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2020年2月 1日 (土)

雇用継続の課題

前回の記事は時事の話題を取り上げた「安倍政権にとっての個人情報」でした。今回は前々回記事「会計年度任用職員制度の組合説明会」の続きに当たるローカルな内容である一方、時事の話題にも触れながら書き進めてみるつもりです。

春闘の話、インデックスⅡ」があるとおり当ブログでは春闘に絡む話を多く投稿してきています。労働組合の役員が運営しているブログですので当然かも知れませんが、公務員賃金が確定する時期は人事院や人事委員会の勧告後、秋以降となっています。

私どもの組合にとって、春闘期は新年度に向けて賃金や人事に関する制度の見直しや人員配置を巡る労使交渉の山場を迎えていきます。いずれにしても新聞やテレビなどで春闘という言葉が目に付くようになってきました。

経団連は14日、会長・副会長会議を開き、2020年春闘の交渉方針を示す「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の最終案を了承した。年功型賃金など日本型の雇用慣行の見直しに重点を置いた。21日に公表する。

報告は、グローバル化やデジタル化が進む中で、新卒一括採用や終身雇用といった日本型の制度を前提に企業経営を考えることが時代に合わないケースが増えていると指摘。

雇用体系そのものを見直す必要性を強調し、労使での議論を呼び掛けた。採用面では中途採用や通年採用の拡大のほか、職務を明確にして専門性を評価する「ジョブ型」雇用の活用を促した。【東京新聞2020年1月21日

このニュースが流れた際、NHKのサイトで「もう時代遅れ? 日本型雇用システム」という記事を見つけています。日本型雇用システムのメリットやデメリット、経団連の狙いを分かりやすく解説していたため、関連箇所をそのままご紹介します。

経団連は春闘に向けて、戦後、長く続いてきた日本型雇用システムを見直すよう促しました。新卒一括採用、終身雇用、年功型賃金…もう時代に合わないのでしょうか?日本型雇用システムは、新卒一括採用、終身雇用、年功型賃金を主な特徴としています。

皆が同じ時期に就職し、年を重ねるに従って同じように昇進し、そして同じ会社で定年まで勤めあげる。こうした雇用システムを日本の多くの企業が導入し、高度成長期に定着しました。日本型雇用システムは、経済が右肩上がりで大量生産で安くていいものを作れば売れていた時代に適した制度でした。

例えば、新卒一括採用は、企業にとっては毎年、計画的に採用を行うことができ、採用後も異動や転勤などを通じてさまざまな仕事を経験させて、自社にあった社員を育成することができます。社員にとっても、年齢や勤続年数が上がるにつれて給料もあがる年功序列型の賃金は、雇用や経済面での安心感につながり、人生設計を描きやすいというメリットがありました。

しかし、経済がグローバル化し、海外の企業との競争が激しさを増すようになると、日本型雇用のデメリットが指摘されるようになりました。例えば、同じ企業の中の訓練や経験だけで育った社員は、創造的な仕事が不得意だったり、海外の優秀な人材の獲得が難しくなったりするばかりでなく、勤続年数を重視した昇給の制度では出産や育児が女性のキャリア形成に不利に働いてしまう、というのです。

労働問題に詳しい三菱総合研究所の山藤昌志主席研究員は「少子高齢化で若い人材の獲得が難しくなり、AI=人工知能の発達など技術の進歩が進めば、仕事の内容も大きく変化する」としたうえで、「こうした課題に対応するには企業が人材を抱えていちから育てる今の日本型雇用システムでは限界がきている」と指摘しています。そのうえで、「この10年は日本経済にとって正念場になる。そういった中で日本型雇用システムも大きく変わらざるをえないだろう」と話しています。

企業活動のグローバル化が進み、国境を越えた人材の獲得競争が激しさを増す中、経団連は日本型雇用システムのままでは意欲のある優秀な人材や海外の人材に対して、企業としての魅力を十分に示すことができないと考えています。そして、人材獲得が難しくなるばかりか、みずから能力を磨いて付加価値の高い仕事をしようという若い人材の成長と活躍を阻害している可能性もあると指摘しています。

このブログの以前の記事「定期昇給の話」の中で新卒採用から定年退職までの長期雇用が保障され、年功で賃金が上がっていくシステムは決して企業の温情ではないことを綴っていました。上記のNHKの記事にあるとおりそのウインウインの関係が崩れかねない動きだと言えます。

企業の経営側と労働側が賃上げなどをめぐり交渉するいわゆる“春闘”がスタートした。経団連と連合は28日朝、春季労使交渉に向けた議論を行った。経団連は、賃上げの勢いを維持することを掲げる一方、これまでの勤続年数に応じて給料が上がるシステムの見直しを提案している。

経団連・中西会長「賃金上昇のモメンタム(勢い)が大事。それはもう共通認識だよね。一律ベアが何%で全体の水準がいくらだってもうそういうことを言えない時代になりましたよねと」 経団連が、役割や成果に応じた賃金制度を提案しているのに対し、労働組合の全国組織、連合は中小企業や非正規の賃上げが取り残される懸念を示した。

連合・神津会長「どうやってしぼんできた日本をもう一度膨らませていくのか。その中で賃上げっていうのも非常に大きい要素」賃上げなどに関する各企業の労働組合への回答は3月の上旬から段階的に出てくる予定。【日テレNEWS24 2020年1月28日

経営側の思惑だけで労働条件が決められてしまった場合、ブラックな職場になりかねません。また、法制度で規定されてしまうと個別の組合での労使交渉だけでは解決できなくなります。そのためにも連合本部による中央での交渉や政治に対する影響力に期待していかねばなりません。

社会全体の労働条件を底上げするために新たな法律やルール作りが有効ですが、悩ましい事態を強いられるケースもあります。私どもの組合にとって公務における同一労働同一賃金を目的にしたはずだった会計年度任用職員制度の導入がその一つでした。

詳細は前々回記事「会計年度任用職員制度の組合説明会」に綴っています。今回の記事では雇用継続の課題を中心に取り上げさせていただきます。前述したとおり経営側は日本型雇用システムと称する終身雇用制度を否定していく見方を強めています。しかし、このような見方は最近強まった訳でもありません。

人件費の抑制や雇用調整を容易にできるという経営側のメリットを目的に正規雇用が抑制され、非正規雇用の増大が進んでいました。そのような動きの中で、非正規雇用者は日本型雇用システムの枠外に置かれた立場だったと言えます。行政改革が声高に叫ばれる中、公務においても同様でした。

以前の記事「非正規公務員の課題」の中で、非常勤職員の問題はパート労働法などが適用されない「法の谷間」と言われていることを記していました。現行の地方公務員法上の嘱託職員は学校医のような臨時的・一時的な雇用のみを想定しているため、昇給制度や手当支給に異議が差し込まれ、3年や5年で雇い止めされる実態につながっていました。

自治体の人事課長に雇用年限の課題を問いただすと「市民の皆さんに対するワークシェアリングである」と答えるケースが多いことを紹介しています。私どもの自治体の嘱託職員も当初、雇用年限5年という方針が示されていました。かなり前の労使交渉で「市民のワークシェアリング」という市当局側の説明に対し、私から「5年先に失業者を出すのがワークシェアリングですか?」という反論を加えていた話も紹介していました。

このような労使交渉を通し、実質的に雇用年限による雇い止めを見送らせることができていました。高年齢者雇用安定法が改正され、使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められています。そのような中、嘱託職員の皆さんの雇用継続も65歳まで担保できるように労使交渉を積み重ねてきました。

今回、会計年度任用職員制度は「法の谷間」を埋める法改正だったことも間違いありません。同時に待遇改善の機会だったはずですが、他団体との均衡という理不尽な動きが強まり、これまでの労使交渉で積み重ねてきた成果が一気に後退しかねない事態に私どもの自治体は直面していました。このことは前々回記事の中でお伝えしています。

都内の自治体の大半は東京都のルールの横並びを強いられ、公募によらない再度の任用は原則として連続4回としています。私どもの組合も同様な内容で合意していますが、これまでの労使確認事項も尊重していくことを付け加えています。これまでも年度単位の雇用を原則としていますが、恒常的な業務に従事する嘱託組合員はその勤務経験を尊重しながら雇用継続しています。

その上で65歳までの雇用継続を労使確認してきた経緯があります。このような経緯を踏まえた運用方法等について今年度末までに明確化できるように労使協議を進めています。労使協議の場では、これまで培ってきた知識や経験を重視しているため、現職者には「アドバンテージがある」という見方を市当局側からも得ています。

このような経緯や関係性を踏まえた際、新規採用希望者と現職者を競い合わせる試験が望ましいのかどうか問題意識を持っています。加えて5年に一度、大規模な競争試験を実施するコストや職員の負担等も考慮すべき点だろうと思っています。

したがって、現職者に向けた雇用継続の希望を募り、人事評価とは峻別した面接等による選考方法で新たな任期の採用者を決める、このような方向性を念頭に置きながら詰めの協議に組合は臨んでいます。もちろん欠員が生じる場合などは新規採用希望者を別途募り、その際は広報等を通じて募集するという手順が望ましいものと考えています。

前述したとおり社会全体では使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保を求めています。それにも関わらず、会計年度任用職員だけが不安定な雇用を強いられることは、ますます法改正時の国会附帯決議の「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」から離れていく考え方だと言わざるを得ません。

毎年、1か月間の条件付採用期間(試用期間)を設ける不合理さをはじめ、任用期間と在職期間を混在させた制度設計に大きな問題があるように見ています。このような組合の考え方が間違っているとは思えないため、今回、会計年度任用職員の雇用継続の課題を当ブログで取り上げています。最近、コメント欄は寂しくなりがちですが、幅広い立場からご意見等を伺えれば幸いですのでよろしくお願いします。

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コメント

これからも低成長が続く時代に、終身雇用と年功賃金の維持は無理ですね。
昨年、東芝や富士通などが中高年を対象に早期退職者を募っていました。なぜリストラが中高年に向くのか、企業は人件費の高さほどに中高年の能力を評価してない表れです。賃金カーブの傾きをよりフラット化しないと終身雇用がもたないでしょう。

中小企業は法定福利を含む人件費が最大のコストであり、雇用を保つために苦心してます。自治体の財務セクションは、自主財源に対する人件費の割合をどのように捉えているんですかね。

投稿: yamamoto | 2020年2月 2日 (日) 11時17分

yamamotoさん、コメントありがとうございました。

ここ10年以上、地方行革の大きな柱は人件費を削減することでした。組合は行革そのものを頭から否定する立場ではありませんが、今回の記事本文の中で記したとおり経営側の思惑だけで労働条件が決められてしまうことに対しては強い懸念を抱いています。

なお、このような問題意識を綴った記事は数多く投稿してきています。その中の一つに過ぎませんが、参考までに下記の記事を紹介させていただきます。

2011年2月27日(日) 公務員の人件費
http://otsu.cocolog-nifty.com/tameiki/2011/02/post-b8f8-2.html

投稿: OTSU | 2020年2月 2日 (日) 21時06分

賃金制度の柔軟化に連合がいくら懸念を示しても、単別企業の労使間では見直しが進められています。トヨタがいい例です。社会保障制度はより長く働くことが前提で、守るべきは終身雇用でしょう。

公務員の年功賃金制度が変わらないのは「何も変えずに様子を見る」という行動様式が利害関係者につよく働くからでしょう。
1/19付 朝日新聞のマンガチックなモデル図が、年功賃金の問題点をわかりやすく表してますね。法令で決まってるとはいえ、残業単価20代前半1500円、40代前半3000円の非合理性をどう捉えるかです。

投稿: yamamoto | 2020年2月 6日 (木) 08時34分

yamamotoさん、コメントありがとうございました。

年功賃金の話については機会を見ながら改めて取り上げられればと考えています。新規記事は「定年延長の話」というタイトルで投稿します。ぜひ、引き続きご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年2月 8日 (土) 17時44分

>法令で決まってるとはいえ、残業単価20代前半1500円、40代前半3000円の非合理性をどう捉えるかです。

朝日新聞に”妖精さん”(年功序列で賃金は高いが仕事がないので離席が多く自席にあまりいない中高年社員)の記事がありました。妖精さんの一人が記者の取材に、”若い人には悪いが娘が大学を卒業するまではこのまま勤めたい”と言ったそうです。純粋に経済的な観点からは妖精さんの給料は下げるべきですが、そうすると(親からの仕送りが減って)困る大学生が増えそうです。
評判の悪い年功序列賃金ですが、これは年齢が高くなるにつれ子供の教育費等の支出が増える事に対応するためだったそうです。西欧では子供の教育費等に対する公費負担が多いそうですが、日本は年功賃金により個人(企業)が負担する事により政府の負担は少なくて済みました。年功序列賃金だけを改定し教育費等に対する政府の負担を増やさなければ、(子供が成長してからの教育費負担を懸念して子供を産まない人が増え)少子化がますます進む可能性もあると思います。

投稿: Alberich | 2020年2月10日 (月) 23時06分

Alberichさん、コメントありがとうございました。

この週末に投稿する新規記事のタイトルは「会社の妖精さん」とするつもりです。ぜひ、引き続きご訪問いただければ幸いですのでよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2020年2月15日 (土) 06時27分

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