都政の現場、新知事へのお願い
このブログは週に1回、土曜か日曜に更新しているため、月曜以降に訪問者数が多くなっています。そのため、大半の方は東京都知事選挙の結果を知った上で今回の記事をご覧になっているのではないでしょうか。投票が間に合う方は仮にベストを見出せなくてもベターな選択の意志表示の機会として、ぜひ、投票所に足をお運びください。
連合東京は今回の都知事選にあたって現職の小池知事を支持しています。中小企業・小規模企業振興条例制定への尽力や予算要望等を実現し、新型コロナウイルス感染症対策においても各構成組織からの要望を積極的に受けとめているため、政策協定を締結した上で推薦の次に関係の深い支持を決めていました。
ただ小池知事の政治的な立ち位置は自治労方針と一致できるものではありません。自治労組織内の国会議員が所属する立憲民主党は宇都宮健児候補を支援していました。それでも自治労都本部は連合東京の組織決定を否定しない立場を重視し、特定の候補者の推薦や支持を見送っていました。
私どもの組合も同様な対応をはかっていますが、もともと一票を投じる判断は組合員の皆さん一人ひとりに委ねています。その上で選挙の取り組みに関しては重要性や意義などを丁寧に情報発信しながら組合員の皆さんからご理解ご協力を得られるように努めていることを前々回記事の中で触れていました。
さて、前回の記事は「政治の現場での危機管理」でした。新型コロナウイルス感染症に対する国政の現場での危機管理の現状について取り上げていました。今回の記事では都政の現場での対応について取り上げてみるつもりです。残念ながら都内での新規感染者の数が連日100人を超えています。
あらかじめ定めた基準に照らし合わせれば東京アラートなどを打ち鳴らす事態であるはずです。しかし、小池知事が新たに示した7項目のモニタリング指標は休業再要請などの目安となる数値基準を設けない客観性の乏しいものであり、『小池氏の選挙ファーストがもたらした感染再拡大』と批判する声も上がっています。
今回のブログの記事タイトルは「都政の現場、新知事へのお願い」としています。日曜の夜には新しい都知事が決まります。どなたが当選しても「選挙ファースト」などと言われずに「都民ファースト」を全面に出した都政に力を尽くして欲しいものと願っています。特に新型コロナウイルス対策は待ったなしの課題であり、より望ましい方向性を見出したリーダーシップの発揮を強く期待しています。
新知事へのお願いとして、もう少し書き進めてみます。事前の情勢分析で小池知事の堅調ぶりを伝えているため、ほぼ再選は間違いないのだろうと見ています。したがって、ここからは小池知事が続投することを想定したお願いとなります。いろいろな思いを書き進めるにあたり、最近読み終えた『女帝 小池百合子』という書籍を紹介します。
コロナに脅かされる首都・東京の命運を担う政治家・小池百合子。女性初の都知事であり、次の総理候補との呼び声も高い。しかし、われわれは、彼女のことをどれだけ知っているのだろうか。「芦屋令嬢」育ち、謎多きカイロ時代、キャスターから政治の道へ
ーー常に「風」を巻き起こしながら、権力の頂点を目指す彼女。今まで明かされることのなかったその数奇な半生を、3年半の歳月を費やした綿密な取材のもと描き切る。
全体を通した感想として「著名な政治家は触れられたくないはずの過去をここまで暴露されてしまうのか」という驚きがありました。あとがきで著者の石井妙子さんは「ノンフィクション作家は、常に二つの罪を背負う」と記しています。一つは書くことの罪、もう一つは書かぬことの罪であり、石井さんは後者の罪を重く考え、本書を執筆したことを明かしています。
女性初の総理の座にも手をかけようとしている小池知事だからこそ、綿密な取材を通して知り得た事実を伝えることに石井さんは力を注ぎました。学歴が教養や能力に比例しないと考えていても、出てもいない大学を出たと語り、物語を作り上げ、それを利用してしまう、そのような人間としての在りようを問題視していました。
彼女は、「敵」を作り出して攻撃し、「敵」への憎悪を人々の中にも植えつけ、その憎悪のパワーを利用して自分への支持へとつなげていくという手法を何度となく駆使している。虚栄心に捕らわれ、その虚栄心ゆえに危険な演技者となるといったタイプの為政者は他にも、過去にもいた。
彼ら彼女らは国民を煽り、結果として国民を不幸に突き落とす。自分の言動の「効果」を計算し、自分が与える「印象」ばかりに気を取られ、それを優先し、それによって生じる現象に対する責任を安易に考える傾向があるからだ。
上記は石井さんが語っている問題意識ですが、小池知事の過去の言動の数々にその傾向が見て取れました。築地市場の豊洲移転の問題をはじめ、小池知事の言葉に涙を流しながら感動し、大きな期待を寄せていながら情け容赦なく裏切られた関係者の皆さんの怨嗟の声が石井さんの著書に綴られています。
『小池百合子は「パフォーマンスと強権人事」?元側近が明かす都庁内での“素顔”』という見出しの記事の中で、『築地と豊洲』の著者である東京都中央卸売市場次長だった澤章さんが「重要度の低いイベントに都知事がわざわざ顔を出して、テレビカメラに収まりニュースで流れるとか、そういうことが結構ありました」と語り、当初は小池知事の掲げる「改革」に期待していながらパフォーマンスが先行する姿勢に失望していったことを伝えています。
コロナ禍の局面でも小池知事は記者会見とテレビ出演を重ねて危機管理に「強いリーダー」を演じていると石井さんは指摘しています。都民に危機意識を広め、結果が伴っていけば批判されるものではありません。しかし、ステップが変わるたびに重々しく周知し、「この店に行けるんだ」という緩みを数週間前に発信していなかったかどうか省みる必要があります。
小池知事へのお願いです。石井さんの著書は物凄く耳が痛く、腹が立つものだったかも知れません。ただ反省すべき点があるのであれば率直に反省し、ぜひ、重責を担う立場の役割として地に足を付けた頑張りを期待しています。独自に休業補償できる都の資金もわずかとなり、今後、感染防止と経済との両立が欠かせないのであれば、そのことを分かりやすく情報発信していくべきです。
感染拡大の事態を受け、「夜の街」を槍玉にあげることで新たな「敵」を作るような手法は絶対慎んでください。もちろん飲食が伴い、近い距離での接待が中心となる店舗での感染リスクには警戒しなければなりません。それでも換気や従業員の検温など感染防止対策を徹底している店舗には東京都が認証マークを配布しています。
そのような店舗も含め、一緒くたに「夜の街」と批判してしまっては気の毒なことだろうと思っています。接待を伴う店舗の従業員の皆さんが積極的にPCR検査を受け始めています。このことで若年層を中心に感染者が増えていることも確かです。そもそも店舗側のスタッフに感染者がいなければ感染リスクはゼロに近付きます。
いつ、どこで感染するか分かりませんので常に「三密」等には注意しなければなりません。しかし、当たり前なことですが、ソーシャルディスタンスを取ることが目的ではなく、飛沫感染や接触感染を防ぐことが最も重要な点です。例えば、お笑い芸人のコンビがステージ上で距離を取っていますが、普段から徹底していなければ「やってる感」を示しているだけだと言えます。
新型コロナウイルス感染症対策は長期戦の覚悟のもとに「新たな日常」に向けて最大限努力していくことが求められています。そのためにも上記のような実効性を改めて考えながら「夜の街」と一括りに切り捨てるのではなく、より望ましい対応策を打ち出していって欲しいものと願っています。
最後に、『都政新報』が東京都の職員に対して実施したアンケートの調査結果を伝えた記事『出馬賛成は2割だけ…都庁職員が小池百合子に「再選NO!」』を紹介します。一方で、その記事の最後のほうでは「極端な人が知事になるよりは、まだ小池さんのほうがいい」と思っている職員が多いという調査結果も伝えていました。
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コメント
結局、連合は上級国民たる大企業正社員と公務員正職員の立場だけしか見ていないということがはっきりわかる都知事選結果に終わりましたな。国賊自治労め、大概にしろよ
投稿: れなぞ | 2020年7月 5日 (日) 20時23分
れなぞさん、コメントありがとうございました。
連合や自治労に対する見方は思い込みが強いように感じています。選挙の取り組みもそれぞれの組織が組合員にとってどうなのかという判断基準のもとに決めている点についてご理解いただければ幸いです。
投稿: OTSU | 2020年7月 5日 (日) 20時49分