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2019年12月22日 (日)

自治労都本部組織集会

厚生労働省が2019年の「労働組合基礎調査の概況」を発表しました。6月30日現在の単一労働組合の数は24,057組合、労働組合員数は1,008 万8千人でした。前年に比べて労働組合数は271組合(1.1%)減りましたが、労働組合員数は1万8千人(0.2%)増えています。ただ雇用者数そのものが増えているため、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は16.7%で前年より0.3ポイント低下しています。

ちなみに産別ごとの結果で自治労は77万4千人、前年より1万2千人減っています。官公労組が統一し、現在の連合が発足したのは1989年で今年は結成30年という節目を刻んでいました。発足当初、自治労は100万人を超えた組織規模で連合内で最も組合員数の多い産別でした。その後、組織拡大を続けているUAゼンセン(177万2千人)には大きく離され、連合内で組合員数は2番目という位置が定着していました。

今回の調査で自動車総連が79万2千人まで増やし、自治労は3番目まで下がったことになります。「久しぶりの自治労大会」という記事の中で取り上げたとおり組合員数の減少は自治労全体で深刻な問題としてとらえています。行政改革の推進による地方公務員総数そのものが減らされてきましたが、最近の傾向は新規採用者の加入率の落ち込みが主な要因となっています。

組合員数の減少は内外に発揮すべき影響力の低下をはじめ、財政面において危機的な状況につながっていきます。同時に組合役員の担い手不足の問題も深刻化しています。組合員数の減少と組合役員の担い手不足は密接に関わる問題だと言えます。それぞれ様々な要因が絡み合い、個々の組合によって事情も異なるようですが、 労働組合の存在意義という根幹的な問題で関わっているものと考えています。

このような情勢や問題意識のもとに土曜日、自治労東京都本部の組織集会が催されました。毎年催されている集会ですが、講演や各報告に対する参加者からの質問が例年以上に数多く、より具体的で踏み込んだ内容だったように感じています。午後の分科会では私自身もいくつか質問や意見を述べさせていただきました。いろいろ得るものがあった集会であり、主催者や報告者の皆さん、ありがとうございました。

午前中の全体会は都本部委員長の挨拶の後に組織集会の基調提起があり、自治労弁護団の宮里邦雄さんの講演「今問われている!労働組合の存在意義と役割―労働組合の再生・発展を目ざして―」を伺いました。1時間ほどのお話でしたが、たいへん中味の濃い内容でした。今回のブログ記事では特に印象深かった言葉を中心にまとめさせていただきます。

宮里さんの講演資料の冒頭に「JR東労組の大量集団脱退(2018,組合員約3万人が脱退)の背景に何かあったのか。その意味するものは何か」と掲げられていました。このブログでも昨年4月「JR東労組の組合員が大量脱退」という記事を投稿しています。オープンショップ制の労働組合にとって他人事にはできない憂慮すべき事態だと見ていたため、その後、『暴君』という書籍も購入していました。

その書籍を読み、複雑な経緯や様々な事情が絡み合った事態だったことを垣間見ていました。宮里さんも背景や理由を決め付けた言い方を控えながら脱退者から聞き取った声を紹介されていました。「これで組合費を払わなくて済む」「動員に行かなくて済む」という声が多かったとのことです。組合に加入していなくても労働条件は同じ、そうであれば組合を脱退したほうが得であり、機会をうかがっていたという声が目立っていたようです。

この話の後、2003年9月の連合評価委員会の最終報告に示された「警告」を宮里さんは紹介していました。「労働運動は量的危機とともに質的危機にもさらされている」「労働組合運動が国民の共感を呼ぶ運動になっているのか、という疑問を強く抱かざるを得ない。このままでは労働運動の社会的存在意義はますます希薄化する」などと記されていました。

このような危機感を募らせた17年ほど前の組織率は19.3%、残念ながら回復することはなく、17%を割り込むまで落ち込んでいます。最終報告は「労働組合が思い切った変身を遂げる必要がある」と結ばれていながら大胆に変わることができたのかどうか、宮里さんは現在進行形の課題だろうと語られています。

宮里さんは労使関係の法的な位置付けについて、建前上は労働者と使用者が対等な関係とされているが、実相は非対等な関係になりがちな現状を説明しています。交渉力や情報格差の下で使用者に優越的地位があり、「自由な意思に基づかない合意」になる恐れを指摘しています。使用者の優越的地位を背景とする労働条件の単独かつ一方的決定、権利侵害の可能性(パワハラ、セクハラなど)は様々な裁判事件につながっています。

対等な労使関係を実効あるものとするためには労働者一人ひとり労働組合に結集することが必要であり、そのために憲法28条で団結権や団体行動権が保障されています。だからこそ労働基本権保障の具体的な内容として、刑事や民事での免責、不当労働行為の禁止が労働組合法で明記されていることを宮里さんは強調されていました。

推定組織率のピークは1949年の55.8%で、高度成長期30%台、1980年代20%台、2003年以降10%台で推移しています。組織率低下の原因として、非正規労働者の増加(全労働者の約38%)と進まない組織化、労務管理の個別化や能力主義化のもとで団結しにくい状況、労働者の個人主義的志向の強まりなどを宮里さんはあげています。

今後の課題として、宮里さんは賃金・労働条件の維持・向上、男女差や非正規との格差の是正、安全な職場環境の確保、ハラメント防止などで「労働組合力」をアピールし、労働組合の存在感と組合加入の意義(団結することの意義)をいかに高めるかが重要であると提起されています。「労働者のセーフティネット」としての労働組合の再生・発展を願う宮里さんの思いが伝わる講演内容でした。

特に印象に残った内容をまとめたつもりでしたが、ここまでで充分な長さの記事になりつつあります。午後は第1分会「次代の担い手づくりと単組の組織強化」に参加し、そこでも他の組合の興味深い報告の数々に触れることができています。宮里さんの総論的な提起を受け、個々の組合や職場における組織強化に向けた具体的な取り組みを知り得る機会となっていました。

当初、分科会の内容も取り上げるつもりでしたが、そろそろ今回の記事は一区切り付けさせていただきます。分科会の内容は機会があれば改めて取り上げることも考えています。全体会の最後にはユナイテッド闘争団の方々から特別報告がありました。ユナイテッド航空から日本人客室乗務員が国籍や組合差別によって不当解雇され、解雇撤回と原職復帰を求めて裁判闘争を進めている方々の報告でした。

地裁では原告である闘争団側の敗訴判決となっていますが、高裁ではイーブンに戻しているとのことです。裁判長が闘争団に配慮し、大きな法廷を用意してくださったため、12月23日午後3時30分から東京高裁825法廷で開かれる第2回口頭弁論日に多くの皆さんが傍聴にいらして欲しいという要請もありました。このように労働組合の力を信じ、裁判闘争に立ち向かう動きがあります。

今回の組織集会で取り上げられた事例ではありませんが、最近の動きとして注目した報道がありました。ウーバーイーツの配達員の皆さんが労働組合を結成し、団体交渉を求めているという話題です。労働組合の存在意義が問われがちな中、労働組合の必要性を実証する動きだと言えます。さらに連合が支援していることも伝える機会とし、最後に、そのことを報じた新聞記事を掲げさせていただきます。

ウーバーイーツの配達員らがつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は5日午前、米ウーバー・テクノロジーズの日本法人(東京・渋谷)を訪れ、団体交渉を求める申し入れ書を手渡した。ウーバー側が一部地域で報酬体系を見直しており「一方的な切り下げ」として説明を求めている。

ウーバーイーツは11月29日、東京地区で報酬の体系を見直した。配達員の収入は、配送距離などに応じた基礎報酬に、配達回数などに応じたボーナス分で構成されている。ウーバー側はこのうち基礎報酬の単価を引き下げた。例えば、1キロメートルあたりの単価は150円から60円になった。

ウーバー側は、天引きする手数料を35%から10%に引き下げたほか、ボーナス分なども上積みしたため、「配達パートナーの皆さまの収入に影響を与えることは想定していない」と説明。料金体系の変更は「日本でビジネスを続けるために、12月から日本での事業体系を見直した」ためだとしている。

ウーバーイーツユニオンに参加する6人は、ウーバー日本法人で、団体交渉を求めたもののオフィスへの立ち入りを断られ、5日午後に会見を開いた。執行委員長の前葉富雄氏は「合理的な説明もない報酬引き下げに強く抗議し、違法な団交拒否を止めるよう求める」とした抗議声明を出した。ユニオンの弁護団は20年1~2月にも労使紛争の解決機関である労働委員会に申し立てる方針を示した。

また、同日の会見には連合の神津里季生会長も出席。ウーバーイーツの配達員について「労働者性をもった働き方で、本来団交拒否というのはありえないと思っている。連合としてもいろんな場で協力していきたい」と話した。

ユニオンはこれまでも補償制度の説明などを求め、団体交渉を申し入れていた。ウーバー側から「労組合法の上では『雇用する労働者』に該当しない」として、拒否されていた。【日本経済新聞2019年12月5日

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