財務省職員の遺書全文公開
時々『週刊文春』を購入しています。先週水曜の朝、迷わず最新号を立ち寄ったコンビニのレジに持ち込んでいました。最新号の特集記事の見出しは「妻は佐川元理財局長と国を提訴へ 森友自殺 財務省職員遺書全文公開」でした。この問題は事前に報道があり、発売後には遺書の内容などを各メディアでも取り上げています。
森友改ざんで自殺の職員「佐川氏の指示」 手記・遺書公表 学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書の改ざんを強要され自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が18日、佐川氏と国に約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
妻は「元はすべて佐川氏の指示。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」とする赤木さんの手記や遺書を公表。代理人を通じて「夫が死を決意した本当のことを知りたい」と訴えた。
訴状などによると、当時財務省理財局長だった佐川氏は、安倍晋三首相が国会で国有地売却問題について「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の2017年2~4月、「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと財務省幹部に指示。幹部は近畿財務局に改ざんを命じた。
近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木さんは2月26日、同局の上司から呼び出されたのを皮切りに、3~4回にわたって決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分を削除する作業を強制された。赤木さんは「こんな事をする必要はない」などと強く反発したり涙を流したりして抗議したが、本省や上司の指示のためやむを得ず従った。
この間、連続出勤や午前2~3時までの長時間労働が重なり、7月にうつ病を発症して休職。12月には大阪地検から電話で事情聴取を受け「改ざんは本省のせいなのに、最終的には自分のせいにされる」と心理的負荷が強まり、翌18年3月7日に自殺した。手書きの遺書には「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ」などと書かれていた。
妻は国に対し「健康状態の悪化を容易に認識し、自殺を予見できた」として約1億7百万円を、佐川氏には「改ざんの強制で極めて強い心理的負荷を受けることは予見できた」として5百5十万円を求めた。妻は提訴の理由について「死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。土地の売り払いはどう行われたのか、真実を知りたい」と代理人を通じてコメントした。財務省は「(訴状の)内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。
政府、再調査せず 政府は18日、森友学園問題で決裁文書の改ざんに関わり自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表を受け、改ざんの経緯などを改めて調査する考えはないとした。
安倍晋三首相は、官邸で記者団から手記に関する受け止めを聞かれ「財務省で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならず、今後も適正に対応していくものと考えている」と語った。再調査には触れなかった。自らの責任についての質問には、答えずに立ち去った。
財務省の茶谷栄治官房長は参院財政金融委員会で、2018年6月に公表した調査報告書では、改ざんが行われた当時に理財局長だった佐川宣寿氏が方向性を決定付け、理財局が一連の行為を指示したと結論づけていると説明した。自殺した職員が理財局からの度重なる指示に反発したことも認定したとして「新たな事実は見つかっていないと考えられる。再調査は考えていない」とした。
麻生太郎財務相は同委で「関与した職員に厳正な処分を行い、私自身も閣僚給与を自主返納した」として問題は決着済みと強調。「大臣の職責を果たしていきたい」と、改めて辞任を否定した。【中日新聞2020年3月19日】
ネットで検索したところ上記の新聞記事が詳しい経緯を伝えていました。今回のブログ記事は他のサイトに掲げられている内容の紹介が多くなります。私自身の手元に『週刊文春』がありますが、著作権の問題に留意した紹介の仕方に努めなければなりません。
そのため、すでにネット上に公開されている情報について、引用元を添えながら紹介することが最も著作権の問題を避けられる方法だからです。入力する作業の負担も軽減されるため、そのような構成でまとめさせていただくことをご容赦ください。
やはりネットで検索したところAbemaTIMESというサイトに『週刊文春』最新号の特集記事の内容が詳しく掲げられていました。『「財務省は喧嘩を売っている」「弁護側は出てきた全員を証人申請」森友文書改ざん、自殺職員のメモを託された相澤冬樹氏』という見出しの記事で、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが自殺に追い込まれた経緯などを伝えています。
「森友問題。佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それに指示NOを誰れもいわない理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府」(原文ママ)
2018年3月7日、学校法人「森友学園」との土地取引をめぐる公文書が改ざんされた問題が国会で激しく追及される中、自ら命を絶った財務省近畿財務局の職員・赤木俊夫氏(当時54)が最後に残したメモだ。また、手記には「国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です」「元は、すべて、佐川理財局長(当時)の指示です。」「3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり、現場として私は相当抵抗しました」と、上からの指示を受けた様子が実名を含め克明に記されていた。
遺族は18日、これら自宅のパソコンに遺されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚の公開に踏み切り、佐川宣寿・元財務省理財局長と国に損害賠償を求めて提訴した。代理人弁護士が会見で読み上げたメッセージの中で、赤木氏の妻は「夫が死を選ぶ原因になった改ざんは、誰が何のためにやったのか。今でも夫のように苦しんでいる人を助けるためにも佐川さん、どうか改ざんの経緯を、本当のことを話してください。よろしく願いします」と訴えている。
これらの手記を託されたのが、NHK大阪放送局の記者時代から森友学園問題を取材、19日発売の『週刊文春』に記事を寄せた相澤冬樹・大阪日日新聞論説委員だ。18日のAbemaTV『AbemaPrime』では、相澤氏を招いて話を聞いた。
■「切り捨てられてしまった」と感じ提訴に踏み切る
相澤氏がメモや手記に最初に接したのは1年4カ月前のこと。「今でもはっきり日付を覚えている。2018年11月27日だった。奥さんは私がNHKを辞めた経緯を知り、自分の夫と似たような境遇だと感じたらしく、“お会いしたい”と連絡をくれた。ただし、近畿財務局やマスコミが怖いということで、取材前提ではないということでお会いした。
奥さんは当時のことを鮮明に覚えていて、語ってくれた。深夜残業が続き、会計検査院にまで嘘をつかされた。真面目な公務員としてやっていられない。だから異動の希望を出していた。上司も“たぶん大丈夫だ”と言ったらしい。ところが蓋を開けてみると、彼だけが残され、他のみんなが異動してしまった。奥さんに“ものすごくショックだ”と言ったという。ほどなく、彼はうつ病で休職、2度と職場に戻れなかった。ただ、僕はそんなに突っ込んだ話はできないと思っていた」。
そして妻は、すぐに今回の手記を出してきたという。「彼女の方から、いきなり“これ、ご覧になりたいですよね”と。『週刊文春』の記事で内容を知った皆さんの心を震わせるものだった思うが、私も本当にすごいものが遺されていたんだなと感じた。ただ、奥さんは“夫の遺志に沿うためには、これは出した方がいいだろう。
でも出したらどうなるか。非常に怖く、なかなか出せない。だから記事にはしないでほしい。出されたら私は死にます”と言った。名がたくさん出ているし、財務局の人たちに迷惑をかけてはいけないという思いがとても強いようだった。私はその目を見て、これは本気だ、これは了解なしに出すことはできないと思った」。
それから1年あまり。妻と交流する中で、少しずつ心境に変化も生じてきたという。「“夫がわざわざこれを作ったのは、世の中に訴えたいからだろうな”と。確かに、そうでなければこういう書き方にはならない。世の中の人に知ってほしいから書いている。そして、改ざんはなぜ必要だったのか。誰が、どういうふうにして赤木さんに改ざんをさせたのか。あの土地取引は本当に正当なものだったのか、といった疑問も湧いてきた。財務省が出した調査報告書の内容にも納得がいかなかった」。
赤木氏の手記には、「すべて佐川元理財局長の指示であり、本省幹部が文書の改ざん範囲を決定し、改ざん範囲がどんどん拡大、修正回数は3、4回に及んだ」「大阪地検特捜部は事実関係を把握していた」「本省ではなく、近畿財務局の責任となるだろう」といった内容が含まれている。こうした点について妻は自ら関係者に話を聞くうちに、裁判を起こし、手記を公表せざるを得ないと考えたという。
「奥さんは“俊君にお詫びして、なぜこんなことをしたのか説明してほしい”と、弁護士を通じ佐川氏に手紙を2度送っている。しかし、佐川氏からは“行けません”ということならまだしも、一切返事がない。そして、それまでは話をしに来てくれていた財務局の人たちまで“もう行けません”と言い出した。“自分は切り捨てられたのか。結局、裁判しかない”と感じた。そして、最大の証拠である手記は裁判に提出するとともに、世にも問うた方がいいだろうという気持ちになっていった」。
その上で相澤氏は、今の妻の心境について、「個人への恨みやつらみでやっているわけではない」と強調する。「例えば佐川さん個人が責任追及される格好になっているが、実は昨日、奥さんが“見たい”というので、佐川さんの自宅に案内した。ただ、佐川さんに会おうというわけでもなく、手紙も置かず、とにかくじっと見ているだけ。そして、“この街は幸せそうな街ですね”と言った。
“だけど、佐川さんも佐川さんの家族も、きっともう幸せではないのでしょうね。佐川さんもかわいそう”と。つまり、訴えた相手だし、手記の中でも佐川さんが全て指示したと書かれてはいるが、もしかしたら佐川さんも何らかの指示、しがらみのなかでやらざるを得なかったのではないかという気持ちもあるということだ。そこも含めて全部知りたいという気持ちがある」。
■「弁護側は手記に出てきた全員の証人申請をする」
19日の国会では、手記に関する質疑が行われた。麻生財務大臣は「少なくともこの問題で一番問題なのは、文書の改ざんが行われたことが一番問題なので、これは深くお詫び申し上げなければならんところだと思っている」、財務省の茶谷官房長は「財務省としてはできる限りの調査を尽くした結果を示したものであり、新たな事実は見つかっていないと考えられることから再調査を行うようなことは考えていない」と答弁。
また、安倍総理は囲み取材で「真面目に職務に精励していた方が、自ら命を絶たれる、大変痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたいと思う。財務省においては麻生大臣の下で、事実を徹底的に明らかにしたところだが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していくものと考えている」とコメントしている。
相澤氏は「今までは与野党も国民も“問題だ”という人たちと、“問題はなかった”という人たちが二つに割れ、議論も平行線をたどってきた。しかし今回は違う。この事件で亡くなった犠牲者の遺族が“あの調査報告書では納得できないと”声を上げた。国は当然、納得が行く説明をする義務があるはずだ。しかし財務省は“再調査するつもりはない”と直ちに明言した。“重く受け止め、検討させていただきます”みたいな曖昧な官僚答弁でもなかった。本当に許されない態度だし、正面きって喧嘩を売っていると感じた」と怒りを露わにする。
「手記には佐川さんはじめ、色んな人が実名で出てくる。例えば“次の財務事務次官”とも言われている、理財局長だった太田充主計局長。近畿財務局長だった美並義人東京国税局長。理財局総務課長だった中村稔駐英公使。不正に関わったと指摘されているこれらの人たちは、みな出世している。一方、不正を実行させられた赤木さんは死んでいる。このことに国民は納得するのか。弁護側は全員の証人申請をする。赤木さんの話が嘘だというなら、証明してくださいという話だ。
また、中途半端な賠償請求額で裁判を起こせば、国は“あげます、だから裁判は終わり”としてしまう。だから向こうが認諾できないよう、あえて高い金額を設定し、法廷できちんと真相究明をしようというのが2人の弁護士の考え方だ。彼らは大阪で過労死問題を手掛けてきたので、遺族の願いが勝ち負けや賠償金ではなく真相究明だということもちゃんと分かっている。ぜひやってほしいと期待している」。
また、今後について相澤氏は「例えば麻生財務大臣が“俺は知らなかった”で済むことなのか。社員が不祥事を起こした企業の社長がそうは言えないだろうし、責任者として真相究明、再発防止の努力をしなければならない。そして、財務大臣の上にいるのは総理大臣だ。度合いは色々あるにしても、国政に対して、全く無責任だとは言えない。役所がやったことだと言うのなら、まさに政治家の責任において解明し、遺族が納得いくような説明をすべきだ」と訴えた。
ジャーナリストの堀潤氏は「これから裁判を闘うのは本当に大変なことだと思うし、本来は裁判にまでしなくても良かった話だったと思う。それを重く受け止め、真相を明らかにした上で、政治家と官僚、本庁と出先機関、キャリアとノンキャリといった関係、構造のあり方についてもメスを入れていくのが総理や大臣の責任だと思う」と話した。
たいへん長い記事となって恐縮です。要点の抜粋か、関心のある方のみリンク先を参照いただくという紹介の仕方も考えましたが、今回、該当の記事内容の全文をそのまま転載しています。森友学園との土地取引を巡り、公文書が改ざんされた問題に悩み、自ら命を絶つことになった赤木さんやご遺族の無念さを知ってもらうためにもそのように思い直しました。
このブログでは3年前に「森友学園の問題から思うこと」という記事を投稿しています。その記事の中で「森友学園の問題で安倍首相や昭恵夫人が贈収賄につながるような働きかけを関係機関に行なっていないことはその通りだろうと考えています」と書き残しています。その考えは今も変わっていません。
しかし、昭恵夫人が森友学園と関わっていたことは事実でした。そのことを把握されていなかったのかも知れませんが、安倍首相が国会で「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁したことも事実です。そして、この答弁が一連の公文書改ざんの問題につながり、赤木さんの自死という悲劇を招いたことも事実だろうと思っています。
改ざんの指示が佐川元理財局長だったことも事実認定されています。ただ佐川元理財局長や財務省の判断による「忖度」から始まった問題だったのか、官邸や政治家からの指示があったのかどうかは不明瞭なままだと言えます。安倍首相が公文書の改ざんに直接関わっているとは考えられませんが、財務省だけに責任を負わせる問題だったのかどうかは釈然としません。
紹介した上記記事の中で、赤木さんの妻は「だけど、佐川さんも佐川さんの家族も、きっともう幸せではないのでしょうね。佐川さんもかわいそう。もしかしたら佐川さんも何らかの指示、しがらみの中でやらざるを得なかったのではないか。そこも含めて全部知りたい」と語られていたことを伝えています。
赤木さんの遺書の全文公開と提訴が改めて森友問題の真相解明や責任を問い直す機会につながることを願っています。しかしながら麻生財務相は男性職員の遺書について「新たな事実が判明したとは考えられず、再調査を行うことを考えているわけではない」と述べていました。同時に麻生財務相は遺書を「まだ読んでいない」と明かしていましたが、自分自身で読まずに再調査を否定する不誠実さに批判の声も上がっています。
一方で、安倍首相は遺書に目を通された上で「真面目に職務に精励していた方が、自ら命を絶たれる、大変痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたいと思う。財務省においては麻生大臣の下で、事実を徹底的に明らかにしたところだが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していくものと考えている」と述べています。
言葉は丁寧ですが、やはり再調査には消極的です。そもそも安倍首相の軽率な国会答弁が問題の発端であることを自覚されているのかどうか疑問です。今回の問題でも普段から安倍首相を支持されている有識者からは「もっと国民生活に直結した問題を議論すべき」という声が上がるのだろうと思っています。
確かに新型コロナウイルスへの対応など優先順位の高い重要な課題の議論が疎かになるようでは問題ですが、首相の軽率な言動によって行政が振り回され、あってはならない公文書の改ざんにつながっているような事態を決して見過ごせません。公文書管理法第1条で公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民の共有の知的資源」と定義しています。
国民の命と暮らしを守るべき責務のある政府は日々、重要な政策判断を積み重ねています。その判断が適切だったのかどうか、場合によって時間差があることは仕方ありませんが、いずれかの段階で国民に明らかにしなければなりません。そのためにも公文書管理の重要性がうたわれている訳ですが、桜を見る会の問題を巡る対応をはじめ、現政権での管理の杜撰さが目立ちます。
提訴後に記者会見した弁護士の「亡くなった赤木さんは手記の最後に『今の健康状態と体力ではこの方法しかとれなかった』と記している。本当は事実を自ら伝えたかったはずだ。この裁判で真実を明らかにしたい。裁判を通じて、今後、違法なことを命じられた現役の職員たちが声をあげて抵抗できるような組織にしていきたい」という言葉の重さも強く感じ取っています。
最後に、今回のような長い記事を綴っている私自身の問題意識を改めて説明させていただきます。以前から当ブログには幅広い見識の方々が訪れてくださっています。そのことを意識し、事実関係を中心とする情報提供に努め、扇情的な「批判ありき」の言葉は避けるように心がけています。その上で過去に何回か掲げてきた次の記述を紹介し、今回の記事を終わらせていただきます。
適切な評価を下していくためには「誰が」に重きを置かず、その言動や判断は正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくことが必要だろうと考えています。そして、物事を適切に評価していくためには、より正確な情報に触れていくことが欠かせません。誤った情報にしか触れていなかった場合は適切な評価を導き出せません。また、情報そのものに触れることができなかった場合、問題があるのか、ないのか、評価や判断を下す機会さえ与えられません。
| 固定リンク
コメント