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2020年1月18日 (土)

会計年度任用職員制度の組合説明会

前回記事「反核座り込み行動で訴えたこと、2020年冬」の冒頭、水曜夜に会計年度任用職員制度の組合説明会が予定されていることを記していました。現時点までに労使確認した内容等を報告し、さらに詰めるべき事項について意見交換をはかる機会としました。

昨年10月に基本合意した後、学校事務や学童保育所など個別の職場から要請を受け、同様な趣旨での懇談会をいくつか催してきました。11月の定期大会や12月の職場委員会を通し、交渉結果等を組合員全体に報告していますが、執行部側が呼びかけた説明会や意見交換の場も必要だと考えていました。

今回、事前の申込は不要としたオープンな形で開催しています。すでに懇談会を催した職場からの出席は多くないものと見込んでいましたが、当日の参加者数は45名でした。直接の当事者である嘱託職員以外の組合員の皆さんの参加も思っていたより多く、やはり関心の高さがうかがえる課題だと認識しています。

これまで当ブログでは「会計年度任用職員」「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」「会計年度任用職員制度、労使合意」という記事を投稿してきました。条例が整えられ、今年4月から制度がスタートする訳ですが、まだまだ重要な労使協議課題としての対応が求められていきます。

法改正時の国会の附帯決議が公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めていることを踏まえ、組合は嘱託職員の皆さんの待遇改善の機会として労使交渉を進めてきました。しかしながら私どもの組合にとっては非常に悩ましい事態を強いられていました。かえって法改正が逆風となり、全体を通して現行の待遇を後退させる提案内容が目立っていました。

他団体に比べて月額報酬の額が高い、他団体の非常勤職員の病休は無給である、このような点を市当局側は説明し、総務省の事務処理マニュアルに基づき他団体の非常勤職員との均衡に固執していました。月額報酬を1万円ほど下げ、休暇制度は都準拠とし、唯一改善となる期末手当支給も2年間かけて2.6月までに引き上げるという提案内容でした。

自治労都本部内の労使は9月議会までに決着をはかる中、私どもの組合のみ到底合意できる水準に至らず、12月議会に向けた継続協議としていました。10月24日深夜に及ぶ労使交渉の結果、12月議会への条例案送付に向け、期末手当や休暇制度等の取扱いについて労使合意しました。

月額報酬の引き下げを受けざるを得なかった不本意な点もありますが、基本的に休暇制度等の現行待遇は後退させず、期末手当2.6月分を支給することで年収増につなげる交渉結果を得られています。水曜夜の説明会では、このような交渉経緯を改めて報告しながら引き続き労使協議を求め、確認すべき主な事項について提起する機会としています。

なぜ、私どもの組合は悩ましい局面を強いられたのか、説明会の時に話した内容を今回のブログ記事でも取り上げてみます。まず法改正時の国会附帯決議の「公務における」という言葉は官製ワーキングプアと呼ばれがちな常勤職員と非常勤職員との待遇格差を念頭に置いたものだったはずです。

一方で、今回の法改正は任用根拠が曖昧だった非常勤職員の位置付けの明確化という目的もありました。法改正後、総務省から「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」が示され、その中には「他団体との均衡をはかること」という一文も盛り込まれていました。

総務省の担当者らと直接協議を重ねていた自治労本部役員からは「最低基準を示した労基法と同様、非常勤職員の待遇面が劣っている自治体の底上げを目的としたもので、すでに上回っている自治体の待遇を引き下げるものではない」という説明を受けていました。

このことは私どもの労使交渉の中で、組合から再三再四訴えてきています。それに対し、市当局側は「そのような点について具体的な文言として公式に発せられていないため、他との均衡を重視しなければならない」という立場を訴え続けていました。

これまで任用根拠をはじめ、各自治体の独自な判断で非常勤職員の待遇を決めていました。私どもの組合は非常勤職員である嘱託の皆さんが以前から直接加入しています。そのため、嘱託組合員の待遇改善が継続的な労使交渉の課題とされてきました。この労使交渉の積み重ねによって、現在の待遇が定められてきたと言えます。

それでも常勤職員に比べれば、まだまだ均等待遇からは程遠いものだと受けとめています。しかしながら全国的な平均レベルと比べた際、私どもの嘱託職員の待遇は高い水準だったことが今回の法改正を通して明らかになっていました。こちらからすると有給での病気休暇を一日も認めないことが全国標準である現状などには驚いていました。

私どもの自治体は地方交付税の不交付団体です。そのため、会計年度任用職員の期末手当支給に伴う億単位の予算は自主財源で賄わなければなりません。当初、私どもの市も下記報道にあるような年収総額の中での配分見直しを示唆していました。それこそ『「生活できなくなる」 期末手当新設で月給減… 非正規公務員の悲痛な声』という見出しのような事態を強いる発想であり、組合側は猛反発し、早々に見送らせることができていました。

「月給が減らされて生活ができなくなる」。福岡県内の自治体で非正規職員として働く女性から特命取材班に悲痛な声が寄せられた。いまや市町村で働く職員の3人に1人は非正規雇用。保育現場や図書館など住民とじかに接する職場に多く、非正規なしに公共サービスは維持できないのが実態だ。何が起きているのだろうか。

女性は週5日フルタイムで働いて月給は10万円台半ば。来春から勤務体系が見直され、月給が1万~2万円減る方向だという。「新たに期末手当(ボーナス)を出すから年収は変わらないと言われるけど、月給が減ると日々の暮らしが立ち行かない。正規職員並みの業務を担っているのに…。私たちは都合よく働くロボットじゃない」

地方の非正規職員の制度は来年4月から大きく変わる。地方自治法などが改正され、期末手当が支給できるようになる。経験年数に応じた昇給も可能だ。「同一労働同一賃金」が進む民間以上に格差が指摘される非正規公務員の待遇改善が目的だった。

給与体系を具体的に決めるのは各自治体で、制度設計が大詰めを迎えている。福岡市は期末手当を正規並みの2・6カ月分支給する。一方、月給は3万円ほど下がる職員もいる。市の担当者は「正規職員と業務内容を比較して適正な金額にした。年収で見ると改正前を下回らないようにしている」と説明する。

期末手当を支給する代わりに月給を下げ、年収は変わらない-。「全国の自治体でこうした動きが相次いでいる。年収維持か、アップしてもごくわずか。待遇改善にはほど遠い」。非正規公務員の実態に詳しい地方自治総合研究所(東京)の上林陽治さんはこう指摘する。

人件費上昇を抑えようとフルタイムをパートに切り替えるほか、正規と比べて初任給を低く設定したり、昇給を抑えたりする自治体が多くあるという。自治労総合労働局長の森本正宏さんは「年収がもう少し上がると期待していたが現状は厳しい」と話す。

自治体側にも事情がある。行政改革で正規の人員削減を求められる中、業務負担は増すばかり。人件費の安い非正規を増やすことでしのいできた。今回、国が先導する「待遇改善」だったはずだが、開始まで半年を切っても財源確保の具体的な形は見えてこない。

長崎県佐々町は非正規(192人)の割合が日本一高く、全体の6割強を占める(2016年総務省調査)。来年4月以降、期末手当を支給し、試算では最大約5500万円負担が増える。町の予算規模は約60億円。担当者は「国の補助があるのか注視している」。

他の市町村からも「財源が示されないまま待遇改善と言われても、対応には限界がある」との声が漏れるが、総務省の担当者は「補助については検討中」との説明にとどめる。

上林さんが提唱するのが、自治体の貯金とも言える「財政調整基金」の活用だ。税収減などに備えたもので、16年度末で全国の基金総額は約7兆5千億円。10年間で8割も増えた。

上林さんは「このままでは大事な役割を担う非正規職員が辞めてしまい、必要とする人に公共の支援が届かなくなる。待遇改善は公共サービスの質を維持する上での生命線だ」と強調する。【西日本新聞2019年11月4日

このような自治体の動きに対し、多くのメディアは疑問視した論調であり、「公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応」から真逆な憂慮すべき事態だと非難されなければなりません。「非正規公務員 一部自治体で給料減額の動き」を受け、総務省としても下記の報道にあるような通知を昨年末に発していました。

全国の自治体で働く「非正規公務員」にボーナスの支給を可能にする新たな制度が新年度から始まるのを前に、一部の自治体で毎月の給料などを減らす動きが出ていることがわかりました。総務省は財政悪化を理由にした給料の抑制などはやめるよう、全国の自治体に通知しました。

全国の都道府県や市区町村などで非常勤や臨時の職員として働く「非正規公務員」は4年前の時点でおよそ64万人に上り、正規職員と仕事の内容が同じでも、給料が低いなど待遇改善が課題となっています。

こうした中、すべての「非正規公務員」にボーナスの支給を可能にする新たな制度が新年度から始まりますが、総務省によりますと、一部の自治体ではボーナスの支給に合わせて毎月の給料などを減らす動きが出ているということです。

このため総務省は財政悪化を理由にした給料の抑制などはやめるよう全国の自治体に通知しました。通知ではフルタイムで働いていたのに合理的な理由もなく勤務時間を短くしたり、ボーナスの支給に合わせて毎月の給料を減らさないことなどを求めています。

総務省によりますと、新年度から全国のすべての自治体が「非正規公務員」にボーナスを支給する見通しで、これに伴う人件費はおよそ1700億円に上る見込みです。このため総務省はこの総額のおよそ1700億円を地方交付税として自治体に配分する方針です。【NHK NEWS WEB2020年1月4日

年明け、このNHKのニュースに接した時、3か月前に出してくれれば私どもの労使交渉で「組合側にとって追い風となったのに…」という思いを強めていました。「ボーナスの支給に合わせて毎月の給料を減らさないこと」という文言だけ受けとめれば、私どもの自治体は月額報酬を下げることを決めているため、総務省の通知に反しています。

地方交付税の不交付団体であり、財政上の理由も大きかったはずですが、もともと「他団体に比べて月額報酬の額が高い」という理由を軸にした苦汁の判断だったため、状況を一変させるほどの直接的な追い風にならないことも理解しています。それでも「月給は減らさない」という全国的な動きが大きな流れとなっていれば、私どもの労使交渉にも影響を与えていたかも知れず、「遅すぎる」という思いが強まって残念でなりません。

会計年度任用職員制度の組合説明会では主に私が説明していました。これまで労使で確認してきた内容の報告や今後詰めるべき課題の説明など多岐にわたっていました。今回の記事はここで一区切り付けさせていただきますが、「公募による再度の任用」の具体的な運用方法の確認に向けた問題意識などは機会を見て次回以降の記事で扱えればと考えています。

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