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2019年9月 7日 (土)

吉本芸人と労働組合

水曜日の夕方、ターミナル駅の南北に分かれ、連合三多摩ブロック地域協議会と私が議長代行を務める地区協議会は労働基準月間に際した宣伝活動に取り組みました。72年前の1947年に労働基準法が施行されました。施行された9月を労働基準月間と定め、連合東京は都内各地で駅頭宣伝活動を進めています。呼びかけている趣旨は連合東京会長のメッセージ「働く者のための働き方改革に 、 まずは、労働基準遵守の環境づくりを!」のとおりです。

このような労働法制の重要性、もっと言えば働き方は様々な法律で規制されていることを発信しなければ、知らない方々が多数なのかも知れません。この労働基準月間のことを詳しく取り上げることも考えましたが、記事タイトルは「吉本芸人と労働組合」としています。前々回記事「合理的な説明を巡り、労使で対立」の中で次のように記していましたが、吉本芸人を巡る話題が気になる事例の一つだったからです。

ちなみに当ブログを始めた頃の記事に「なぜ、労使対等なのか?」というものがあります。今回、労働条件の問題は労使対等な立場で協議し、合意に至らなければ一方的に実施しないという原則を守っています。当たり前なこととして大切な関係性ですが、最近、いろいろ気になる事例が目についています。機会があれば時事の話題から労働組合の役割等について取り上げてみるつもりです。

実は吉本芸人の闇営業問題や社長らとの軋轢がメディアから伝わり始めた頃、同じ職場の組合員から「吉本の話をブログで取り上げてみたらどうですか」と声をかけられました。吉本興業にも労働組合があれば、このような問題も起こらなかったのではないかという問いかけでした。それまで吉本芸人と労働組合を結び付けて考えていなかったため、 「なるほど」と思う指摘に感謝していました。

数日後、地元の社会福祉協議会職員労組の定期大会に出席した際、自治労都本部の副委員長が来賓挨拶の中で吉本芸人の問題を同様な趣旨で取り上げていました。プロ野球選手も労働組合を結成していますので、現実味を帯びた問題として可能性は充分考えられます。さらにメディアでも吉本芸人と労働組合を結び付けた記事を掲げるようになっていました。

そのため、前々回記事に書き残したとおり当ブログでも機会を見て取り上げてみようと考え始めていました。様々な情報を提供する場の一つとして、これまで興味深いメディア記事を頻繁に紹介してきています。今回、朝日新聞の『吉本芸人の問題「労組があれば」労働法専門の弁護士に聞く』という記事が興味深かったところですが、全文の転載は難しかったため、次の記事を紹介させていただきます。

雨上がり決死隊の宮迫博之さんら吉本興業所属の芸人が、振り込め詐欺グループなどの集まりに出て金銭を受け取った問題は、「芸人の働き方」が抱える不透明さも浮かび上がらせた。労働法が専門の佐々木亮弁護士は「芸人も労働組合を作るべきだ」と訴える。お笑い芸人による闇営業問題が、会社のあり方をめぐって芸人vs経営陣の抗争に舞台を移している。

そんな中、当事者である吉本興業は一日も早く事態を収拾し、クリーンな企業であることをアピールしたいところ。そのために水面下で進むのが芸人労働組合の設立だ。そして生放送で経営陣にかみついた加藤浩次(50)にも白羽の矢が立ちそうだ。「今回の騒動は、吉本の経営体制にまで話が及んでいることは、実はかなり打撃です。

吉本は2020年の東京五輪、2025年の大阪万博に向けて、官庁と一体となった事業に手を伸ばしている。ここに影響を及ぼしかねない事態につながるからです」と芸能文化評論家の肥留間正明氏は指摘する。今年4月、吉本はNTTグループと組み、教育関連コンテンツの配信を始めた。ここには官民ファンド「クールジャパン機構」が最大で100億円を段階的に出資する。

これを足がかりに教育分野に本格参入するプランもあった。「しかしテーマが教育関連のコンテンツだけに大幅な見直しも検討されているそうです」と肥留間氏。さらにクールジャパンをめぐって、吉本興業はアジア各国でエンタメ事業を展開しており、ここでも中央省庁と協業する事業に多く絡んでいる。「国がらみの仕事はよりコンプライアンス順守は厳しくなる。今回の件で先行きに赤信号が灯り始めている。

吉本はクールジャパン機構にも役員を送り込んでおりクリーンにならざるを得ないのです」と肥留間氏は続ける。そこで水面下で動きが進むのが芸人労働組合の設立だ。「たむらけんじ(46)がイベントで『僕らあたりが声を上げてつくったほうがいいのかな』と発言していましたが、実現の可能性は高い」と吉本の事情に詳しい演芸関係者。大崎洋会長(65)は芸人との専属契約について書面を交わしていないことについては「口頭の契約を変えない」との姿勢を示している。

「本来は6000人とされる芸人全員と契約書を結ぶべきです。しかし補償などを考慮すると契約を結んでもらえず切り捨てられる芸人が多数出かねない。むしろ待遇改善を進めるためにも労働組合を認めざるを得なくなるでしょう」と先の演芸関係者。そこで先頭に立つのが加藤というわけだ。「出過ぎた発言と眉をひそめる向きもありますが、大崎会長に直談判する行動力や交渉力が注目されています。後輩からの人望もあり、東の委員長に加藤、西にたむらという線が浮かんでいるそうです」とこの演芸関係者。【日刊ゲンダイ2019年7月26日

少し論点が拡散しているため、今回の主題にふさわしいのかどうか指摘を受けてしまうかも知れません。それでも吉本芸人の皆さんが労働組合を結成する可能性を紹介する記事であり、参考までに全文を掲げさせていただきました。いずれにしても労働基準法をはじめ、最低賃金制度や働き方改革関連法など「労働者のため」を主眼とした様々な労働法制が存在しています。

なぜ、労働法制が整えられてきたのか、このブログを開設した頃の記事「なぜ、労使対等なのか?」の中で下記のように綴っています。今回記事の要点となる説明につながる箇所を抜粋して紹介させていただきます。ちなみに当該の記事を懐かしく読み返しましたが、全体的に簡潔な内容であり、水曜日に投稿しています。現在のスタイルとは大きく違っていることを感慨深く思い出しています。

かなり昔、授業で使った有斐閣選書の「労働法を学ぶ」を引っ張り出し、必要な頁をおさらいしてみました。産業革命を経て工場制生産制度が確立すると使用者は多数の労働者を同時に雇用することになりました。使用者は経済的に優位な立場ですので企業にとって都合の良い条件を示し、労働者は受諾するか拒否するかの単純な形での労働契約を強いられました。そのため、低賃金と長時間労働の悲惨な労働者階級が出現することとなりました。

やがて忍耐の限度を超えた労働者は、一揆的な暴動やストライキに立ち上がり、団結することによって初めて使用者と対等な立場で話し合えることを知っていきました。使用者側も不正常な争議状態が続くより、労働者側の要求を受け入れ、しっかり働いてもらった方が得策だと考えるようになりました。また、国家としても国民の多数を占める労働者が豊かにならなければ、社会や経済の健全な発展ができないことに気付きました。

それら歴史的な経緯の中で、団結権など様々な労働法制が整備されてきました。したがって現在、労働条件に関する事項の変更は労使合意が前提だったり、労使関係では労使対等であるなどの原則が法的な面から確立しています。

つまり使用者と労働者それぞれがウインウインとなることを目的に労働法制は整えられてきたと言えます。また、かなり前に「労働ダンピング」という記事も投稿していました。上記のような歴史的な経緯がある中、労働が商品のように扱われながら買い叩かれ、労働力のダンピングが進んでいる現況を問題提起した内容です。

ILOのフィラデルフィア宣言で「労働は商品ではない」という原則を掲げています。労働は商品のように生産や在庫の調整ができず、市場原理にさらされた時、商品以上に値崩れしやすいからです。また、雇用や労働条件の劣化は貧困と暴力の蔓延を招き、経済社会が衰退していくことを国際社会は認識してきました。

上記も当該記事の中の一文です。どうしても使用者は利益を上げることに注力するため、人件費を抑え、労働者を効率よく働かせたいと考えます。使用者に雇用されているという関係で見れば労働者の立場は弱く、一人で経営者や管理職に対して物申すことも難しいものがあります。しかし、労働者一人ひとりの力は弱くても、労働組合を結成することで対等な立場で交渉の場につけます。

このような背景があることや労働法制そのものを充分理解していない使用者も増えているようです。同じように多くの労働者が労働法制を把握しないまま働かされている現況ではないでしょうか。そのため、連合をはじめ、労働組合側は駅頭等で宣伝活動に取り組み、このような労働法制の意義や大切さを訴えています。

今回の記事で吉本芸人の話を取り上げました。同じ頃、佐野サービスエリアのストライキについても報道されていました。この話題も「吉本芸人と労働組合」の論点につながるため、関連したサイトの内容をそのまま紹介することも考えました。ストライキを決行した当事者の声と法的な面を解説した2点の記事でしたが、それぞれ長い内容だったためリンクだけはらせていただきます。

「なぜ私は佐野SAストライキを始めたのか」渦中の“解雇部長”が真相を告発』と『東北道上り線佐野SA「スト」を報じるメディアに抱いた違和感』です。興味を持たれた方は、ぜひ、ご参照ください。

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