自治労都本部組織集会 Part2
今年も残りわずかです。ここ数年、年末には「2017年末、気ままに雑談放談」「2018年末、気ままに雑談放談」というタイトルを付け、その時々に思うことを書き残していました。今回、前回記事「自治労都本部組織集会」では触れられなかった分科会の内容を取り上げてみます。
午後の分科会は3つあり、私は第1分会「次代の担い手づくりと単組の組織強化」に参加しました。午前の全体会では自治労弁護団の宮里邦雄さんから「今問われている!労働組合の存在意義と役割―労働組合の再生・発展を目ざして―」という演題でのお話を伺いました。
宮里さんの総論的な提起を受け、分科会では個々の組合や職場における組織強化に向けた具体的な取り組みを知り得る機会となっていました。他の組合の興味深い報告の数々に触れることができ、いろいろ得るものがあった組織集会でした。
自治労都本部からの基調提起
最初に自治労都本部組織局次長から分科会の基調提起がありました。自治労都本部としての組織強化は3つの領域があります。①自治体単組の組織強化、②自治体関連団体・公共サービス民間労働者の組織強化、③臨時・非常勤職員の組織化です。私のような単組役員の立場からは主に①と③の組織強化が直面する課題となっています。
ちなみに②に関連した自分自身の経験を綴った過去の記事として「登録ヘルパーの組合」というものがあります。前回記事の最後にウーバーイーツユニオンのことを紹介しました。この報道に接した時、登録ヘルパーの皆さんの顔が思い浮かんでいました。雇用関係が曖昧な中、不安定な労働条件を改善するため、労働組合を結成したいう共通点があったからです。
詳しい内容に興味を持たれた方はリンク先の当該記事をご覧いただければ幸いです。いずれにしても3年半という短い期間でしたが、登録ヘルパーの皆さんと一緒に頑張れたことは自分自身にとって、たいへん貴重な経験だったと言えます。このように横道にそれながら書き進めていくと今回も長い記事内容になりつつありますが、もともと「雑談放談」をサブタイトルに掲げたブログであるためご容赦ください。
さて、①の自治体単組の組織強化の中味も3つに分類した提起を受けています。(1)新規採用職員の労働組合加入促進、(2)次代を担う組合役員の育成、(3)現業職の新規採用の実現という課題です。この分科会では全体を通して(1)と(2)の課題を中心に各組合からの事例報告や意見交換が行なわれました。
「久しぶりの自治労大会」の中で伝えたような危機感は自治労都本部も同様に抱えています。基調報告の後、自治労青年部の前部長から青年部運動活性化PTの報告、3つの組合の役員から具体的な取り組みの報告が示されました。3時間にわたる分科会でしたので一つ一つ取り上げていくと相当な長さの記事内容に及びます。
そのため、新規採用職員の組合加入促進と次代を担う組合役員の育成という論点をもとに全体を通し、特に興味深かった報告内容を総括的にまとめてみるもりです。まず報告された皆さん、それぞれ組織的な問題の危機感は共通なものです。ただ直面している危機的な状況には程度の差があり、取り組みの結果、現在は好転しているという組合もあります。
それでも「自分の組合は組織的な問題で一切悩むことはない」という立場での報告はなく、何かしらの面で悩みを抱えられています。一方で、自治労都本部の基調提起では「単組の現状と課題」の一つに「役員の選出、育成が困難な状況にもかかわらず、単組内で問題が共有されていない」という問題もあげられています。
つまり危機感があるからこそ、望ましくない現状を改善していく手立てを探れることになります。しかし、現状に対する危機意識を持たない場合、立ち直す機会が訪れることはなく、組織そのものがつぶれてしまうか、看板だけ掲げる組合に至ってしまう恐れがあります。主体的に担う組合役員がいなくなり、組合員数が減少していけば、そのような事態に陥らざるを得ません。
今回の組織集会参加者の皆さんは何かしらの危機感を抱えた中で連合会館に足を運ばれているものと思っています。私自身もその一人であり、新規採用職員の組合加入率を回復させた組合、20代の組合役員が急増した組合の事例に触れることができ、たいへん貴重な機会を得られたことに感謝しています。
新規採用職員の組合加入の促進
続いて、報告された個々の具体例を紹介しながら新規採用職員の課題を書き進めてみます。地方公務員だけで構成している産別ではありませんが、自治労に結集している組合の大半はオープンショップ制をとっているものと認識していました。分科会で報告された組合の一つはユニオンショップ制であることを知り、少し意外な印象を受けていました。
ユニオンショップ制とは「雇用された労働者は一定期間内に特定の労働組合に加入しなければならないとする制度である」と解説されています。ユニオンショップ協定を結んでいる組合の報告は「正規職員の新採加入率は100% で組織化の苦労は少ないが、自分の意思で組合員になった訳ではないため、組合員としての自覚が希薄」という話でした。そのため、次世代の担い手が見つからないという悩みは他の組合と同様なものでした。
オープンショップ制の自治体単組でも新規採用者のほぼ全員の加入を維持できている組合があります。そのような組合の特徴として、採用された初日、当局側の研修の中に組合側の説明時間が組み込まれています。加えて、その説明が終わった直後に加入届の提出を求めるため、新規採用者の大半は採用初日に加入されるそうです。
さらに当局側の人事担当者も組合費のチェックオフ手続きがあるため、提出時期について説明される場合もあるようです。このあたりは各労使間の慣行や個々の組合の考え方があり、すべて同じようなスタイルをめざすべきとは言えない側面があります。特筆すべき点としては、このように組合に加入することが当たり前という雰囲気を保っている組合は必然的に高い加入率を維持できています。
私どもの組合も全体的な加入率が100%に極めて近かった頃は新規採用者もほぼ全員加入していました。まだ100%近くという言い方はできる加入率ですが、入るかどうか、二者択一の選択肢として判断できるほど各職場に組合未加入者が目立つようになっています。職場に配属されてから組合に入っていない先輩職員がいることを知った時、入らないと決めてしまうケースもあり得ます。
1,500人の組合員数の時代、組合に入っていない職員は2人か3人だったように記憶しています。そのような中で組合加入を拒めていた職員は相応に意志の強い方だったのかも知れません。前回記事の中でJR東労組の組合員が大量脱退した話に触れましたが、入らなくて済むのであれば、そうしたいと考えている方々が多かったため、ある切っかけから雪崩を打った事態につながってしまったようです。
組合に加入していなくても労働条件は同じ、そうであれば組合費等の負担がなくなり、組合を脱退したほうが得だと考えている組合員も多いはずです。自治労青年部のPT報告では「集団としてのメリットはない。個人としての利益がメリット」「労働組合に加入しなくても恩恵を受けてしまうことに違和感がない」という青年の意識を伝えています。
分科会では「ピンチをチャンスに変えて組織強化」をはかったという報告もありました。新規採用職員の組合未加入が続いた時、月1回の定例執行委員会で毎回加入を促すための検討を重ねたそうです。その上で継続的な働きかけを途絶えさせず、組合の必要性などを丁寧に説明し、 組合役員の顔ぶれも変えながら新規採用職員との話し合いをきめ細かく試みたとのことです。
必要に応じて同じ職場の先輩組合員からも働きかけをお願いし、このような粘り強い取り組みの結果、ここ数年、新規採用職員の加入率は100%を維持できているという報告でした。このような一連の取り組みを通し、さらに成果を上げられたことで組合組織の活性化がはかれ、今年度、新たに選出された執行委員は4人になったとのことです。
組合執行部全体で危機感を持ち、きめ細かい取り組みによって成果を上げられた好事例だと言えます。一方で、現職の組合役員の負担感を考慮し、そこまで力を注げていない組合も多いのではないでしょうか。その結果、未加入者を増やし、ますます手が回らなくなる人数まで広げてしまうという悪循環に陥りがちです。
私どもの組合も同様です。一昔前、執行委員の定数が欠けることはなく、未加入者が組織全体で数名の頃、組合加入をためらう新規採用職員に対する働きかけは現在と比べられないほどのきめ細かさでした。私自身が執行委員長を務めている中で未加入者を増やしてしまっていますので責任を痛感しています。何とか好転させる切っかけや兆しを見出し、次走者にバトンを渡せるよう思いを巡らしています。
組合役員の担い手の問題
やはり組合役員の担い手の問題と新規採用職員の組合加入促進の問題は密接につながっています。幅広い職場から多くの執行委員が選出されていれば、きめ細かい働きかけがしやすくなるという側面をはじめ、労働組合の存在意義がどこまで浸透できているかどうかという問題につながっているものと考えています。
組合役員の担い手がいなければ組合活動は停滞し、組合員がいなければ組合はつぶれてしまいます。組合は大事、つぶしていはいけない、そのような認識が共有されることで、たいへんだけど組合役員を引き受けてみよう、組合には入らなければいけないという好循環につながっていくはずです。分科会の中で、特に若手組合員をどのようにして組合役員に誘っているのかどうかという報告が示されています。
前回記事の中で「午後の分科会では私自身もいくつか質問や意見を述べさせていただきました」と記していました。その一つが報告者ではなく、20代の組合役員複数名が委員長らとともに組織集会に参加されていた組合の方に質問するという異例な形を認めていただいたものです。組合役員の年齢層が若いため、新規採用職員との距離感も近く、いろいろな取り組みに多くの若手組合員が活発に参加されているようでした。
このような話を質疑応答や意見交換を通して伺ったため、若手組合員の多くが組合役員を務めるまでの経緯や工夫などを質問させていただきました。その組合の委員長からお答えいただきましたが、少し前まで「労働組合とは…」という原則を大上段に構えた組合執行部だったとのことです。そのため、若手組合員から共感を得られにくい雰囲気の転換を意識的に心がけていったそうです。
夕方、若手組合員の多くが組合事務室を訪れ、自由に語れる場所を提供したことが活性化につながる切っかけでした。書記長一人が近くにいて、何か質問があったら答える程度で基本は若手組合員同士が和気あいあいと語り合う場所と時間だったようです。この語り合いの後、毎回、場所を変えて委員長らも加わって飲食をともにしながら、よりいっそう自由な意見交換を重ねていました。
このような会を重ねる中で若手組合員の視点から組合活動について語られるようになり、しばらくして「私を執行委員にしてください」という自発的な声が上がるようになったそうです。主体的な意思で組合役員を担う若手組合員が続出しているという話は本当にうらやましい限りです。
そのような現状を整えられた委員長をはじめ、ベテラン役員の皆さんに敬意を表させていただいています。成功事例としてのプロセスを私どもの組合がどこまで参考にできるかどうか分かりませんが、主体的、自発的な意思で組合役員を担う組合員が現われることの大切さは最も重視していかなければなりません。
もう少し今回の記事は簡潔な内容になるものと考えていました。書き進めると相当な長さとなり、途中から小見出しを付けています。たいへん恐縮ながら、もう一つ、質疑時間に私から提起した論点を紹介します。
戦争を肯定という言葉に対し
自治労青年部の前部長が「普段言えない組合に対する疑問や不満が言える場が必要」と説明した際、戦争を肯定する若手組合員と話したという経験を伝えていました。この一言が気になり、私からは「戦争を肯定している人はいないのではないですか、きっと抑止力のあり方として考え方が違ったのではないですか」と問いかけていました。
前々回記事「不戦を誓う三多摩集会 Part2」に綴ったとおり戦争を肯定的にとらえている人は皆無に近く、どうしたら戦争を防げるのかという視点や立場から安保法制等を判断している自治労組合員も多いのだろうと考えています。そのため、より丁寧な説明や言葉の使い方が欠かせないことを訴えさせていただきました。前部長からは「確かに戦争を肯定とは言ってなかったかも知れない」と補足があり、私から提起した趣旨もご理解いただけたものと思っています。
いわゆる左と見らがちな自治労の運動方針に距離感を抱き、組合に入らない、組合役員を担いたくない、そのように考えている方々も多いはずです。だからこそ結論を押し付けるのではなく、「なぜ、取り組むのか」「なぜ、反対しているのか」という伝え方が組織強化のために重要であることも、この問いかけをした際に申し添えていました。
実は直近の身近な事例にも触れるつもりでしたが、相当な長さとなった今回の記事はここで区切りを付けさせていただきます。
最後に
この一年間、多くの皆さんに当ブログを訪れていただきました。本当にありがとうございました。どうぞ来年もよろしくお願いします。なお、次回の更新は例年通り元旦を予定しています。ぜひ、お時間等が許されるようであれば、早々にご覧いただければ誠に幸いです。それでは皆さん、良いお年をお迎えください。
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