« 緊急事態宣言発令 Part2 | トップページ | 最近、読んだ本 »

2020年4月25日 (土)

一律10万円の特別定額給付金

直近の記事は「緊急事態宣言発令」「緊急事態宣言発令 Part2」でした。今回も新型コロナウイルスに絡む内容となります。前回記事の中で、経済も大事、感染症対策も大事だと考え、優先順位が曖昧なまま「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺のとおりになりかねないことを懸念していました。その後に次のように記しています。

10万円の給付の問題も目的が迷走しそうな印象を受けています。コロナウイルスの影響で収入減となった方々への生活支援が目的であるはずです。経済対策の一つに数えられていますが、外出自粛が長引きそうな局面において消費を促すという目的は横に置いて考えるべきです。

その上で30万円給付の施策は対象者の線引きの不明確さや支給までの迅速さが問題視されたため、10万円一律支給という方法に改めたものと理解しています。所得制限を設けず、窓口の混雑による感染リスクを高めないように申請方法が検討されていることに安堵しています。なりすましなどの対策は欠かせませんが、基本は本人の申出を信頼して受け付けていくことになるはずです。

NPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典さんは『現金一律10万円給付が始まる前に考えておきたいこと』の中で公務員や国会議員らも受け取るべきであり、不毛な対立や分断はやめようと訴えています。藤田さんが訴えられる問題意識はまったくそのとおりだと受けとめています。ただリーマン・ショック後の緊急経済対策とした定額給付金の目的や趣旨とは峻別して位置付けることも必要だろうと思っています。

一律10万円の給付は特別定額給付金と呼ばれる見通しで、リンク先の総務省のサイトに示されているとおり概要が決まっています。そのサイトに掲げられた施策の目的として「人々が連帯して一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服するため」と説明されています。

安倍首相も「みんなでこの状況を乗り越えていく中において、すべての国民に配る方向が正しいと判断した」とし、「みんなで乗り越えていく」という点を強調されています。30万円の給付はコロナウイルスの影響で収入減となった方々への生活支援が目的でしたが、その目的から大きく転換したということを押さえなければなりません。

前回記事に綴った私自身の見込んだ理解とは異なる目的や趣旨となっています。給付に向けた迅速性や公平さを重視した一律支給とし、申請後、所得等の条件から外れた受給者に対しては後から課税対象として取り戻すような制度設計も思い描いていました。個々人に辞退や寄付の判断を委ねるような曖昧さは避けて欲しかったからです。

いずれにしても公務員は後ろめたさを持ちながら申請し、給付を受けたことで批判されるような対立関係が生じることを懸念していました。そのような意味合いから藤田孝典さんの「対立や分断はやめよう」という問題意識に共感を覚えています。今回、公務員も支給対象に位置付けられ、どのような声が上がってくるのか注視していました。

広島県の湯崎英彦知事は21日、政府が緊急経済対策として全国民に一律給付する10万円について、県職員から供出してもらい、県の財源に充てる考えを示した。実施するかは今後、検討する。県の休業要請に応じた中小企業などに支払われる10万~50万円の協力支援金の財源約100億円が必要で、湯崎知事は「聖域なく検討したい」と述べた。

県によると、県警や県教委の職員も含む約2万5000人が対象で、全員が受け取れば計算上、総額25億円に上る。県の財政調整基金の残高は、2018年7月の西日本豪雨からの復旧などで取り崩しが続き、20年度末の残高は33億円の見込み。湯崎知事は「感染拡大防止のためにやらなければいけないことはたくさんあるが、圧倒的に財源が足りない」と理解を求めた。

一方、県職員からは不満の声が漏れる。男性職員の一人は「事前に説明があっても良かったのでは。強制でなくても、『右にならえ』で出さざるを得なくなると思う」と戸惑っていた。総務省特別定額給付金室は「あくまで家計の支援を目的とした個人への給付で、公務員から寄付を募って事業の財源とすることは想定していない」としている。【読売新聞2020年4月21日

閣僚や多くの国会議員は受け取りを自粛することを申し合わせています。大阪市の橋下徹元市長は「公務員は受け取り禁止となぜルール化しないのか」と訴え続けています。そのような中、上記報道のとおり広島県の湯崎英彦知事は県職員に対し、10万円を受け取った後の供出を求めました。

脳科学者の茂木健一郎氏(57)が21日、ツイッターを更新。広島県の湯崎英彦知事が新型コロナウイルス感染対策で政府が全国民に一律給付する10万円のうち、県職員が受け取った分の活用を検討する考えを示したことに「これは無理筋なのでは…」と投稿した。湯崎知事は記者会見で、休業要請に応じた中小事業者に支給する協力金など支援策の財源確保のため、「財源は聖域なく検討したい」と述べた。

県によると、職員数は教職員や警察官を含めて約2万5千人。茂木氏は「絶句」と反応。「県職員の方だって、生活者としての側面があり、知事といえどもこれは無理筋なのでは…」と指摘した。

茂木氏の投稿にネットでは「国が給付するものを知事が取り上げるとは…」「勝手にこんなことしていいんですかね!」「これはやりすぎ」「他人の金をどう使うか決められるんですね。凄いなあ」「広島県民として残念」「公務員はコロナでも給料減らないし、私は賛成です」などの声があった。【スポニチアネックス2020年4月21日

湯崎知事の発言に対し、上記のとおり異論や反対意見が多かったようです。そのため、湯崎知事は翌日には「給付金を強制的に供出させるという誤解を与えた。言葉の選び方が悪かった」と発言を訂正した上で謝罪していました。また、今のところ橋下元市長の訴えに対し、賛同する声の広がりも見られていません。

以上のような経緯や今回の特別定額給付金の目的等を踏まえ、私自身の考えも定まりました。申請するかどうか迷っている組合員から相談を受けた際は「受け取りましょう」と答るつもりです。感染リスクを心配しながらも「全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ち」としての特別定額給付金を受け取り、地域経済に貢献できればと考えています。

最後に、緊急事態宣言が発令された直後、組合員から実際に提案された話を紹介させていただきます。「減収に苦しむ方々が多い中、私たち公務員として何か寄付などに取り組めませんか」と相談を受けました。趣旨に賛同することをお伝えし、具体的な方策は宿題としてお預かりしていました。

湯崎知事の拙速な発言を反面教師とした上、あくまでも個々人の自主的な判断を大前提とし、特別定額給付金の支給を機会に提案の趣旨に沿った仕組みを作れないかどうか考え始めていました。そのように考えていたところ下記の報道を目にし、たいへん参考になる動きだと注目しています。

新型コロナウイルス対策の一環で政府が行う1人10万円の現金給付をめぐり、自治労神奈川県職員労働組合は24日、組合員らに対し、給付された現金を県に寄付する提案を始めた。休業や短縮営業の要請に応じた事業者のために県が用意した「協力金」では不十分として、寄付分を上乗せして支給してもらうという。

自治労県職労は同日、組合報の号外を発行。その中で、県が用意した10万~30万円の協力金について、「雇用、営業、生活の危機に立たされている方に十分なものとは言えない」と指摘。「働く仲間を支えるため」として、10万円の給付金を県が用意した基金に寄付する形で拠出し合い、協力金に上乗せしてもらうことを提案した。

10万円の使途をめぐっては、広島県の湯崎英彦知事が、県職員への支給分を県のコロナ対策の原資として「活用を検討する」と発言。事実上撤回する事態に追い込まれた。自治労神奈川県職労の米倉尚人中央執行委員長は「給付金の使途は一人ひとりが考えること」と断ったうえで、「困っている勤労者に届く形で使わせていただきたい」と賛同を求めている。22日に労組役員が集まって会議を開いた際、「県が協力金支給を決めたのは良いが、額が少ない」との話が出て、提案することにしたという。

神奈川県は感染拡大を防ぐため、東京都と同じく、ネットカフェや映画館などを含む6業種の事業者に休業を要請し、居酒屋を含む飲食店などには短縮営業を求めた。ただ、用意した協力金の額が最大30万円で、東京都が「50万円か100万円」とするのと比べて少ないという不満が出ていた。【朝日新聞2020年4月25日

|

« 緊急事態宣言発令 Part2 | トップページ | 最近、読んだ本 »

コメント

これで神奈川の自治労の暴挙を非難できないのなら、自治労全体が腐敗した存在と見なす。

投稿: れなぞ | 2020年4月25日 (土) 18時54分

れなぞさん、コメントありがとうございました。

いろいろな受けとめ方に触れられる機会となっています。私自身は今回の記事本文に綴ったような問題意識でとらえています。

投稿: OTSU | 2020年4月26日 (日) 07時02分

何かと公務員に無償奉仕を求める輩にお伺いしたいのですが、
「このまちのために働けるだけで幸せです!お金は要りません!」などと、建前ではなく本音で言う人がいたとして、
そいつは間違いなく頭がおかしいし、そんな奴に行政を担わせるなんて怖くてできない、と僕なんかは思うのですが、どう思われますか? 

前にも述べたことですが、「労働者はオンのときは財・サービスの提供者だが、オフのときはお客さんになる」と言う観点がどうも世間から抜け落ちている気がします。
自治体の首長や組合が求めるべきは給付辞退や寄付などではなく、給付金の地元での消費かと。

P.S.
もっと言うと、首長や議員の給付辞退や報酬カット等も褒められたものではないと僕は思います。
どいつもこいつも「首長/議員の報酬=民主主義の対価」を軽く考えすぎです。

投稿: KEI | 2020年4月26日 (日) 08時06分

KEIさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。

公務員に対し、そのように見ていただける方がいらっしゃることについて心強く思います。なお、記事本文でも留意しているつもりですが、寄付金の取り組みが具体化できた場合、同調圧力という雰囲気も含め、あくまでも個々人の自主的な判断のもと気負わずに対応していければと考えています。

投稿: OTSU | 2020年4月26日 (日) 08時32分

神奈川県職労と広島県知事の発想が同じですね。GWは地元の本屋さんで本を買って経済を回しましょう。「公務員として何か寄付などに取り組めませんか?」大人なんだから、そんな事は組合に頼らず自分で考え行動すれば済む話です。

投稿: yamamoto | 2020年4月26日 (日) 10時37分

yamamotoさん、コメントありがとうございました。

自治労神奈川県職労の米倉委員長は「給付金の使途は一人ひとりが考えること」と説明しています。一方で湯崎知事は当初「県職員から供出してもらい、県の財源に充てる」と述べてしまい、訂正した上で謝罪していました。確かに発想が類似している点もあろうかと思いますが、神奈川県職労の提案は強制力が一切伴わないものとして理解しています。

仮に同様な取り組みを発案する場合、私自身の考え方も記事本文や今朝のコメントに記しているとおり個々人の自主的な判断のもとの受け皿であることを大前提としています。当然、寄付する、寄付しない、額についても個々人の判断に委ねることになります。

わざわざ組合として取り組む必要がなく、自分自身で考えて行動するというご指摘もその通りかも知れません。それでも実際に組合員の方から「組合として取り組めませんか」という声が寄せられ、同じように考えている方々もいらっしゃるのだろうと思っています。

いずれにしても様々な評価が見受けられる取り組みですので、私一人の判断で進める話ではありません。いろいろな声を受けとめながら議論し、より望ましい「答え」を出せればと考えています。

投稿: OTSU | 2020年4月26日 (日) 21時12分

>神奈川県職労の提案は強制力が一切伴わないものとして理解しています。
いやいや、口に出してしまったら「同じ」ですって。
「要求」であれ「提案」であれ各構成員は「従うか従わないか」の選択を迫られます。
そしてその結果は「威信」として世に示されることになります。そのため忖度を強いられる人も出てくるのでは?

…そんなわけで、OTSUさんは市執行部および組合執行部が間違ってもそういうことを言いださないように目を光らせたほうがよろしいかと存じます。

投稿: KEI | 2020年4月27日 (月) 20時15分

あるクラファンは4月上旬に「コロナ拡大防止基金」を立ち上げ、これまで2億5千万円を集め、既に5千万円を10団体に助成してます。これから多くの自治体も「基金」を創設する方針です。
必要なら、組織としてこうした情報の周知で事足りるでしょう。「使い方は個人の判断に委ねられる」これに尽きると思いますよ。

投稿: yamamoto | 2020年4月29日 (水) 10時27分

yamamotoさん、KEIさん、コメントありがとうございます。

確かに組合としての寄付金の取り組みは誤解を招かないように給付金のタイミングから外し、あまり急がずに今後の検討課題とすることにしました。いろいろ貴重なご意見ありがとうございました。

投稿: OTSU | 2020年5月 2日 (土) 06時33分

自治労は、恐らく非正規公務員に「のみ」10万円の供出を求めるのでしょう。

投稿: れなぞ | 2020年5月 2日 (土) 18時35分

れなぞさん、コメントありがとうございました。

なぜ、そのように想像されるのか疑問です。できれば「なるほど」と思わせるようなコメント投稿にご協力ください。

投稿: OTSU | 2020年5月 3日 (日) 06時13分

おはようございます。
広島県知事にはあきれますね。
あれじゃあ、上層部の取り巻き以外、部下はついていかないでしょう。
ついていかないということは、いい行政サービスが提供されないということです。
自分の会社の社員を守らない社長がいますか?

投稿: むし | 2020年5月 6日 (水) 09時17分

むしさん、コメントありがとうございました。

今回の記事本文の中でも記したとおり湯崎知事の拙速な発言を反面教師とし、私どもの組合の取り組みは慎重に判断していくこととしました。

記事の更新と同様、コメント欄に関わるのも土日としているためレスは遅くなりますが、これからもお気軽に投稿いただければ幸いですのでよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年5月 9日 (土) 07時13分

二人体制でヨシ!
馬鹿かな?
無能な公務員共が税金食い荒らしやがって

投稿: | 2020年6月27日 (土) 02時27分

2020年6月27日(土)02時27分に投稿された方、コメントありがとうございました。

せっかくの機会ですので、もう少し意図が分かる書き方にご配慮願えれば幸いです。加えて、引き続き投稿いただける場合は名前欄の記入にもご協力ください。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年6月27日 (土) 07時03分

自分で調べることもできんのかよ・・・
tps://news.yahoo.co.jp/articles/946291f2074a0f26ef9f9ec7676eb6e4c2e761a1
市民国民には「俺たち公務員には配慮しろ!」「失敗しても俺たちの責任じゃないからな!」と言っておきながら「俺たち公務員は頑張ってるんだ!」だからな。楽な仕事だわ。

投稿: OTSU | 2020年6月29日 (月) 22時07分

OTSUさん、コメントありがとうございました。

せっかく追加でコメントをお寄せいただきましたが、「自分で調べる」以前のレベルの問題として、もう少し意図が分かる書き方にご配慮願えれば幸いです。

私自身の読解力の問題であれば恐縮ですが、リンク先のサイトに目を通しても明確な意図はつかみ切れません。もちろん公務員に対して何か苛立ちを強めているという意図は理解できています。

なお、名前欄の記入にはご協力いただきました。しかし、半角文字で違いを示されたのかも知れませんが、ブログの管理人と同じ名前は一般的な常識やマナーに照らせば望ましい選択ではありません。このような点についてもご理解ご協力をよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年7月 4日 (土) 06時46分

>せっかく追加でコメントをお寄せいただきましたが、「自分で調べる」以前のレベルの問題として、もう少し意図が分かる書き方にご配慮願えれば幸いです。

これ言ってりゃ相手が悪いで済ませられるから楽だわな。
問題をはぐらかし、謝らず、市民のせいにできる。
公務員さんは無敵ですわw

投稿: OTSU | 2020年7月 4日 (土) 21時35分

2020年7月4日(土)21時35分に投稿されたOTSUさん、コメントありがとうございました。

今回は全角文字ですか。昨日レスしたとおり残念なことです。いずれにしても何が問題なのか、理解できないまま謝罪することが決して好ましい関係性だとは考えていません。

せっかくマイナーなブログとのお付き合いに時間を割いていただいているのでしたら相手に「なるほど」と気付かせ、問題点を修正できる機会につなげさせる関係性が望ましいのではないでしょうか。

投稿: OTSU | 2020年7月 5日 (日) 09時07分

兵庫県加西市では自治労上がりの首長が非正規公務員に10万円の寄付を強要しているぞ。言行不一致と言われたくなければそいつを何とかしろよ、品性下劣な上級国民めが。

投稿: れなぞ | 2020年7月 5日 (日) 20時39分

れなぞさん、コメントありがとうございました。

ご指摘の問題意識は理解できますが、たいへん恐縮ながら「言行不一致」というとらえ方は違和感があることだけは申し添えさせていただきます。さらに「品性下劣な上級国民」という言い方は控えていただいたほうが説得力を増すものと感じています。

投稿: OTSU | 2020年7月 5日 (日) 21時09分

>相手に「なるほど」と気付かせ、問題点を修正できる機会につなげさせる

自ら理解する努力を放棄し、市民に労力を割かせる、か。
公務員になったら怠惰になってしまうんかな?
問題点を修正できる機会というが、公務員が自組織を改善した例なんか無いやろ。

投稿: OTSU | 2020年7月11日 (土) 23時54分

2020年7月11日(土)23時54分に投稿されたOTSUさん、コメントありがとうございました。

>二人体制でヨシ! 馬鹿かな? 無能な公務員共が税金食い荒らしやがって

上記のコメントからやり取りが続いています。機会を見ながら今後、このやり取りを記事本文で取り上げ、論点や問題点を際立たせてみたいものと考えています。

投稿: OTSU | 2020年7月12日 (日) 06時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 緊急事態宣言発令 Part2 | トップページ | 最近、読んだ本 »