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2020年5月30日 (土)

安倍首相へのお願い

月曜日、緊急事態宣言が全面的に解除されました。緊急事態宣言が解除された後も「密閉」「密集」「密接」という3密などに留意し、感染防止に向けて慎重な対応が求められていきます。新型コロナウイルスの終息まで長い月日を要するはずであり、長期戦の覚悟で「新たな日常」を探っていかなければなりません。

そのような心構えのもと通常に近い勤務体制に戻った際、会計年度任用職員制度の課題など積み残した事項の労使協議を再開する必要があります。他にも取り組むべき組合活動の範囲を徐々に広げていく予定であることを組合ニュースの最新号で伝えています。

さて、前々回記事「時事の話題、いろいろ思うこと」、前回記事「時事の話題、いろいろ思うこと Part2」の中で現政権に対する辛口な意見をいくつか述べてきました。前々回記事の冒頭で改めて紹介した私自身の心構えですが、適切な評価を下していくためには「誰が」に重きを置かず、その言動や判断は正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくことが必要だろうと考えています。

自治労に所属する市職員労働組合の執行委員長を長年務めているため私自身の立ち位置について、いわゆる「左か右か」で分類されれば左寄りに見られているのだろうと受けとめています。そのことを特に否定せず、このブログでは自分自身が発信したい内容を一個人の立場と責任で投稿を続けています。

民主党政権時代には「上司としての菅首相」「脱原発依存の首相会見」など菅元首相に対する辛口な意見の投稿も重ねていました。その際、心がけている点として、できれば菅元首相にも目を通していただきたい、つまりご本人を前にしても語れる言葉で文章を綴っていました。

安倍首相に対しても同様です。決して「批判ありき」ではなく、その言動や判断が正しかったのかどうか、具体的な事例を示しながら問題提起や要望を記しています。もちろん私自身の問題意識そのものが必ずしも正しいとは限らず、読み手の皆さん個々人の評価は様々なのだろうという前提での提起やお願いだと言えます。

ただ不特定多数の方々に発信している内容ですので言葉の使い方や表現方法一つ一つに注意しています。そのため、回りくどい言い方になってしまい、うまく私自身の問題意識が伝え切れない時もあります。それでもポジショントークだと思われないように前述した心構えで当ブログと向き合っているつもりです。

このような点を意識しながら幅広い考え方や情報に触れていくことを習慣化しています。すると時々、私からすれば「なぜ、そのように見ることができるのか」と疑問に思う場面があります。やはり基本的な立ち位置が異なる場合、同じ事象に接していても導き出す評価が分かれがちな傾向を感じ取っています。

夕刊フジで麗澤大学国際学部教授の八木秀次さんが『黒川前検事長「処分」に問題なし 野党や一部メディアは黒川氏を“血祭り”にしたいのか』というタイトルの記事を寄稿し、官邸こそが冷静で客観的な政治的意志を排した処分を下したと評価し、一連の問題性を批判している「野党や一部メディアの主張には、黒川氏を血祭りに挙げてやろうという人民裁判的な意志がうかがえる」と論評しています。

黒川前検事長の問題に対する私自身の考え方は前回記事に記したとおりですが、八木さんの「官邸こそが…」という言葉は非常に違和感がある見方でした。この問題の国会での質疑の模様はFNNプライムニュース『「訓告」問題 守りたいのは誰? “傷だらけの大臣”連日の追及』で伝えています。その中の次のような見方のほうが個人的にはうなづけるものでした。

立憲民主党・黒岩宇洋議員「森大臣は、ある意味正直に答えたんです。今までのモリやカケ(森友・加計問題)、桜(を見る会)と同じになっている。総理が答弁しちゃって、それに合わせるため、こんなひどい目にあっている」

野党は、森法相が当初、「処分は内閣が決めた」と説明したものの、その後、「法務省と検事総長が決め、内閣が承認した」と修正したことについて、安倍首相が、処分は検事総長が決めたと答弁したことが原因だとして、森法相に同情を寄せる場面もあった。

公務員の処分の段階は一般的に次のとおりです。退職金の減額等を伴う懲戒処分は免職、停職、減給、戒告となり、監督上の措置としての処分は訓告、厳重注意、注意とされています。

黒川前検事長の訓告処分を判断した際も、もしかしたら安倍首相は深く関与していなかったのかも知れません。そのため「法務省と検事総長が決めた」と言い切っていたのでしょうか。当初、法務省が戒告処分を決めていたのにも関わらず、訓告に変わっていたとするのであれば森法相の発言が正しく、安倍首相は誤った事実関係を述べていたことになります。

安倍首相が嘘をついていた訳ではないと考えれば、安倍首相以外の官邸関係者によって訓告と判断したものと思われます。それはそれで注目を集めている事案に安倍首相が関与していないことの問題性も指摘しなければなりません。

いずれにしても事実関係を正確に把握せず、なぜ、偽りを疑われる発言を安倍首相は繰り返してしまうのでしょうか。そもそも原稿を用意して臨む記者会見の場であれば事前に事実関係を確かめる機会は充分あったはずです。

週刊文春の最新号では今回の黒川前検事長の問題を官邸側は法務・検察側に責任を押し付けようとしていた動きを報じています。官邸の思惑を察知した検察内部からは「あいつら、本当にクソだ!」と怒りの声が上がっていることも伝えていました。「あいつら」の中に安倍首相まで含まれているのかどうか分かりませんが、官邸と検察の溝は深まっているようです。

黒川前検事長の退職金について問われた時、安倍首相は「訓告処分に従って減額されていると承知している」と述べていました。この発言も事実を誤認したものでした。

よく耳にする「安倍首相は息をはくように嘘をつく」という批判の仕方は前述したとおり控えるべき言葉だと考えています。国民の一人として安倍首相を嘘つきだとは思いたくありません。

今回の記事タイトルとした安倍首相へのお願いです。ぜひ、事実関係を正確に把握した上で発言してください。理解や認識に曖昧さがある場合、その旨を告げた上で言い切った発言は慎んでください。もし事実関係を誤認したまま発言した場合、すみやかに訂正してください。

安倍首相を支えている皆さん、安倍首相の発言の中に明らかな誤りがあった場合、できる限り素早く訂正できるようなフォローをお願いします。持続化給付金の支給時期を安倍首相が原稿にあった8日を「最も早い方で8月から入金を開始します」と言い間違えた時、記者会見中にメモを渡して「5月8日」と訂正できたような対応をお願いします。

くれぐれも安倍首相が誤った発言をしてしまったため、その発言内容に沿うように事実関係を取り繕うことは絶対しないでください。重要な方向性を示す政治的な発言も同様です。安倍首相の発言内容に問題があれば修正をはかれる関係性も大切です。少し風向きが変わってきたのかも知れません。最後に、下記のように自民党側が筋を通した報道を紹介させていだたきます。

自民、公明両党は26日の幹事長・国対委員長会談で、国家公務員の定年を引き上げる国家公務員法改正案について、継続審議とする方針を再確認した。22日の衆院厚生労働委員会で、廃案を念頭に見直しの可能性に言及した安倍晋三首相に異議を唱えた格好で、政府・与党は足並みの乱れを露呈した。

26日の会談後、自民党の森山裕国対委員長は同改正案について、公明党との間で18日に継続審議と確認したことに触れ、「与党として確認した方針が変わっているということは、きょう現在ない」と記者団に説明した。

同改正案は、一括審議されていた検察庁法改正案が世論の批判を浴び、政府・与党が今国会成立を断念したあおりで、継続審議の方向となった。しかし、自民党の世耕弘成参院幹事長が新型コロナウイルス感染拡大による民間の雇用悪化を踏まえ、見直しを提唱。首相も衆院厚労委で「民間に先駆けて一律に65歳に延ばすのは性急ではないのかという批判もある」と同調した経緯がある。

しかし、自民党幹部によると、国家公務員法改正案について政府から「廃案にしたい」という話はないという。首相は、法案の扱いに責任を持つ党国対の頭越しに廃案を示唆した形。報道各社の世論調査で内閣支持率が急落したことに「焦りがある」(政府関係者)との指摘もある。【時事通信2020年5月26日

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2020年5月23日 (土)

時事の話題、いろいろ思うこと Part2

前回記事は「時事の話題、いろいろ思うこと」でしたが、たった1週間で状況が大きく変わっています。よりいっそう個人的な思いが募る週末を迎え、「Part2」として書き進めています。

検察庁法改正案を束ねた国家公務員法改正案の今国会での成立を見送るという判断が明らかにされたのは月曜のことでした。さらに週刊文春のスクープによって、渦中の人物だった黒川検事長が辞職するという事態に至っていました。

東京高検の黒川弘務検事長(63)は21日、緊急事態宣言発令下の1日と13日に新聞記者らと賭けマージャンを行ったことを認め、辞表を提出した。22日の閣議で承認される。安倍晋三首相は黒川氏の辞表提出について記者団に対し、「首相として当然責任がある。批判は真摯に受け止める」と語った。

これを受け、政府は後任の人選に着手し、名古屋高検の林真琴検事長(62)の起用を軸に最終調整に入った。林氏は黒川氏と司法修習同期で、早くから将来の検事総長候補と目されてきた。黒川氏をめぐっては、1月末に検事長としての勤務延長を閣議決定。法解釈を変更する異例の手続きを取って黒川氏を重用してきただけに、辞任は政権にとって大きな打撃となる。

首相は新型コロナウイルス対策に全力を挙げ挽回を図る考えだが、求心力の低下は避けられない情勢だ。黒川氏は21日、「緊急事態宣言下における私の行動は緊張感に欠け、軽率に過ぎるものであり、猛省している」とするコメントを発表した。森雅子法相は、黒川氏の勤務延長を決めたことに関し、「閣議請議をしたのは私なので、責任を痛感している」と記者団に表明。黒川氏を訓告処分としたことも明らかにした。

法務省は衆院法務委員会理事懇談会に黒川氏に関する調査内容を報告。黒川氏は賭けマージャンだけでなく、記者側が用意したハイヤーを費用を支払わずに利用したことも認めた。黒川氏に関しては、内閣の判断で検察幹部の定年延長を可能とする検察庁法改正案が同氏の人事を後付けで正当化するものとして野党が批判を強めていた

政府・与党は同改正案の今国会成立を断念。秋の臨時国会での仕切り直しを目指すが、黒川氏の辞任は今後の議論に影響を及ぼしそうだ。21日発売の週刊文春は、新型コロナに対応する緊急事態宣言が発令され、外出自粛が求められる中で黒川氏が賭けマージャンを行ったと報道。野党からは首相や法相の責任を問う声が上がっている。 【JIJI.COM2020年5月21日

いろいろな思いが錯綜し、どこからコメントすべきか迷うほどです。まず何よりも国会審議で黒川検事長の名前が連日取り沙汰され、まして緊急事態宣言のもと様々な行動が規制されている中、重責のある方が極めて軽率な行為を重ねていたことにたいへん驚いています。

懲戒処分ではなく、退職金の減額等を伴わない監督上の措置としての訓告処分にとどまったことも意外でした。6千万円以上と見られている退職金が一切受け取れない「懲戒免職でもおかしくない」という声も耳にしています。

金曜の衆院法務委員会で、賭けマージャンは違法であることを前提としながらもレートが千点百円だったため、法務省の刑事局長は「社会の実情から見て必ずしも高額とは言えない」と答えていました。つまり訓告処分にとどめたことの理由の一つとして説明しています。

このあたりの問題意識について以前の記事(農水省の「ヤミ専従」疑惑)の中で、場合によって個々の案件に対して法律の解釈や運用面において社会通念上の幅があることを記していました。今後、厳格化をはかっていくのであればマージャンの楽しみ方を見直すべき人たちは相当な数に上るのではないでしょうか。

確かに懲戒免職では重すぎるのかも知れませんが、訓告処分が妥当だったという話にはつながりません。国家公務員倫理法でマスコミ関係者は利害関係者に当たらないと規定されています。それでも「職務の公正さを疑われるような接触は厳に慎むべきである」とも記されています。そのため、特定のマスコミ関係者と頻繁にマージャンを重ねていたことの問題性を軽視できません。

さらに緊急事態宣言下での問題行動であり、たいへんな信用失墜行為だったと言えます。そのような問題性が重なり合っているため、これまでの実績等を加味したとしても戒告以上の懲戒処分に至らなかった点が意外でした。「2月に定年を迎えさせておけば…」という温情や内情を熟知した当事者を追い込みすぎないための政治的な配慮が働いたのではないかと疑われかねません。

この問題を受け、安倍首相は特例的に定年延長を閣議決定したことについて「厳正なプロセスを経て請議がなされたと思っております」と述べた上で「法務省そして検察庁において、この人事について請議がなされた訳でありますが、最終的には内閣として決定を出しますので、総理大臣として当然責任があると考えております。ご批判は真摯に受けとめたいと考えております」と語っていました。

これまで様々な場面で安倍首相から「総理大臣として責任がある」「ご批判は真摯に受けとめたい」という言葉が数多く発せられています。他にも「丁寧に説明していきたい」という常套句がありますが、そのような言葉の後、何か具体的な対応や変化があったという記憶はありません。そのため、残念ながら重い言葉の中に「軽さ」を感じ取ってしまいがちです。

同じ日、検察庁法改正案について問いかけられ、安倍首相は「公務員制度改革にあたっては、国民の皆様の意見に耳を傾けることが不可欠であります。国民の皆様の理解なくして前に進めることはできないだろうと思います。そんな中で参議院の世耕幹事長もご自身の考えを述べられた訳でありまして、社会的な状況も厳しい状況にある。この法案を作った時とは状況が違っているのではないかと述べておられ、党にもそうした意見があるとも承知しております。そうした面も含めて検討していく必要があると考えています」と答えていました。

世耕幹事長の発言に違和感を抱いていましたが、その発言を受け、安倍首相まで「公務員の定年延長が国民から理解を得られない」という話を持ち出したことに本当に驚きました。検察庁法改正案と国家公務員法改正案などを一本化した「束ね法案」そのものを廃案にするという方針を耳にして、あまりにも身勝手な論点のすり替えにあきれています。

そもそも問題視されていたのは内閣や法相が必要と判断すれば、検察官の定年が最長3年延長でき、63歳の役職定年制も例外となるという規定です。検察は準司法機関という位置付けがあり、例外規定を一般の国家公務員と同じように設けることの問題性が指摘されていました。検察官も含め、国家公務員の定年を65歳まで延長することに反対意見が目立っていた訳ではありません。

数年前から公務員の定年延長の話は取沙汰されていました。公務員の制度を変更する際、いつも二通りの考え方が浮上します。民間に比べて公務員は優遇されているという批判を避けるため、先走った変更は控えるという考え方があります。その一方で社会全体の流れを作るため、公務員の制度を先行して変更していくという考え方もあります。

上記は3月末に投稿した記事「定年を迎える週に思うこと」の中の一節です。2月には「定年延長の話」という記事を投稿し、進展する少子高齢化による労働力不足を補うため、政府主導のもと70歳までの雇用延長が課題になっていることを記していました。これまでは使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められていました。

今後、高年齢者雇用安定法が改正された場合、70歳までの雇用確保が「努力義務」として求められるようになります。このような動きの中で国家公務員の定年延長が法案化されていました。もし公務員が先行することに大きな批判を受けるのであれば、それはそれで後発になることも仕方ないのかも知れません。

しかし、検察庁法改正案に向かった強い批判を避けるため、公務員やその組合へ批判の矛先を誘導するような意図があった場合、たいへん残念な振る舞い方だと言わざるを得ません。最近の報道によれば安倍首相自身、黒川検事長の定年延長も、検察庁法改正案の例外規定に関しても主体的に判断していなかったようです。

前回記事の中で、評論家の八幡和郎さんの『検察定年法、混乱の全真相』という記事に「黒川検事長の定年延長が森雅子法相の判断である」と書かれていることを紹介していました。ただ私自身の感想として森法相や法務省だけの判断で、官邸の関与があったかどうかは読み取れなかったことも書き添えていました。

すると今朝の読売新聞には「(黒川検事長は)菅官房長官を筆頭に官邸の覚えはめでたく」と伝え、官邸主導で東京高検検事長に昇格したという話が掲げられていました。さらに昨年末以降、検事総長の後任人事にも官邸が強く関与していることも綴られています。このような動きを生々しく伝えられるのは首相側近の官邸官僚からリークがあったのかも知れないと推測してしまいます。

週刊朝日のオンライン限定記事『「懲戒免職でもおかしくない」検察庁先輩の忠告を聞かなかった黒川元検事長の自業自得』には「黒川氏を『法務顧問』と言っていた菅官房長官」という話をはじめ、何人もの検察庁関係者が黒川氏に「政治と近づきすぎるな、もう辞めろ」と進言したところ黒川氏は苦笑いして「(安倍政権が)辞めさせてくれない」「他に人がいないそうです」と語っていたという話まで掲げられています。

「余人をもって代えかだい」と評価されていた黒川前検事長ですが、趣味のマージャンから致命傷を負ってしまいました。特に問題のない行動だと考えていた場合も、それとも発覚するはずがないものと考えていた場合も、社会的な影響に対する想像力の欠如や危機管理の甘さが厳しく問われる行為だったと言えます。

最後にもう一つ、やはり非常に驚いた時事の話題を紹介します。新型コロナウイルスに感染して自宅待機中に県から休業要請されているパチンコ店に3時間も、その利用者が金沢市議会議員という報道に接し、耳を疑いました。黒川前検事長も同様ですが、それぞれギャンブル依存症という視点でとらえることも必要なのかも知れません。

新型コロナウイルスに感染し、自宅待機を求められていた金沢市議会議員が19日、県から休業要請が出されていたパチンコ店を利用していました。議員は取材に対し「安易な気持ちで動いてしまい、非常に判断がよくなかったと反省している」と話しています。金沢市議会の松村理治議員(69)は19日午後2時ごろ、県から休業要請が出される中で営業していた市内のパチンコ店を訪れ、3時間程度、利用していたということです。

議員は先月、新型コロナウイルスへの感染が確認されて入院し、今月7日に退院しましたが、医師から2週間程度の自宅待機を求められ、この間にあった市議会の委員会を欠席していました。松村議員は取材に対し「緊急事態宣言が解除され、パチンコ店の休業要請も解除されたと勘違いし、中の状況が気になり、入ってしまった。議員という立場なのに、安易な気持ちで動いてしまい非常に判断がよくなかったと反省している」と話しました。議員辞職については否定しました。【NEWS WEB2020年5月21日

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2020年5月16日 (土)

時事の話題、いろいろ思うこと

前回記事「人員確保・コロナ関連で統一要求」の冒頭で「新規記事は時事の話題を通し、いろいろ個人的に思うことを綴ることも考えていました」と記していました。ただ私どもの組合員の皆さんに対する速報的な意味合いを踏まえ、ローカルな話題を取り上げていました。

今回の記事では、いろいろな時事の話題を紹介しながら個人的に思うことを書き進めてみます。なお、あくまでも個人的に思うことであり、私自身が直接綴る言葉で「答え」の正しさを押し付けるような書き方には注意を払っていくつもりです。

適切な評価を下していくためには「誰が」に重きを置かず、その言動や判断は正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくことが必要だろうと考えています。そして、物事を適切に評価していくためには、より正確な情報に触れていくことが欠かせません。誤った情報にしか触れていなかった場合は適切な評価を導き出せません。また、情報そのものに触れることができなかった場合、問題があるのか、ないのか、評価や判断を下す機会さえ与えられません。

これまで何回も掲げてきた私自身の問題意識です。上記のような考え方のもとに当ブログは多面的な情報を提供する一つの場として、率直な主張や政権批判を展開している他のサイトも積極的に紹介しています。そのサイトでの批判の仕方や辛辣な言葉に反発を覚えたとしても、多様な考え方や意見を認め合っていくことの大切さについてご理解くださるようお願いします。

さて、1週間先送りしたことで取り上げたい時事の話題が増えています。真っ先に取り上げるべき話題は「#検察庁法改正案に抗議します」の問題です。3月末に投稿した記事「定年を迎える週に思うこと」の中で、国家公務員の定年が60歳から段階的に65歳まで延びる法案は黒川弘務検事長の定年延長の問題と絡み合って審議に影響を与ていく可能性を予見していました。

審議が本格化し、やはり法案の中に盛り込まれた問題性を指摘する声が高まっています。ツイッターで抗議する投稿が500万件を超え、小泉今日子さんら多くの著名人も強いトーンで批判しています。ロッキード事件の捜査に携わった元検事総長らが法案に反対する意見書を法務省に提出するという異例な事態に至っています。

残念に思うことは普段から安倍首相を支持されている方々の中で、例えば政治評論家の加藤清隆さんは元格闘家の高田延彦さんに対して「プロレスで忙しくて知らないのだろうが、検察庁改正案は65歳定年制導入のため」というような言葉でリプライする姿勢です。LITERAの記事『加藤清隆、竹内久美子、百田尚樹…安倍応援団が「#検察庁法改正案に抗議します」に「中国の陰謀」「テレビ局が黒幕」とトンデモバッシング!』の一節を紹介します。

抗議の意思を表したきゃりーに対して、加藤氏は〈歌手やってて、知らないかも知れないけど、検察庁法改正案は国家公務員の定年を65歳で揃えるため。安倍政権の言いなりになるみたいな陰謀論が幅をきかせているけど、内閣が検察庁を直接指揮することなどできません。デタラメな噂に騙されないようにね。歌、頑張って下さい〉とクソリプ。これにはきゃりーも〈歌手やってて知らないかもしれないけどって相当失礼ですよ、、、、〉と反論していたが、当然だろう。職業や属性など関係なく、誰にでも政治権力を批判できることこそ民主主義の条件だからだ。

現在、国家公務員法改正案などと一本化した「束ね法案」としての検察庁法改正案が審議されています。「法案を読まずに批判するな」と非難する声を耳にしますが、その人たちこそ読んでいないのか、理解不足なのか、条件反射的に安倍政権を擁護してしまうのか、たいへん悩ましく思っています。

嘉悦大学教授の高橋洋一さんは法案の原文を読んでいながら『「定年延長」国家公務員法改正案は、黒川氏人事とは関係ない』と解説しています。しかし、検察官の定年だけ63歳のままとして「年金難民」にする懸念を訴えていることで、今、何が強く批判されているのかどうか理解していないのか、あるいは意図的に論点をずらしているのか疑問に思います。

問題視されているのは内閣や法相が必要と判断すれば、検察官の定年が最長3年延長でき、63歳の役職定年制も例外となるという規定です。このような規定が入る法案に対し、元検事総長らは意見書で「今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺ぐことを意図していると考えられる」と指摘しています。

ちなみに昨年10月の段階ではなかった規定であり、解釈の違法性を問われている黒川検事長の定年延長を後付けで繕ったものと見られています。そのため「黒川氏人事とは関係ない」と言い切ってしまうことも早計だろうと思っています。

黒川検事長を次の検事総長に押し込むための法改正だったかどうか、評論家の八幡和郎さんの『検察定年法、混乱の全真相』という記事が参考になります。そこには黒川検事長の定年延長が森雅子法相の判断であることが記されています。それでも森法相や法務省だけの判断で、官邸の関与があったかどうかは読み取れませんでした。

若狭勝氏、同期の黒川氏は「自ら辞めるのでは…」』という記事も興味深い内容でした。若狭さんは黒川検事長を「出世欲のない、性格的にも愛すべき男」と評し、「小渕さん(小渕優子元経産相。政治資金規正法違反事件で15年不起訴処分)、甘利さん(甘利明元経済財政担当相。URを巡る現金授受疑惑で16年不起訴処分)の事件で『守護神』と書かれたが、いくら力があっても黒川が処分を変えることは絶対ない」と語っています。

5月13日の朝日新聞朝刊には検察OBの「今回の問題でさらし者にされた黒川が犠牲者だ」とかばう声が紹介され、黒川検事長自身が周囲に「私の知らないところで物事が動き、名前ばかり出ている」と困惑気味に話していることも伝えていました。

いずれにしても政治的な立ち位置にとらわれず、より正確な情報を把握した上で、何が問題なのか、冷静で丁寧な議論が求められているものと思っています。そのような意味で、日本維新の会の参院議員の音喜多駿さんはブログ記事『「#検察庁法改正案に抗議します」何が最大の問題なのか?私の問題意識・ポイントはここだ』の中で淡々と論点を整理されていました。

いろいろな時事の話題を通し、個人的に思うことを書き進めていくつもりでしたが、一つの話題で相当な長さとなっています。簡略化に努めながら、もう少し続けさせていただきます。続いて『現金10万円給付 マイナンバーは余計だ』(東京新聞)『マイナンバーカードが邪魔…一律10万円「電子申請」大失政』(日刊ゲンダイ)という話題です。

第1段階のカードの取得者は14%、第2段階のマイナポータル登録者は1年前で1万8500人で全人口の0.01%を切っていました。リンク先の東京新聞の社説では「なぜ国民の大半が受け入れていない制度を、急を要する生活支援策に組み入れたのか。もし制度を広げるためにコロナ禍に便乗したのだとすれば弁明の余地はない」と指摘しています。

早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉さんは『「緊急事態宣言延長」は国民のせいなのか。安倍晋三は1カ月何をやってきたのか』という論評の中で「事業活動再開のためのガイドラインが緊急事態宣言解除判断日に揃っていないということは、政府は最初から1カ月で緊急事態宣言を解除するつもりが無かったと言っているに等しい」と安倍首相を批判していました。

466億円予算化した布マスクは、まだ私の家には届いていません。不良品が多く、検品の費用に8億円かかるそうです。新型コロナウイルスの対策に向け、安倍首相らは懸命に力を尽くしているのだろうと思っています。土曜朝の読売新聞には月刊Hanadaの広告が掲げられ、『不眠不休でコロナと闘う安倍総理』という見出しを目にしています。

とは言え、チグハグ感が否めないことも確かです。弁護士の澤藤統一郎さんのブログを訪問し、毎日新聞に掲載された時世ネタの川柳を目にとめていました。コロナ禍を取り上げ、安倍政権をチクリと釘をさす川柳が多い中、『ウイルスは「やってる感」では騙せない(東京 三次)』が最も目をひいていました。最後に下記の話題を紹介し、長くなった記事を終わらせていただきます。

23カ国・地域の人々を対象にそれぞれの指導者の新型コロナウイルス対応の評価を尋ねた国際比較調査で、日本が最下位となった。日本の感染者数、死者数は世界との比較では決して多いわけではないが、安倍晋三首相らの指導力に対する日本国民の厳しい評価が浮き彫りになった。

調査はシンガポールのブラックボックス・リサーチとフランスのトルーナが共同で実施。政治、経済、地域社会、メディアの4分野でそれぞれの指導者の評価を指数化した。日本は全4分野のいずれも最下位で、総合指数も最低だった。

政治分野では、日本で安倍政権の対応を高く評価した人の割合は全体の5%にとどまり、中国(86%)、ベトナム(82%)、ニュージーランド(67%)などに大きく劣った。日本に次いで低かったのは香港(11%)で、フランス(14%)が続いた。世界平均は40%で、感染者・死者ともに世界最多の米国は32%、韓国は21%だった。

ブラックボックスのデービッド・ブラック最高経営責任者(CEO)は「日本の低評価は、緊急事態宣言の遅れなどで安倍政権の対応に批判が続いていることと合致している。間違いなくコロナウイルスの指導力のストレステスト(特別検査)で落第した」と分析した。

総合指数でも日本は16と最低で、次いでフランス(26)が低かった。最高は中国(85)。全体的にはNZを除く先進国の指導者が低い評価にあえいだ。調査は23カ国・地域の1万2592人を対象に、4月3~19日にオンラインで実施した。【時事通信2020年5月8日

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2020年5月 9日 (土)

人員確保・コロナ関連で統一要求

前回記事は「最近、読んだ本」でしたが、新型コロナウイルスに絡む内容にも触れていました。コロナ関連の話題はメディアやネット上にあふれ、様々な情報や考え方に触れることができます。新規記事は時事の話題を通し、いろいろ個人的に思うことを綴ることも考えていました。

ただ私どもの組合員の皆さんに対する速報的な意味合いを踏まえ、ローカルな話題となりますが「人員確保・コロナ関連で統一要求」という記事タイトルの内容で書き進めています。まず週明けに発行する組合ニュースの一部をそのまま紹介します。「人員確保・新型コロナ関連で自治労都本部統一要求 緊急事態宣言の期間、5月31日まで延長 」という見出しを付けた内容です。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための緊急事態宣言の期間が5月31日まで延長されています。宣言発出後、規模縮小や交代制勤務によって繁忙が増している職場の多い中、日々、感染リスクに注意しながら業務に向かい合う組合員の皆さんに心から敬意を表しています。

職員の感染防止対策を要請 今回のような緊急事態や大規模災害時、私たち自治体職員は重要な役割を負わなければなりません。過度な職員数の削減は非常時に充分対応できなくなる恐れがあります。そのため、毎年5月に自治労は「人員確保に関する要求書」を全国一斉に各自治体当局に提出しています。

今年は裏面内容の要求書を5月8日に市当局に提出しました。要求書の冒頭で、職員が新型コロナウイルスに罹患しないための感染防止対策、住民の安全と健康を守るための充分な業務体制の確立を求めています。職員の安全と住民サービスの維持は優劣を付けられるものではなく、感染症対策においては表裏一体のものとなります。

11日から交代制勤務職場の対象が見直されています。そのことが職員の安全軽視と受けとめられないように留意し、引き続き職員の感染防止対策に力を注ぐよう要請しています。緊急事態であるため、課を越えた応援態勢などを了解していますが、問題が見受けられる場合は別途協議します。さらに個々の事例で労使協議が必要な場合は、その都度申し入れます。

感染症の終息まで長い月日を要し、6月以降も3密には注意しなければなりません。ただ心の距離感は広げず、支え合っていければと考えています。なお、この統一要求書の提出は現業統一闘争の前段に位置付けられています。今後、秋の後段闘争に向け、単組現評独自要求書も提出する予定です。

組合ニュースの内容を掲げただけで終わらせれば、たいへん省力化できた記事となります。本来、ブログをはじめ、SNSで発信する内容は短文であることが主流だろうと理解しています。

特にスマホ利用者が増えている中、このブログのように毎回長文となるサイトは敬遠されがちなのかも知れません。それでも今回も、いつものように相応の長さの記事内容になるのだろうと見越しています。

上記の組合ニュースを補足する上でネット上から興味深い記事を見つけています。ブックマークし、定期的に訪問している「hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)」の最近の記事『ジョブなき社会の公務員減らしの帰結』が目にとまっていました。

行政評論家の大原みはるさんの『コロナでわかった、やっぱり日本は公務員を「減らしすぎ」だ』という論評が紹介されていました。興味を持たれた方は、それぞれリンク先のサイトをご参照ください。私自身や自治労の問題意識が次の大原さんの言葉に集約されています。

冷静に考えれば公務員は社会に必要な職業である。たとえば、新型コロナウィルスに関して、なくてはならない働きをしている保健所や公的医療機関。感染者の把握や感染拡大防止で後手に回ったとして批判を受けているが、もともと「平時」を基準に体制が構築されており、緊急時においては明らかに人手不足であることが今回わかった。

もちろん「平時」に余裕がありすぎて、明らかに余剰となる人員配置を求めている訳ではありません。常勤職員の削減を地方行革の柱とし、際限もなく減らし続ける方向性に対して疑問を呈してきています。とりわけ削減の標的にされがちな現業職場ですが、直接雇用の自治体職員として残すことが大規模災害時にどれほど心強いことなのか訴え続けています。

このあたりについては以前の記事「減り続けている現業職場」 「激減する自治体職員と災害対応」の中で詳述しています。そのため、次年度の予算編成や職員採用計画が固まる前の5月に毎年、自治労に加わっている自治体単組は一斉に人員確保要求書を各首長あてに提出しています。その中で現業職員の確保を重視し、秋に取り組まれる現業統一闘争の前段として位置付けています。

続いて、職員の感染リスクの問題です。最近の記事「緊急事態宣言発令 Part2」の中で伝えたとおり私どもの市では、人と人との接触の機会を減らす目的としての業務体制の縮小、職員に感染者が出た場合の部署全体の自宅待機を避けるための交代制、2通りの方策をとっていました。

通勤電車等でのリスクを2分の1とし、出勤後の職場内での3密が避けられ、万が一のリスクを分散させる方策として望ましいのは後者であり、可能な限り在宅勤務の交代制を取り入れるよう求めてきました。

ただ職場実情によって困難な場合があることも了承していました。そのため、交代制勤務を望みながら平時と大きく変わらない勤務体制のままだった組合員の皆さんに対しては申し訳ない思いがありました。

緊急事態宣言の期間が延長され、このままの勤務体制が継続されるのだろうと考えていましたが、上記の組合ニユースに記しているとおり週明け11日から交代制勤務職場の対象が見直されます。これまで交代制が基本でしたが、11日から交代制職場が例外扱いとなります。

この変更案が事前に組合に示された時、 コロナ対応の業務に追われている職場をはじめ、交代制勤務は非常に厳しくなっていたという事情が説明されました。そのため、11日以降は時差勤務の奨励等で職員の感染防止に努めたいと市側は説明しています。

もともと全職場で同様な取扱いがはかれていなかったため、このタイミングでの見直しもやむを得ないものと判断しました。その際、交代制勤務の見直しによって職員の感染対策の意識に緩みが生じないように注意すべきではないかと伝えています。

加えて、組合ニュースに記した職員の受けとめ方に対する懸念を副市長らに伝えています。「職員の感染防止よりも業務を優先したのか」と思われないよう職員全体に周知する際、その点に留意した説明の必要性を訴えていました。副市長からは「職員の感染防止に力を尽くす考えに変わりない」という答えを得ています。

最後に、組合ニュースにも掲げた問題意識です。緊急事態宣言の期間が終わっても一気に以前と同じような日常生活には戻れないはずです。「密閉」「密集」「密接」という3つの密には注意し、多くの方々との会食の機会も減らし、ソーシャルディスタンスを常に意識していかなければなりません。そのような中でも心の距離感は広げず、支え合っていければと考えています。

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2020年5月 2日 (土)

最近、読んだ本

前回記事「一律10万円の特別定額給付金」の中で、あくまでも個々人の自主的な判断を大前提とし、特別定額給付金の支給を機会に組合員から提案された趣旨に沿った寄付の仕組みを作れないかどうか考え始めていたことを紹介していました。それに対し、コメント欄でyamamotoさんとKEIさんからは否定的なご意見が寄せられていました。

緊急事態宣言が発出された後、執行委員会の開催は見合わせているため、メール等を介して他の組合役員の考えも聞き取りました。その結果、組合としての寄付金の取り組みは誤解を招かないように給付金のタイミングから外し、あまり急がずに今後の検討課題とすることにしています。

さて、三多摩メーデーをはじめ、手帳に記されていた予定すべてが白紙となっています。外出そのものを自粛しているため、必然的に自宅で本を読んで過ごす時間が増えています。記事タイトルに掲げたとおり最近、読んだ本を読み終えた順ではありませんが、いくつか紹介しながら自分なりの感想を一言二言添えさせていただきます。

新型コロナウイルス感染拡大という時節柄、まず感染症関連の書籍を紹介します。いつも立ち寄る書店に特設コーナーがあり、真っ先に手にしたのが『復活の日』でした。著者は小松左京さんで小説という形を取っていますが、科学的な解説や米ソ冷戦時代の社会的背景が克明に描かれ、リアリティをもって新種のウイルスの怖さを感じ取れます。

当初「たかがかぜ」と侮っていた人類は数か月の間に絶滅の危機を迎えます。そのウイルスは低温に弱く、かろうじて南極大陸に赴いていた1万人ほどの人々が助かります。残された女性は16人、絶望の中から人々は人類の「復活の日」をめざしていきます。小説を初めて読み、コマーシャルで見た記憶のある草刈正雄さんが帰還する映画のクライマックスシーンを思い出していました。

続いて『ロビンソン・クルーソー』の著者でもあるダニエル・デフオーさんの 『ペスト』です。「カミュの『ペスト』よりも現代的と評される傑作」という宣伝文句にひかれて手にしていました。訳者は平井正穂さんで、一切見出しのない文章が続くことに驚きました。内容は1665年、ペストに襲われたロンドンの状況を同時代に生きた著者が事実の伝承という立場から綴ったものです。

たいへん興味深かった箇所を紹介します。当時のロンドン市には様々な法律があり、疫病患者が出た場合は家屋閉鎖し、その家族全員が40日間隔離されます。監視人が置かれ、健康な人も外に出られず、感染して全員死亡した事例は珍しくなかったようです。このような手法の効果について著者は疑問視していました。

見たところ病気にかかっている気配のない人たちを通じて蔓延し、自分が誰からうつされ、誰にうつしたか知らないまま感染が広がった事態の多さを書き残しています。一方で、仕事を失った人々を監視人として市が雇い、生活困窮者には現金や食物を与えるなど、かゆい所に手が届く施策があったことも伝えています。

さらに印象深い記述に目がとまりました。「それ自身としてはいかにも悲惨事だが、ある意味では一種の天の配剤ともいうべきことが起こった」と記した後、猛烈に荒れ狂った疫病が3か月で3万から4万人の生命を奪わなければロンドン市は「彼らの生計をみてやったり、食物を与えてやることなどは、とてもできなかったろう」と続けていました。

まったく話題は変わりますが、大阪市長だった橋下徹さんの『交渉力』も最近、読んだ本の一つです。「何か達成したい目標がある時、相手を説得し、対立する意見をまとめていく交渉力の有無が、結果を左右する。どんな職種・役職であれ、何かを成し遂げるために必須となるのが交渉力だ」と橋下さんは語っています。参考にすべき点も多くあり、素早く読み終えた書籍でした。

昨年11月の記事「トヨタの労使交渉」の中で『トヨトミの野望』という小説のことを紹介していました。覆面作家の梶山三郎さんが「巨大自動車企業の真実を伝えたいから、私は、ノンフィクションではなく、小説を書きました」と述べているとおり登場人物の実名は容易に特定でき、トヨトミ自動車の御曹司である豊臣統一はトヨタの豊田章男社長のことだと分かります。

その続編『トヨトミの逆襲』も面白く、一気に読み終えた書籍です。「この役員は要らない。おれの方針にいちいち突っかかってくる」と豊臣社長は考えて人事にあたり、「自分の方針を理解し、自分の手足となって動いてくれる理想のチームができた」と思っていました。しかし、小説の最後には自分が「裸の王様」だったことに気付き、耳の痛い進言を重ねていた部下を次期社長に指名します。

最後に『「新聞記者」という欺瞞』です。3月に投稿した「映画『新聞記者』」の最後のほうで多面的な情報に触れていかなければ、より望ましい「答え」に近付けないため、機会があれば安積明子さんの新著も読んでみたいと記していました。通勤帰りに立ち寄る書店では、なかなか見かけず、ようやく最近手に入れていました。

夕刊紙に「“反権力”ふりかざす左派メディアを喝破!」という見出しで紹介されていましたが、扇情的な書きぶりは目立たず、安積さんが知り得ている事実関係を淡々と綴られた内容だったという印象です。この本は当ブログで取り上げるもりでしたので、特に印象深かった箇所に付箋を添えていました。

「真相に迫るためには、正義が多元にあるという前提に立たなくてはいけない。自分の正義が絶対とは限らないのだ」と記されている箇所であり、私自身もそのように考えています。個々の事実関係の見方で評価が分かれる箇所もありましたが、森友学園、加計学園、桜を見る会などで安倍政権を批判すべき内容も綴られていました。

今回、初めての試みとして複数の本をまとめて紹介させていただきました。一つ一つは踏み込み不足で、全体を通して脈路のない記事内容になっていることをご容赦ください。残念ながら緊急事態宣言の期間は延びる見通しです。例年であればゴールデンウイークの真っ只中ですが、ステイホーム週間が続くため、まだまだ読書量は増えそうです。

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