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2019年8月24日 (土)

合理的な説明を巡り、労使で対立

少し前の記事「2019年夏の市長選」でお伝えしたとおり私どもの市の首長選挙が明日告示され、9月1日に投票日を迎えます。私たち職員にとって非常に重要な市長選に関しては前回までと同様に公開質問書に取り組みました。両候補から質問書の回答を得られ、組合員の皆さんに職場回覧しています。

その時の記事の中で、会計年度任用職員制度の課題が深刻な局面を迎えていることもお伝えし、詳細は改めて当ブログの新規記事で取り上げることを予告していました。組合の主張に沿った労使合意を得られた後、このブログで取り上げられれば望ましいことだと考えていました。しかしながら現時点までに朗報となる内容を綴れる段階には至っていません。

他団体の非常勤職員との均衡に固執する市当局に対し、公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求める組合の主張はぶつかり合っています。休暇制度等を都に準拠し、これまで有給だった病休の無給化、公募によらない再度の任用の回数制限、月収を軒並み1万円ほど下げる提案が示され、組合は猛反発しています。

後ほど詳述しますが、「合理的な説明」という解釈を巡り、真っ向から労使で対立しています。9月議会での条例化を市当局はめざしていましたが、労使の主張に隔たりは大きく、現時点までに合意には至らず、9月議会での条例化は見送ることになりました。今後、12月議会に向け、引き続き精力的に労使協議していくことを確認しています。

これまで当ブログでは2年前に「会計年度任用職員」、今年3月に「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」、6月に「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」という記事を投稿してきています。改めて経緯や労使協議における論点を書き進めてみます。

地方自治法と地方公務員法が一部改正され、来年4月から会計年度任用職員制度の導入が決まっているため、各自治体での条例化が求められています。同一労働同一賃金の理念のもとの制度化だったはずですが、財源の問題をはじめ、国や都に合わせなければならないという動きが目立ち始め、多くの自治体で労使協議が難航しています。

そのため、各組合は7月に自治労都本部統一要求書を提出し、労使協議を促進しています。7月16日に文書回答が示されましたが、3月15日の団体交渉で確認した内容から大きく後退するものでした。翌17日に市当局と団体交渉を開き、3月までの交渉の積み重ねをないがしろにし、休暇制度など現行の待遇を後退させる内容に対し、組合は強く抗議しました。

市当局側の説明として、3月に示した回答は現行の年収額で移行する場合、他の待遇もそのままとする考え方であり、期末手当2.6月を支給する場合は全体的な待遇を都準拠にしなければならないというものです。さらに他市に比べて現行の水準が高いという理由から月収を軒並み1万円ほど引き下げる案を示し、組合側の期末手当分の純増要求とは隔たりの大きい回答です。

組合は法改正時の国会附帯決議が公務における同一労働同一賃金に重点を置いた対応を求めている点を強く訴えています。国会における附帯決議とは、その法律の運用や将来の立法による改善についての希望などを表明するものです。法的な拘束力を有しませんが、政府として尊重することが求められ、無視はできません。

地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府は、次の事項について十分配慮すべきである。

  1. 会計年度任用職員及び臨時的任用職員について、地方公共団体に対して発出する通知等により再度の任用が可能である旨を明示すること
  2. 人材確保及び雇用の安定を図る観点から、公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心としていることに鑑み、会計年度任用職員についても、その趣旨に沿った任用の在り方の検討を引き続き行うこと。
  3. 現行の臨時的任用職員及び非常勤職員から会計年度任用職員への移行に当たっては、不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保が行われるよう、地方公共団体に対して適切な助言を行うとともに、厳しい地方財政事情を踏まえつつ、制度改正により必要となる財源の十分な確保に努めること。併せて、各地方公共団体において、育児休業等に係る条例の整備のほか、休暇制度の整備が確実に行われるよう、地方公共団体に対して適切な助言を行うこと。
  4. 本法施行後、施行の状況について調査・検討を行い、その結果を踏まえて必要な措置を講ずること。その際、民間部門における同一労働同一賃金の議論の動向を注視しつつ、短時間勤務の会計年度任用職員に係る給付の在り方や臨時的任用職員及び非常勤職員に係る公務における同一労働同一賃金の在り方に重点を置いた対応に努めること。

以上が法改正時に決議された内容です。この附帯決議を承知していながらも、市当局は総務省から示されている「事務処理マニュアル」に基づき他団体の非常勤職員との均衡の必要性を強調しています。今回の法改正が大幅な待遇改善の機会となることを期待していた嘱託組合員の皆さんの思いを踏みにじる考え方だと言わざるを得ません。

そもそも総務省の「事務処理マニュアル」は非常勤職員の待遇の全体的な底上げをはかる目的で作成され、標準以上だった自治体職員の現行の待遇を切り下げる意図が総務省にはないという話を自治労本部の担当役員から伺っています。このような情報を組合から伝えていますが、マニュアル等と異なる取扱いとするのであれば合理的な説明が必要という指摘を東京都から受けていると市当局は答えています。

しかし、働き方改革関連法では正規と非正規の待遇に合理的な説明がつかなければ格差は認められません。格差に対する「合理的な説明」という言葉が、まったく違った意味合いで使われていることを非常に腹立たしく思っています。公務員連絡会との交渉の中で、人事院の審議官も非常勤職員の休暇制度に関して「合理的な説明のつかない差異がある場合については是正するという立場である」と答えています。

私どもの組合は休暇制度や雇止めの問題など現在の待遇は切り下げないことを大前提とし、年間期末手当2.6月支給の獲得をめざしています。この課題では市長とも直接話し、精力的に労使協議を重ねる中で組合の主張を受けとめる考え方が徐々に市当局から示され始めています。しかし、前述したとおり労使合意に至るまでには歩み寄っていないため、9月議会での条例化は見送ることになりました。

今後、12月議会での条例化に向け、法改正が待遇改善の好機となることを期待していた嘱託組合員の皆さんの切実な思いを背にし、さらに労使協議を積み重ねながら納得できる決着点を全力でめざしていきます。冒頭でも触れたとおり今回の課題では労使の信頼関係を問わざるを得ない局面が生じていました。交渉の積み重ねをないがしろにしたかどうかという問題でした。

3月までの労使交渉の結果、組合としては現行の待遇維持を確認した上で、月収と期末手当を合わせた年収額の水準に関しては労使の主張に大きな隔たりがあるという認識でした。それに対し、市当局は「期末手当2.6月を支給する場合は全体的な待遇を都準拠にしなければならない」という提案で一貫していたと説明しています。

このような説明に納得し、組合側の理解が不充分だったことを認め、労使協議での確認事項に対する詰め方が甘かったと反省している訳ではありません。しかし、これまでと同様、労使対等な立場で誠意をもって引き続き交渉に臨んでいきたいという市当局側の姿勢は7月17日の団体交渉を通して確認できました。

総務省から直接情報を得られないため、東京都からの説明を第一に考えなければならない市当局側の立場も理解しています。市当局の格差に関する「合理的な説明」の言い分も納得している訳ではありませんが、そのような考え方に至っている交渉相手の置かれた立場には理解を示さなければなりません。お互いの主張の正当性のみを強調し、感情的な対立を激化させてしまうようでは建設的な議論から程遠くなります。

その結果、組合員の皆さんの思いを形にできないようであれば組合の役割としては失格だと言えます。そもそも立場が異なるため、考え方が相違し、その溝を埋めるための話し合いが団体交渉です。労使で確認した内容に対する認識の齟齬は重大な問題でしたが、引き続き労使協議を尽くして合意をめざすという信頼関係のほうに重きを置いています。

また、直接相対せず、伝聞として間接的に伝わってくる情報に対し、微妙なニュアンスの理解の仕方一つで疑心暗鬼に陥る場合もあります。そのような意味合いからも複数対複数で臨む団体交渉の意義深さがあるものと考えています。強い口調で市当局側の姿勢を問いただす組合役員もいますが、そのような憤りの声を副市長らが直接受けとめる場面も大事なことだろうと思っています。

ちなみに当ブログを始めた頃の記事に「なぜ、労使対等なのか?」というものがあります。今回、労働条件の問題は労使対等な立場で協議し、合意に至らなければ一方的に実施しないという原則を守っています。当たり前なこととして大切な関係性ですが、最近、いろいろ気になる事例が目についています。機会があれば時事の話題から労働組合の役割等について取り上げてみるつもりです。

最後に、数日前、私どもの市の管理職の方から時事通信社の「非常勤の処遇改善、どう反映?」という見出しが付けられた記事のコピーをお寄せいただきました。ネット上では見つからないため、概要に絞って紹介します。会計年度任用職員制度への対応が総務省自治財政局の担当している2020年度地方財政計画の焦点の一つとなっています。財源の確保に向け、頭を悩まし、年末の財務省との折衝に向けて精査や分析を重ねていることが伝えられていました。

その上で、記事の最後は下記のような内容で結ばれています。総務省幹部の言葉は頼もしいものであり、法改正に基づき地方自治体に生じさせる財政負担であるため、まっとうな考え方だと言えます。さらに付け加えれば、このような課題において政治の示す方向性を忖度することは、私たち公務員に課せられている責務であるようにも受けとめています。

正規と非正規の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」の実現は、安倍政権が進める働き方改革の柱の一つ。行政改革の一環として人件費抑制の流れが続く中、財源確保に不安を抱く自治体もあるようだが、他局の幹部は「ここでけちなことをすると働き方改革にもとる」と強調していた。(2019年8月13日/官庁速報)

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コメント

「他団体との均衡」とは、東京都&周辺自治体と標準賃金で均衡を保つとのことなんですかね。均衡とは、合理的な理由があれば格差を認めることで、そこが均等と微妙なチガイだと思います。そうだとすれば、天下の東京都を説得できる明確な理由は難しいでしょう。ウルトラⅭは市長の政治判断のみです。

交渉期限が定まってるので、組合としては条件闘争に入らざるを得ないです。東京都は霞が関と頻繁にやり取りする自治体だから、横並びは総務省の意向でしょう。

投稿: yamamoto | 2019年8月25日 (日) 08時53分

yamamotoさん、コメントありがとうございました。

嘱託組合員の皆さんの思いとして、法的な位置付けが整理された結果、待遇が後退するような不合理さは到底容認できません。たいへん厳しい局面かも知れませんが、今回の記事に綴ったとおり12月議会での条例化に向け、納得できる決着点を全力でめざしていきます。

投稿: OTSU | 2019年8月25日 (日) 21時13分

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