡り、執行部側の意見が分かれた場面もありましたが、最終的に複数名の立候補を確認できています。
残念ながら慰留できなかった組合役員が数名いますが、新たに立候補される方のほうが多くなる見通しです。一昨年まで執行委員の数は年々減り続けていました。昨年、久しぶりに増やすことができ、今年は定数12名に届く可能性もあります。いろいろ迷われながら引き続き立候補される方、新たに立候補を決意された皆さん、本当にありがとうございます。
最後に、ARIさんからの問いかけに対して充分な「答え」になったのかどうか自信がありませんが、私どもの組合の現状も含めて説明させていただきました。また何かお気付きの点がありましたらお気軽にコメントをお寄せいただければ幸いです。よろしくお願いします。
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コメント
OTSU 様
ご回答ありがとうございます。
OTSU様のご回答に対し、私なりの意見等を順に述べさせていただきます。
1 役員として、組合活動等でモチベーションを上げるには
私が所属する単組の場合は、役員全員が非専従のため、OTSU様が記事本文にてお書きのとおり、無報酬の活動のようなものです。実際は役員手当として月数千円つきますが、私の経験上、「割に合わないにも程がある」というのが本音です。
大規模な単組だと数千人の組合員がおり、その代表として役員を務め、交渉等を進める中で無報酬や月数千円の手当だと、精神的な負担が大きすぎるのにそれでやれるものか、時間を割く気になれるものなのかというのが正直なところです(実際、後輩役員にも同じ考えがいました)。少し話は変わりますが、民生委員についても同じように考えますね。
例えばこれを、役員手当を月数万円にした場合モチベーションが上がる人が出てくるのかというと、その分交渉結果を出さないと組合員から叩かれますし、その点での組合規約等の改正に猛抗議を受ける可能性も高いでしょう。金銭でモチベーションを上げるというのはよろしくありませんが。
「組合役員一人ひとりのアイデアや企画を形にしやすく~」という点ですが、イベント等については、私の在任時についてになってしまいますが、少々マンネリ感が否めないところがあります。これについては申し訳ありませんが、あまり「アイデアを出す」という機会がなかったので組合活動の中のどういった場で斬新なアイデアが出せているかご教示いただけたらと思います。
あとはやはりここ最近、私も含めてですが、公務員であるが故のオープンショップ制に納得がいっていない役員・組合員が増えているのもあります。いくら交渉して結果を出したとしてもその結果となるものを加入資格のある組合未加入者までもが得るとなると、役員として「やりがい」を見出せないそうですし、同じように考えてしまいます(加入を説得してもコストパフォーマンスを理由に拒まれるのが現状です)。保険を契約していない人にまで保険金がおりるような感覚です。
2 ワークライフバランスを崩さずに組合役員を続けられるには
「執行委員会等に欠席することをとがめない雰囲気作りに努めています。場合によってプライベートな用事だったとしても、その人の優先順位を尊重し、欠席する理由は問わないようにしています。」という点については仰るとおりだと思います。
ただ、こちらについては、私のようになかなかNOと言えない性格の人にとってはかなり難しいものだと思います。書記長、副執行委員長となると尚更でした。そこで無理をして休日の動員要請イベントなどに参加し、結果プライベートを犠牲にしてしまいメンタルに影響してしまったのかもしれません。
3 組合役員に積極的に立候補する人を増やすには
これについてですが、個人的には、組合のイメージ・印象についてネガティブなものを持つ人が多い感じがし、それを払拭できるかどうか、というのが私なりの意見です。
自治労都道府県本部による機関紙等でも、休日の定期大会や集会の記事が掲載されているので、それで大変というイメージを持っている組合員が多いかもしれません。
また、役員の中で「団結頑張ろう」が見た目的に悪印象と話す人も私が務めていた時にちらほらいました(そういう私もその考えの1人でしたが)。他にも、動員要請に関するイメージについてもネガティブな意見が多かったと思います(デモ行進の印象など)。
このようなネガティブイメージに対する課題を解決していくと積極的に立候補する人が増えると思いましたが、いかがでしょうか(完全に個人的な考えなので間違っているのはわかります)。
たいへんご丁寧に記載してくださり、ありがたく存じます。
このような形・内容で返してしまい申し訳ありませんが、ご理解よろしくお願いいたします。
投稿: ARI | 2020年10月22日 (木) 00時37分
ARIさん、コメントありがとうございました。
せっかくの機会ですので今週更新する記事本文を通し、ARIさんからの問いかけに答えながら様々な思いを綴らせていただきます。ぜひ、引き続きご注目いただければ幸いです。よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2020年10月24日 (土) 06時23分