ネット議論の現状と課題 Part2
東京都内にとどまらず、新型コロナウイルスの感染者数が急増しています。最近の記事「政治の現場での危機管理」「都政の現場、新知事へのお願い」に託しているとおり政治の現場で、
7月22日から「Go To トラベル」が始まっていますが、「Go To トラブル」という軽口が揶揄とは言えないほどの混乱ぶりを見せています。危機的な状況においての政治家のリーダーシップが問われ、その力量の差に明暗が分かれがちです。
このブログでは「安倍首相へのお願い」という記事も投稿していましたが、残念ながらLITERAでは『感染再拡大、GoToトラベル大混乱も、安倍首相は会見を開かず逃走! 代わりにお仲間の極右雑誌「Hanada」に登場し嘘八百』と批判されるような対応にとどまっています。
時事の話題、特に新型コロナウイルスに絡む問題に触れていくと止めどなく書きたいことが頭に浮かんでいきます。今回の記事はタイトルを「ネット議論の現状と課題 Part2」としたとおり前回記事の続きにあたる内容を綴らせていただきます。
さて、前回記事「ネット議論の現状と課題」の最後に紹介した方から新しいコメントをいただきました。日曜夜に「つまり公務員への批判は晒上げて、擁護派に叩き潰してほしいってこと?」というコメントがあり、すぐ私からは次のようにお答えしていました。
公務員はシステム的に問題があるさん、コメントありがとうございました。IPアドレスを確認したところ「OTSU」さんであるようですが、残念ながら私からの「お願い」についてご理解いただけなかったようです。
今回の記事本文の中で説明したとおり批判意見をうかがえることの貴重さを感じ取っています。そのため「公務員への批判は晒上げて、擁護派に叩き潰してほしい」という考えなどはまったくありません。
公務員はシステム的に問題があるさんが短いコメントをお寄せくださる意図や目的があるのだろうと思いますが、今後もお付き合い願える場合、せめてハンドルネームだけは固定されるようよろしくお願いします。
ちなみにブログの管理機能として、寄せられたコメント一つ一つのIPアドレスが確認できるようになっています。パソコンやスマホなどの利用した機器が異なれば一致しませんが、ハンドルネームを固定されていない方に対応する場合の目安となり得ます。
上記のコメントを投稿した翌朝、パソコンを起ち上げると「市民」というハンドルネームの方からコメントが入っていることを確認しました。そのコメントの内容は次のとおりでした。私からのレスに対し、その夜のうちに次の内容のコメントをお寄せいただいていました。
じゃあ「市民」で固定。わざわざ記事建てして晒されてるわけだけど、張り付けたニュースでは2重チェックしてるのにミスを連発し、返還要求するだけで公務員は何の責任も取ってないよな。
でもしか公務員と呼ばれてた頃からなにも進歩してないな。と怒りを覚えて書き込んだのよ。14日にはいわき市でもミスが起きてるし。
これに限らず、公務員がミスをしました不正をしましたというニュースの後には対策内容やその効果が明かされることがないし、知ろうとしても知ることができない。公務員は同じ公務員の失態を他山の石としていないように感じる。
ま、いち公務員、管理人にこんなこと言っても改善なんてしないだろうし意味なんてないんだろうけど。
土曜の朝、ハンドルネームの固定化など私からの「お願い」にご理解いただけたことを感謝するコメントを取り急ぎ投稿しています。その際、市民さんのコメントに対してお答えすべき点を新規記事で詳述することをお伝えしていました。今回、ネット議論における前向きな意味合いで、せっかくの機会だととらえています。
それまでの短文のコメントに比べ、青字で紹介している上記の市民さんのコメント内容は様変わりしています。公務員への罵倒が中心だった以前の内容とは異なり、どのような点が問題だったのか、事実関係が分かる記述となっていました。前回の記事内容が切っかけであれば何よりなことです。
まず「わざわざ記事建てして晒されてるわけだけど」というご指摘ですが、これまで寄せられたコメントの内容を当ブログの記事本文の中でそのまま紹介するケースが数多くありました。私自身がコメント欄から距離を置き、週末に更新する記事本文に軸足を置いているという事情もあります。
さらにネット上にコメント投稿するという行為は広く不特定多数の方々に自分の意見を発信するというものです。一度、コメント欄に投稿した文章が新規記事の中で紹介されることで「晒されてる」というご指摘は当たらないものと考えています。切り取った内容を紹介することよりもフェアな関係性に近付くようにも受けとめています。
続いて、市民さんが問題視している公務員のミスの問題について書き進めていきます。市民さんから紹介されたサイト『10万円の「特別定額給付金」二重払い相次ぐ…過払い分を使うと法的責任問われる?』には下記のミスのことが取り上げられていました。
大阪府摂津市が事務的ミスで、60代の男性に対し住民税約1500万円を過大に還付していたことが関係者への取材で明らかになった。男性は「還付金は既に借金返済や株取引の損失補塡に充ててしまったので返還できない」と説明している。
市側は返還を求めて法的手段に訴える意向を示しているが、男性の代理人弁護士は「返納請求を受けた時点で使い切っていたので、返還義務はない」と主張している。
弁護士によると、市は2018年7月、男性の口座に住民税の「配当割額及び株式等譲渡所得割額」の還付金として、1667万5577円を振り込んだが、府の調査でミスが判明。本来の還付額は165万5577円だった。市は19年10月に「多大な迷惑をかけたことをおわびする」と謝罪し、差額約1500万円の返還を求めた。【毎日新聞2020年5月26日】
上記のような大きな額のミスが取り沙汰されていた中、10万円の特別定額給付金の二重払いが頻発していることに市民さんは憤り、過払い分を全額返還しなければならない法制度面の理不尽さについて問題視していました。さらにミスを起こした後の責任の処し方や再発防止の具体的な対応策が見えづらいことにも憤られています。
「一律10万円の特別定額給付金」に寄せられた複数のコメントから上記のような憤りを推測していました。ただ「二人体制でヨシ!」とは何を指しているのか、どのような事案に対して憤られているのか不明確だったため、具体的な内容のレスができない関係性だったと言えます。ようやく論点が分かり、今回の記事本文につながっています。
「いち公務員、管理人にこんなこと言っても改善なんてしないだろうし意味なんてないんだろうけど」とあまり期待されていませんが、私自身が把握していること、私自身の責任でお伝えできる内容を説明させていただきます。
実は「二人体制でヨシ!」という言葉がダブルチェックのことを指しているのではないかと推測していました。確信を持てなかったため、批判されている訴えの全体的な論点がつかみ切れませんでした。摂津市がダブルチェック体制で事務を進めていながら1桁入力ミスしたことを見過ごしていた場合、たいへんな失態です。
一人の職員のヒューマンエラーだったとしても、ミスの判明まで1年以上かかっていることも大きな問題です。摂津市は今後の再発防止策として、このような組織的なチェック体制の不備を深く反省し、具体的な手立てを講じているはずです。
同じ地方公務員という立場ですが、所属する自治体が異なるため、このような書き方になってしまうことをご容赦ください。「公務員は同じ公務員の失態を他山の石としていないように感じる」という見られ方ですが、この点については明確に否定できます。
他の自治体で発生したミスや不祥事に対し、職員全体で情報の共有化に努め、必要に応じて自らの組織に引き付けた改善策の検討につなげています。すぐ思い浮かんだ一例として福岡市の職員が起こした事故を教訓化し、各自治体は足並みを揃えて飲酒運転の撲滅に向けて動き出していました。
事務作業のダブルチェック体制について、私どもの自治体では「ここまでやるの?」と思うほど細かくなっています。このあたりの問題意識は以前の記事「ヒューマンエラーの防ぎ方」の中で掘り下げています。いずれにしても「ヒューマンエラーは人間が行動すれば必ず起こるもの」という前提で日常業務に向き合っています。
郵送申請による特別定額給付金の支給事務には私も関わりました。数段階に事務作業を分け、それぞれダブルチェックのもとに次の作業グループに送るという手順を定めていました。したがって、各作業段階で気付く不備に関しては何重ものチェック体制で確認していたことになります。
市民さんからのご指摘のとおり全国的には特別定額給付金の二重払いが散見していました。そのような自治体でもダブルチェックをはじめ、確認体制には最大限努力していたはずです。
事実関係として二重払いはマイナンバーカードによるオンライン申請に絡んで目立っていました。迅速性を重視した政府の判断だったのかも知れませんが、皮肉にも各自治体に大きな負担と混乱を生じさせる結果を招いていました。
オンライン申請後に郵送申請した世帯で起きがちなミスですが、市民さんの示したいわき市での二重払いも職員の事務処理に誤りがなければ防げたようです。他者に責任転嫁することなく、二重払いは防がなければならないミスであり、各自治体は速やかに謝罪し、深く反省しているはずです。
自治体側に責任があっても過払い分は全額返還しなければならない法制度です。民法703条の「不当利得の返還義務」は官民問わない定めですが、市民さんの憤りの一つになっていることは理解できます。
とは言え、起こしてはならない事務上のミスだったとしても当該の職員に賠償を求めるような制度であれば、それはそれで酷すぎるものと思っています。そのため「公務員は何の責任も取ってないよな」という見方が示されています。
しかしながら事務上のミスやその監督責任も処分の対象になる場合があります。重大なミスだった場合、戒告以上の懲戒処分が下される可能性もあり得ます。さらに自治体ごとに定めた基準に基づき処分内容等が公表されるケースも見受けられます。
「公務員がミスをしました不正をしましたというニュースの後には対策内容やその効果が明かされることがない」というご指摘も受けています。確かにミスが発生したことをマスコミは報道しますが、その後の再発防止策等については余程ニュースバリューがない限り、続報することはありません。
各自治体の広報誌やホームページにはお詫びや再発防止策等について一定期間掲げられているはずです。重大なミスや不祥事であれば議会での報告や第三者委員会での検証等も必要になります。そのような扱いも自治体ごとに差があるのかも知れません。摂津市のホームページを閲覧しましたが、還付金のミスに関わる内容は確認できませんでした。
市民さんの憤りや苛立ちを「気付き」の機会とし、各自治体はマスコミが取り上げた情報のその後の伝え方にも重きを置かなければなりません。そもそも積極的な情報開示は住民の皆さんとの信頼関係を高める手段だと考えています。
最後に、マイナーなブログの場で、このような訴えに意味があるのかどうか疑問視されがちです。それでも当ブログを閲覧されている方が一人でもいらっしゃる限り、決して無意味な試みにはならないはずです。ネット議論のあり方を提起した前回記事の後、市民さんのコメントに変化が見られたような意味に感謝しながら今後も当ブログに向き合っていくつもりです。
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