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2020年8月22日 (土)

例年より遅い人事院勧告

2週にわたって「平和を考える夏、いろいろ思うこと」「平和を考える夏、いろいろ思うこと Part2」という戦争をテーマにした内容を投稿しました。 前回記事に対し、yamamotoさんから日本国憲法9条の解釈を巡るコメントをお寄せいただいていました。

「Part3」という記事タイトルも思い浮かびましたが、今回は公務員にとって関心の高い題材を選んでいます。ちなみにyamamotoさんのコメントには以前の記事「改めて安保関連法に対する問題意識」「憲法9条についての補足」などを振り返りながら次のようにお答えしていました。

確かに自衛権に「個別的も集団的もない」と考える方々も多いはずです。しかしながら私自身は以下のような経緯と解釈のもとの日本国憲法の「特別さ」とその効用を評価しています。

草案の段階で憲法9条に「前項の目的を達するため」という記述はなく、当時の自由党の芦田均委員長の修正によって一文が加えられていました。ただ一文が入った解釈について施行後の国会答弁で、吉田茂元首相は自衛権まで含め「戦争を放棄している」という見解を示していました。

1950年の朝鮮戦争が勃発した頃から憲法9条の解釈は変わり、自衛隊の創設までつながっています。「前項の目的を達するため」以外であれば国家固有の権能の行使として「必要最小限度の自衛権」は認められるという解釈への転換でした。

このような経緯も含め、私自身は個別的自衛権まで認めた憲法解釈を支持する立場です。GHQに押し付けられたというネガティブな気持ちもありません。明治の自由民権運動から連なる日本国内の下地があった点をはじめ、多くの国民から半世紀以上支持されてきた憲法9条の理念や効用を評価しています。

付け加えれば未来永劫、憲法を改めてはいけないと考えている訳ではありません。もし改憲するのかどうかを問うのであれば日本国憲法の「特別さ」を明確な論点にすべきものと考えています。

yamamotoさんの問いかけに的確に答えられたのかどうか分かりません。思った以上に長い説明を加えながら言葉が不足しているのかも知れません。できれば機会を見て、この問題についても記事本文を通して取り上げさせていただきます。

省みると直近2回の記事の中で個別的自衛権と集団的自衛権の峻別等については触れていませんでした。上記の説明も不充分な気がしています。なかなか一つの記事だけで私自身の問題意識をお伝えする「一期一会」の実践は難しいようですが、できる限り努力は尽くしていこうと考えています。

さて、「人事院勧告の話、インデックス」があるとおり毎年8月に人事院勧告に関する内容を取り上げてきています。人事院勧告の時期が例年8月上旬だからです。しかしながら今年は勧告時期が大幅に遅れる見通しです。下記報道のとおり新型コロナウイルス感染拡大の影響で人事院の調査が遅れています。

国家公務員の給与改定に関して例年8月に行う人事院の勧告が、10月以降にずれ込む見通しとなったことが3日、関係者への取材で分かった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、勧告の根拠となる民間企業の月給に関する調査日程が大幅に遅れているため。

人事院勧告が10月以降となるのは、1960年からの現行制度下で初めて。勧告は都道府県人事委員会などが参考にするため、地方公務員の給与改定に関する自治体の動きにも遅れが出そうだ。関係者によると、今年の月給調査は今月17日~9月30日の日程で最終調整している。【共同通信2020年8月4日】 

国家公務員の賃金水準は毎年8月上旬に示される人事院勧告によって決まります。公務員は争議権など労働基本権の一部が制約されています。その代償措置として人事院や都道府県の人事委員会があり、民間賃金水準との均衡をはかるべく勧告を年に1回行なっています。

今年は新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、例年5月連休前後から始めている民間賃金の実態調査が遅れていました。賞与等の調査は訪問によらない方法で6月29日から先行実施していました。ようやく月例給の調査も8月17日から始まっています。

そのため、今年度の勧告は8月には示せず、10月以降に延びる見通しです。地方公務員賃金水準に直結する都道府県人事委員会の勧告も同様な事情を抱えています。緊急事態宣言が発出されるほどの非常時であり、勧告時期が遅れること自体はやむを得ません。

しかし、労働基本権の代償措置としての役割を負う人事院には客観的で公正な調査や判断が求められています。過去、政権の意向を「忖度」したような判断が見受けられた時もありました。たいへん厳しい社会経済情勢であることも確かですが、政治的な思惑を加味した恣意的な勧告内容であっては問題です。

このような懸念があるため、自治労など公務員・独立行政法人職員・政府関係企業職員の組合で構成する公務員連絡会は人事院総裁あての職場署名行動に取り組んでいました。公務員賃金水準維持や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う職務・職場環境の改善を求めた要求事項は次のとおりです。

  1. 2020年の給与改定勧告に当たっては、職員の月例給与の水準の維持を最低として、公平・公正で客観的な官民比較に基づくこと。
  2. 一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、職員の生活を守るために必要な支給月数を確保すること。
  3. 勧告に当たっては、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づき行うこと。
  4. 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、公務職場の実態を踏まえた感染防止や安全確保を強化するとともに、関連業務をはじめとする給与・労働条件を改善すること。また、この間の人事院の対応について、公務員連絡会との交渉・協議による検証と、それを踏まえて改善をはかること。

すでに私どもの組合員の皆さんに対しても署名用紙を職場回覧し、ご協力を求めていました。いったん締め切っていますが、提出漏れがあった場合は至急組合事務所までお送りください。

コロナ禍によって収入が激減し、あるいは仕事を失った方々も多いものと受けとめています。そのため、上記のような公務員連絡会の取り組みは否定的に見られてしまう懸念もあります。それでも労働組合として主張すべき点は主張しながら役割を発揮していければと考えています。

最後に、最低賃金に関する最新の情報が入っています。中央最低賃金審議会が「現行水準維持」という判断を示していたため、わずかな額とは言え、40県が引き上げを決めたことに安堵しています。これ以上内需を落ち込ませないためにも官民問わず、賃金水準の維持向上は欠かせないものと思っています。

厚生労働省は21日、都道府県ごとに決める2020年度の地域別最低賃金について、全国の改定額を公表した。中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)は7月、「現行水準維持が適当」として引き上げの目安を示さなかったが、40県が1~3円引き上げた。全国平均の時給は現在より1円増の902円となった。10月から順次適用される。

最低賃金は16年度から4年連続で年率3%以上の大幅引き上げが続いてきたが、新型コロナの影響で足踏みした。40県が引き上げに踏み切ったのは「最低賃金の水準が低く、生活するので精いっぱい」といった労働側の意見が重視されたことが背景にあるとみられる。【共同通信2020年8月21日

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コメント

多くの国民から半世紀以上支持されてきた憲法9条と
書かれていますが、そう判断された根拠は何でしょうか?

投稿: たろう | 2020年8月22日 (土) 23時14分

たろうさん、コメントありがとうございました。

統計上の調査結果等を参考にした判断かどうかというお尋ねだろうと理解しています。結論から申し上げれば、精密な資料等をもとにした記述ではありません。

憲法9条の解釈を巡っては違憲かどうかなどの論争をはじめ、そもそも押し付けられた憲法だから自主的な憲法に変えるべきという主張があることも受けとめています。それでも憲法96条に改正条項がありながら結果的に一字一句変えてきていません。

多くの国民から絶対変えなければ問題であり、変えるべきという声が強まっていれば政治家も現時点までに改憲に向けて対応していたのではないでしょうか。

このように考えながら以前の記事の記述を参考にした言葉です。リンク先「改めて安保関連法に対する問題意識」の中で紹介した防衛大学校長だった五百旗頭真さんの「半世紀以上も歩んできた中で制定の経緯を最重要視するのは滑稽だ」という見方に共感していたため、そのような言葉を使っていました。

さらに現在、憲法を変えるべきかどうかという世論調査を行なった際、質問の仕方で大きく変動するように思っています。一例として、日本国憲法の三大原則の一つである平和主義を改めますかと問われれば大半の方が「NO」と答えるのではないでしょうか。

したがって、今回記事の中でも掲げているとおり改憲するのかどうかを問うのであれば日本国憲法の「特別さ」など論点を明確にした国会での発議から国民投票であって欲しいものと考えています。

たろうさんの短い問いかけに対し、せっかくの機会でしたので、いろいろ補足させていただきました。いずれにしても当ブログのコメント欄を通し、思いがけない点でご指摘を受けることの貴重さを感じています。ありがとうございました。

投稿: OTSU | 2020年8月23日 (日) 07時09分

OTSU様、補足ありがとうございました。

コメントしたのは、半世紀以上支持されてきたという
断定調に違和感を感じたからです。少なくとも私は
支持/不支持を明確に表明した経験はなかったので。

確かにほとんどの国民にとって憲法は難解、かつ生活に
直結しないので関心は薄く、アンケートを取れば現状
維持が多数派を占めることは想像できますが。


ちなみに以下は個人的な考えです。
憲法には詳しくないですが軽く勉強しても違和感続出です。
例えば前提となる憲法前文に
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われら
の安全と生存を保持しようと決意した。とあります。
「諸国民」を「実際の周辺国」に置き換えてみて、本当
に信頼できるのか、信頼できる前提があっての9条では?

現実の安全保障は周辺国を無条件には信頼していない。
だから自衛隊があり、9条との矛盾がある。その矛盾を
国民にきちんと説明して判断を仰ぐことなく、法律を実現
させるために政府は都度解釈を変えてきた。

憲法と現実の矛盾や解釈改憲を放置するなら憲法が国家
権力の濫用を防止することもできず、憲法は有名無実と
なる。なので理想と現実を併記するなど、現実に合わせ
た改憲をおこなうべき。


投稿: たろう | 2020年8月23日 (日) 12時55分

たろうさん、コメントありがとうございました。

周辺国との関係性も踏まえ、どのような憲法が国民にとって望ましいのか、戦争を防ぐため、平和を築くためにどのような憲法や安全保障のあり方が望ましいのか、論点が明確になることを切望しています。

その一助に少しでもなれることを願いながら今後も、このブログを通して憲法9条について取り上げてみるつもりです。ぜひ、これからもお時間等が許される際、コメントをお寄せいただければ幸いですのでよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年8月23日 (日) 19時37分

非正規労働者を守るどころか食い物にして首を経営者や首長に差し出すことで高給を維持している国賊・自治労は、時給1円の最低賃金アップを労組の成果として誇るのだろう。

投稿: れなぞ | 2020年8月24日 (月) 20時17分

れなぞさん、コメントありがとうございました。

そのような思い込みも内心の自由として守らなければなりません。しかし、度が過ぎると誹謗中傷ととられ、場合によって処罰の対象にもなりますのでご注意ください。

もし精確な事実関係を把握した上での投稿であれば、もう少し説得力のあるコメントをいただければ幸いです。自治労に所属する一単組の責任者ですが、自治労全体の隅々まで把握できる立場ではありません。

れなぞさんが今まで再三再四指摘されているような話が釈明の余地のない事実だった場合、構成員の一人としてボトムアップで内部からの自浄能力の発揮を求めなければなりません。ぜひ、ご理解ご協力をよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年8月29日 (土) 06時47分

自治労の所業。これでも読んでおけ↓
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6371240

投稿: れなぞ | 2020年9月16日 (水) 12時56分

れなぞさん、コメントありがとうございました。

紹介された記事のような実態は改めるべきものと考えています。私自身は会計年度任用職員の皆さんらと直接お話する際、必ずお名前でお呼びしています。

公務における同一労働同一賃金の実現をめざしていますが、不充分さが目立ったままの現状に対する自治労の力量不足は省みなければなりません。ただ「自治労の所業」という言葉は前回レスしたとおりですので、よりいっそうのご理解ご協力をよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年9月19日 (土) 06時43分

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