会計年度任用職員制度、労使協議の現況
雨が降り続く土曜、三多摩平和運動センターが呼びかけた横田基地包囲行進に参加しました。CV22オスプレイの横田基地配備に反対した行動で、2コースに分かれたデモ行進がありました。この問題では以前「横田基地にオスプレイ」や「突然、横田基地にオスプレイ」という記事を投稿し、私自身の問題意識を綴っていました。
前回の記事は「老後に2000万円必要」であり、時事の話題を取り上げていました。いつも説明させていただいていますが、このブログで取り上げる内容は政治に関わる題材が多くなっています。一方で、実際の日常的な組合活動は労働条件に関する職場課題が中心となっています。ブログで取り上げる題材と日常活動の割合は正比例していません。
横田基地包囲行進も組合ニュースを通し、組合員の皆さんの参加を呼びかけています。それでも参加するかどうかは組合員個々の判断に委ねているため、主催者側から割り当られた動員数に及ばない現状です。主催されている皆さんに対しては非常に心苦しいところですが、背伸びせず、持続可能な組合活動のためにメリハリを付けている点だと言えます。
現在進行形の職場課題の中では会計年度任用職員制度の確立に向けた労使協議が大詰めの局面を迎えています。以前の記事「会計年度任用職員」で詳述していましたが、地方公務員法及び地方自治法の一部が大幅に改正され、一般職の非常勤職員である会計年度任用職員の規定が来年度から実施に移されます。
新たな制度の実施に向け、各自治体での条例化が今年度中に必要とされています。今年3月までの私どもの自治体における労使協議の状況は「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」という記事の中で報告しています。組合は会計年度任用職員制度の導入を「追い風」とし、非常勤職員の労働条件を大幅に改善する機会につなげられるよう労使協議を進めています。
しかし、今回のブログ記事でお伝えしますが、たいへんな事態に陥りつつあります。次のような点についても、いつも説明してきていますが、組合ニュースは組合員一人ひとりに配られ、配布後の取扱いは自由です。このようなオープンな配布の仕方ですので、組合ニュースが市議会議員や住民の皆さんの目に留まることも想定しています。要するに誰に見られても困るような内容は掲げていません。
ただ交渉結果の内容や組合の考え方に対しては人によって評価が分かれ、批判の対象になる場合があるのかも知れません。それでもコソコソ隠すような労使交渉や主張は行なっていないため、「内部資料」「取扱注意」のような但し書きは一切ありません。
仮に圧倒多数の方々から問題視されるような交渉結果や組合の主張だった場合、何か改める要素があることを察知する機会にすべきだろうとも考えています。そのような意味合いからも当ブログの記事の中で、組合員の皆さんに伝えているニュースの内容をそのまま掲げる時があります。今回の記事はその機会とし、最近の組合ニュースに掲げた内容をそのまま紹介させていただきます。
1 これまでの労使協議状況について
① 人員確保交渉や春闘交渉を通し、「本市の人事給与制度は東京都準拠ということで対市民(対議会)等にも説明してきており、これを基本とする考えには変わりがない」としながらも「ただし、従来から労使で確認して運用してきたことを、軽視したいとする意向があるわけではない」という私どもの市当局の基本的な考え方を確認しています。
② その上で現在の嘱託職員を月給制の会計年度任用職員、現在の臨時職員を時給制の会計年度任用職員とし、それぞれ期末手当の支給を検討しています。しかし、現行の嘱託職員の報酬水準が他団体に比べて高いことや財源の問題に触れ、大幅な改善に向けた姿勢が極めて薄い不本意な考え方にとどまっています。それでも3月15日夜の団体交渉では次の点を確認していました。
- 現在雇用されている嘱託職員については、希望者全員の雇用継続を基本とする。来年度中に人事評価制度を導入し、最低評価ではない限り、会計年度任用職員として採用する。
- 基本的に従前通り65歳まで雇用し、年収額や休暇制度など現在の嘱託職員の勤務条件は後退させない。
③ 上記2点の確認を出発点とし、総務省から示されている「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に基づき、給料表の導入や年間2.6月分の一時金支給の実現などを求め、協議を重ねています。市当局は嘱託職員の月額報酬と期末手当の総支給額の年収ベースが現在の水準を下回らないようにしたいと述べています。それに対し、組合側は月収が現在よりも下がるような見直しは認めらないことを訴えてきています。
④ 5月20日に新たな市当局案として、(1)フルタイムの会計年度任用職員は導入しない、(2)年収ベースで引き上げても一時金分を純増としない、(3)一職一報酬制として昇給制度は作らない、(4)一時金支給月数はR2年度1.3月分R3年度2.6月分とする、(5)時給制職員のうち社会保険適用者に一時金を支給する、(6)休暇制度は原則都準拠とする、このような要旨の考え方が示されています。
⑤ 上記(2)は月額報酬を引き下げる案であり、東京都は設けない一時金支給月数の経過措置が提案されるなど、現時点での労使の考え方には大きな開きがあります。また、休暇制度の原則都準拠という新たな案は現行より後退する内容が見受けられるため、到底受け入れられません。
⑥ 市当局からは9月議会での条例化に向け、5月末までの労使合意を求められていましたが、到底受け入れられない状況のまま6月に入ってからも労使協議は継続しています。引き続き組合は働き方改革の柱の一つである「同一労働同一賃金」の理念のもと納得できる決着点をめざし、最終盤の労使協議に力を注いでいます。
2 基本合意に向けて
① 国や都に合わせなければならないという動きが目立ち始め、多くの自治体で労使協議が難航しています。現時点までに三多摩で労使合意に至った自治体も5市程度にとどまっています。ちなみに自治労都本部が示している獲得目標は次の3点です。
- 現在在籍している職員の雇用継続と公募によらない再度の任用(連続4回以上)
- 現行賃金水準の確保(期末手当は含まず)
- 年間期末手当2.6月の確保
② 当市の場合、春闘期の交渉では上記1.をはじめ、他自治体よりも整えられていた休暇制度等は後退させない点を確認できていました。そのため、都本部の目標に照らせば現行賃金水準(月額報酬)を確保した上、年間期末手当2.6月を獲得できるかどうかでした。
③ 都本部の目標以外にフルタイム再任用の導入や昇給制度の実現もめざしていました。しかし、現時点までの回答は上記1④のような理不尽な内容にとどまっています。特に休暇制度を都準拠とした場合、当市では有給だった病休や産休などが無給になる恐れもあります。そもそも一度正式に回答した内容を短期間で改めるような考えを示すこと自体、労使の信頼関係を損ねるものだと言わざるを得ません。
④ 再度の任用(雇止めの問題)に関しても私どもの市は突出しているため、国や都から是正を求められているような話まで事務折衝では示されています。公募によらない65歳までの雇用保障の確認を覆すような考え方です。
⑤ 団体交渉を開いた上での正式な回答ではありませんが、前述したような労使の信頼関係の問題をはじめ、たいへん憤りを覚える局面となっています。他団体の非常勤職員との均衡ではなく、あくまでも正規職員との「同一労働同一賃金」の理念のもとに判断すべきであると組合側は強く申し入れています。
⑥ 最終的な決着までには多岐にわたる協議すべき事項が残されています。この機会に必要に応じて個々の職場の勤務時間や業務内容も検証すべきものと考えています。基本合意する際も、そのような課題が残されていることを労使で共通認識していかなければなりません。
⑦ 以上のような経緯や対応方針を踏まえた上、条例制定の作業に入るための基本合意に向けては次のように考えています。休暇制度や雇止めの問題など現在の待遇は切り下げないことを大前提とし、年間期末手当2.6月支給の獲得を最低限の到達点として考えています。
⑧ 来年度以降、会計年度任用職員制度が始まってからも労使協議は続け、昇給制度の導入やフルタイム再任用の必要性などを組合は訴えていきます。
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組合ニュースに掲げた上記内容の資料をもとに当該の嘱託組合員の皆さんとの職場懇談会を重ねています。それぞれ責任の重い仕事を懸命に担っていながら、それに見合った待遇ではないという訴えを改めて伺う機会となっています。来年度からの会計年度任用職員制度の導入によって切実な要求が一つでも前進することを期待しながら、かえって後退するような話も出ていることへの驚きと憤りの声が上がっています。
このような声を受けとめ、組合は法案成立時の国会の附帯決議に「公務における同一労働同一賃金の在り方に重点に置いた対応に努めること」と示されているとおり当初に描いた理念に沿った納得できる決着点をめざし、最終盤の労使協議に力を注いでいきます。市議会開会中は設定しづらかった団体交渉を頻繁に開き、何としても現行の待遇を切り下げず、期末手当支給等の実現をめざしていく決意を固めています。
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