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2020年2月29日 (土)

新型コロナウイルスの感染対策

水曜日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多数の観客が集まるイベントや集会を2週間自粛するよう要請しました。その翌日には下記報道のとおり全国の小中高校などを3月2日から春休みまで一斉休校するよう要請しています。

新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、政府の新型コロナウイルス感染対策本部で安倍晋三首相は2020年2月27日、全国の小中高校を3月2日から春休みまで休校とするよう要請した。

休校要請のニュースが報じられると、さまざまな世代・職業でたちまちに反応が広がった。3月2日からの突然の春休みが現実味を帯びたことで、当の小中高生からも困惑の感想が広がっている様子である。

SNSを見ると、「卒業式どうすんの」「学校行事や入試は?」というように、休みが伸びることへの喜びよりも、戸惑いが先にきているようだ。また休校期間中の過ごし方も、「学生全員休みにするなら学生が集まりそうな施設とか遊園地も全部閉めなきゃ意味なくね?」など、テーマパーク等に出かけてもウイルスへの感染リスクを不安視しているコメントもある。

子どもを抱える親世代や自治体の関係者からも、突然の要請に困惑が広がっている。熊谷俊人・千葉市長はツイッターで、「衝撃の報道。全国一斉春休みまで休校...いくらなんでも...。医療関係者など社会を支えている職種の親はどうするのか。社会が崩壊しかねません。私達のこの間の悩んだ末の検討が全て吹っ飛びました。なんとか社会を維持する方策を週末に考えます」とツイートしている。

「子供が学校に行ってる間に働いてる親はどうするんだ...」「保育士さん、看護師さん、スーパーの店員さん、レストランの店員さん...だいたい子持ちの親じゃん?学校休みになって、低学年で預け先なかったら休むしかないやん...」といった困惑の声が広がっている。

既に北海道では帯広厚生病院(帯広市)で小中学校の臨時休校で子どもを持つ看護師の出勤が困難になったため、一部の診療制限を2月28日から始めるとしている。特に医療・インフラ関係の職業で、子どもを持つ家庭に影響が出ることを心配する声がツイッターなどに投稿されている。【J-CASTニュース2020年2月27日

読売新聞が121自治体に取材したところ約6割の自治体は政府の要請通りの日程で公立学校の休校を決めているようです。感染拡大の先行きが見通せない中、早め早めに対策を講じていくことは必要です。ただ熊谷千葉市長が困惑しているように様々な声が上がっています。

全国一斉休校の効果と影響については、感染症対策の専門家の間でも賛否が分かれる。感染管理認定看護師で日本環境感染学会理事の菅原えりさ東京医療保健大教授は「大勢の人が集まる場所は感染リスクが高い。封じ込めで感染拡大の抑制に効果があることは、中国での経験から分かっている。『やり過ぎだ』という意見もあるかと思うが、今は国民の命を守ることが最優先で、リスクを一つ一つ潰していくことが大事だ」と評価する。

大阪市内で開業する谷口恭医師(総合診療)は、親の負担など一斉休校にはデメリットが多く、現時点で国内には小児の重症者がいないことを挙げつつも「1人でも子どもが死亡すれば政権のダメージは大きいだろう」と指摘。「首相としては『1~2週間が山場』という専門家会議の意見に基づいて休校要請に踏み切ったのではないか。この問題に正解はなく、是非は何とも言えない」と話す。

一方、クルーズ船内の感染防止体制を批判した岩田健太郎神戸大教授(感染症内科)は27日夜、ツイッターに、感染症対策が透明性を欠いているとして「なぜ学校?なぜ休校?根拠となるデータは?誰が進言したの?どういう根拠で?謎ばかり」と投稿した。

毎日新聞のメール取材には「子どもはローリスクグループで、そこから感染が広がるリスクも知られていない。北海道のように進行している流行に対峙するならば(休校は)一案。だが全国一律に取るプランとしては根拠を欠きすぎる」と答えた。【毎日新聞2020年2月27日

私自身も全国一斉に休校を要請した政府の判断については唐突感や違和感が拭えません。小学校から高校まで臨時休校する理由として「多くの子どもたちや教員が日常的に長時間集まる感染リスクに備える」と安倍首相は説明しています。

しかし、保育園や学童保育所は開所要請しています。働いている保護者への影響を考慮した判断だろうと思っていますが、安倍首相の説明した理由に照らせばチグハグさが否めません。それでも日頃から安倍首相を支持されている文芸評論家の小川榮太郎さんは次のように英断だと絶賛されています。

新型コロナウイルスに関する日本政府の対応について、批判の声が聞こえる。正確な取材、知識に基づいた批判は必要だ。が、そうでない感情的な発信は、医療パニック、それどころか社会の大幅な崩壊を招きかねない。

安倍首相は27日、新型コロナウイルス感染症対策本部会合で、3月2日から春休みに入るまで全国の小中学校、高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請する考えを表明した。わが国の首相が持つ権限の限界に迫ったケタ違いの大英断である。国民の命を守るために、自身の政治的リスクをとったのだ。【ZAKZAK 2020年2月28日抜粋

このブログは多面的な情報を提供する一つの場になれればと願っています。そのため、今回の記事を通し、いろいろな見方を伝えるサイトの内容を紹介しています。金曜の朝刊で読売新聞も「後手批判、首相踏み込む」という見出しを掲げていましたが、下記報道のような事実関係が明らかになっています。

安倍晋三首相は27日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国の小中高校に臨時休校を呼び掛ける異例の対応に踏み切った。政府内の慎重論を首相主導で押し切った形だ。背景には「政府は後手に回っている」との批判が広がり、内閣支持率も下落していることもあるとみられる。

「全国全ての小学校、中学校、高校、特別支援学校に、3月2日から春休みまで臨時休校を行うよう要請する」。首相は27日夕に急きょセットされた対策本部の会議で、こう表明した。26日の「イベント自粛要請」に続く大胆な方針は日本中を駆け巡った。

政府内ではもともと休校要請について「共働き世帯が混乱する」「政府に権限はない」などの消極論が少なくなかった。首相は27日午後1時半ごろから約30分間、萩生田光一文部科学相、藤原誠文科事務次官と会談。

政府が夕方に対策本部を開くと発表したのは、この会談の約1時間後だった。政府内では、慎重な文科省を首相が押し切ったとの見方が大勢だ。政権への批判が高まっていることを受け、首相が指導力をアピールしようとしたのではないかとの見方も出ている。

イベントの自粛要請をめぐっても、政府内では当初、「経済的影響が大きい」とみて、慎重論が強かった。25日昼に決めた基本方針に「全国一律のイベント自粛要請は行わない」と明記したのもそのためだ。

空気が変わったのは同日夕、Jリーグが公式戦延期を決めたのがきっかけだった。政府高官によれば、産業界などに動揺が広がり、政府に指針を示すよう求める声が寄せられ、政府は自粛要請を決断。25日に打ち出した方針を一夜で転換する形となった。【時事通信社2020年2月28日

このあたりの事実関係について日頃から安倍首相に批判的なサイトのLITERAでは『安倍首相の独断“休校要請”に非難殺到!』という記事を掲げています。小川さんの記事の紹介と同様、一部のみ抜粋して紹介します。興味を持たれた方はそれぞれリンク先の記事をご参照ください。

「国内外から安倍首相の『リーダーシップ』を疑問視する意見が飛び出すなか、安倍首相は非常に焦っていた。そんななか、北海道の鈴木直道知事が休校を宣言したことに『決断力がある』などと評価の声が高まったので、『自分も』ということで慌てて発表したようだ。だからなんの準備もしてなかったというわけです」(全国紙政治部記者)

ようするに、安倍首相が重要視しているのは、「やってる感」のアピールだけで、国民の生命と生活を守る体制づくりなんて何も考えていないのである。それが一番よくあらわれているのが、新型コロナ対策の予算だ。そう。この期に及んで安倍首相はまだ新型コロナ対策費をケチっているのだ。

上記のような事実関係を知ることで現政権の体質が改めて認識できます。多面的な情報を踏まえ、幅広い視点からの意見を斟酌しながら、より望ましい「答え」を見出しているとは考えられません。今回は最側近の官邸官僚と見られている今井首相補佐官の献策のみが安倍首相の判断につながっていました。

LITERAの批判にとどまらず、効果的な政策判断や予算の投入なのかどうか、政府与党内からも優先順位の付け方として疑問視する声が多いようです。もしかすると麻生財務相との充分な意思疎通も欠けていたのかも知れません。

「つまんないこと聞くねえ」という相変わらず上から目線での麻生財務相の不機嫌な記者会見の模様が話題になっていました。ただ全国一斉休校の要請に伴う政府経費について、まったく試算していなかったことを確かめられた決して「つまんなくない」質問だったのではないでしょうか。

麻生太郎財務相が28日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた学校の臨時休校をめぐり、発生する費用について聞いた記者とのやり取りの中で、「つまんないこと聞くねえ」と答える一幕があった。

この日の会見では、安倍晋三首相が小中高校と特別支援学校の臨時休校を要請したことに関連して、それに対応する親が働く企業への影響や、その際の費用負担について見解を問われた。麻生氏は「経費がかかるとかいろんなことについては、対応することになるんだと思います」と、政府の支出となるとの考えを示した。

これに関連して、記者の一人が「具体的なスキーム(仕組み)はこれからか」と質問したところ、麻生氏は「こちらは要請を受けて出すんですから、こちらが最初においくらですよって決めて言うわけないでしょう」と回答。

その後に「つまんないこと聞くねえ」と発言した。この記者から国民の関心が高いと反論されると、「言われて聞くのかね? 上から言われてるわけ? かわいそうだねえ」と返した。【朝日新聞2020年2月28日

今回、新型コロナウイルスの感染対策の一環としての全国一斉休校に絡む報道内容を中心に紹介させていただきました。いずれにしても早期に収束することを願いながら自治体職員の立場からも感染対策に向け、精一杯力を尽くしていかなければなりません。

そのような局面において労使が激しく対立している事態は望ましいものではありません。そのような事態に至らせないためには避けるべき問題、避けられる問題は労使双方誠意をもって対等な立場での自主的な交渉のもとに対処していくべきものと考えています。

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2020年2月23日 (日)

組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!

毎年3月に発行する私どもの組合の機関誌に特集記事「春闘期、情勢や諸課題について」を掲載しています。私が担当している頁です。ここ数年、「役に立たない組合はいらない?」という見出しを掲げてきました。

一歩間違うと大きな誤解を招き、組合をつぶそうと考えているような言葉です。決してそうではなく、組合員の皆さんに「何だろう」と関心を持っていただくための見出しの付け方でした。

そもそも組合員の皆さんに対し、まったく役に立たない組合であれば、私自身も「いらない」と思います。しかし、いろいろ力不足な点もあろうかと思いますが、一定の役割を果たしていることを確信しているため、組合は必要という認識を持ち続けています。

ただ組合役員がそのように考えていても、組合員の皆さんと認識にズレがあるようでは問題です。そのようなズレを少しでも解消するための一助になることを願いながら毎年、この特集記事に向き合ってきています。

その願いがかなうかどうかも誌面に目を通していただかなければ意味がありません。「役に立たない組合はいらない?」という見出しは、ある程度目を引いたのかも知れませんが、そろそろ変えるタイミングだろうと考えていました。

今回のブログの記事は機関紙の特集記事の冒頭の内容を想定しながら書き進めています。変更する見出しも「組合は必要、ともに考え、ともに力を出し合いましょう!」と現段階では考えています。

初め「力を貸してください!」という言葉を考えていました。弱さが前面に出てしまい、もともと組合に距離を置こうと思っている方々に対しては逆効果になりそうな迷いもあったため、同じ職場の組合員の方の意見を聞いてみました。

やはり変えたほうが良いという話となり、相談しながら今回のタイトルに決めています。その組合員の方は当ブログの定期的な閲覧者でもあり、いつも的確な意見を伺える貴重なモニターになってもらっています。

さて、見出しは変えましたが、どこまで内容もリニューアルできるかどうか頭を悩ましています。参考になる記事として昨年末に投稿した「自治労都本部組織集会」「自治労都本部組織集会 Part2」があります。さらに当ブログを開設した頃の記事「なぜ、労使対等なのか?」も頭に浮かべています。

■なぜ、労働組合が生まれたのか?

小見出しを付けながら様々な切り口から考えてみます。まず歴史です。大学の授業で使った有斐閣選書の「労働法を学ぶ」を引っ張り出し、必要な頁をおさらいした内容です。

産業革命を経て工場制生産制度が確立すると使用者は多数の労働者を同時に雇用することになりました。使用者は経済的に優位な立場ですので企業にとって都合の良い条件を示し、労働者は受諾するか拒否するかの単純な形での労働契約を強いられました。

そのため、低賃金と長時間労働の悲惨な労働者階級が出現することとなりました。やがて忍耐の限度を超えた労働者は、一揆的な暴動やストライキに立ち上がり、団結することによって初めて使用者と対等な立場で話し合えることを知っていきました。

使用者側も不正常な争議状態が続くより、労働者側の要求を受け入れ、しっかり働いてもらった方が得策だと考えるようになりました。また、国家としても国民の多数を占める労働者が豊かにならなければ、社会や経済の健全な発展ができないことに気付きました。

それら歴史的な経緯の中で労働組合が生まれ、団結権など様々な労働法制が整備されてきました。現在、労働条件に関する事項の変更は労使合意が前提だったり、労使関係では労使対等と位置付ける原則などが法的な面から確立しています。

■労使関係の「労」を労働組合にすることの必要性

このように労使関係の法的な位置付けについて、建前上は労働者と使用者が対等な関係とされています。しかし、実際は非対等な関係になりがちであり、交渉力や情報格差による使用者の優越的な地位のもと「自由な意思に基づかない合意」になる恐れが生じがちです。

使用者の優越的地位を背景とする労働条件の単独かつ一方的決定、権利侵害の可能性(パワハラ、セクハラなど)は様々な裁判事件につながっています。対等な労使関係を実効あるものとするためには労働者一人ひとりが労働組合に結集することが欠かせません。

労使の「労」を労働者一人とせず、労働組合の「労」にすることで対等な関係になり得ます。憲法28条で団結権や団体行動権が保障され、正当な労働基本権の行使だった場合は刑事や民事での免責があり、不当労働行為の禁止などが法的にうたわれています。

■労使対等とはどういうこと?

市役所職員にとっての使用者は市長です。市役所の仕事において、一職員からすれば市長をはじめとした理事者の方々は「雲の上の存在」となります。しかし、団体交渉の場で、組合役員と市長らとの力関係を対等なものに位置付けないとフェアな労使協議となりません。

切実な組合員の声を背にした要求を実現するためには、市長側と真っ向から対立する意見も毅然とぶつける必要があります。労使交渉に限らず、それぞれ考え方や立場の異なる者同士が話し合って一つの結論を出す際、難航する場合が多くなります。

利害関係の対立はもちろん、お互い自分たちの言い分が正しいものと確信しているため、簡単に歩み寄れず、議論が平行線をたどりがちとなります。両者の力関係が極端に偏っていた場合、相手側の反論は無視され、結論が押し付けられかねません。そのようなケースは命令と服従という従属的な関係に過ぎず、対等な交渉とは呼べなくなります。

その意味で労使対等の原則は非常に重要です。労使交渉の場では対等に物申すことができ、労使合意がなければ労働条件の問題は当局側の思惑で一方的に変更できないようになっています。

ちなみに私どもの労使関係に完璧なシナリオはなく、どのような結論を見出せるのかどうか激しい議論を交わす団体交渉や断続的に重ねる事務折衝を通して決着点をめざしています。

ただお互いの主張から一歩も踏み出せないようであれば交渉は成り立ちません。お互いの主張に耳を傾け、労使双方が「結論なき話し合い」にとどめないための決断を模索し、 納得できる解決策を見出す努力を常に心がけています。

■対等な労使交渉の結果、現在の労働条件があり、これからの安心も

このような原則のもとに労使交渉を積み重ね、現在の労働条件が築かれていることを機会あるごとにお伝えしています。仮に使用者側の思惑だけで労働条件が決められていった場合、昨今、問題視されている「ブラック」を生み出す土壌につながりかねません。

パワハラや違法な長時間労働を常態化させるような職場は労働組合がない、もしくは組合の存在感が希薄な場合に生じがちです。公務員の職場だから心配ないと考えている方々も多いのかも知れませんが、公立学校の職場で教員間でのパワハラが大きな問題となりました。

職務上の縦の関係だけでは改められなかった事例だと見ています。もし労働組合があり、影響力を発揮していれば陰湿なパワハラも未然に防げたのではないでしょうか。極端な事例なのかも知れませんが、これからの安心も担保していくためには労働組合の存在が欠かせないものと考えています。

財政面を中心に公務員をとりまく情勢がたいへん厳しい中、直接的なメリット、いわゆるプラスの成果にかかわる話は多くありません。しかし、個別課題においても組合員の皆さんの生活を守るため、いつも全力で労使協議を尽くし、一定の成果を上げてきています。

ここまでの内容は総論的な「組合は必要」という説明です。3月下旬に発行する機関誌は新入職員の皆さんや組合未加入の方々にも渡す予定です。そのため「組合は必要です。ぜひ、加入してください」という直接的なメッセージを託しています。長い記事になっていますが、現状や個々の職員の意識についても書き進めてみます。

■オープンショップ制でも加入率100%は可能

私どもの組合をはじめ、自治労に結集している組合の大半はオープンショップ制です。「雇用された労働者は一定期間内に特定の労働組合に加入しなければならない」 ユニオンショップ制の組合もあり、「加入率は100% で組織化の苦労は少ないが、自分の意思で組合員になった訳ではないため、組合員としての自覚が希薄」という話を自治労都本部の組織集会の中で耳にしていました。

組織集会ではオープンショップ制で加入率100%を維持している組合からの報告もありました。特筆すべき点としては組合に加入することが当たり前という雰囲気を保っている組合は、あまり苦労しないまま高い加入率を維持できているようです。

私どもの組合も全体的な加入率が100%に極めて近かった頃、新規採用者はほぼ全員加入していました。まだ100%近くという言い方はできる加入率ですが、入るかどうか、二者択一の選択肢として判断できるほど各職場に組合未加入者が目立つようになっています。

新規採用後、職場に配属されてから組合に入っていない先輩職員がいることを知り、入らないと決めてしまうケースも見受けられます。いったん組合に加入しても脱退を希望される組合員も少なくありません。そのような相談が寄せられた時、たいへん心が痛みます。

組合に加入していなくても労働条件は同じ、そうであれば組合費の負担がなくなり、組合を脱退したほうが得だと考えている組合員の皆さんも少なくないはずです。自治労青年部の報告で「集団としてのメリットよりも個人としてのメリットが大事」「労働組合に加入しなくても恩恵を受けてしまうことに違和感がない」という青年の意識を伝えています。

いずれにしても全国的には加入率100%を維持している組合は少なく、どこの組合の現状も厳しいようです。とは言え、私自身が執行委員長を務めている中で未加入者を増やしてしまっていますので責任を痛感しています。 何とか好転させる切っかけや兆しを見出し、次走者にバトンを渡せるよう思いを巡らしながら今回の特集記事にも向かっています。

■「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉への共感は?

ラクビーのワールドカップ日本大会が盛り上がり、「ワンチーム」という言葉も注目されました。それまでラクビーと言えば「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉が有名でした。どちらも団結力の大切さを強調する言葉です。

特に昔から「一人は皆のために、皆は一人のために」という組合を語る言葉があり、「ワンフォーオール、オールフォーワン」という英語と同様な意味合いで使われています。つまり一人の力には限りがあり、皆で支え合うことの大切さを表わした言葉です。

そのような役割を担う組合も未加入者が激増すればつぶれてしまいます。組合の必要性を認めながらも自分一人が入らなくてもつぶれることはないと思われていた場合、その考え方のもとに未加入者が続出していけば存続は難しくなります。

組合は、一人ひとりが働き続ける上で困った時に支え合い、皆で助け合うための役割を負っています。いざという時の安心のため、つまり「保険」のような側面があります。中には組合加入を断る理由として「困ることはない」「困った時は自力で解決する」と話される方もいます。

実際、ある程度「自助」だけで大きな支障がなく、過ごせる場合も多いのかも知れません。しかしながら「自助」だけで解決できる範囲も、おのずから限界があるはずです。このような説明も「そこまで困った時は市役所をやめますから」という答えが返るようであれば話は続きません。

「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉への共感、たいへん残念ながら認識にすれ違いのあるケースが目立ち始めています。「情けは人のためならず」という言葉にも置き換えることができますが、助け合い、支え合いの思いが徐々に希薄化されている時代なのでしょうか。

■組合側の問題を考えることも重要

ただ個々人の思いや事情は様々であり、一括りに論じてはいけないことも確かです。そもそも個人に対する直接的なメリットを感じていなくても大半の皆さんは組合加入されています。したがって「組合費を払いたくない」からという理由で加入を拒む方々に対し、助け合いの思いが薄いと決め付けた言い方も慎まなければなりません。

そのため、総論的な必要性の説明だけでは共感を得られない場合、個人に対する直接的なメリットをどのように伝えられるかどうかが鍵となります。負担する組合費に見合う組合の役割や存在意義をどのような言葉で伝えれば「組合に入らなければ」と思っていただけるのか考えていかなければなりません。

労使交渉の成果、ハラスメントなど職場で困った時の相談機能、組合の独自な福利厚生活動、労働金庫や全労済の利用、顧問契約している弁護士事務所の紹介など、個人的なメリットも今回の特集記事やクロスワードパズルなど機関誌全体を通して伝えられるように努めています。

直近の労使交渉の成果としては会計年度任用職員制度の課題、住居手当見直し提案、移動時間の時間外勤務認定基準などについて報告します。これからも組合員一人ひとりの思いを代弁する立場で労使協議に臨み、職場課題で結果を出していくことが「組合は必要」という認識を広め、組合への結集力を高めていくものと考えています。

中味の充実と効果的なアピール、同時に組合側に何か問題があれば気軽に指摘いただき、組合役員と組合員の皆さんが率直に議論していける関係性も重要です。政治的な活動をはじめ、多岐にわたる運動方針に違和感があり、組合との距離を置こうと考えている方も少数ではないのかも知れません。

急激な方針転換は難しくても、組合員の皆さんの大半から共感を得られないような活動方針であっては問題であり、タブーを設けない議論が必要です。そもそも組合の活動は組合員のためのものであり、組合役員だけで担うものではなく、担え切れるものでもありません。

組合の加入率を高める問題に関しても組合員の皆さん一人ひとりと、ともに考え、ともに力を出し合っていけることが望ましい関係性です。組合の魅力を高めるためには、どうしたら良いのか、いろいろな意見をお寄せいただければ本当に幸いなことです。

さらに切実なお願いとして、同じ職場に組合未加入者がいた場合、今回の特集記事に託したような趣旨を伝えていただければたいへん有難いことです。組合は必要という認識を組合員の皆さんと共有化し、ともに考え、ともに力を出し合っていける組織をめざし、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。

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2020年2月16日 (日)

会社の妖精さん

最近、会社の妖精さんという言葉を耳にしています。昨年11月11日の朝日新聞に『会社にすがる「働かないおじさん」もう逃げ切れない?』という見出しの記事が掲げられました。年明け1月19日には『働かない「妖精さん」どう思う 様々な世代から届いた声』という記事も掲載されています。

年を取っても働き続ける――日本はそんな社会に近づいています。一方で、産業構造の変化などから、企業でベテラン社員が築いてきたスキルと業務がかみ合わず、やる気を失っている現実もあります。こうした「働かない」中高年を「妖精さん」と名付けた若手社員の記事を掲載したところ、様々な反響を呼びました。この現象をどう考えたらいいのでしょうか。

1月19日の朝日新聞の記事は前々回記事「雇用継続の課題」のコメント欄で「朝日新聞のマンガチックなモデル図が、年功賃金の問題点をわかりやすく表してますね。法令で決まってるとはいえ、残業単価20代前半1500円、40代前半3000円の非合理性をどう捉えるかです」という問題意識が添えられながらyamamotoさんからも紹介されていました。

ブックマークして毎日閲覧している「hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)」で取り上げられていたため、昨年11月には会社の妖精さんという言葉を知っていました。労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎さんのブログで1月19日には『(フォーラム)「妖精さん」どう思う?@朝日新聞』という記事も投稿されています。

確かに年功賃金によって、貢献度に比べて報酬が高過ぎる中高年社員が生まれやすい状況はある。でも「既得権にしがみつき、けしからん」と、世代間の対立をあおるのは非生産的です。

中高年の中には、そうして高い処遇を受ける「得な人」も、リストラされ再就職もままならない「損な人」もいる。若者の間にも新卒で正社員になれた「得な人」もいれば、非正規の仕事しかない「損な人」もいる。日本は「得」と「損」の差が大きいことが問題なのです。

日本は年功序列や終身雇用を前提とした「メンバーシップ型社会」として発展してきました。1922年、呉海軍工廠の技術将校が、年齢と家族数で賃金を決める生活給を提唱したのが出発点とされています。これが戦後、「電産型賃金体系」として確立しました。

一方、欧米は「ジョブ型社会」。まず職務があり、それをこなせる人をその都度採用する。仕事がなくなれば整理解雇されます。私が提案するのは「ジョブ型正社員」。これまでの正社員のようにムチャクチャに働かされることなく、職務や職場、労働時間が「限定」された「無期雇用」の労働者です。

欧米の普通の労働者と同じです。職務がある限りは解雇されません。非正規社員のように、たとえ職務があっても雇用契約の更新が保証されず、常に雇い止めのプレッシャーにさらされることはなくなります。更新拒否を恐れてパワハラ、セクハラ被害に泣き寝入りすることもありません。

ただし、仕事がなくなれば整理解雇されるという点で、これまでの「正社員」とは違います。「60歳定年で非正規化し、70歳まで継続雇用」という、これまでの延長線上の対応では難しい。60歳の前後で働き方が途切れないよう一部のエリートを除き、40歳ごろからジョブ型正社員として専門性を高めるキャリア軌道に移しておくのです。

日本の大卒が「社長を目指せ」とエリートの期待を背負って必死に働かされ、モチベーションを維持できるのは、30代くらいまででしょう。それ以降は出世にしばられない「ホワイトなノンエリートの働き方」を考えた方が幸せでしょう。

欧州では公的な制度が支えている子育てや教育費、住宅費などは、日本では年功賃金でまかなわれています。ジョブ型正社員の普及を目指すなら、社会保障制度の強化が必要です。雇用の改革に向けて、社会保障を含めた「システム全とっかえ」の議論を、慎重かつ大胆に行うべきでしょう。 

11月13日の記事『「働かないおじさん」視線 おびえる記者が専門家に聞く@朝日新聞デジタル』で濱口さんは端的に「年功で賃金が上がっていく日本の制度だと、中高年になれば貢献よりも報酬が高すぎる状況が生まれやすい。でも、勘違いしないでください。私は『若者に比べて、日本の中高年サラリーマンは既得権にしがみつき、いい目を見ているからけしからん』と言っているわけではありません。世代間の対立や分断をあおる言説は非生産的です」と答えています。

会社の妖精さんという言葉が生まれる相当前から今回のような問題は論点化されがちでした。このブログでも「定期昇給の話」という記事を投稿し、多くの方々からコメントも寄せられていました。その時の記事に綴った内容の一部を紹介させていただきます。

かなり前の記事「八代尚宏教授の発言 Part2」で、八代教授の著書「雇用改革の時代」の中の記述を紹介したことがあります。日本的雇用慣行の柱である定期昇給などについて、「企業が労働者の長期雇用を保障するのは温情ではなく、企業の教育訓練投資の成果である熟練労働者を重視したものであり、年功賃金と退職金制度は熟練労働者を企業に縛りつける仕組みである」と述べていました。

労働組合の立場からは、生活給という位置付けで定期昇給をとらえ、子どもの教育費など人生の支出が増える時期に比例して賃金が上がる年功給を合理的なものだと考えていました。スキルアップと生活の変化に対応しながら、働く側にとっては安心して将来の生活設計を描け、経営側にとっては帰属意識の高い人材の安定的な確保や企業内教育を通じた労働生産性の向上がはかれ、双方のメリットがこのような仕組みを支えてきました。

定期昇給とは先輩に追いつくための個人別賃金の上昇であり、賃金表において上位の水準への移動となります。つまり勤続年数や年齢を重ねることによって、その賃金表に基づき一定の額が定期的に上がる仕組みでした。基本的には官民問わず、定期昇給は日本特有の終身雇用制度を支える基礎だったことに間違いありません。このような記述の後、次の内容につなげていました。

しかしながら1990年代以降、年功序列的な賃金体系を見直す動きが相次ぎ、定期昇給自体を廃止する大手企業も少なくありませんでした。企業が熾烈な国際的な競争に勝ち抜くため、人件費抑制の一環として年功給が見直され始めたと言えます。さらに成果主義の広がりとともに日本型の雇用慣行を大きく改める企業も急増していました。なお、今春闘で連合は、年功給を改めて重視していく立場からも定期昇給の実施を強く求めているようです。

2010年3月7日に投稿した記事でしたが、連合に属する労働組合の一部で変化が見られるようになっています。年功給の重視どころか労働組合側が「勤続年数や年齢ではなく、それぞれの意欲や能力発揮の状況をより重視する方向」を推奨している話を耳にしています。

昨年11月に投稿した記事「トヨタの労使交渉」の中で、同じ職場の組合員から「トヨタの労使交渉が面白いですよ。労使の立場が逆になっています」と声をかけられていたため、日経ビジネスの特集『トヨタ前代未聞の労使交渉、「変われない社員」への警告』を紹介していました。


日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声を紹介します。

 


拡大する写真・図版朝日新聞デジタルのフォーラムアンケート

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2020年2月 8日 (土)

定年延長の話

前回記事「雇用継続の課題」は非常勤職員の皆さんを巡る切実な実情を伝えたものです。次年度に向けては人事評価による再度の任用とし、継続的な雇用を不可とするC評価は極めて例外であることを労使確認しています。

この労使確認が疎かにされるような事態に直面した場合、組合は組合員の雇用を守る立場で全力を尽くさなければなりません。人事当局側の周知不足や一部の管理職の認識不足から不当な評価を受ける事態が生じることは到底看過できない話だと言えます。

水曜夜、新たに組合交渉の責任者となった副市長と団体交渉を開きました。会計年度任用職員の課題も議題として取り上げ、雇用継続のあり方について議論しています。引き続き協議を重ねていくことを確認していますが、私から改めて次のような問題意識を副市長らに訴えています。

当初、私どもの嘱託職員の雇用年限は5年間と定められていました。恒常的な仕事に就きながら雇止めのあることを問題視し、労使交渉の積み重ねによって65歳までの雇用保障を獲得してきました。

法改正時における国会の附帯決議が「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」を求めていながら、雇用が不安定化されるようでは大きな問題であると訴えています。そのためにも前回記事の中で綴ったような対応策を労使で確認する必要性を強く申し入れています。

ちなみに1年契約や6か月契約など契約期間の定めのある労働契約を有期労働契約とし、パートやアルバイトにかかわらず、フルタイムの嘱託、派遣、契約社員なども有期契約労働者となります。有期契約労働者が非正規と呼ばれ、雇用の不安定、更新拒否の不安、将来の生活への不安、低い労働条件(低処遇)という問題がつきまといがちです。

このような問題の解決をめざし、2012年に改正労働契約法が成立しています。厚生労働省のホームページの説明文には「有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため、労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました」と記されています。

このブログでも以前「改正労働契約法の活用」という記事を投稿しています。その中で無期労働契約への転換「有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた時は、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる」というルールを紹介していました。

しかしながら地方公務員については労働契約法第22条1項で労働契約法の適用がない旨を明記しています。地方公務員の採用は相手方の同意を要する行政行為(任用)と解され、労働契約ではないと位置付けられているからです。

したがって、非常勤職員が5年以上雇用されても、労働契約法による任期の定めのない職員として任用する義務が発生しないという法的な位置付けにとどまっています。「法の谷間」に置かれた中、本人の意に反し、雇止めされていく事態が全国的に散見されていました。

今回の法改正を通し、そのあたりについて改善がはかられることを期待していました。しかし、たいへん残念ながら全国的な改善がはかられるどころか、私どもの組合にとっては真逆な動きを強いられそうな事態に直面しています。

ちなみに無期契約労働者が正社員と呼ばれます。正社員の定年は期間ではなく、期限であるという説明を受けます。非常勤職員の皆さんが不安定な雇用に置き去りにされたまま、 事実上の無期契約労働者である正規公務員側には下記の報道のとおり定年延長の動きが具体化しています。

国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる関連法改正案をめぐり、政府は18日、2022年度から引き上げを始める方向で検討に入った。18年の人事院による意見の申し出を受け、当初は21年度からの開始で調整していたが、先送りする。

国家公務員法などの改正案について、来年の通常国会への提出を目指す。改正案には、職員が60歳に達した後の給与を60歳前の7割程度に抑える方針などを盛り込む。関係者によると、定年の引き上げペースは2年に1歳ずつとする案と、3年に1歳ずつとする案があり、与党の意見などを踏まえ、最終的に判断する。

国家公務員の定年延長をめぐっては、人事院が18年8月、職員の給与勧告と併せて具体的な仕組みを示した。これを受け、政府は今年の通常国会への改正案提出を目指していた。しかし、統一地方選や参院選を控え、公務員の人件費が増えるとの反発を避けるため、提出を断念。今秋の臨時国会への提出も検討したが、天皇陛下の即位関連行事などで審議日程が窮屈なことから再び見送った。

来年の通常国会に提出する場合、年度内は予算案の審議などがあり、成立は20年度になる可能性が高い。当初は21年度からの引き上げを目指していたが、二度の見送りで成立から施行までの準備期間が短くなることから、22年度に先送りする方向だ。【日本経済新聞2019年12月18日

進展する少子高齢化による労働力不足を補うため、政府主導のもと70歳までの雇用延長も取り沙汰されています。これまでは使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められていました。今後、高年齢者雇用安定法が改正された場合、70歳までの雇用確保が「努力義務」として求められるようになります。

このような動きの中、上記の報道のとおり国家公務員の定年延長が現実味を帯びてきました。公務労協や自治労本部から定年延長を巡る情報が徐々に入り始めています。今回、詳しい中味に触れませんが、非正規雇用との対比の中で忸怩たる思いを強めています。

多くの自治体が会計年度任用職員を広報等で募集した際、3年に1度公募することについて「機会の均等性・公平性を確保するため」と説明を加えています。しかしながら国会附帯決議改正労働契約法の趣旨に反し、将来生活に不安を与え、安定雇用から程遠い考え方だと言わざるを得ません。

最後に、論点は拡散してしまいますが、最近、定年延長の話として下記のような報道にも接しています。ここまで恣意的で極めて特例となる人事を発令したことに私自身は大きな違和感を覚えています。このような事例に対しても人によって受けとめ方が分かれるのかも知れませんが、幅広い情報を提供する機会として報道内容をそのまま紹介し、今回の記事を終わらせていただきます。

安倍政権が1月31日の閣議で、東京高検の黒川弘務検事長の勤務を半年延長し、8月7日までと決定したことが司法界に波紋を投げかけている。本来2月8日の誕生日をもって退任予定だった黒川氏。現在の稲田伸夫検事総長の後任にするためだとみられる。

黒川氏の先輩にあたる高検検事長経験者の弁護士は怒りをあらわにする。「定年を延長して、検事総長でしょう。こんなこと聞いたことがない、前例もない。そこまで、政治権力と黒川君は癒着しているのか。見苦しい」

そして、立憲民主党の党首で弁護士でもある枝野幸男氏もこう批判した。「検察官の定年は検察庁法で決められている。国家公務員法の規定を使うのは違法、脱法行為だ」

黒川氏は2月8日で63歳となり、検察庁法では定年だ。黒川氏の後任には、名古屋高検の林真琴検事長が就任し、ゆくゆくは稲田氏の後任の検事総長とみられていた。ある現役検事も驚きを隠せなかった。

「青天の霹靂ですよ。定年延長だなんてそんな手があったんですね。延長の理由は逃亡した日産自動車のカルロス・ゴーン被告の対応と説明しています。しかし、ゴーン被告は東京地検特捜部の担当で、東京高検は関係ない。レバノン政府など海外の交渉は、法務省が対応。東京高検が一体、これまで何をしてきたのかと非難轟々です」

黒川氏は官邸との距離が極めて近く、浮上する数々の疑惑を「穏便」に処理することで「官邸のお庭番」とも揶揄されていた。自民党ベテラン議員はこう話す。「官邸にとっては、甘利明氏とURの問題など、疑惑をうまく処理してくれていた黒川氏の存在は本当にありがたいもんだよ。それをうまく使った菅官房長官はさすがだ」

検事総長を任命するのは内閣だ。だが、検事総長自身が後任を決めるのが慣例。それは政治と法務・検察は近くなりすぎてはいけない、癒着がないように独立性を保つという意味合いがある。人事案は官邸に上申されるが、ほぼ異論なく承認される。

「これは安倍政権の指揮権発動と同等だよ。官邸が黒川氏を検事総長にしろと命令しているようなものだ。官邸、政治権力が検察の人事に口出しすることは本来ならあり得ない」(前出・高検検事長経験者の弁護士)

菅官房長官が師匠と仰ぐのが、橋本龍太郎内閣で官房長官だった梶山静六氏。その時、黒川氏と似たポジションにいたのが、元東京高検検事長、根来泰周氏だった。自民党のベテラン議員はこういう。

「梶山氏と根来氏はNKラインと呼ばれた。当時、政界では佐川急便事件などで、竹下派に逆風が吹いていた。その時、根来氏が黒川氏のような存在で、大ごとにならぬようにまとめていた。根来氏は絶対に検事総長だと、太鼓判を押されていた。

しかし、あまりにも官邸に近いと、検察内部で問題になり、定年で去っていった。その時も官邸は、法務・検察の人事には口出ししなかったんだ。梶山氏は根来氏を公正取引委員会の委員長とすることで処遇した。なぜ、菅氏は梶山氏を見習わなかったのか」

前出の高検検事長経験者の弁護士はこういう。「閣議決定された以上、黒川氏の定年延長は官邸の関与がはっきりとしている。稲田氏には昨年11月頃に、官邸サイドからそろそろやめろという話があったと聞いている。検察官が辞めるのは、定年か懲戒免職か検察官適格審査会に引っかかるしかない。

稲田氏はやめないと返事をし、黒川氏の後任は名古屋の林君という腹積もりをしていたようだ。それなのに黒川氏の定年延長を官邸が勝手に決めた。検察と一戦をまじえると、宣戦布告だ。検察と官邸、過去の歴史にないほどの暗闘がはじまったよ」(前出・高検検事長経験者の弁護士)

そもそも検事総長には定年は65歳。稲田氏は今年8月14日が誕生日で64歳となるので、続けられる。一方、黒川氏の延長は8月7日まで。稲田氏が誕生日まで辞めないと黒川氏は再延長するしかない。黒川氏の「延長」は最大1年未満までしか認められないので、来年2月7日まで。つまり、稲田氏が来年の黒川氏の誕生日まで、検事総長の座を譲らなければ、官邸が敗れ去る。

「検察内では、官邸のあまりにひどいやり口に、稲田検事総長に頑張れという声が高まっている。官邸に逆襲するためにバンバン、事件をやって検察の威信を見せつけるべきだという人も多い」(前出・現職検事)

前出の自民党ベテラン議員もこう話す。「検察とガチンコで構えるのは、避けるべき。官邸もやりすぎという声があちこちから聞こえる。背後に数々の疑惑あるのだから…」

昨年12月にIR疑惑で、衆院議員の秋元司被告が収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕、起訴された。そして前法務相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員の公職選挙法違反事件も、検察が捜査中だ。

「黒川氏もこれだけ知られると動けない。検察の判断一つで、安倍政権は揺らぎかねないよ」(前出・自民党のベテラン議員)官邸と法務・検察の暗闘。どう決着するのだろうか?【週刊朝日2020年2月4日

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2020年2月 1日 (土)

雇用継続の課題

前回の記事は時事の話題を取り上げた「安倍政権にとっての個人情報」でした。今回は前々回記事「会計年度任用職員制度の組合説明会」の続きに当たるローカルな内容である一方、時事の話題にも触れながら書き進めてみるつもりです。

春闘の話、インデックスⅡ」があるとおり当ブログでは春闘に絡む話を多く投稿してきています。労働組合の役員が運営しているブログですので当然かも知れませんが、公務員賃金が確定する時期は人事院や人事委員会の勧告後、秋以降となっています。

私どもの組合にとって、春闘期は新年度に向けて賃金や人事に関する制度の見直しや人員配置を巡る労使交渉の山場を迎えていきます。いずれにしても新聞やテレビなどで春闘という言葉が目に付くようになってきました。

経団連は14日、会長・副会長会議を開き、2020年春闘の交渉方針を示す「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の最終案を了承した。年功型賃金など日本型の雇用慣行の見直しに重点を置いた。21日に公表する。

報告は、グローバル化やデジタル化が進む中で、新卒一括採用や終身雇用といった日本型の制度を前提に企業経営を考えることが時代に合わないケースが増えていると指摘。

雇用体系そのものを見直す必要性を強調し、労使での議論を呼び掛けた。採用面では中途採用や通年採用の拡大のほか、職務を明確にして専門性を評価する「ジョブ型」雇用の活用を促した。【東京新聞2020年1月21日

このニュースが流れた際、NHKのサイトで「もう時代遅れ? 日本型雇用システム」という記事を見つけています。日本型雇用システムのメリットやデメリット、経団連の狙いを分かりやすく解説していたため、関連箇所をそのままご紹介します。

経団連は春闘に向けて、戦後、長く続いてきた日本型雇用システムを見直すよう促しました。新卒一括採用、終身雇用、年功型賃金…もう時代に合わないのでしょうか?日本型雇用システムは、新卒一括採用、終身雇用、年功型賃金を主な特徴としています。

皆が同じ時期に就職し、年を重ねるに従って同じように昇進し、そして同じ会社で定年まで勤めあげる。こうした雇用システムを日本の多くの企業が導入し、高度成長期に定着しました。日本型雇用システムは、経済が右肩上がりで大量生産で安くていいものを作れば売れていた時代に適した制度でした。

例えば、新卒一括採用は、企業にとっては毎年、計画的に採用を行うことができ、採用後も異動や転勤などを通じてさまざまな仕事を経験させて、自社にあった社員を育成することができます。社員にとっても、年齢や勤続年数が上がるにつれて給料もあがる年功序列型の賃金は、雇用や経済面での安心感につながり、人生設計を描きやすいというメリットがありました。

しかし、経済がグローバル化し、海外の企業との競争が激しさを増すようになると、日本型雇用のデメリットが指摘されるようになりました。例えば、同じ企業の中の訓練や経験だけで育った社員は、創造的な仕事が不得意だったり、海外の優秀な人材の獲得が難しくなったりするばかりでなく、勤続年数を重視した昇給の制度では出産や育児が女性のキャリア形成に不利に働いてしまう、というのです。

労働問題に詳しい三菱総合研究所の山藤昌志主席研究員は「少子高齢化で若い人材の獲得が難しくなり、AI=人工知能の発達など技術の進歩が進めば、仕事の内容も大きく変化する」としたうえで、「こうした課題に対応するには企業が人材を抱えていちから育てる今の日本型雇用システムでは限界がきている」と指摘しています。そのうえで、「この10年は日本経済にとって正念場になる。そういった中で日本型雇用システムも大きく変わらざるをえないだろう」と話しています。

企業活動のグローバル化が進み、国境を越えた人材の獲得競争が激しさを増す中、経団連は日本型雇用システムのままでは意欲のある優秀な人材や海外の人材に対して、企業としての魅力を十分に示すことができないと考えています。そして、人材獲得が難しくなるばかりか、みずから能力を磨いて付加価値の高い仕事をしようという若い人材の成長と活躍を阻害している可能性もあると指摘しています。

このブログの以前の記事「定期昇給の話」の中で新卒採用から定年退職までの長期雇用が保障され、年功で賃金が上がっていくシステムは決して企業の温情ではないことを綴っていました。上記のNHKの記事にあるとおりそのウインウインの関係が崩れかねない動きだと言えます。

企業の経営側と労働側が賃上げなどをめぐり交渉するいわゆる“春闘”がスタートした。経団連と連合は28日朝、春季労使交渉に向けた議論を行った。経団連は、賃上げの勢いを維持することを掲げる一方、これまでの勤続年数に応じて給料が上がるシステムの見直しを提案している。

経団連・中西会長「賃金上昇のモメンタム(勢い)が大事。それはもう共通認識だよね。一律ベアが何%で全体の水準がいくらだってもうそういうことを言えない時代になりましたよねと」 経団連が、役割や成果に応じた賃金制度を提案しているのに対し、労働組合の全国組織、連合は中小企業や非正規の賃上げが取り残される懸念を示した。

連合・神津会長「どうやってしぼんできた日本をもう一度膨らませていくのか。その中で賃上げっていうのも非常に大きい要素」賃上げなどに関する各企業の労働組合への回答は3月の上旬から段階的に出てくる予定。【日テレNEWS24 2020年1月28日

経営側の思惑だけで労働条件が決められてしまった場合、ブラックな職場になりかねません。また、法制度で規定されてしまうと個別の組合での労使交渉だけでは解決できなくなります。そのためにも連合本部による中央での交渉や政治に対する影響力に期待していかねばなりません。

社会全体の労働条件を底上げするために新たな法律やルール作りが有効ですが、悩ましい事態を強いられるケースもあります。私どもの組合にとって公務における同一労働同一賃金を目的にしたはずだった会計年度任用職員制度の導入がその一つでした。

詳細は前々回記事「会計年度任用職員制度の組合説明会」に綴っています。今回の記事では雇用継続の課題を中心に取り上げさせていただきます。前述したとおり経営側は日本型雇用システムと称する終身雇用制度を否定していく見方を強めています。しかし、このような見方は最近強まった訳でもありません。

人件費の抑制や雇用調整を容易にできるという経営側のメリットを目的に正規雇用が抑制され、非正規雇用の増大が進んでいました。そのような動きの中で、非正規雇用者は日本型雇用システムの枠外に置かれた立場だったと言えます。行政改革が声高に叫ばれる中、公務においても同様でした。

以前の記事「非正規公務員の課題」の中で、非常勤職員の問題はパート労働法などが適用されない「法の谷間」と言われていることを記していました。現行の地方公務員法上の嘱託職員は学校医のような臨時的・一時的な雇用のみを想定しているため、昇給制度や手当支給に異議が差し込まれ、3年や5年で雇い止めされる実態につながっていました。

自治体の人事課長に雇用年限の課題を問いただすと「市民の皆さんに対するワークシェアリングである」と答えるケースが多いことを紹介しています。私どもの自治体の嘱託職員も当初、雇用年限5年という方針が示されていました。かなり前の労使交渉で「市民のワークシェアリング」という市当局側の説明に対し、私から「5年先に失業者を出すのがワークシェアリングですか?」という反論を加えていた話も紹介していました。

このような労使交渉を通し、実質的に雇用年限による雇い止めを見送らせることができていました。高年齢者雇用安定法が改正され、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。そのような中、嘱託職員の皆さんの雇用継続も65歳まで担保できるように労使交渉を積み重ねてきました。

今回、会計年度任用職員制度は「法の谷間」を埋める法改正だったことも間違いありません。同時に待遇改善の機会だったはずですが、他団体との均衡という理不尽な動きが強まり、これまでの労使交渉で積み重ねてきた成果が一気に後退しかねない事態に私どもの自治体は直面していました。このことは前々回記事の中でお伝えしています。

都内の自治体の大半は東京都のルールの横並びを強いられ、公募によらない再度の任用は原則として連続4回としています。私どもの組合も同様な内容で合意していますが、これまでの労使確認事項も尊重していくことを付け加えています。これまでも年度単位の雇用を原則としていますが、恒常的な業務に従事する嘱託組合員はその勤務経験を尊重しながら雇用継続しています。

その上で65歳までの雇用継続を労使確認してきた経緯があります。このような経緯を踏まえた運用方法等について今年度末までに明確化できるように労使協議を進めています。労使協議の場では、これまで培ってきた知識や経験を重視しているため、現職者には「アドバンテージがある」という見方を市当局側からも得ています。

このような経緯や関係性を踏まえた際、新規採用希望者と現職者を競い合わせる試験が望ましいのかどうか問題意識を持っています。加えて5年に一度、大規模な競争試験を実施するコストや職員の負担等も考慮すべき点だろうと思っています。

したがって、現職者に向けた雇用継続の希望を募り、人事評価とは峻別した面接等による選考方法で新たな任期の採用者を決める、このような方向性を念頭に置きながら詰めの協議に組合は臨んでいます。もちろん欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募り、その際は広報等を通じて募集するという手順が望ましいものと考えています。

前述したとおり社会全体では使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保を求めています。それにも関わらず、会計年度任用職員だけが不安定な雇用を強いられることは、ますます法改正時の国会附帯決議の「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」から離れていく考え方だと言わざるを得ません。

毎年、1か月間の条件付採用期間(試用期間)を設ける不合理さをはじめ、任用期間と在職期間を混在させた制度設計に大きな問題があるように見ています。このような組合の考え方が間違っているとは思えないため、今回、会計年度任用職員の雇用継続の課題を当ブログで取り上げています。最近、コメント欄は寂しくなりがちですが、幅広い立場からご意見等を伺えれば幸いですのでよろしくお願いします。

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