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2020年6月27日 (土)

政治の現場での危機管理

前々回記事「スクープを追うマスコミの特性」の冒頭、突出したスクープを放てる読売新聞の連載記事『政治の現場 危機管理』は様々な意味で興味深く、このブログの題材として取り上げることを予告していました。先週は「緊急事態から新たな日常へ」としましたが、今週末に投稿する新規記事で予告した題材を取り上げてみます。

「総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだごく一部の記者を指す」というトップリーグの存在はフィクションなのかも知れませんが、政府・与党関係者に知らされていない情報を読売新聞が頻繁にスクープしていることは事実です。そのため、首相官邸に深く食い込んでいる読売新聞の記者が存在していることは間違いないのだろうと見ています。

最近の記事「安倍首相へのお願い」「『首都感染』を読み終えて」を通し、現政権に対する辛口な感想をいくつか添えていました。いつもの述べているとおり決して「批判ありき」の論調とせず、具体的な言動や事例を示しながら問題点を指摘するという組み立てを心がけています。このような心構えのもと事実関係に沿って物事を評価していくためにも連載記事『政治の現場 危機管理』に注目していました。

読売新聞は政権に近く、「御用新聞」であるように見られがちです。スクープをつかむためには権力者の懐に入り込むことが有効です。 権力者が嫌がる記事ばかり書く記者は疎んじられ、遠ざかれてしまうはずです。なるべく嫌がる記事は書かない、もしくは表現に配慮する、トップリーグの一員には欠かせない権力者との距離感なのかも知れません。

このような関係性の記者が多ければ「御用新聞」と呼ばれがちとなりますが、特大のスクープや政権中枢の機微を的確に伝えるためには一定程度必要な方策だとも言えます。しかし、権力者から都合良く使われるだけの媒体になってしまうようであればマスメディアとしての存在意義を疑われることになります。

連載記事『政治の現場 危機管理』はトップリーグの一員に目されるような記者が中心となって綴っていることを前提に目を通していました。連載を通した全体的な感想として、政権批判につながるような「ありのまま」を伝えようとする記者の矜持が見受けられた一方、安倍首相のリーダーシップや奮闘ぶりを好意的に取り上げている記述も散見していました。

公明党や野党の動きについても『政治の現場 危機管理』の中で取り上げていました。今回のブログでは主に安倍首相の言動や判断に焦点を当てながら政権中枢の危機管理のあり方として、どのような動きや問題点があったのかどうか振り返ってみるつもりです。

連載第1回目の見出しは「首相の決断 菅氏不在」でした。4月7日に7都府県に緊急事態宣言を発令した直後、安倍首相は関係省庁との連絡会議で「宣言を全都道県に拡大すればいいじゃないか」と発言していました。この発言に菅官房長官をはじめ、出席者はあっけにとられたことを伝えています。

安倍首相が2月下旬に学校の一斉休校を打ち出した際も菅官房長官は蚊帳の外であり、減収世帯への30万円給付という政策にも菅官房長官を絡ませていませんでした。新型コロナウイルスという未知の脅威にさらされるまで官邸の危機管理は菅官房長官と事務方トップの杉田和博官房副長官が主に担ってきました。

政権の屋台骨である菅官房長官は「首相と判断が違ったことはない」と豪語していたそうです。新型コロナウイルスという危機管理の局面で、二人三脚だった安倍首相と菅官房長官との関係性から安倍首相の独壇場に官邸内力学が変化していました。この背景には「ポスト安倍」を巡る安倍首相と菅官房長官との温度差があるものと見られています。

第2回目の見出しは「読めぬ民意 発信不発」でした。 全戸への布マスク2枚配布は首相周辺が発案し、安倍首相自身も「いいと思った」とのことです。外出自粛を呼びかける動画を星野源さんのSNSに投稿した際は「若者に受けますよ」と首相秘書官の一人が持ちかけていました。

旬外れの布マスクは「アベノマスク」と揶揄され、動画は休業や自宅待機で先の見えない生活に苛立つ多くの人々の神経を逆なでしたと記されています。国民の多くが「新型コロナウイルス対策は後手に回っている」と不満を募らせていることを連載記事の中で伝えていました。

安倍を前面に出せば批判の矛先が集中し、安倍の露出を抑えようとすれば「トップの顔が見えない」とたたかれる。首相官邸のリスクコントロールは、袋小路に迷い込んだ感すらある。

上記の記述の後、安倍首相が「民意」のありかをつかみ損ねた危うさを自覚し、「世の中の声が官邸に伝わりにくくなっている。真剣に反省しないといけない」と側近の一人につぶやいていたことを明かしています。第2回目までの連載記事を読み、新型コロナウイルスに対する官邸の危機管理の迷走ぶりや問題点を率直に伝えているという印象を持ちました。

さらに危機管理における菅官房長官の力量に比べ、安倍首相の独壇場の危うさを浮き彫りにしているような底意も感じ取っていました。それでも連載記事全体で見れば、肯定的な評価につながる安倍首相の言動を紹介する記述も随所に目立っていました。

安倍首相自身は情報発信に意欲的で、記者会見の司会役の長谷川栄一内閣広報官に「どんどん質問者を当てればいい。自分が倒れるまで、質問に答える」と漏らしていたことを伝えています。しかし、周囲のスタッフが他の公務との兼ね合いを考慮し、記者会見の時間を区切っていると説明していました。

新規感染者が増加し、病床確保の動きが鈍かった際、安倍首相自ら軽症者の受け入れ先となるホテルの確保に動いていたことも伝えています。どこのホテルも風評被害を恐れて自発的に手を挙げてくれるとは思えなかったため、アパホテル・グループの元谷外志雄代表に直談判したとのことです。

一方で、事実関係としてその通りなのかも知れませんが、厚生労働省の判断の甘さや対応の不手際に関する記述が連載記事の中で目に付きました。当初、厚生労働省が「ウイルスはインフルエンザみたいなもの」という甘い見立てを上げていたため、官邸の水際対策が立ち遅れたと伝えています。

厚生労働省が新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく「新感染症」に指定できないと結論付けたことをはじめ、中国武漢からの帰国者の検疫時の停留に猛反発していたことも明かしています。厚生労働省が停留に及び腰だったのはマンパワー不足のため、手間のかかる仕事に労力は割けないという事情があったようです。

政府関係者が「厚労省は何をやるにせよ、今までと違うことを極度に嫌がる」と半ばあきらめ顔で語っていたことを伝えていました。どのレベルの政府関係者なのか分かりませんが、そもそも平時から限られた人員で膨大な厚労行政に追われて「強制労働省」と呼ばれている実情を重く認識しなければならないはずです。

連載の最終回では新型コロナウイルス感染症対策の総合調整にあたる行政組織が事実上なかったことを伝えています。武漢からの帰国者対応に内閣官房の危機管理の事態室が成り行きで当たることになり、感染症の知見を持つ医系技官もいない中、戸惑いながら職員は忙殺されていました。このような不充分さが事態室の職員の自殺を招いていたとしたら痛恨の極みです。

『政治の現場 危機管理』は問題視すべき点をしっかり取り上げているため、読売新聞の取材チーム自体は政権との距離感やバランス感覚に留意していることがうかがえました。そのような連載記事の中でも首相官邸からの情報が手厚く、前述したとおりトップリーグの一員に目されるような記者の姿も想像しながら目を通していました。

最後に、水曜日に専門家会議の廃止が唐突に発表されましたが、この判断が正しかったのかどうか疑問です。いずれにしても新型コロナウイルスに対する危機管理は道半ばです。今後より望ましい判断や対策がはかられていくことを強く願っています。

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2020年6月20日 (土)

緊急事態から新たな日常へ

新型コロナウイルス感染症拡大防止のための緊急事態宣言は5月25日に全面的に解除されました。金曜日には都外への移動自粛も解除されています。前回記事「スクープを追うマスコミの特性」の最後に休日出勤が久しぶりの週末の外出だったことを記していました。ようやく今週末、仕事ではなく、久しぶりにプライペートな予定で外出しています。

徐々に以前の日常に近い生活パターンに戻りつつあります。しかし、危険なウイルスが消えた訳ではなく、効果的なワクチンや治療薬が完成している訳ではありません。そのため、いつ感染爆発に見舞われるか予断を許さない状況が当分続くことになります。

症状の表れない感染者がどこにでもいる、もしかしたら自分自身が知らない間に感染しているかも知れない、このように考えた時、「三密」等の重要性が身にしみてきます。2週間後も元気な自分でいるため、周囲に迷惑をかけないため、新たな日常に向けて最大限努力していくことが求められています。

新型コロナウイルス感染症対策は決して緩めずに新たな日常としての組合活動も徐々に再開しています。緊急事態宣言が発出された以降、開催を見合わせていた定例の執行委員会は広い会議室を借り、ソーシャルディスタンスを意識しながら行なっています。

私が役員を務めている連合地区協議会はリモート会議を開いています。私自身、リモートでの会議は初めての経験でした。そもそも自宅のノートパソコンにカメラ機能等が標準装備されていたこと自体、把握していませんでした。

戸惑いながらZoomミーティングに臨んた訳ですが、何か手違いがあったようで私をはじめ、数名のメンバーは音声だけの参加にとどまっていました。次回もリモートでの開催が予定されていますので無事に映像デビューできれば何よりです。

前々回記事「『首都感染』を読み終えて」を通して未知のウイルスの脅威を伝えていました。この新型コロナウイルスも同様であり、新たな感染者がゼロとなり、パンデミックの終息が宣言されるまでは細心の注意を払っていかなければなりません。

したがって、11月以降の組合定期大会や職員家族クリスマスパーティーの開催方法なども今後の感染状況を見定めながら検討していく予定です。そのような中で会計年度任用職員制度の確立に向けた継続課題や課を越えた応援体制のあり方などについて労使協議を進めています。

新型コロナウイルス関連は緊急事態であり、必要に応じて課を越えた応援体制を了解していました。特別定額給付金10万円の支給事務は全庁的な応援体制で対応しています。組織全体で突発的な業務や繁忙職場を支え合っていくことは必要です。

ただ非常時以外に課を越えた応援派遣を行なう場合、派遣する側の職場や職員の負担も考慮しなければなりません。組合側から申し入れ、この機会に市当局と臨時応援体制のあり方についての協議に入っていました。

会計年度任用職員制度の確立に向けた労使協議を本格的に再開するにあたり、月給制の会計年度任用職員の方を対象に組合加入を呼びかけています。もともと私どもの組合には常勤職員の他に月給制の会計年度任用職員の皆さんが多数加入されています。

今年4月から会計年度任用職員制度が始まりましたが、それまでは嘱託職員として保育園、学童保育所、図書館、学校事務の職場などを中心に組合員総数1200人弱のところ200人近くの方が組合員となっています。さらに嘱託職員の方も組合執行部に加わり、これまで組合活動をともに担い、当事者の皆さんの声を市当局にしっかり届けながら労使交渉を重ねています。

今後も会計年度任用職員の皆さんの待遇改善をはかるため、市当局との労使協議に力を注いでいきます。一人でも多くの方に組合加入いただくことで、よりいっそう当事者の声を反映した労使協議につなげていけるものと考えています。

新年度第1回目の中央の安全衛生委員会も月曜午後に開きます。人事異動等によって交代のあった各部委員会の委員選出を確認する予定です。組合からは職員の安全衛生面からの新型コロナウイルス対策の勤務体制の検証などを議題として提起しています。

他に人員確保・職場改善要求における継続課題の点検も進めています。4月に欠員が生じていた職場に対し、7月までに補充できるように努めることを確認していました。しかしながら緊急事態が続いていたため、採用試験の時期を延期せざるを得ず、新規採用を必要とする職種の欠員補充は秋以降になることを了承していました。

兵庫県加西市の動きについては組合ニュースで次のように組合員の皆さんに周知しています。4月に投稿した記事「一律10万円の特別定額給付金」のコメント欄にお寄せいただいたご意見を参考にし、迷わずに組合員の皆さんに呼びかけることができています。

自治体の財源に充てるため、職員に支給された給付金10万円の寄付を募る首長が見受けられます。しかしながら今回の給付金は「全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ちを持ち、人々が連帯して一致団結する」ことを目的とし、国民全員に支給する趣旨のものです。職員の寄付を前提にした事業の予算化は問題であることを指摘しなければなりません。

雑多な話題を駆け足で書き進めてきました。最後に、東京都知事選についても触れさせていただきます。組合ニュース最新号の内容をそのまま紹介します。当たり前なこととして、もともと一票を投じる判断は組合員の皆さん一人ひとりに委ねています。

その上で組織として一定の判断を下す重要性や取り組む意義などを丁寧に情報発信しながら組合員の皆さんからご理解ご協力を得るように努めています。そのため「自主投票」という言葉は使わないようにしています。緊急事態から東京の新たな日常を託せる候補者を充分吟味し、必ず投票所には足を運んでいただけければと願っています。

東京都知事選挙は6月18日に告示され、7月5日に投開票日を迎えます。現職をはじめ、知名度の高い複数の候補者が競い合っています。連合東京は政策要求や労働問題を通し、小池都知事との協力関係を築いてきているため、今回の都知事選にあたって現職を支持しています。

自治労組織内の国会議員が所属する立憲民主党は宇都宮健児候補を支援しています。このような情勢を踏まえ、自治労東京都本部は特定の候補者の推薦や支持を見送ることを決め、私どもの組合も同様な対応をはかります。

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2020年6月13日 (土)

スクープを追うマスコミの特性

前回記事は「『首都感染』を読み終えて」でした。相場英雄さんの『トップリーグ』や堂場瞬一さんの『警察回りの夏』に関してもそのうち当ブログで取り上げることを考えていました。それぞれ「2」や「秋」「冬」が付いたタイトルの続編も読み終えています。共通している主題はスクープを追うマスコミの特性です。

スクープ、特ダネのことですが、新聞や雑誌の記者であれば世間に知られていない貴重な情報を他社に先駆けて報道したいという願望を誰もが持っているようです。それぞれの著書を読み、スクープを追うことが記者の本能や習性とも言える行動目的であることを改めて認識できる機会となっていました。

スクープを飛ばすことで売上増につながり、記者本人の評価が上がる訳ですが、公益的な意味合いも決して小さくありません。権力側が自分たちにとって都合の悪い情報を隠してしまった場合、有権者らから正当な評価を受ける関係性を歪めていることになります。権力側の不適切な行為を制御し、監視機能の一つとしてもスクープの重要性を考えることができます。

トップリーグとは「総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだごく一部の記者を指す」と説明されています。取材対象に近付き、信頼関係を築くことでスクープが得られやすくなります。東京高検の黒川前検事長と新聞記者のマージャンを通した交流もそのような関係性の延長線にあったのだろうと見受けられます。

しかしながら仮にスクープを連発していても権力側に取り込まれ、都合の良いリーク情報の報道にとどまるようであれば親密な関係そのものが批判されなければなりません。『警察回りの夏』は「特ダネを物にしたい思いは募り、警察関係者から特ダネをリークされて記事に。しかしそれは誤報であり、世論からのバッシングを受ける事態」となったことが描かれています。

このような書籍を当ブログで取り上げようと考えた切っかけは読売新聞の最近のスクープです。5月18日付の読売新聞は朝刊の一面トップに「検察庁法案見送り検討」と見出しを打ちました。「政府・与党近く最終判断」と続けていましたが、スクープされた時点で大半の政府・与党関係者は「寝耳に水」の話だったようです。

このスクープに接し、トップリーグのことを思い浮かべ、間違いなく官邸からのリーク情報だろうと推測していました。読売新聞は5月26日から『政治の現場 危機管理』という連載記事を始めています。第1回目の見出しは「首相の決断 菅氏不在」でした。

突出したスクープを放てる読売新聞の連載記事は様々な意味で興味深く、前述したとおり最近読んだ『トップリーグ』や『警察回りの夏』を紹介しながら機会を見てブログの題材にしてみようと考えていました。その際は『政治の現場 危機管理』に焦点を当てるつもりでした。

結局、先週日曜に配信された共同通信のスクープが注目を集めていたため、今回の記事は別な題材に差し替えています。『政治の現場 危機管理』のことは改めて次回以降の記事で取り上げる予定です。

さらに今回、紹介する他のサイトの記事内容だけで相当な分量となりますので、読み終えた書籍の中味を取り上げることも見送ります。あらすじなどはリンク先をご参照願えれば幸いです。最近、波紋を広げたスクープを紹介しながら、いろいろなことを考える機会につなげてみるつもりです。

香港への国家安全法制の導入を巡り、中国を厳しく批判する米国や英国などの共同声明に日本政府も参加を打診されたが、拒否していたことが6日分かった。複数の関係国当局者が明らかにした。中国と関係改善を目指す日本側は欧米諸国に追随しないことで配慮を示したが、米国など関係国の間では日本の対応に失望の声が出ている。

新型コロナの感染拡大などで当面見合わせとなった中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向け、中国を過度に刺激するのを回避する狙いがあるとみられる。ただ香港を巡り欧米各国が中国との対立を深める中、日本の決断は欧米諸国との亀裂を生む恐れがある。【ワシントン共同2020年6月7日

共同通信社は国内、海外のニュースを取材、編集して全国の新聞社、NHK、民間放送局、海外メディアに配信しています。したがって、上記のスクープ記事は複数のメディアが一字一句同じ内容をそのまま伝えていました。しかし、下記のとおり自民党の国会議員を中心に「誤報ではないか」と批判する声が上がっていました。

共同通信は6月7日、中国による香港版国家安全法制の導入について「日本政府は欧米から打診された中国を批判する共同声明への参加を拒否した」と報じた。しかし、日本の国会議員らは報道内容は「事実と異なる」と指摘している。日本政府はすでに5月28日、安全法制導入をめぐり、駐日中国大使を呼び出し、深い懸念を伝えている。

共同通信ワシントン支局は7日、匿名の関係国当局者の話として、日本政府が参加を拒否した理由を挙げている。「中国と関係改善を目指す日本側は欧米諸国に追随せず」「習近平国家主席の国賓訪日に向けて中国を刺激するのを回避する狙い」。これについて、「米国など関係国の間では日本の対応に失望の声が出ている」と書いている。

香港版国家安全法制は5月、中国の全国人民代表大会(全人代)で可決した。香港当局が反体制派と見なした勢力の言論や行動を一層厳しく鎮圧する法律となる。菅義偉官房長官は28日の記者会見で、「国際社会や香港市民が強く懸念する中で(採択が)なされたことや、それに関連する香港情勢を深く憂慮する」と述べた。

同日、外務省・秋葉剛男外務事務次官は、孔鉉佑駐日中国大使を呼び、香港情勢への懸念と、香港は「我が国にとって緊密な経済関係および人的交流を有する極めて重要なパートナー」であり、一国二制度の維持を支持するなどの申し入れを行った。

同通信6月7日付の記事のなかにある「共同声明」が、どの声明を指すかは報道にない。5月28日、英語圏多国間情報協定ファイブ・アイズに加盟する5カ国のうちニュージーランドを除くアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダの4カ国の外相が、香港版国家安全法制について批判声明を発表しており、これを指すと見られる。

菅官房長官は8日の定例記者会見で、「共同声明の拒否」に関する一部報道についての質問に答えた。菅長官は「ほかの関係国に先駆けて、直ちに『深い憂慮』を表明し、強い立場をハイレベルで中国側に伝達した。国際社会にも明確に発信している」と述べた。また、米英をはじめとする関係国は、香港情勢をめぐる日本の対応を評価しており、「失望の声が伝えられているという事実は全くない」とした。

日本の国会議員は相次ぎ誤報であるとの指摘を行った。長尾敬衆議院議員は7日、「日本政府が米国や英国などの共同声明に参加を打診された、という事実はないようだ」とツイートした。

片山さつき参議院議員も同日、外務次官との話として「G7で香港問題につき中国大使を呼んで抗議したのは日本だけ」とし、日本は香港版安全法制について否定的な態度をすでに表明していることを強調した。「声明には独仏も参加しておらず、突然言われても、というだけの話だそう」と、共同声明への参加の呼びかけも確認できていないとした。

山田宏参議院議員は同日、「酷い印象操作記事。当初、各国足並みの揃わない時期未定の共同声明ではなく、速やかに明確な形でわが国が独自の声明を出した。後追いでEUが同様の『深い懸念』声明となったというのが事実」と書いた。

また、海外メディアも共同通信の記事内容を引用していることを受けて、「外務省に速やかに正確な情報発信をするよう要請した。不審火は即座に消さないと大変なことになる」と書いた。共同通信の記事は英語版「Kyodo News」でも配信され、これまでに通信社のブルームバーグ、ロイターがそれを引用して報道している。

元共同通信記者である青山繫晴参議院議員は、7日からのブログ記事で、共同通信の記事には「いつ、どこで、どの国の誰から、どのように打診されたかが、全くない」と報道記事の要素が抜けていると指摘。「共同通信の信頼性にとって、あり得ないほどの致命的な不祥事」と厳しく批判した。

香港の自由と民主主義の危機を憂慮する、25カ国の230人以上の国会議員らは、中国政府に対して香港版国家安全法制の撤回を求める声明に署名している。自民党の有志議員らも参加を呼び掛けている。声明は、香港の高度な自治を2047年まで保障した中英共同宣言に対する「明白な違反」と指摘している。【EPOCHEPOCH TIMES2020年6月8日

事実関係として米英などの共同声明に日本が加わらなかったことは明らかです。「日本の対応に失望」という声がどのようなレベルのものであったのかどうかは不明確です。「日本の決断が欧米諸国との亀裂を生む恐れがある」は配信した共同通信の記者の予測であり、事実だと断定できない内容です。

このような点を押さえながら下記の記事にも目を通した時、また異なる見方に至ります。そもそも自民党の国会議員も「日本はこうあるべきだ」という考え方をもとに「共同通信のスクープは誤りだ」という前提で批判しているようにも思えます。

「日本、中国批判声明に参加拒否 香港安全法巡り、欧米は失望も」 いま、6月7日に共同通信が配信したこんなニュースが波紋を呼んでいる。香港での反政府活動をより強く取り締まれるようにする「国家安全法制」の導入を巡り、中国を厳しく批判する共同声明を米国、英国、オーストラリア、カナダの4カ国が5月28日に発表した。共同通信の報道によると、じつは日本政府もこの共同声明への参加を打診されていたにも関わらず、参加を拒否したという。

同ニュースは、米国など関係国から日本に「失望の声が出ている」ことを伝えたほか、参加を拒否した理由を「習近平国家主席の国賓訪日実現に向け、中国を過度に刺激するのを回避する狙いがあるとみられる」と分析している。この報道に、ツイッター上では有名人を含む多くの人が反応した。

サッカー元日本代表の本田圭佑選手(33)はこう怒りを表明。《中国批判声明に日本は参加拒否って何してるん!香港の民主化を犠牲にしてまで拒否する理由を聞くまで納得できひん。》 格闘家の高田延彦氏(58)はこう反応した。《驚いたね!中国の香港への仕打ちに日本は「いいね」するのか!賛成票と同じだぜ!》

一方、火消しに走ったのは自由民主党の議員たちだ。自民党の長尾たかし衆議院議員(57)はツイッターで《誤報の可能性が非常に高い》としたうえで、《「米国や英国などの共同声明に日本政府も参加を打診された」という事実はない、ようです》と参加への打診があったこと自体を否定。

片山さつき参議院議員(61)はこうツイートした。《たった今外務次官と話しましたが、G7で香港問題につき中国大使を呼んで抗議したのは日本だけ!外相も官房長官も明確に発言!その声明には独仏も参加しておらず、突然言われても、というだけの話だそう》 外務次官に直接確認したという片山氏は、長尾氏とは違って、《突然言われ》と参加の打診があった旨は認めているようにみえる。

ちなみに、欧州連合(EU)は5月29日に香港問題について中国政府を非難する声明を出しており、独仏はEUの一員としてこちらの声明に参加している。《共同通信のフェイクで確定》《誤報というより、虚偽記事です。》 自民党議員などの一連のツイートを受け、政権支持層からは共同通信の報道を“誤報”と決めつけるような声が挙がったのだが……。

6月8日の定例記者会見で、菅義偉官房長官(71)は、「共同声明への参加の打診があったのか、拒否をしたのか」と事実関係を問われ、こう答えた。「我が国は関係国にさきがけて、直ちに私および外務大臣から『深い憂慮』を表明するとともに、秋葉外務次官が孔鉉佑駐日中国大使を招致し、こうした我が国の立場を直接明確に申し入れを行っています」

さらに、国際社会に日本の立場は明確に発信しているとしたうえで、「米国や英国をはじめとする関係国は我が国のこのような対応を評価しており、失望の声が伝えられるという事実はまったくありません」と主張した。だが、「打診の有無」「拒否したか否か」については、「外交上のやりとりについてひとつひとつお答えすることは差し控えます」とまったく答えなかった。

菅官房長官の会見を受けて、政権支持層を中心としたアカウントが《共同のフェイク確定》《共同は謝罪と訂正をするべき》とツイッター上で盛り上がり始めたが、《論点をずらして誤魔化してたけど、「英米加豪の声明に日本も打診されたが断った」という共同の記事を否定したわけじゃない》《これなにがフェイクなの?参加拒否してなかったなんて菅さん一言も言ってないよね》と冷静な指摘も多かった。

確かにこのような打診が一切ない場合、これまでの会見の例から見ても菅官房長官は「ご指摘のような事実はない」などと否定する可能性が高い。ちなみに、日本が香港問題について示したのは「深い憂慮」という立場。「憂慮」とは「深く心配すること」といったような意味だ。

日本政府は香港の“一国二制度”の重要性については言及しているものの、米英などの共同声明のように「香港の人たちの自由」が奪われることに懸念を示したり、今回の法律が「一国二制度を定めた英中共同宣言に違反する」ことについての言及などはしてこなかった。

一部の自民党の関係者からは、「日本はすでに“独自の声明”を出しているので共同声明への参加は不要」といった意見も散見されるが、“深い憂慮”と米英などの共同声明を同一視したら、それこそ各国の失望を買うことになるだろう。

共同声明への参加の打診について否定しなかった菅官房長官。共同通信の報道で唯一否定をしたのが、関係国から「日本の対応に失望の声が出ている」という部分だけだが、「失望の声」がまだ届いていない可能性もあり、共同通信の報道を“フェイク”と断ずるには相当の飛躍が必要になりそうだ。【@niftyニュース2020年6月9日

その後、安倍首相は「日本がG7で“香港保安法”の反対声明を主導したい」と述べています。安倍首相がそのように考え、衆院予算委員会で発言したことは事実です。しかし、この発言によって共同通信のスクープを誤報だったと結び付けることはできません。

身内からも強い批判の声が上がり「深い憂慮」だけでは不充分だと判断し、軌道修正をはかった可能性が考えられます。もしくは米英などの共同声明に日本が加わらないと決めた際に安倍首相は関与していなかった、あり得ない話ですが可能性はゼロではありません。

もちろん共同声明のスクープそのものが事実無根という可能性も否めません。もし誤報だったとすれば、すみやかに訂正して謝罪しなければならないほどの大失態だと言えます。しかし、現時点までにそのような動きはなく、一度掲載した共同通信の配信記事を取り下げたのは産経新聞一社にとどまっているようです。

元大阪市長の橋下徹さんの「日本は英米加豪の中国非難声明に参加するべきだったのか」という論評をPRESIDENT Onlineで目を通すことができます。すでに相当な長さの新規記事となっていますので全文を掲げることは控えますが、香港の「一国二制度」の問題をフェアの思考で考えた時、また違った見方があり得ることを提起されています。

個々の出来事に対し、立場や視点を変え、多面的に見ていくと評価が変わる事例の一つとして橋下さんの論評にうなづけるものがあります。興味を持たれた方はリンク先のサイトをご参照ください。

たいへん長い記事となりましたが、マスコミのスクープをキーワードとし、多面的な情報を提供する機会とさせていただきました。いずれにしても「答え」を押し付ける場ではないため、読み手の皆さんがどのように受けとめられるのか、本当に様々なのだろうと考えています。

最後に、特別定額給付金事務の応援のため、久しぶりの休日出勤、それどころか外出すること自体が本当に久しぶりの週末となりました。だからと言う訳ではありませんが、他のサイトの紹介を中心とした新規記事となっていることをご容赦ください。

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2020年6月 6日 (土)

『首都感染』を読み終えて

1か月前の記事「最近、読んだ本」の中で緊急事態宣言が発出された後、外出を自粛しているため手にする書籍の数が増えていることを伝えていました。いつも立ち寄る書店の感染症関連書籍の特設コーナーでは『復活の日』と『ペスト』を購入し、その2冊をブログ記事で取り上げていました。

実は高嶋哲夫さんの小説『首都感染』に興味がありましたが、その日の特設コーナーでは見つけることができませんでした。現在の事態を予見したような内容が評判になっていたため、売れ切れていたのかも知れません。そのうち手にすることができるのだろうと思い、予約注文もせず、特に探し回ることもしませんでした。

先日、雑誌が並ぶコンビニの書架で『首都感染』を見かけ、すぐレジに持ち込みました。アマゾンのカスタマーレビューでは星4つ以上が9割近くを占めています。読み終えた私自身の感想としても期待を裏切らず、たいへん面白い書籍だったと言えます。とりわけ現在進行形の新型コロナウイルスの問題と対比し、いろいろな思いを巡らすことができました。

20××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、スタジアムから遠く離れた雲南省で致死率60%の強毒性インフルエンザが出現! 中国当局の封じ込めも破綻し、恐怖のウイルスがついに日本へと向かった。検疫が破られ都内にも患者が発生。生き残りを賭け、空前絶後の“東京封鎖”作戦が始まった。

上記はブックカバーにも掲げられている書籍の紹介文です。後付けの説明には2010年12月に書き下ろし作品として刊行されたことが記されています。ただ本文中に東日本大震災の記述もありました。そのため、2013年の文庫本化にあたり、少し手を加えられたように見受けられます。

いずれにしても人々が感染症の怖さを忘れた頃に『首都感染』は執筆されていました。文庫本の解説で書評サイトHONZ代表の成毛眞さんが「高嶋哲夫さんはじつは小説家などではなく、予言者なのではないか」と語っています。私自身、高嶋さんの作品に詳しくなかったため、成毛さんの次の解説を読んで驚きました。

東日本大震災の6年前に『TSUNAMI』を発表したことは驚くべき先見性のあらわれです。この小説は東海大地震によって発生した津波をテーマにしているのですが、その津波の高さは20メートルに達し、小説のなかの架空の原発では冷却ポンプが停止、メルトダウンの直前まで事態は悪化するのです。

小説を読んだときにはそんなバカなことが起こるわけがないと思ったのですが、いまはそれ以上のことが現実に起こってしまったことを知っています。これだけを見ると高嶋さんが予言者に見えておかしくはありません。

そして今、新型コロナウイルスの脅威に全世界が覆い尽くされています。『首都感染』は小説という形を取っていますが、医学や科学的なデータをもとに想定された様々な出来事が描かれています。荒唐無稽な絵空事ではなく、いつ起きてもおかしくないという現実感のある物語に読者を引き込んでいます。

巨大津波による原発事故を予見した高嶋さんは10年前から新型ウイルスのパンデミックについて警鐘を鳴らしていたことになります。現実のコロナウイルスは致死率60%に及ばないため、今のところ不幸中の幸いなところもあります。しかしながら今後変異し、小説同様、あるいはそれ以上の猛威にさらされる恐れも決してゼロではありません。

小説を読み終えて印象に残った箇所をいくつか紹介していきます。2008年4月に投稿した「新型インフルエンザ」という当ブログの記事の中で、WHO(世界保健機構)が「新型インフルエンザは、起こるか起こらないのかの問題ではなく、いつ起こるかの問題だ。明日起こっても不思議ではない」と警告していることを紹介しました。

翌年5月の記事「憲法記念日に思うこと 2009」の冒頭では「あれから1年、予期していた鳥ではなく、豚を感染源としてパンデミック(世界的大流行)の一歩手前となる警戒レベル、フェーズ5の脅威に私たちは直面しています」と記していました。

豚インフルエンザのその後の顛末については『首都感染』の中で「世界を一巡したウイルス災害は50万人以上の死者を出して、終息した。これは季節性インフルエンザとほぼ同じ数だ」と綴られています。「日本での死者は約1万人、例年並みの被害で終わったわけですな。あの騒ぎは何だったのでしょうかな」と財務大臣が皮肉を込めて言い、大打撃を受けた経済の落ち込みを問題視した場面があります。

実際に振り返ってみても豚インフルエンザによって深刻な被害を受けたという記憶は刻まれず、今回、新型コロナウイルスが取り沙汰された初期の段階での危機意識の薄さにつながっていたように思っています。政府関係者も含め、大多数の日本人が同様であり、このような過去の経緯から認識が甘くなり、入国規制等の初動の遅れにつながっていたのではないでしょうか。

小説の中でも空港閉鎖等の是非を協議する場面では外交問題や経済損失を心配する閣僚が多く登場します。主人公はWHOのメディカル・オフィサーだった感染症の専門家である内科医です。政府の新型インフルエンザ対策本部の一員となり、踏み込んだ対策に消極的な閣僚たちを説得しながらウイルスの封じ込めに全力を尽くしていきます。

「国として最も有効な対策は何だね」という閣僚からの問いかけに対し、主人公は「感染経路を断つことです。感染経路としては、飛沫感染と接触感染、空気感染などがあります。今回の感染は主に前の二つです。この二つを断つことが第一です」と答え、次のような説明を加えています。

不特定多数の人が集まる所には行かない。それには、不要不急の外出を避けることがいちばんです。やむをえず人に会うときには、対人距離をしっかり保つことです。飛沫は1メートルから2メートル以内に飛び散ります。

それに、手洗い、うがいを徹底する。咳エチケットはご存知でしょう。くしゃみするときにはティッシュで覆うとか、マスクをするということです。マスクは自分のためでもありますが、他人のためでもあるのです。

上記の心得について感染症対策では以前から常識だったことが分かります。主人公の尽力によって国際社会の中で賞賛される徹底的なウイルスの封じ込めを続けます。中国から帰国した感染者はホテルに隔離していました。しかしながら感染経路の不明な感染者を都内で確認し、主人公は都市封鎖の必要性を提起します。

「大都市の封鎖など夢物語だ」という反対意見が多い中、封鎖しなかった場合は日本国内で2千7百万人の命が失われ、封鎖が完璧に行なわれると死者は3百万人という試算を示します。封じ込められた都民に犠牲を強いることになりますが、感染を拡大させない地方から必要な物資等を東京に送ることができる点も主人公は説明します。

都市封鎖、最近はロックダウンという言葉を耳にします。夢物語でも、小説の中の話ではなく、現実の世界で実際に行なわれています。ますます高嶋さんを「予言者」と呼ぶべき事態が進行していました。幸い日本はロックダウンまで至らず、今のところ医療崩壊を回避でき、緊急事態宣言も全面解除しています。

国際社会の中で日本の対策は「ミラクル」という評価を受けています。政府内に『首都感染』に登場するような傑出した知識と経験に裏付けされた提言を信念を持って繰り出す専門家も、専門家の提言に応える識見と決断力を備えたリーダーも見受けられず、的確な対策が迅速に打ち出されていた訳ではないのにも関わらず、一定の結果が表れていることに驚きと賞賛が集まっているようです。

小説は悲惨な場面が描かれながら都市封鎖の成果も伝えています。しかしながら都市封鎖自体は感染拡大を防ぐための手立てに過ぎず、パンデミックから抜け出すためには効果的なワクチンや治療薬の開発が欠かせないことを強調しています。

そのような流れで物語が進む中、心地良い読後感で終われることだけは申し添えさせていただきます。最後に、小説の中に登場するWHO事務局長がパンデミックの終息を宣言した時の言葉の一部を紹介します。ぜひとも、現実の世界での大国の指導者がしっかり受けとめて欲しい言葉だと思っています。

20世紀の戦争では世界を滅ぼす可能性のある爆弾も使用され、膨大な数の戦死者を出してきました。しかし、この数ヵ月間において人類は、その最大の戦争をも遙かに上まわる不幸な出来事を経験しました。人類の敵は人類ではなく、肉眼では見ることも出来ない、意思も持たずただひたすら自己の増殖を続けるウイルスでした。

このパンデミックは、私たちは私たち同士による愚かな争いに力を使い、心を悩ませるのではなく、心を一つにしてさらに強力な敵に向かう準備をすべきだという教訓を残してくれました。今後も人類はどのような試練が立ちふさがろうと、克服できると信じます。私たちは希望という言葉を人類共通の武器として進んでいくことでしょう。

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