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2020年3月28日 (土)

定年を迎える週に思うこと

2月初めに「定年延長の話」という記事を投稿し、国家公務員の定年が60歳から段階的に65歳まで延びる動きを紹介しました。この法案は今国会で成立し、その後、地方公務員にも定年延長の動きは波及していくものと見込まれています。ただ下記報道のとおり黒川検事長の定年延長の問題と絡み合っていくと審議に影響を与える可能性もあるようです。

政府は13日の閣議で、検察官などの国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための法案を決定しました。13日に閣議決定された国家公務員法の改正案では、事務次官などを除いて60歳となっている国家公務員の定年について、少子高齢化の進展を踏まえ、経験が豊富な職員を最大限活用するため、令和4年度から段階的に65歳に引き上げるとしています。

また、60歳以上の給与はそれまでの水準の7割程度にするとしているほか、60歳になった職員を原則、管理職から外す「役職定年制」を導入するとしています。これに併せて、検察官の定年についても63歳から65歳に段階的に引き上げるための検察庁法の改正案も13日、閣議決定されました。この中では、検事総長の定年は65歳のままとし、「役職定年制」と同様の趣旨の制度を導入し、63歳になった検察官は原則、次長検事や検事長に任命できないなどとしています。

また、定年延長については、国家公務員法の改正案に合わせて最長で3年まで可能とするとしています。政府は今の国会で法案の成立を目指す方針ですが、検察官の定年延長をめぐっては、政府がことし1月、法解釈を変更して東京高等検察庁の黒川検事長の定年を延長したことに対し、野党側から批判が相次いでおり、法案の審議に影響を与えることも予想されます。【NHK NEWS WEB 2020年3月13日

数年前から公務員の定年延長の話は取沙汰されていました。公務員の制度を変更する際、いつも二通りの考え方が浮上します。民間に比べて公務員は優遇されているという批判を避けるため、先走った変更は控えるという考え方があります。その一方で社会全体の流れを作るため、公務員の制度を先行して変更していくという考え方もあります。

今回の定年延長の動きは後者に位置付けられます。高年齢者雇用安定法で使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められていますが、定年を65歳以上としている事業所は厚生労働省の統計で10.9%にとどまっています。今後、社会全体で70歳までの雇用確保が「努力義務」として求められていく動きもある中、国家公務員の定年延長も判断されたのだろうと見ています。

いずれにしても今年3月末の定年対象者の年齢は60歳です。マラソンに例えれば42.195キロ先のゴールをめざして走ってきたところゴール直前で「まだゴールは先」と告げられずに済んだ世代だと言えます。そのうちの一人が私自身でした。定年延長のメリットもあるようですが、予定した年齢で無事にゴールを迎えられることのほうに安堵しています。

実はゴールという言葉を繰り返していますが、フルタイム再任用として続けるため、3月31日と4月1日で職場環境の変化は一切ありません。主任職の場合、同じ部署で同じ職責のもとに再任用されることが原則化されています。そのため、大きな節目であることに間違いありませんが、卒業式を迎える時のような感傷的な思いはありません。

もともと当ブログでは個人的な話をあまり取り上げていません。今回、記事タイトルに掲げながら個人的な話を取り上げることに少しためらいもありましたが、時事の話題を絡めながら「今、思うこと」を書き進めさせていただいています。振り返れば過去には「公務員になったイキサツ」「組合役員になったイキサツ」「組合役員を続けている理由」という記事も投稿していました。

長い市役所生活の中で組合役員を担い続けた経験は貴重なことだったと思っています。私の前の委員長たちは上部団体に活躍の場を移しながら定年を迎えています。私自身は介護の負担があり、単組の委員長に専念させていただいてきました。自分自身が望んだ選択でしたが、他の組合役員の皆さんらに対し、いろいろな場面でお力になれなかったことを改めてお詫び申し上げます。

あわせて私どもの組合において私自身が歴代委員長に比べて相当長く務めてきていることの功罪も顧みています。その評価は組合員の皆さんに委ねることになりますが、先日発行した機関誌の特集記事の「おわりに」には次のような私自身の思いを記しています。ちなみに特集記事の見出しは当ブログの最近の記事のタイトル「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」をそのまま使っています。

組合役員を長く続けている中で「組合は必要」という思いを強めています。私自身、別な頁で紹介されているとおり3月末に定年を迎えます。大きな節目でしたが、昨年11月の段階で引き続き執行委員長を担う判断を下していました。

ここまで長く務めてきた責任として、何とか「ピンチをチャンス」に変えるため、よりいっそう努力していくつもりです。組合加入率の問題や組合役員の担い手不足という厳しさに直面し、そのような思いを強めています。

同時に私一人や執行部だけの力で変えられるものではなく、そうすべきものではありません。情勢や問題意識を組合員の皆さんと共有化し、これからの組合の組織や活動のあり方について、ともに考え、ともに力を出し合っていくことが重要です。そのような意味で、今回の特集が情勢や問題意識の共有化に少しでも寄与できていたら本当に幸いなことだと考えています。

なお、今年も個人の責任で運営しているブログ『公務員のためいき』に書き込んだ記事内容を引用している箇所があります。もともと組合を身近に感じていただくための一つのツールとして開設しているブログです。

ただ組合員の皆さんが必ずしもご覧になっているものではありませんので、時々、今回のような引用を試みています。そのブログは毎週1回週末に更新しています。ぜひ、機会がありましたら、ご覧いただければ幸いです。

最後に、この特集記事の中で毎年、ストライキ批准投票の結果を報告しています。すでに組合ニュースでもお伝えしましたが、別記のとおり批准率(組合員総数に対する賛成の比率)は85.03%、投票率92.69%、賛成率91.74%で、過去20年ほどで最も高い数字だった昨年の水準に並ぶ高い結果を得られています。

ストライキの是非に対する賛否の投票で組合活動を直接評価するものではありませんが、組合員の皆さんからの信頼度をはかる大きな目安でもあり、たいへん心強く受けとめています。このような組合員の皆さんからの信頼に応えるため、これからも精一杯頑張る決意です。ぜひ、引き続き組合活動への力強い結集をよろしくお願いします。

4月1日以降、職場がそのままであることを前述していましたが、組合役員としての立場や役割もまったく変わりません。1年ごとの任期であるため、11月の定期大会に向けて判断を重ねていくことになります。「定年を迎える週に思うこと」というタイトルで書き進めてきましたが、当面、3月までと変わらない日常生活が続くことになります。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、様々な催しが中止されています。定年をお祝いただく会がいくつか3月に予定されていましたが、すべて取りやめていました。懐かしい方々と久しぶりに語り合える機会が見送られ、残念でしたが仕方ありません。

3月31日の辞令伝達式の後に予定されていた市長との懇話会も取りやめたという連絡を金曜日に受けました。懇話会の後、そのまま休暇を取って何人かで会食に行く約束も交わしていました。小池都知事の自粛要請を受け、辞令を受け取った後は職場に戻り、普段通りの仕事に励もうと考え始めています。

最後に、オリンピック・パラリンピックの開催延期が決まった途端、小池都知事は感染の危険性を強く訴え出しています。これまで開催の判断に影響を及ぼすため、自粛要請を控えていたとしたら「都民ファースト」の言葉に違和感を覚えてしまいます。

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2020年3月21日 (土)

財務省職員の遺書全文公開

時々『週刊文春』を購入しています。先週水曜の朝、迷わず最新号を立ち寄ったコンビニのレジに持ち込んでいました。最新号の特集記事の見出しは「妻は佐川元理財局長と国を提訴へ 森友自殺 財務省職員遺書全文公開」でした。この問題は事前に報道があり、発売後には遺書の内容などを各メディアでも取り上げています。

森友改ざんで自殺の職員「佐川氏の指示」 手記・遺書公表 学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書の改ざんを強要され自殺に追い込まれたとして、赤木さんの妻が18日、佐川氏と国に約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

妻は「元はすべて佐川氏の指示。パワハラで有名な佐川氏の指示には誰も背けない」とする赤木さんの手記や遺書を公表。代理人を通じて「夫が死を決意した本当のことを知りたい」と訴えた。

訴状などによると、当時財務省理財局長だった佐川氏は、安倍晋三首相が国会で国有地売却問題について「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の2017年2~4月、「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと財務省幹部に指示。幹部は近畿財務局に改ざんを命じた。

近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木さんは2月26日、同局の上司から呼び出されたのを皮切りに、3~4回にわたって決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す部分を削除する作業を強制された。赤木さんは「こんな事をする必要はない」などと強く反発したり涙を流したりして抗議したが、本省や上司の指示のためやむを得ず従った。

この間、連続出勤や午前2~3時までの長時間労働が重なり、7月にうつ病を発症して休職。12月には大阪地検から電話で事情聴取を受け「改ざんは本省のせいなのに、最終的には自分のせいにされる」と心理的負荷が強まり、翌18年3月7日に自殺した。手書きの遺書には「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる なんて世の中だ」などと書かれていた。

妻は国に対し「健康状態の悪化を容易に認識し、自殺を予見できた」として約1億7百万円を、佐川氏には「改ざんの強制で極めて強い心理的負荷を受けることは予見できた」として5百5十万円を求めた。妻は提訴の理由について「死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。土地の売り払いはどう行われたのか、真実を知りたい」と代理人を通じてコメントした。財務省は「(訴状の)内容を確認していないことから、コメントは差し控えたい」としている。

政府、再調査せず 政府は18日、森友学園問題で決裁文書の改ざんに関わり自殺した財務省近畿財務局職員の手記公表を受け、改ざんの経緯などを改めて調査する考えはないとした。

安倍晋三首相は、官邸で記者団から手記に関する受け止めを聞かれ「財務省で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならず、今後も適正に対応していくものと考えている」と語った。再調査には触れなかった。自らの責任についての質問には、答えずに立ち去った。

財務省の茶谷栄治官房長は参院財政金融委員会で、2018年6月に公表した調査報告書では、改ざんが行われた当時に理財局長だった佐川宣寿氏が方向性を決定付け、理財局が一連の行為を指示したと結論づけていると説明した。自殺した職員が理財局からの度重なる指示に反発したことも認定したとして「新たな事実は見つかっていないと考えられる。再調査は考えていない」とした。

麻生太郎財務相は同委で「関与した職員に厳正な処分を行い、私自身も閣僚給与を自主返納した」として問題は決着済みと強調。「大臣の職責を果たしていきたい」と、改めて辞任を否定した。中日新聞2020年3月19日

ネットで検索したところ上記の新聞記事が詳しい経緯を伝えていました。今回のブログ記事は他のサイトに掲げられている内容の紹介が多くなります。私自身の手元に『週刊文春』がありますが、著作権の問題に留意した紹介の仕方に努めなければなりません。

そのため、すでにネット上に公開されている情報について、引用元を添えながら紹介することが最も著作権の問題を避けられる方法だからです。入力する作業の負担も軽減されるため、そのような構成でまとめさせていただくことをご容赦ください。

やはりネットで検索したところAbemaTIMESというサイトに『週刊文春』最新号の特集記事の内容が詳しく掲げられていました。『「財務省は喧嘩を売っている」「弁護側は出てきた全員を証人申請」森友文書改ざん、自殺職員のメモを託された相澤冬樹氏』という見出しの記事で、財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが自殺に追い込まれた経緯などを伝えています。

「森友問題。佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それに指示NOを誰れもいわない理財局の体質はコンプライアンスなど全くない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府」(原文ママ)

2018年3月7日、学校法人「森友学園」との土地取引をめぐる公文書が改ざんされた問題が国会で激しく追及される中、自ら命を絶った財務省近畿財務局の職員・赤木俊夫氏(当時54)が最後に残したメモだ。また、手記には「国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です」「元は、すべて、佐川理財局長(当時)の指示です。」「3月7日頃にも修正作業の指示が複数回あり、現場として私は相当抵抗しました」と、上からの指示を受けた様子が実名を含め克明に記されていた。

遺族は18日、これら自宅のパソコンに遺されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚の公開に踏み切り、佐川宣寿・元財務省理財局長と国に損害賠償を求めて提訴した。代理人弁護士が会見で読み上げたメッセージの中で、赤木氏の妻は「夫が死を選ぶ原因になった改ざんは、誰が何のためにやったのか。今でも夫のように苦しんでいる人を助けるためにも佐川さん、どうか改ざんの経緯を、本当のことを話してください。よろしく願いします」と訴えている。

これらの手記を託されたのが、NHK大阪放送局の記者時代から森友学園問題を取材、19日発売の『週刊文春』に記事を寄せた相澤冬樹・大阪日日新聞論説委員だ。18日のAbemaTV『AbemaPrime』では、相澤氏を招いて話を聞いた。

■「切り捨てられてしまった」と感じ提訴に踏み切る

相澤氏がメモや手記に最初に接したのは1年4カ月前のこと。「今でもはっきり日付を覚えている。2018年11月27日だった。奥さんは私がNHKを辞めた経緯を知り、自分の夫と似たような境遇だと感じたらしく、“お会いしたい”と連絡をくれた。ただし、近畿財務局やマスコミが怖いということで、取材前提ではないということでお会いした。

奥さんは当時のことを鮮明に覚えていて、語ってくれた。深夜残業が続き、会計検査院にまで嘘をつかされた。真面目な公務員としてやっていられない。だから異動の希望を出していた。上司も“たぶん大丈夫だ”と言ったらしい。ところが蓋を開けてみると、彼だけが残され、他のみんなが異動してしまった。奥さんに“ものすごくショックだ”と言ったという。ほどなく、彼はうつ病で休職、2度と職場に戻れなかった。ただ、僕はそんなに突っ込んだ話はできないと思っていた」。

そして妻は、すぐに今回の手記を出してきたという。「彼女の方から、いきなり“これ、ご覧になりたいですよね”と。『週刊文春』の記事で内容を知った皆さんの心を震わせるものだった思うが、私も本当にすごいものが遺されていたんだなと感じた。ただ、奥さんは“夫の遺志に沿うためには、これは出した方がいいだろう。

でも出したらどうなるか。非常に怖く、なかなか出せない。だから記事にはしないでほしい。出されたら私は死にます”と言った。名がたくさん出ているし、財務局の人たちに迷惑をかけてはいけないという思いがとても強いようだった。私はその目を見て、これは本気だ、これは了解なしに出すことはできないと思った」。

それから1年あまり。妻と交流する中で、少しずつ心境に変化も生じてきたという。「“夫がわざわざこれを作ったのは、世の中に訴えたいからだろうな”と。確かに、そうでなければこういう書き方にはならない。世の中の人に知ってほしいから書いている。そして、改ざんはなぜ必要だったのか。誰が、どういうふうにして赤木さんに改ざんをさせたのか。あの土地取引は本当に正当なものだったのか、といった疑問も湧いてきた。財務省が出した調査報告書の内容にも納得がいかなかった」。

赤木氏の手記には、「すべて佐川元理財局長の指示であり、本省幹部が文書の改ざん範囲を決定し、改ざん範囲がどんどん拡大、修正回数は3、4回に及んだ」「大阪地検特捜部は事実関係を把握していた」「本省ではなく、近畿財務局の責任となるだろう」といった内容が含まれている。こうした点について妻は自ら関係者に話を聞くうちに、裁判を起こし、手記を公表せざるを得ないと考えたという。

「奥さんは“俊君にお詫びして、なぜこんなことをしたのか説明してほしい”と、弁護士を通じ佐川氏に手紙を2度送っている。しかし、佐川氏からは“行けません”ということならまだしも、一切返事がない。そして、それまでは話をしに来てくれていた財務局の人たちまで“もう行けません”と言い出した。“自分は切り捨てられたのか。結局、裁判しかない”と感じた。そして、最大の証拠である手記は裁判に提出するとともに、世にも問うた方がいいだろうという気持ちになっていった」。

その上で相澤氏は、今の妻の心境について、「個人への恨みやつらみでやっているわけではない」と強調する。「例えば佐川さん個人が責任追及される格好になっているが、実は昨日、奥さんが“見たい”というので、佐川さんの自宅に案内した。ただ、佐川さんに会おうというわけでもなく、手紙も置かず、とにかくじっと見ているだけ。そして、“この街は幸せそうな街ですね”と言った。

“だけど、佐川さんも佐川さんの家族も、きっともう幸せではないのでしょうね。佐川さんもかわいそう”と。つまり、訴えた相手だし、手記の中でも佐川さんが全て指示したと書かれてはいるが、もしかしたら佐川さんも何らかの指示、しがらみのなかでやらざるを得なかったのではないかという気持ちもあるということだ。そこも含めて全部知りたいという気持ちがある」。

■「弁護側は手記に出てきた全員の証人申請をする」

19日の国会では、手記に関する質疑が行われた。麻生財務大臣は「少なくともこの問題で一番問題なのは、文書の改ざんが行われたことが一番問題なので、これは深くお詫び申し上げなければならんところだと思っている」、財務省の茶谷官房長は「財務省としてはできる限りの調査を尽くした結果を示したものであり、新たな事実は見つかっていないと考えられることから再調査を行うようなことは考えていない」と答弁。

また、安倍総理は囲み取材で「真面目に職務に精励していた方が、自ら命を絶たれる、大変痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたいと思う。財務省においては麻生大臣の下で、事実を徹底的に明らかにしたところだが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していくものと考えている」とコメントしている。

相澤氏は「今までは与野党も国民も“問題だ”という人たちと、“問題はなかった”という人たちが二つに割れ、議論も平行線をたどってきた。しかし今回は違う。この事件で亡くなった犠牲者の遺族が“あの調査報告書では納得できないと”声を上げた。国は当然、納得が行く説明をする義務があるはずだ。しかし財務省は“再調査するつもりはない”と直ちに明言した。“重く受け止め、検討させていただきます”みたいな曖昧な官僚答弁でもなかった。本当に許されない態度だし、正面きって喧嘩を売っていると感じた」と怒りを露わにする。

「手記には佐川さんはじめ、色んな人が実名で出てくる。例えば“次の財務事務次官”とも言われている、理財局長だった太田充主計局長。近畿財務局長だった美並義人東京国税局長。理財局総務課長だった中村稔駐英公使。不正に関わったと指摘されているこれらの人たちは、みな出世している。一方、不正を実行させられた赤木さんは死んでいる。このことに国民は納得するのか。弁護側は全員の証人申請をする。赤木さんの話が嘘だというなら、証明してくださいという話だ。

また、中途半端な賠償請求額で裁判を起こせば、国は“あげます、だから裁判は終わり”としてしまう。だから向こうが認諾できないよう、あえて高い金額を設定し、法廷できちんと真相究明をしようというのが2人の弁護士の考え方だ。彼らは大阪で過労死問題を手掛けてきたので、遺族の願いが勝ち負けや賠償金ではなく真相究明だということもちゃんと分かっている。ぜひやってほしいと期待している」。

また、今後について相澤氏は「例えば麻生財務大臣が“俺は知らなかった”で済むことなのか。社員が不祥事を起こした企業の社長がそうは言えないだろうし、責任者として真相究明、再発防止の努力をしなければならない。そして、財務大臣の上にいるのは総理大臣だ。度合いは色々あるにしても、国政に対して、全く無責任だとは言えない。役所がやったことだと言うのなら、まさに政治家の責任において解明し、遺族が納得いくような説明をすべきだ」と訴えた。

ジャーナリストの堀潤氏は「これから裁判を闘うのは本当に大変なことだと思うし、本来は裁判にまでしなくても良かった話だったと思う。それを重く受け止め、真相を明らかにした上で、政治家と官僚、本庁と出先機関、キャリアとノンキャリといった関係、構造のあり方についてもメスを入れていくのが総理や大臣の責任だと思う」と話した。

たいへん長い記事となって恐縮です。要点の抜粋か、関心のある方のみリンク先を参照いただくという紹介の仕方も考えましたが、今回、該当の記事内容の全文をそのまま転載しています。森友学園との土地取引を巡り、公文書が改ざんされた問題に悩み、自ら命を絶つことになった赤木さんやご遺族の無念さを知ってもらうためにもそのように思い直しました。

このブログでは3年前に「森友学園の問題から思うこと」という記事を投稿しています。その記事の中で「森友学園の問題で安倍首相や昭恵夫人が贈収賄につながるような働きかけを関係機関に行なっていないことはその通りだろうと考えています」と書き残しています。その考えは今も変わっていません。

しかし、昭恵夫人が森友学園と関わっていたことは事実でした。そのことを把握されていなかったのかも知れませんが、安倍首相が国会で「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁したことも事実です。そして、この答弁が一連の公文書改ざんの問題につながり、赤木さんの自死という悲劇を招いたことも事実だろうと思っています。

改ざんの指示が佐川元理財局長だったことも事実認定されています。ただ佐川元理財局長や財務省の判断による「忖度」から始まった問題だったのか、官邸や政治家からの指示があったのかどうかは不明瞭なままだと言えます。安倍首相が公文書の改ざんに直接関わっているとは考えられませんが、財務省だけに責任を負わせる問題だったのかどうかは釈然としません。

紹介した上記記事の中で、赤木さんの妻は「だけど、佐川さんも佐川さんの家族も、きっともう幸せではないのでしょうね。佐川さんもかわいそう。もしかしたら佐川さんも何らかの指示、しがらみの中でやらざるを得なかったのではないか。そこも含めて全部知りたい」と語られていたことを伝えています。

赤木さんの遺書の全文公開と提訴が改めて森友問題の真相解明や責任を問い直す機会につながることを願っています。しかしながら麻生財務相は男性職員の遺書について「新たな事実が判明したとは考えられず、再調査を行うことを考えているわけではない」と述べていました。同時に麻生財務相は遺書を「まだ読んでいない」と明かしていましたが、自分自身で読まずに再調査を否定する不誠実さに批判の声も上がっています。

一方で、安倍首相は遺書に目を通された上で「真面目に職務に精励していた方が、自ら命を絶たれる、大変痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたいと思う。財務省においては麻生大臣の下で、事実を徹底的に明らかにしたところだが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していくものと考えている」と述べています。

言葉は丁寧ですが、やはり再調査には消極的です。そもそも安倍首相の軽率な国会答弁が問題の発端であることを自覚されているのかどうか疑問です。今回の問題でも普段から安倍首相を支持されている有識者からは「もっと国民生活に直結した問題を議論すべき」という声が上がるのだろうと思っています。

確かに新型コロナウイルスへの対応など優先順位の高い重要な課題の議論が疎かになるようでは問題ですが、首相の軽率な言動によって行政が振り回され、あってはならない公文書の改ざんにつながっているような事態を決して見過ごせません。公文書管理法第1条で公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民の共有の知的資源」と定義しています。

国民の命と暮らしを守るべき責務のある政府は日々、重要な政策判断を積み重ねています。その判断が適切だったのかどうか、場合によって時間差があることは仕方ありませんが、いずれかの段階で国民に明らかにしなければなりません。そのためにも公文書管理の重要性がうたわれている訳ですが、桜を見る会の問題を巡る対応をはじめ、現政権での管理の杜撰さが目立ちます。

提訴後に記者会見した弁護士の「亡くなった赤木さんは手記の最後に『今の健康状態と体力ではこの方法しかとれなかった』と記している。本当は事実を自ら伝えたかったはずだ。この裁判で真実を明らかにしたい。裁判を通じて、今後、違法なことを命じられた現役の職員たちが声をあげて抵抗できるような組織にしていきたい」という言葉の重さも強く感じ取っています。

最後に、今回のような長い記事を綴っている私自身の問題意識を改めて説明させていただきます。以前から当ブログには幅広い見識の方々が訪れてくださっています。そのことを意識し、事実関係を中心とする情報提供に努め、扇情的な「批判ありき」の言葉は避けるように心がけています。その上で過去に何回か掲げてきた次の記述を紹介し、今回の記事を終わらせていただきます。

適切な評価を下していくためには「誰が」に重きを置かず、その言動や判断は正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくことが必要だろうと考えています。そして、物事を適切に評価していくためには、より正確な情報に触れていくことが欠かせません。誤った情報にしか触れていなかった場合は適切な評価を導き出せません。また、情報そのものに触れることができなかった場合、問題があるのか、ないのか、評価や判断を下す機会さえ与えられません。

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2020年3月14日 (土)

映画『新聞記者』

金曜の夜、次年度に向けた人員要求交渉の決着期限だったため、帰宅できたのは日付が土曜に変わってからでした。団体交渉の時間よりも断続的な事務折衝と打ち合わせしている時間が圧倒的に長く、初めて執行委員になられた方々は少し戸惑われていたようです。

100%満足できる交渉結果ではありませんが、労使交渉を尽くしているからこそ、いくつかの職場で増配置回答を得られ、市側の提案を修正できていることも確かです。ただ同様に金曜夜を決着期限として臨んだ別な課題に対し、市側の考え方を翻させることはできませんでした。週を越えて結論を出す際、何としても組合側の主張に沿った決着点にたどり着きたいものと考えています。

さて、日本アカデミー賞の授賞式が先日開かれ、映画『新聞記者』が下記報道のとおり最優秀作品賞に選ばれました。この映画は東京新聞の記者である望月衣塑子さんの著書『新聞記者』を原案とした作品で、主演は松坂桃李さんが務めていました。

第43回日本アカデミー賞授賞式が6日に行われ、映画『新聞記者』が最優秀作品賞に輝いた。本作は最優秀作品賞のほか、最優秀主演男優賞を松坂桃李が、最優秀主演女優賞をシム・ウンギョンが受賞し、3冠となった。

『新聞記者』は、東京新聞記者・望月衣塑子氏のベストセラー『新聞記者』(角川新書)が原案。政権がひた隠そうとする権力中枢の闇に迫ろうとする女性記者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)と、理想に燃え公務員の道を選んだ若手エリート官僚・杉原拓海(松坂桃李)との対峙と葛藤を描く。

松坂は 「うれしいです。純粋に。ここにはいない本当にスタッフの方々、関係者の方々と一緒に喜びを今すぐにでも分かち合いたい気分です」と喜びのコメント。ウンギョンは 「本当に計り知れません。ありがとうございます。何とも言えない気持ちなので、光栄です。ありがとうございます」と感無量の様子で語った。

藤井道人監督は 「本当に、本当にうれしいしか言えないんですけど、本当にもっともっとたくさんのスタッフとみんなと力を合わせてこの映画を作ったので、早く みんなに報告したい。(松坂)桃李君と同じ思いです」とコメントした。【BIGLOBEニュース2019年3月6日

昨年末に投稿した記事「不戦を誓う三多摩集会」の中で、望月さんの「破壊される民主主義~安倍政権とメディア」という題目のお話を伺ったことを伝えていました。以前、望月さんの著書『新聞記者』を読んでいたため、機会があれば松坂桃李さん主演の同名の映画も見たいと思っていたことも書き添えていました。

日本アカデミー賞の発表直前、立ち寄ったレンタルショップに映画『新聞記者』のDVDを見つけ、すぐ借りて自宅で視聴していました。日本アカデミー賞の発表が間近であることを意識していた訳ではなく、たまたま見つけて視聴できたというタイミングでした。

官房長官会見に彗星のごとく現れ、次々と質問を繰り出す著者。脚光を浴び、声援を受ける一方で、心ないバッシングや脅迫、圧力を一身に受けてきた。演劇に夢中だった幼少期、矜持ある先輩記者の教え、スクープの連発、そして母との突然の別れ…。歩みをひもときながら、劇的に変わった日々、そして記者としての思いを明かす。

上記は望月さんの著書を紹介する内容です。映画は望月さんの原作ではなく、原案という位置付けです。その違いのとおり著書と映画の内容はまったく別物だと言えます。正直なところ著書のほうは期待値が高かった分、それほど目新しい内容には触れられなかったという印象を残していました。

映画のほうの期待値も高かったところですが、こちらは期待を裏切らせない面白さを味わうことができました。余談ですが、初めて望月さんを実際に拝見する機会を得た時、思い描いていた雰囲気と大きく違っていました。語っている内容そのものは硬くても、語り口が軽快で頻繁に笑いを誘いながらお話いただきました。

パワポのリモコンを片手にリズミカルなステップを踏んだステージに接した印象を得ています。暗いイメージを抱いていた訳ではありませんが、予想以上に明るく、好感度を高める意味でパワフルな方でした。いろいろな意味で、望月さんに絡む印象は変動している興味深さがあります。

東都新聞の記者・吉岡(シム・ウンギョン)は、大学新設計画にまつわる極秘情報の匿名FAXを受け取り、調査を始める。日本人の父と韓国人の母を持ち、アメリカで育った吉岡はある思いから日本の新聞社に在職していた。かたや内閣情報調査室官僚の杉原(松坂桃李)は、国民に尽くすという信念と、現実の任務の間で葛藤する。

上記は映画を紹介するサイトに掲げられた「あらすじ」ですが、あくまでも映画はサスペンスドラマであることがうたわれています。大勢の職員がズラッとパソコンに向かい、それぞれ指示された情報操作に携わる内閣情報調査室の広い一室の場面などは異様な光景ですが、実在するのだろうという想像力が働かさせられます。

内閣情報調査室の役割や目的そのものが「国民のため」でなく、「政権の安定のため」であり、そのことが最終的には「国民のため」につながるという論理をよく耳にします。1年近く前に「『官邸ポリス』を読み終えて」という記事を投稿していました。やはり内閣情報調査室の凄まじいパワーを描いた書籍を取り上げた記事でした。

その書籍の宣伝文句は「本書の92%は現実」というものです。映画『新聞記者』も望月さんの体験した事実関係を綴った著書を原案としていますので同様な効果を狙っているのだろうと思います。つまりドラマだとうたいながらも、現実に起こっている事象を取り上げていると思わせる効果や波及力を期待しているように読み取れます。

映画『新聞記者』は加計学園の問題をストレートに連想させる事件を軸に物語が進みます。したがって、安倍政権を批判的にとらえた強烈なメッセージを託した映画であることに間違いないはずです。あまり書きすぎてネタバレに注意しなければなりませんが、新設する大学の目的が生物化学兵器の研究だったという設定は極端な展開だと感じていました。

それまで現実と架空の世界の線引きが微妙に思えていながら、この設定で一気に全体的なリアリティが低下しかねない印象を抱いていました。 それともフィクションであることを強調するため、あえて極端な設定にしたのでしょうか。いずれにしても安倍政権にとって好ましくない映画であるはずです。

LITERAでは『安倍政権の闇を描いた映画『新聞記者』は日本アカデミー賞をとれるか? 松坂桃李が作品への思いと「忖度」の空気を玉川徹に告白』という記事を掲げていました。それが『安倍政権と内調の闇を暴いた映画『新聞記者』が日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞する快挙! 主演女優賞、主演男優賞も』という記事につながり、日本アカデミー賞に「忖度」はなかった結果だと言えます。

事実関係として、LITERAの記事の中で松坂桃李さんが「番宣にいたってはほとんどできなかったです」と語っていたことを紹介しています。確かに映画『新聞記者』をマスメディアが大きく取り上げている場面を見かけていません。そのような中で日本アカデミー賞の最優秀作品賞などを獲得したことは、いろいろな意味で快挙だったものと思っています。

最後に、多面的な情報に触れていかなければ、より望ましい「答え」に近付けません。私自身、映画『新聞記者』を肯定的に評価しています。一方で、次のような新聞記事『“反権力”振りかざす左派メディアを喝破!安積明子氏の新著『「新聞記者」という欺瞞』好評 』も目にし、機会があればその書籍も読んでみるつもりです。

政治の最前線を取材するジャーナリスト、安積明子氏の新著『「新聞記者」という欺瞞』(ワニブックス)が好評だ。「国民の代表」を自称し、「反権力」ばかりを振りかざす左派メディアや左派ジャーナリストを喝破している。永田町をざわつかせている1冊だ。

本著は、「記者会見の現場で起こっていること」「『新聞記者』はプロパガンダ映画だ」「『報道の自由』を騙る反日・反権力の新聞労連」など5章立て。全231ページあり、読み応えも十分だ。安倍内閣のスポークスマンである菅義偉官房長官の記者会見で、いま何が起きているのか。菅氏と記者団との詳細なやり取りを再現している。

そこでは、左派メディアが「国民の代表だ」と自称しながらも、逆に「知る権利」をいかに脅かし、民主主義に害をもたらしかねない存在であるかを証明している。安積氏は「左派メディアは、単に政権に『ノー』を突き付けるのが正義だと勘違いし、あおっている。『いまの報道はおかしい』と思う人たちに、ぜひ手に取ってほしい」と語っている。【ZAKZAK 2020年3月9日

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2020年3月 7日 (土)

会計年度任用職員制度、インデックス

前回の記事は「新型コロナウィルスの感染対策」でした。この問題も冒頭で少し触れさせていただきますが、新型インフル特措法の条文では「新型インフルエンザ等」と記されています。今、この瞬間の対策が急務だと考えるのであれば法改正に固執した安倍首相の判断を疑問視しています。

私自身の「なぜ?」という思いについてLITERAの記事『コロナ対応後手の安倍首相が“緊急事態宣言”にだけ前のめりな理由』では「黒川検事長の定年延長への国家公務員法適用など、さんざん法解釈を捻じ曲げてきたのではなかったか。にもかかわらず、なぜ今回だけ、厳密さを求め、法律を改正しようというのか」、いつものように辛辣な言葉で安倍首相を批判しています。

このブログでは安倍政権に対して「批判ありき」で論じないように努めています。下された判断や方向性が望ましいことなのかどうか、個々の具体的な事例の適否に対して個人的な思いを綴ってきています。その上で、このところ専門家会議の意見を踏まえずに様々な判断が下されていますが、私自身は最近の動きを憂慮し、評価できない点が多々あるものと思っています。

さて、カテゴリー別に検索できる機能を使いこなせず、これまで「自治労の話、2012年夏」のように記事本文の中にインデックス(索引)代わりに関連した内容のバックナンバーを並べていました。その発展形として「○○の話、インデックス」を始めています。

その記事の冒頭、インデックス記事のバックナンバーを並べることで「インデックス記事のインデックス」の役割を持たせています。カテゴリー別のバックナンバーを探す際、自分自身にとっても役に立つ整理の仕方であり、時々、そのような構成で新規記事をまとめています。

これまで投稿したインデックス記事は「職務の話、インデックス」「原発の話、インデックス」「定期大会の話、インデックスⅡ」「年末の話、インデックスⅡ」「春闘の話、インデックスⅡ」「人事評価の話、インデックス」「図書館の話、インデックス」「旗びらきの話、インデックスⅡ」「人事院勧告の話、インデックス」「非正規雇用の話、インデックスⅡ」「いがみ合わないことの大切さ、インデックス」「憲法の話、インデックスⅡ」「平和の話、インデックスⅢ」」「原発の話、インデックスⅡ」「コメント欄の話、インデックスⅡ」「組合役員の改選期、インデックスⅡ」 のとおりです。なお、「Ⅱ」以降がある場合は最新のインデックス記事のみを紹介しています。

そのようなインデックス記事が右サイドバーの「最近の記事」から消えていましたので、今回、「会計年度任用職員制度、インデックス」として書き進めることにしました。非正規雇用の課題からつながる話ですが、新たなカテゴリーとしてまとめてみました。この名称が法制化された以降、下記のような記事を投稿しています。

インデックス記事を投稿した際も必ずその時々の近況や思うことを書き足しています。今回も同様に「会計年度任用職員制度」に絡んだ内容を少し書き進めるつもりです。前々回記事「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」と同様、組合機関誌に掲げる原稿を意識し、労使協議の経緯を中心にまとめてみます。

■たいへん悩ましい局面を強いられた労使交渉

地方公務員法と地方自治法の一部が改正され、今年4月から会計年度任用職員制度がスタートします。法改正時の国会の附帯決議が公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めていることを踏まえ、組合は嘱託職員の皆さんの待遇改善の機会として労使交渉を進めてきました。

しかしながら私どもの組合にとっては非常に悩ましい事態を強いられていました。かえって法改正が逆風となり、全体を通して現行の待遇を後退させる提案内容が目立っていました。

他団体に比べて月額報酬の額が高い、他団体の非常勤職員の病休は無給である、このような点を市当局側は説明し、総務省の事務処理マニュアルに基づき他団体の非常勤職員との均衡に固執しました。月額報酬を1万円ほど下げ、休暇制度は都準拠とし、唯一改善となる期末手当支給も2年間かけて2.6月までに引き上げるという提案内容でした。

自治労都本部内の労使は昨年の9月議会までに決着をはかる中、私どもの組合のみ到底合意できる水準に至らず、12月議会に向けた継続協議としていました。10月24日深夜に及ぶ労使交渉の結果、12月議会への条例案送付に向け、期末手当や休暇制度等の取扱いについて労使合意しました。

月額報酬の引き下げを受けざるを得なかった不本意な点もありますが、基本的に休暇制度等の現行待遇は後退させず、期末手当2.6月分を支給することで年収増につなげる交渉結果を得られています。なぜ、私どもの組合は悩ましい局面を強いられたのか、今回の特集記事を通して改めて報告します。

■なぜ、交渉は難航したのか?

まず法改正時の国会附帯決議の「公務における」という言葉は官製ワーキングプアと呼ばれがちな常勤職員と非常勤職員との待遇格差を念頭に置いたものだったはずです。

一方で、今回の法改正は任用根拠が曖昧だった非常勤職員の位置付けの明確化という目的もありました。法改正後、総務省から「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」が示され、その中には「他団体との均衡をはかること」という一文も盛り込まれました。

総務省の担当者らと直接協議を重ねていた自治労本部役員からは「最低基準を示した労基法と同様、非常勤職員の待遇面が劣っている自治体の底上げを目的としたもので、すでに上回っている自治体の待遇を引き下げるものではない」という説明を受けていました。

このことは私どもの労使交渉の中で、組合から再三再四訴えてきています。それに対し、市当局側は「そのような点について具体的な文言として公式に発せられていないため、他との均衡を重視しなければならない」という立場を訴え続けていました。

これまで任用根拠をはじめ、各自治体の独自な判断で非常勤職員の待遇を決めていました。私どもの組合は非常勤職員である嘱託の皆さんが以前から直接加入しています。そのため、嘱託組合員の待遇改善が継続的な労使交渉の課題とされてきました。この労使交渉の積み重ねによって、現在の待遇が定められてきたと言えます。

それでも常勤職員に比べれば、まだまだ均等待遇からは程遠いものだと受けとめています。しかしながら全国的な平均レベルと比べた際、私どもの嘱託職員の待遇は高い水準だったことが今回の法改正を通して明らかになっていました。こちらからすると有給での病気休暇を一日も認めないことが全国標準である現状などには驚いていました。

私どもの自治体は地方交付税の不交付団体です。そのため、会計年度任用職員の期末手当支給に伴う億単位の予算は自主財源で賄わなければなりません。当初、全国的な問題となったように私どもの市も年収総額の中での配分見直しを示唆していました。

それこそ『「生活できなくなる」 期末手当新設で月給減… 非正規公務員の悲痛な声』という新聞の見出しのような事態を強いる発想であり、組合側は猛反発し、早々に見送らせることができていました。

このような自治体の動きに対し、多くのメディアは疑問視した論調であり、「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」から真逆な憂慮すべき事態だと非難されなければなりません。

このような「非正規公務員 一部自治体で給料減額の動き」を受け、総務省としても「ボーナスの支給に合わせて毎月の給料を減らさないこと」という内容の通知を昨年末に発していました。

私どもの市は地方交付税の不交付団体であり、財政上の理由も大きかったはずですが、もともと「他団体に比べて月額報酬の額が高い」という理由を軸にした苦汁の判断でした。

そのため、総務省の通知が状況を一変させるほどの直接的な追い風にならないことも理解していますが、「月給は減らさない」という全国的な動きが大きな流れとなっていれば私どもの労使交渉にも影響を与えていたかも知れず、「遅すぎる」という思いが強まって残念でなりません。

■組合員の雇用継続の課題は最も重要

人件費の抑制や雇用調整を容易にできるという経営側のメリットを目的に正規雇用が抑制され、非正規雇用の増大が進んでいました。そのような動きの中で、非正規雇用者は日本型雇用システムの枠外に置かれた立場だったと言えます。行政改革が声高に叫ばれる中、公務においても同様でした。

非常勤職員の問題はパート労働法などが適用されない「法の谷間」と言われてきました。現行の地方公務員法上の嘱託職員は学校医のような臨時的・一時的な雇用のみを想定しているため、昇給制度や手当支給に異議が差し込まれ、3年や5年で雇い止めされる実態につながっていました。

自治体の人事課長に雇用年限の課題を問いただすと「市民の皆さんに対するワークシェアリングである」と答えるケースが多いようです。私どもの自治体の嘱託職員も当初、雇用年限5年という方針が示されていました。

かなり前の労使交渉で「市民のワークシェアリング」という市当局側の説明に対し、私から「5年先に失業者を出すのがワークシェアリングですか?」という反論を加えていました。

このような労使交渉を通し、実質的に雇用年限による雇い止めを見送らせることができていました。高年齢者雇用安定法が改正され、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。そのような中、嘱託職員の皆さんの雇用継続も65歳まで担保できるように労使交渉を積み重ねてきました。

今回、会計年度任用職員制度は「法の谷間」を埋める法改正だったことも間違いありません。同時に待遇改善の機会だったはずですが、前述したとおり他団体との均衡という理不尽な動きが強まり、これまでの労使交渉で積み重ねてきた成果が一気に後退しかねない事態に私どもの自治体は直面していました。

都内の自治体の大半は東京都のルールの横並びを強いられ、公募によらない再度の任用は原則として連続4回としています。私どもの組合も同様な内容で合意していますが、これまでの労使確認事項も尊重していくことを付け加えています。

これまでも年度単位の雇用を原則としていますが、恒常的な業務に従事する嘱託組合員はその勤務経験を尊重しながら雇用継続しています。その上で65歳までの雇用継続を労使確認してきた経緯があります。このような経緯を踏まえた運用方法等について今年度末までに明確化できるように労使協議を進めていました。

労使協議の場では、これまで培ってきた知識や経験を重視しているため、現職者には「アドバンテージがある」という見方を市当局側からも得ています。このような経緯や関係性を踏まえた際、新規採用希望者と現職者を競い合わせる試験が望ましいのかどうか問題意識を持っています。加えて5年に一度、大規模な競争試験を実施するコストや職員の負担等も考慮すべき点だろうと思っています。

したがって、現職者に向けた雇用継続の希望を募り、人事評価とは峻別した面接等による選考方法で新たな任期の採用者を決める、このような方向性を念頭に置きながら詰めの協議に組合は臨んでいます。もちろん欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募り、その際は広報等を通じて募集するという手順が望ましいものと考えています。

前述したとおり社会全体では使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保を求めています。それにも関わらず、会計年度任用職員だけが不安定な雇用を強いられることは、ますます法改正時の国会附帯決議の「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」から離れていく考え方だと言わざるを得ないことを改めて強調させていただきます。

最後に、次年度に向けては人事評価による再度の任用とし、継続的な雇用を不可とするC評価は極めて例外であることを労使確認しています。この労使確認が疎かにされるような事態に直面した場合、組合は組合員の雇用を守る立場から重大な決意で対処していくことになります。

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