組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!
毎年3月に発行する私どもの組合の機関誌に特集記事「春闘期、情勢や諸課題について」を掲載しています。私が担当している頁です。ここ数年、「役に立たない組合はいらない?」という見出しを掲げてきました。
一歩間違うと大きな誤解を招き、組合をつぶそうと考えているような言葉です。決してそうではなく、組合員の皆さんに「何だろう」と関心を持っていただくための見出しの付け方でした。
そもそも組合員の皆さんに対し、まったく役に立たない組合であれば、私自身も「いらない」と思います。しかし、いろいろ力不足な点もあろうかと思いますが、一定の役割を果たしていることを確信しているため、組合は必要という認識を持ち続けています。
ただ組合役員がそのように考えていても、組合員の皆さんと認識にズレがあるようでは問題です。そのようなズレを少しでも解消するための一助になることを願いながら毎年、この特集記事に向き合ってきています。
その願いがかなうかどうかも誌面に目を通していただかなければ意味がありません。「役に立たない組合はいらない?」という見出しは、ある程度目を引いたのかも知れませんが、そろそろ変えるタイミングだろうと考えていました。
今回のブログの記事は機関紙の特集記事の冒頭の内容を想定しながら書き進めています。変更する見出しも「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」と現段階では考えています。
初め「力を貸してください!」という言葉を考えていました。弱さが前面に出てしまい、もともと組合に距離を置こうと思っている方々に対しては逆効果になりそうな迷いもあったため、同じ職場の組合員の方の意見を聞いてみました。
やはり変えたほうが良いという話となり、相談しながら今回のタイトルに決めています。その組合員の方は当ブログの定期的な閲覧者でもあり、いつも的確な意見を伺える貴重なモニターになってもらっています。
さて、見出しは変えましたが、どこまで内容もリニューアルできるかどうか頭を悩ましています。参考になる記事として昨年末に投稿した「自治労都本部組織集会」「自治労都本部組織集会 Part2」があります。さらに当ブログを開設した頃の記事「なぜ、労使対等なのか?」も頭に浮かべています。
■なぜ、労働組合が生まれたのか?
小見出しを付けながら様々な切り口から考えてみます。まず歴史です。大学の授業で使った有斐閣選書の「労働法を学ぶ」を引っ張り出し、必要な頁をおさらいした内容です。
産業革命を経て工場制生産制度が確立すると使用者は多数の労働者を同時に雇用することになりました。使用者は経済的に優位な立場ですので企業にとって都合の良い条件を示し、労働者は受諾するか拒否するかの単純な形での労働契約を強いられました。
そのため、低賃金と長時間労働の悲惨な労働者階級が出現することとなりました。やがて忍耐の限度を超えた労働者は、一揆的な暴動やストライキに立ち上がり、団結することによって初めて使用者と対等な立場で話し合えることを知っていきました。
使用者側も不正常な争議状態が続くより、労働者側の要求を受け入れ、しっかり働いてもらった方が得策だと考えるようになりました。また、国家としても国民の多数を占める労働者が豊かにならなければ、社会や経済の健全な発展ができないことに気付きました。
それら歴史的な経緯の中で労働組合が生まれ、団結権など様々な労働法制が整備されてきました。現在、労働条件に関する事項の変更は労使合意が前提だったり、労使関係では労使対等と位置付ける原則などが法的な面から確立しています。
■労使関係の「労」を労働組合にすることの必要性
このように労使関係の法的な位置付けについて、建前上は労働者と使用者が対等な関係とされています。しかし、実際は非対等な関係になりがちであり、交渉力や情報格差による使用者の優越的な地位のもと「自由な意思に基づかない合意」になる恐れが生じがちです。
使用者の優越的地位を背景とする労働条件の単独かつ一方的決定、権利侵害の可能性(パワハラ、セクハラなど)は様々な裁判事件につながっています。対等な労使関係を実効あるものとするためには労働者一人ひとりが労働組合に結集することが欠かせません。
労使の「労」を労働者一人とせず、労働組合の「労」にすることで対等な関係になり得ます。憲法28条で団結権や団体行動権が保障され、正当な労働基本権の行使だった場合は刑事や民事での免責があり、不当労働行為の禁止などが法的にうたわれています。
■労使対等とはどういうこと?
市役所職員にとっての使用者は市長です。市役所の仕事において、一職員からすれば市長をはじめとした理事者の方々は「雲の上の存在」となります。しかし、団体交渉の場で、組合役員と市長らとの力関係を対等なものに位置付けないとフェアな労使協議となりません。
切実な組合員の声を背にした要求を実現するためには、市長側と真っ向から対立する意見も毅然とぶつける必要があります。労使交渉に限らず、それぞれ考え方や立場の異なる者同士が話し合って一つの結論を出す際、難航する場合が多くなります。
利害関係の対立はもちろん、お互い自分たちの言い分が正しいものと確信しているため、簡単に歩み寄れず、議論が平行線をたどりがちとなります。両者の力関係が極端に偏っていた場合、相手側の反論は無視され、結論が押し付けられかねません。そのようなケースは命令と服従という従属的な関係に過ぎず、対等な交渉とは呼べなくなります。
その意味で労使対等の原則は非常に重要です。労使交渉の場では対等に物申すことができ、労使合意がなければ労働条件の問題は当局側の思惑で一方的に変更できないようになっています。
ちなみに私どもの労使関係に完璧なシナリオはなく、どのような結論を見出せるのかどうか激しい議論を交わす団体交渉や断続的に重ねる事務折衝を通して決着点をめざしています。
ただお互いの主張から一歩も踏み出せないようであれば交渉は成り立ちません。お互いの主張に耳を傾け、労使双方が「結論なき話し合い」にとどめないための決断を模索し、 納得できる解決策を見出す努力を常に心がけています。
■対等な労使交渉の結果、現在の労働条件があり、これからの安心も
このような原則のもとに労使交渉を積み重ね、現在の労働条件が築かれていることを機会あるごとにお伝えしています。仮に使用者側の思惑だけで労働条件が決められていった場合、昨今、問題視されている「ブラック」を生み出す土壌につながりかねません。
パワハラや違法な長時間労働を常態化させるような職場は労働組合がない、もしくは組合の存在感が希薄な場合に生じがちです。公務員の職場だから心配ないと考えている方々も多いのかも知れませんが、公立学校の職場で教員間でのパワハラが大きな問題となりました。
職務上の縦の関係だけでは改められなかった事例だと見ています。もし労働組合があり、影響力を発揮していれば陰湿なパワハラも未然に防げたのではないでしょうか。極端な事例なのかも知れませんが、これからの安心も担保していくためには労働組合の存在が欠かせないものと考えています。
財政面を中心に公務員をとりまく情勢がたいへん厳しい中、直接的なメリット、いわゆるプラスの成果にかかわる話は多くありません。しかし、個別課題においても組合員の皆さんの生活を守るため、いつも全力で労使協議を尽くし、一定の成果を上げてきています。
ここまでの内容は総論的な「組合は必要」という説明です。3月下旬に発行する機関誌は新入職員の皆さんや組合未加入の方々にも渡す予定です。そのため「組合は必要です。ぜひ、加入してください」という直接的なメッセージを託しています。長い記事になっていますが、現状や個々の職員の意識についても書き進めてみます。
■オープンショップ制でも加入率100%は可能
私どもの組合をはじめ、自治労に結集している組合の大半はオープンショップ制です。「雇用された労働者は一定期間内に特定の労働組合に加入しなければならない」 ユニオンショップ制の組合もあり、「加入率は100% で組織化の苦労は少ないが、自分の意思で組合員になった訳ではないため、組合員としての自覚が希薄」という話を自治労都本部の組織集会の中で耳にしていました。
組織集会ではオープンショップ制で加入率100%を維持している組合からの報告もありました。特筆すべき点としては組合に加入することが当たり前という雰囲気を保っている組合は、あまり苦労しないまま高い加入率を維持できているようです。
私どもの組合も全体的な加入率が100%に極めて近かった頃、新規採用者はほぼ全員加入していました。まだ100%近くという言い方はできる加入率ですが、入るかどうか、二者択一の選択肢として判断できるほど各職場に組合未加入者が目立つようになっています。
新規採用後、職場に配属されてから組合に入っていない先輩職員がいることを知り、入らないと決めてしまうケースも見受けられます。いったん組合に加入しても脱退を希望される組合員も少なくありません。そのような相談が寄せられた時、たいへん心が痛みます。
組合に加入していなくても労働条件は同じ、そうであれば組合費の負担がなくなり、組合を脱退したほうが得だと考えている組合員の皆さんも少なくないはずです。自治労青年部の報告で「集団としてのメリットよりも個人としてのメリットが大事」「労働組合に加入しなくても恩恵を受けてしまうことに違和感がない」という青年の意識を伝えています。
いずれにしても全国的には加入率100%を維持している組合は少なく、どこの組合の現状も厳しいようです。とは言え、私自身が執行委員長を務めている中で未加入者を増やしてしまっていますので責任を痛感しています。 何とか好転させる切っかけや兆しを見出し、次走者にバトンを渡せるよう思いを巡らしながら今回の特集記事にも向かっています。
■「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉への共感は?
ラクビーのワールドカップ日本大会が盛り上がり、「ワンチーム」という言葉も注目されました。それまでラクビーと言えば「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉が有名でした。どちらも団結力の大切さを強調する言葉です。
特に昔から「一人は皆のために、皆は一人のために」という組合を語る言葉があり、「ワンフォーオール、オールフォーワン」という英語と同様な意味合いで使われています。つまり一人の力には限りがあり、皆で支え合うことの大切さを表わした言葉です。
そのような役割を担う組合も未加入者が激増すればつぶれてしまいます。組合の必要性を認めながらも自分一人が入らなくてもつぶれることはないと思われていた場合、その考え方のもとに未加入者が続出していけば存続は難しくなります。
組合は、一人ひとりが働き続ける上で困った時に支え合い、皆で助け合うための役割を負っています。いざという時の安心のため、つまり「保険」のような側面があります。中には組合加入を断る理由として「困ることはない」「困った時は自力で解決する」と話される方もいます。
実際、ある程度「自助」だけで大きな支障がなく、過ごせる場合も多いのかも知れません。しかしながら「自助」だけで解決できる範囲も、おのずから限界があるはずです。このような説明も「そこまで困った時は市役所をやめますから」という答えが返るようであれば話は続きません。
「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉への共感、たいへん残念ながら認識にすれ違いのあるケースが目立ち始めています。「情けは人のためならず」という言葉にも置き換えることができますが、助け合い、支え合いの思いが徐々に希薄化されている時代なのでしょうか。
■組合側の問題を考えることも重要
ただ個々人の思いや事情は様々であり、一括りに論じてはいけないことも確かです。そもそも個人に対する直接的なメリットを感じていなくても大半の皆さんは組合加入されています。したがって「組合費を払いたくない」からという理由で加入を拒む方々に対し、助け合いの思いが薄いと決め付けた言い方も慎まなければなりません。
そのため、総論的な必要性の説明だけでは共感を得られない場合、個人に対する直接的なメリットをどのように伝えられるかどうかが鍵となります。負担する組合費に見合う組合の役割や存在意義をどのような言葉で伝えれば「組合に入らなければ」と思っていただけるのか考えていかなければなりません。
労使交渉の成果、ハラスメントなど職場で困った時の相談機能、組合の独自な福利厚生活動、労働金庫や全労済の利用、顧問契約している弁護士事務所の紹介など、個人的なメリットも今回の特集記事やクロスワードパズルなど機関誌全体を通して伝えられるように努めています。
直近の労使交渉の成果としては会計年度任用職員制度の課題、住居手当見直し提案、移動時間の時間外勤務認定基準などについて報告します。これからも組合員一人ひとりの思いを代弁する立場で労使協議に臨み、職場課題で結果を出していくことが「組合は必要」という認識を広め、組合への結集力を高めていくものと考えています。
中味の充実と効果的なアピール、同時に組合側に何か問題があれば気軽に指摘いただき、組合役員と組合員の皆さんが率直に議論していける関係性も重要です。政治的な活動をはじめ、多岐にわたる運動方針に違和感があり、組合との距離を置こうと考えている方も少数ではないのかも知れません。
急激な方針転換は難しくても、組合員の皆さんの大半から共感を得られないような活動方針であっては問題であり、タブーを設けない議論が必要です。そもそも組合の活動は組合員のためのものであり、組合役員だけで担うものではなく、担え切れるものでもありません。
組合の加入率を高める問題に関しても組合員の皆さん一人ひとりと、ともに考え、ともに力を出し合っていけることが望ましい関係性です。組合の魅力を高めるためには、どうしたら良いのか、いろいろな意見をお寄せいただければ本当に幸いなことです。
さらに切実なお願いとして、同じ職場に組合未加入者がいた場合、今回の特集記事に託したような趣旨を伝えていただければたいへん有難いことです。組合は必要という認識を組合員の皆さんと共有化し、ともに考え、ともに力を出し合っていける組織をめざし、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
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コメント
現在の委任による承認を受けた活動は、組合の労使活動と異なる活動に対して消極的な組合員の議論参加を排除するものである。
今後組合員の減少は、理解を得てなんとかなるものでない。
投稿: | 2020年3月27日 (金) 10時37分
2020年3月27日(金)10時37分に投稿された方、コメントありがとうございました。
もし今後も投稿される機会がある場合、ぜひ、名前欄の記載にご協力くださるようよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2020年3月28日 (土) 06時29分