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2019年6月29日 (土)

自治労の組織内候補は岸まきこさん

私どもの組合の地元選挙区の衆院議員である長島昭久さんが自民党に入党することになりました。これまで当ブログで長島さんとの関係などを数多く取り上げてきています。以前の記事「もう少し集団的自衛権の話」「憲法の平和主義と安保法制」に対しては長島さん自身からコメントもお寄せいただいていました。

一昨年の記事「長島昭久さんが民進党を離党」「長島昭久さんが民進党を離党 Part2」で伝えているとおりの経緯があり、民進党を離党された以降、私どもの組合と長島さんとの推薦関係はありません。それでも時々、お会いする機会があり、以前と同じように気さくな会話を交わしていました。

民進党を離党した時よりも衝撃的であり、非自民の長島さんを応援してきた方々を裏切る決断だったと言わざるを得ません。北朝鮮を巡る緊迫した情勢の中で長島さんは「圧力は対話を引き出すためのもの。圧力一辺倒は単なる挑発です」と語っていました。安全保障に対する考え方も含め、現政権との対抗軸を打ち出せていたはずでしたが、その長島さんの自民党入りは非常に残念なことです。

残念という一言では語れない問題なのかも知れませんが、本題に入らせていただきます。前回記事「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」の冒頭に「実際の日常的な組合活動は労働条件に関する職場課題が中心となっています」と記していました。今、力を注いでいる職場課題が前回記事で取り上げたとおり会計年度任用職員制度をどのように確立できるかどうかです。

その際、私どもの自治体における労使交渉を中心に組合要求の前進をめざしています。ただ今回の職場課題に限りませんが、個々の組合の頑張りだけでは到底解決できない問題が多いことも確かです。特に法律に定められた問題はその枠内での対応が迫られてしまいます。

「組合員のため」を主目的とした組合活動も、職場内の閉じた活動だけでは結果としてその目的が達成できない恐れがあります。そのため、一企業や各自治体内の交渉だけでは到底解決できない社会的・政治的な問題に対し、多くの組合が集まって政府などに直接声を上げていくことも重要な組合運動の領域となっています。

このような経緯のもと私どもの組合は自治労や連合の一員として産別や連合運動に関わってきています。そのような運動の中で、政治的な影響力を発揮していくためには選挙の取り組みが最も重視されていくことになります。それぞれの組合が所定の手続きを経て政治方針を決めているはずですが、個々の政党や候補者に対する評価は組合員一人ひとり様々だろうと思っています。

私どもの組合も例外ではありません。具体的な選挙の取り組み方針は状況によって組合離れの要因になりかねません。そのため、選挙に関わる方針は組合員の皆さんに対し、その重要性などを丁寧に訴え続けることによってご理解やご協力を求めていくものだと考えています。

衆参ダブル選挙は見送られ、参院選挙が単独で7月21日投開票の日程で行なわれます。今回の記事タイトルに掲げたとおり自治労は岸まきこさんを組織内候補として擁立しています。候補者名の記載が重視される比例代表区の新人候補として、岸さんは立憲民主党から立候補します。私どもの組合は昨年の定期大会で推薦を確認し、自治労の代表を国会に送り続けることの重要性などを組合員の皆さんに訴えています。

以前の記事「再び、地公法第36条と政治活動」に記しているとおり違法性が問われかねない活動には細心の注意を払っています。そのことを大前提として、等身大の組合活動を発信するツールである当ブログでは参院選挙の直前、これまで「自治労の思い、あいはらくみこさんへ」「参院選は、えさきたかしさん」「参院選公示前、今、思うこと」「江崎孝さんを再び国会へ」という記事を投稿してきました。

インターネット選挙解禁となっても、このブログでは選挙期間中は候補者の固有名詞を控えるなど一定の制約を課しています。そのため、7月4日の公示を控え、岸まきこさんという固有名詞を示したブログ記事は今回が最初で最後となる予定です。その上で、岸さんを組合が推薦している理由を組合員の皆さんに訴えた直近の組合ニュースの内容を紹介させていただきます。

会計年度任用職員制度、自治労の影響力発揮へ 

組織内候補の岸まきこさんを国会に。

官製ワーキングプアという言葉が取り沙汰されるほど自治体職場での正規と非常勤職員との待遇格差が問題となっています。このような問題を解決するため、自治労組織内の参院議員で、ご自身も札幌市の非常勤職員だった相原久美子さんが先頭になって法整備に尽力されてきました。その一つの成果が来年度から導入される会計年度任用職員制度です。

自治労中央本部の役員も法案や国のマニュアル作成の過程で総務省の担当者らと交渉を重ねてきました。その結果、自治労の要望の多くが反映された制度改正につなげられたという説明を受けていました。

他団体の非常勤職員と均衡という理不尽さ

このような法改正の動きを受けた私どもの市での労使協議の経緯や現況は裏面(前回記事「会計年度任用職員制度、労使協議の現況」に掲載した資料)のとおりです。組合は正規職員との「同一労働同一賃金」の理念のもと嘱託組合員の待遇改善をはかる好機ととらえ、65歳までの雇用保障や休暇制度などは現行水準を維持することを大前提として、一時金支給等を求めています。

しかしながら最近、他団体の非常勤職員との均衡を重視する動きが目立ち始め、全国的に労使交渉が難航しています。来年度から非常勤職員の待遇が標準化されるため、先駆的な待遇を定めていた自治体に対しては「突出しないように」という国からの圧力が強まっています。そのため、場合によって現行の待遇よりも後退する恐れがあるという理不尽な局面を迎えています。

自治労運動の正念場に

自治労中央本部は改めて国レベルでの対策を進めていますが、当初に描いた制度が確立できるかどうか自治労運動の正念場だと言えます。特に7月の参院選挙は自治労の影響力を内外に示す試金石となります。相原さんの後継候補として、岸まきこさんを国会に送り出すことが非常に重要な取り組みとなっています。ぜひ、ご理解ご協力願います。 

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2019年6月22日 (土)

会計年度任用職員制度、労使協議の現況

雨が降り続く土曜、三多摩平和運動センターが呼びかけた横田基地包囲行進に参加しました。CV22オスプレイの横田基地配備に反対した行動で、2コースに分かれたデモ行進がありました。この問題では以前「横田基地にオスプレイ」や「突然、横田基地にオスプレイ」という記事を投稿し、私自身の問題意識を綴っていました。

前回の記事は「老後に2000万円必要」であり、時事の話題を取り上げていました。いつも説明させていただいていますが、このブログで取り上げる内容は政治に関わる題材が多くなっています。一方で、実際の日常的な組合活動は労働条件に関する職場課題が中心となっています。ブログで取り上げる題材と日常活動の割合は正比例していません。

横田基地包囲行進も組合ニュースを通し、組合員の皆さんの参加を呼びかけています。それでも参加するかどうかは組合員個々の判断に委ねているため、主催者側から割り当られた動員数に及ばない現状です。主催されている皆さんに対しては非常に心苦しいところですが、背伸びせず、持続可能な組合活動のためにメリハリを付けている点だと言えます。

現在進行形の職場課題の中では会計年度任用職員制度の確立に向けた労使協議が大詰めの局面を迎えています。以前の記事「会計年度任用職員」で詳述していましたが、地方公務員法及び地方自治法の一部が大幅に改正され、一般職の非常勤職員である会計年度任用職員の規定が来年度から実施に移されます。

新たな制度の実施に向け、各自治体での条例化が今年度中に必要とされています。今年3月までの私どもの自治体における労使協議の状況は「会計年度任用職員制度の労使協議を推進」という記事の中で報告しています。組合は会計年度任用職員制度の導入を「追い風」とし、非常勤職員の労働条件を大幅に改善する機会につなげられるよう労使協議を進めています。

しかし、今回のブログ記事でお伝えしますが、たいへんな事態に陥りつつあります。次のような点についても、いつも説明してきていますが、組合ニュースは組合員一人ひとりに配られ、配布後の取扱いは自由です。このようなオープンな配布の仕方ですので、組合ニュースが市議会議員や住民の皆さんの目に留まることも想定しています。要するに誰に見られても困るような内容は掲げていません。

ただ交渉結果の内容や組合の考え方に対しては人によって評価が分かれ、批判の対象になる場合があるのかも知れません。それでもコソコソ隠すような労使交渉や主張は行なっていないため、「内部資料」「取扱注意」のような但し書きは一切ありません。

仮に圧倒多数の方々から問題視されるような交渉結果や組合の主張だった場合、何か改める要素があることを察知する機会にすべきだろうとも考えています。そのような意味合いからも当ブログの記事の中で、組合員の皆さんに伝えているニュースの内容をそのまま掲げる時があります。今回の記事はその機会とし、最近の組合ニュースに掲げた内容をそのまま紹介させていただきます。

1 これまでの労使協議状況について

① 人員確保交渉や春闘交渉を通し、「本市の人事給与制度は東京都準拠ということで対市民(対議会)等にも説明してきており、これを基本とする考えには変わりがない」としながらも「ただし、従来から労使で確認して運用してきたことを、軽視したいとする意向があるわけではない」という私どもの市当局の基本的な考え方を確認しています。

② その上で現在の嘱託職員を月給制の会計年度任用職員、現在の臨時職員を時給制の会計年度任用職員とし、それぞれ期末手当の支給を検討しています。しかし、現行の嘱託職員の報酬水準が他団体に比べて高いことや財源の問題に触れ、大幅な改善に向けた姿勢が極めて薄い不本意な考え方にとどまっています。それでも3月15日夜の団体交渉では次の点を確認していました。

  • 現在雇用されている嘱託職員については、希望者全員の雇用継続を基本とする。来年度中に人事評価制度を導入し、最低評価ではない限り、会計年度任用職員として採用する。
  • 基本的に従前通り65歳まで雇用し、年収額や休暇制度など現在の嘱託職員の勤務条件は後退させない。

③ 上記2点の確認を出発点とし、総務省から示されている「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に基づき、給料表の導入や年間2.6月分の一時金支給の実現などを求め、協議を重ねています。市当局は嘱託職員の月額報酬と期末手当の総支給額の年収ベースが現在の水準を下回らないようにしたいと述べています。それに対し、組合側は月収が現在よりも下がるような見直しは認めらないことを訴えてきています。

④ 5月20日に新たな市当局案として、(1)フルタイムの会計年度任用職員は導入しない、(2)年収ベースで引き上げても一時金分を純増としない、(3)一職一報酬制として昇給制度は作らない、(4)一時金支給月数はR2年1.3月分R3年度2.6月分とする、(5)時給制職員のうち社会保険適用者に一時金を支給する、(6)休暇制度は原則都準拠とする、このような要旨の考え方が示されています。

⑤ 上記(2)は月額報酬を引き下げる案であり、東京都は設けない一時金支給月数の経過措置が提案されるなど、現時点での労使の考え方には大きな開きがあります。また、休暇制度の原則都準拠という新たな案は現行より後退する内容が見受けられるため、到底受け入れられません。

⑥ 市当局からは9月議会での条例化に向け、5月末までの労使合意を求められていましたが、到底受け入れられない状況のまま6月に入ってからも労使協議は継続しています。引き続き組合は働き方改革の柱の一つである「同一労働同一賃金」の理念のもと納得できる決着点をめざし、最終盤の労使協議に力を注いでいます。

2 基本合意に向けて

① 国や都に合わせなければならないという動きが目立ち始め、多くの自治体で労使協議が難航しています。現時点までに三多摩で労使合意に至った自治体も5市程度にとどまっています。ちなみに自治労都本部が示している獲得目標は次の3点です。

  1. 現在在籍している職員の雇用継続と公募によらない再度の任用(連続4回以上)
  2. 現行賃金水準の確保(期末手当は含まず)
  3. 年間期末手当2.6月の確保

② 当市の場合、春闘期の交渉では上記1.をはじめ、他自治体よりも整えられていた休暇制度等は後退させない点を確認できていました。そのため、都本部の目標に照らせば現行賃金水準(月額報酬)を確保した上、年間期末手当2.6月を獲得できるかどうかでした。

③ 都本部の目標以外にフルタイム再任用の導入や昇給制度の実現もめざしていました。しかし、現時点までの回答は上記1④のような理不尽な内容にとどまっています。特に休暇制度を都準拠とした場合、当市では有給だった病休や産休などが無給になる恐れもあります。そもそも一度正式に回答した内容を短期間で改めるような考えを示すこと自体、労使の信頼関係を損ねるものだと言わざるを得ません。

④ 再度の任用(雇止めの問題)に関しても私どもの市は突出しているため、国や都から是正を求められているような話まで事務折衝では示されています。公募によらない65歳までの雇用保障の確認を覆すような考え方です。

⑤ 団体交渉を開いた上での正式な回答ではありませんが、前述したような労使の信頼関係の問題をはじめ、たいへん憤りを覚える局面となっています。他団体の非常勤職員との均衡ではなく、あくまでも正規職員との「同一労働同一賃金」の理念のもとに判断すべきであると組合側は強く申し入れています。

⑥ 最終的な決着までには多岐にわたる協議すべき事項が残されています。この機会に必要に応じて個々の職場の勤務時間や業務内容も検証すべきものと考えています。基本合意する際も、そのような課題が残されていることを労使で共通認識していかなければなりません。

⑦ 以上のような経緯や対応方針を踏まえた上、条例制定の作業に入るための基本合意に向けては次のように考えています。休暇制度や雇止めの問題など現在の待遇は切り下げないことを大前提とし、年間期末手当2.6月支給の獲得を最低限の到達点として考えています

⑧ 来年度以降、会計年度任用職員制度が始まってからも労使協議は続け、昇給制度の導入やフルタイム再任用の必要性などを組合は訴えていきます。

         *            *

組合ニュースに掲げた上記内容の資料をもとに当該の嘱託組合員の皆さんとの職場懇談会を重ねています。それぞれ責任の重い仕事を懸命に担っていながら、それに見合った待遇ではないという訴えを改めて伺う機会となっています。来年度からの会計年度任用職員制度の導入によって切実な要求が一つでも前進することを期待しながら、かえって後退するような話も出ていることへの驚きと憤りの声が上がっています。

このような声を受けとめ、組合は法案成立時の国会の附帯決議に「公務における同一労働同一賃金の在り方に重点に置いた対応に努めること」と示されているとおり当初に描いた理念に沿った納得できる決着点をめざし、最終盤の労使協議に力を注いでいきます。市議会開会中は設定しづらかった団体交渉を頻繁に開き、何としても現行の待遇を切り下げず、期末手当支給等の実現をめざしていく決意を固めています。

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2019年6月15日 (土)

老後に2000万円必要

このブログの更新は週に1回と決めているため、取り上げたい時事の話題が重なる場合も少なくありません。安倍首相のイラク訪問も基本的な立場の違いから評価が大きく分かれているようです。前回取り上げた「関西生コンの問題」と同様、両極端な見方を紹介することの興味深さも感じていました。

しかし、最近取り沙汰されている話題の中では「老後に2000万円の資金が必要」と書き込んだ金融審議会の報告書の問題を最も注目していました。その中でも下記の新聞記事にあるとおり自らが諮問した審議会の報告書を麻生大臣が受け取らなかったことに対し、たいへん驚き、強い違和感を覚えていました。

麻生太郎副総理兼金融担当相は11日の閣議後記者会見で、夫婦の老後資金として「30年間で約2000万円が必要」とする試算を盛り込んだ金融庁の報告書について、「政府の政策スタンスと異なる」として受け取らない意向を示した。麻生氏は「公的年金制度が崩壊するかのように受け止められたが、高齢者の生活は多様で、年金で足りる人もいればそうでない人もいる。公的年金は老後の生活をある程度賄うことができるという政治スタンスは変わらない」と強調。試算について「誤解を招く」と指摘した。

報告書は金融庁の審議会の下に設置されたワーキンググループがまとめたもので、通常は審議会で了承され、担当相に報告される。報告書の受け取りを拒否するのは異例だ。また、自民党の二階俊博幹事長は11日午前、党本部で記者団に「撤回を含め、党として厳重に抗議している」と述べ、同庁に抗議したことを明らかにした。

二階氏は「2000万円の話が独り歩きしている。国民に誤解を与えるだけではなく、不安を招いており、大変憂慮している」と強調。「(試算は)年金制度とは別問題で、将来にわたり、持続可能な年金制度を構築している」と述べた。試算を巡っては、野党が夏の参院選に向けて争点化しようとしており、10日の参院決算委員会でも追及。自民党内では、2007年参院選で「消えた年金問題」が大敗の一因となったことから危機感が高まっており、異例の抗議に踏み切った。【毎日新聞2019年6月11日

麻生太郎副総理兼金融担当相は11日の閣議後記者会見で、夫婦の老後資金として「30年間で約2000万円が必要」とする試算を盛り込んだ金融庁の報告書について、「政府の政策スタンスと異なる」として受け取らない意向を示した。
麻生太郎副総理兼金融担当相は11日の閣議後記者会見で、夫婦の老後資金として「30年間で約2000万円が必要」とする試算を盛り込んだ金融庁の報告書について、「政府の政策スタンスと異なる」として受け取らない意向を示した。
麻生太郎副総理兼金融担当相は11日の閣議後記者会見で、夫婦の老後資金として「30年間で約2000万円が必要」とする試算を盛り込んだ金融庁の報告書について、「政府の政策スタンスと異なる」として受け取らない意向を示した。

文科省の事務次官だった前川喜平さんがご自身のツイッターで「まっとうに仕事をして、まっとうな報告書をまとめた金融庁の役人が、にわかに悪者にされている。政府内にも与党内にも事前説明はしてあったはずだ」と指摘しています。まったくそのとおりだろうと思っています。特に審議会のメンバーだった方から憤りの声が上がるものと見ていましたが、意外にも麻生大臣を強烈に批判するような話を耳にしていません。

そもそも報告書の内容が明らかになった直後、麻生大臣はそれほど否定的にとらえていなかったはずです。それが日増しに批判する声が高まり、与党内からも参院選挙への影響を懸念する動きが強まり、報告書自体をなかったものとする異例な経緯をたどっていました。とても信じられない非常識な対応でした。

私自身のブックマークしているサイトとして、多面的な情報や考え方に触れられるBLOGOSがあり、ほぼ毎日訪問しています。そのサイトの興味深さは掲げられている数々のブログ記事に対し、独自なコメントを受け付ける掲示板を備えていることです。幅広い立場の筆者の主張と合わせ、コメント欄に目を通していくと同じ事例に接していても本当に一人ひとり様々な見方があることを実感する機会となっています。

今回の問題でも、いくつかのブログが掲げられていました。その中で『不都合な真実から目をそらすな』という記事が目に留まっていました。衆院議員の青山雅幸さんのブログ記事ですが、基本的に共感できる内容でした。さらに私自身の問題意識につながる箇所もあるため、当該記事の全文をそのまま転載させていただきます。

弁護士の経験で,事実を直視できない方を何人も見てきた。債務が膨れ上がり,到底返済の見込もないのに破産などの法的処理に前向きになれず,自分や家族を苦しめ続けるのだ。「保証人に迷惑を掛けられない」という方も多く,心情的に忍びないこともあったが,多くは無理なローンで最初から維持できないことはわかっているようなマイホームにこだわり「家を手放せない」と言うパターンであった。

はては「ローンで買った新車をどうしても諦められない」という方もいた。中には悪質な業者に手を出し,追い込みを掛けられて石を投げ込まれるまでしてようやく整理を決意した,というケースもあった。その時に思ったのが日本人は現実を直視できない民族性があるのだろうか,ということであった。少し話は飛んでしまうが,第2次大戦も,現実を直視して日米の国力の差を比べれば,そもそも開戦などあり得ない選択だったろう。

なぜそんなことを思い返したかといえば,金融庁の「高齢社会における資産形成・管理」報告書のいわゆる「2000万円問題」に関するマスコミや与野党の取り上げ方がおかしいと思うからだ。毎日新聞によれば当初案であった下記表現を削除し,穏当な表現に書き直されたとのこと。

「公的年金の水準が当面低下することが見込まれていること」 「公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク」 「年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は,公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」

しかし,当初案に書き込まれていたのは,いずれもまごうことなき真実だ。人口構成の変化と経済の低迷,賦課方式であることが相俟って,年金が現在の水準を維持できないことが最初からわかっていたことは,前のブログ「「年金では暮らせない」は正直な事実。与野党共に国民に真実を告白すべき時が来ている。」で指摘した。

上記グラフが如実に示しているとおり,年金の支え手が急減し,支えられるものが急増する社会が進んでいくのであるから,当初案の指摘は,いずれも動かしがたい真実なのだ。ところが,マスコミも野党も,この不都合な真実から目を背け,これを単なる政権攻撃の手段としてとらえようとしている。例えば,朝のニュース番組というかワイドショーのキャスターが渾身の怒りを示したという。キャスターとして知っているべきことを自身が知らなかったのだから,ただの勉強不足だ。

また,わかりきっていた事実を正直に国民に提示したことを責めてどうするというのか?珍しく官庁が責任感を持って国民に呼びかけたことが批判されるなら,不都合な真実がまた闇に隠されるだけだ。野党党首から「それをどうするかが自身の仕事だ」との発言もあったが,その通りである。ではどうするかが問題なのだ。今回の金融庁の呼びかけは,行政レベルでできるそれへの対応として,まず金融資産形成を呼びかけたものだ。金融資産を形成しようと心かげることについては,早いことに越したことはない。時間という試算形成にとっての貴重な資源を十分に利用できるからだ。

問題は,政治レベルだ。もし,これを参院選の争点とするのであれば,財源も含め年金制度の大改革を議論すべきだ。財源を明示せず年金水準を上げるとだけ叫ぶ子どもだましはするべきでない。仮に年金水準を維持するとなれば,消費税を含めた国民負担率をEU並に引き上げ,積立方式に切り替えていくというのが根本的な解決策であろう。今がその時機なのだ。マスコミも,与野党もこの大問題を,単なる政争の具としてはならない。正面からの議論を期待する。

ちなみに青山さんはセクハラ疑惑で立憲民主党から無期限の党員資格停止処分を受けている方です。転載作業を終えた後、詳しい経歴等を調べたところ、そのような事実関係を把握していました。このブログを通し、いつも「誰が」ではなく、具体的な言動の一つ一つを色眼鏡を外して見ていくことの大切さを訴えています。したがって、上記の内容そのものを肯定的にとらえるのかどうかという関係性でご理解願えれば幸いです。

実は「老後に2000万円必要」という問題が取り沙汰された際、野党の対応の仕方も気になっていました。立憲民主党の辻元国対委員長は「100年安心詐欺」という言葉を使って政権を批判しています。扇情的な言葉を使い、注目を集めるという常套手段であることは理解しています。しかし、残念ながら強い言葉で政権を批判するだけでは広範な支持の広がりを期待できないように思えています。

青山さんの問題意識につながる話ですが、財源の問題を避け、単なる政権批判に終始していれば自民党に痛手を負わせることは難しいはずです。民主党が政権を取る前であれば自民党を強く批判していくことで着実に票は上積みできていました。民主党政権、全否定すべきものとは思っていませんが、世間一般の評価は「頼りなかった」という印象が刻まれてしまったようです。

第2次以降の安倍政権では個々の問題点が強い批判にさらされながらも、内閣や自民党の支持率自体は急降下することがありません。支持する理由としては「他よりもマシだから」が常に上位を占めています。金融審議会の報告書をなかったものにしている現政権の対応は強く批判すべきものです。しかしながら参院選挙で自民党が勝利すれば、このような問題も容認されたという不本意な構図になってしまうのではないでしょうか。

より望ましい「答え」を見出すためには多面的な視点や立場からのチェック機能を働かせることが重要です。問題があれば野党は政権を批判し、ブレーキ役を務めていかなければなりません。ダメなものはダメと指摘し、逐一対案を用意する必要もありません。ただ「老後に2000万円必要」という問題は前述したとおり批判だけにとどまっていては不充分だろうと考えています。

最近の記事「届く言葉、届かない言葉」の中で触れたとおり「安倍政権を支持している人、もしくはどっちでもいいと思っている人をこちら側に引き寄せる」ための言葉を野党の皆さんには探して欲しいものと願っています。深刻な財源の問題から目をそらさずに公的年金制度を検証する機会とし、私たち国民一人ひとりが老後の安心や夢を描ける具体的、かつ現実的な方向性を示してもらえれば何よりなことです。

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2019年6月 9日 (日)

関西生コンの問題

前回記事「言論の自由と批判の仕方」のコメント欄に 「今までの記事を読んだけど全体的に自分の思想や活動に都合が良い記事や本ばかり取り上げてて全体的に説得力がない」という指摘が匿名の方から寄せられました。 この指摘に対し、私からは取り急ぎ次のようにお答えしていました。

説得力があるかどうかは閲覧された皆さん個々の受けとめ方に委ねざるを得ません。ただ前回記事の中でも記したとおり当ブログの記事本文自体が多面的で、幅広い情報を提供しているものではありません。私自身の立場は明確にしながら、自分自身の正しいと思う「答え」を訴えています。そのため、「自分の思想や活動に都合が良い記事や本ばかり」を取り上げることが多くなることもご指摘のとおりだろうと考えています。

さらに「新規記事は様々な評価や見方が分かれている問題を取り上げる予定です。ぜひ、これからも基本的な立場に関わらず、一人でも多くの方々にご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします」と書き添えています。実は前々回記事「多面的な情報を提供する場として」の最後のほうで「次回以降の記事でも個々人によって見方や評価が大きく分かれがちな事例について取り上げてみるつもりです」と記していました。

その時、念頭にあった一つの事例が関西生コンの問題でした。「ナマコン」と呼ばれる生コンクリート産業で働く組合員で組織した労働組合の役員らが相次いで逮捕されている問題です。関西生コン支部の役員らをクロと見ている方々は、その支部から支援を受けていた政治家にも疑惑の目を向けがちでした。ただ1年近く経っている事件ですが、クロか、シロか、まだ決め付けられない問題です。

マスメディアでの取り上げ方が少ないことについて、立場の異なる陣営双方から疑問の声が上がっています。メディアの報道量の少なさは問題の本質や真相を不明瞭なままとし、ますます立場の違う方、それぞれの見ている景色を大きく変えてしまっているようです。シロをクロと見誤らないためには多面的な情報をもとに判断していくことが非常に重要であるため、この問題も機会を見て当ブログで取り上げてみようと考えていました。

ここで誤解を受けないように改めて説明しなければなりませんが、冒頭で紹介したとおり私自身の立場は明確にしながら記事本文を書き進めています。中立の立場から幅広い情報をバランス良く掲げていく訳ではありません。この問題で言えば「クロと決め付けて良いのかどうか」という立場であり、シロと認定されるべき事件だと考えています。しかしながら直接的な当事者ではなく、全容を検証できるまでの情報を把握している立場ではないため、自分自身の意見は抑え気味にしながら他のサイトの内容紹介を中心にまとめていくつもりです。

このブログでは参考にした情報や関連した内容のサイトをすぐ閲覧できるようにリンクをはっています。下線のある色の付いた文字をクリックすると、そのサイトに飛べるようになっています。ただクリックする方は必ずしも多くないはずであり、伝えなければ話がつながらないような場合、そのサイトの内容を当ブログの記事本文中に転載しています。今回、他のサイトの内容紹介が中心となるため、たいへん長い記事になりますが、多面的な情報に触れる機会としてお付き合い願えれば幸いです。

セメント、生コン業界の労働者でつくる「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部」(関生支部=かんなましぶ)の幹部や組合員が、相次いで逮捕されている。7~8月に滋賀県警が、商社支店長を脅したとする恐喝未遂容疑で4人を逮捕したのに続き、大阪府警が9~10月、運送業者などの業務を妨げたとする威力業務妨害容疑で19人を逮捕。

4カ月間で逮捕者は実に23人に上る。労働環境向上などを目的とする「労働組合」がこのような事態に陥った背景は何か。捜査や公判からは、関生支部が自らと関係が深い組合に加盟しない「アウト業者」を排除することで、資金を得ていたという構図が浮かび上がる。

要求するも拒否され  「ストライキに参加してほしい」「(関生支部と関係が深い)組合に加入してくれ」 大阪府警によると、昨年12月上旬、大阪市港区の大手セメント会社が出荷業務を行うサービスステーション(SS)で、関生支部の幹部が同社から運送業務を委託された業者に要求を突きつけた。運送業者が拒否したところ、同12~13日、関生支部の組合員がSSに集結。車の前に立ちふさがり、出荷業務ができない状態に追い込んだ。

労働組合はストライキを起こすこともあるが、この運送業者には関生支部の組合員はいなかった。大阪府警は今年9月、この行為について、威力業務妨害容疑などで関生支部の副執行委員長(52)ら幹部や組合員計16人を逮捕(後に9人が処分保留)。10月9日には、別の業者に対する同容疑で副執行委員長ら5人を再逮捕するとともに、新たに組合員3人を逮捕した。

理念掲げるも…  生コン業界にはさまざまな業種がある。生コンを製造する過程では、セメントメーカーが生コンの原材料にあたる「バラセメント」を各地のSSで貯蔵。それを生コン製造工場に運び入れて、水や砂を混ぜることで生コンとし、ミキサー車などで工事現場に運び入れている。関係者によると、各拠点間の輸送を担う運送業者は中小企業が多く、競争による過度な運賃の値下げを避けるなどの目的で、一部の業者が協同組合を結成。仕事を共同受注することもあるという。

一方、関生支部は、昭和59年に結成された労働組合で、ミキサー車の運転手らが所属。ホームページや機関紙などでは「大企業にはさまれた中小企業の労働者が、劣悪な労働環境に陥ることを防ぐ」などと活動目的を訴えている。こうした理念を掲げつつ、関生支部をめぐってはこれまでも事件が起きている。平成19年には、同支部の幹部らが生コンクリート会社に対し、協同組合への加入を迫ったなどとして、強要未遂や威力業務妨害罪で有罪判決を受けている。

「ドン」も逮捕  労働組合である関生支部が摘発される背景には、協同組合との関係性がみえる。大阪府警に先立ち、滋賀県警は7~8月、商社の支店長を脅したとする恐喝未遂容疑で、関生支部トップの執行委員長、武建一容疑者(76)らを逮捕した。大津地検はこれまでに、恐喝未遂罪で武容疑者らを起訴している。武被告は、昭和40年ごろから関生支部の前身とされる労働組合の役員として活動し、昭和59年に同支部を立ち上げた人物。

「生コン界のドン」とも呼ばれる。起訴状によると、武被告らは共謀し、準大手ゼネコンが滋賀県東近江市で進めていた倉庫建設工事での生コンクリート調達をめぐり、準大手ゼネコンの関連会社である商社支店長に対し、湖東生コン協同組合(滋賀県東近江市)の加盟業者と契約するよう脅したとされる。起訴された中には関生支部に加え、湖東生コン協同組合の理事長ら同組合関係者らが含まれている。

「アウト業者」排除の手口  大津地裁で10月に始まった一部の被告の公判で、大津地検は労組の関生支部と、業者の集まりである湖東生コン協同組合との関係に言及した。冒頭陳述で検察側は、関生支部が、関西各地にある生コン関連業者でつくる協同組合と業務提携し、協同組合に加入していない業者(アウト業者)に対し、組合への加入を要求。

こうした活動の見返りに、協同組合の売り上げの一部を報酬として得て資金源としていた-などと指摘した。湖東生コン協同組合からは平成24年10月以降、月約100万円が関生支部の関係機関の口座に入金されていたとし、「関生支部の組合員が、アウト業者の工事現場に出向き、クレームをつけるなどの嫌がらせをして、アウト業者を排除していた」などと具体的な手口にも言及した。

冒頭の大阪市港区の事件も出荷妨害を受けたとされる業者は、関生支部と関係が深いセメント輸送業者の協同組合に加盟しておらず、加入を要求されていた。大阪府警は、関係が深い組合のアウト業者を排除して、輸送業務を掌握することで、見返りとして資金を得たり、セメントメーカーなどに輸送業務の値上げなどを要求したりする狙いがあったとみて、実態解明を進めている。関生支部はホームページで幹部らの逮捕に関し、「正式な組合活動にほかならず、不当逮捕」との抗議声明を出している。【産経新聞2018年10月22日

まず事件の経緯や概要をお伝えするため、マスメディアの中では力を入れて報道している産経新聞の記事を紹介させていただきました。産経新聞の系列となるニッポン放送のサイトでは『関西生コン事件~逮捕されたのは立憲民主党・辻元清美議員と親密な人物』という記事も目にすることができます。続いて、組合側の立場を擁護した『相次ぐ労働組合員の逮捕。「関生以外の組合にも弾圧が及びかねない」と弁護士も危惧』という記事を紹介します。

労働組合員らの度重なる逮捕に対し、弁護士からは“不当な弾圧ではないか”という疑問の声が上がっている。逮捕者を多数出したのは、「全日本建設運輸連帯労働組合(連帯ユニオン)」の関西地区生コン支部。通称「関生(かんなま)」。セメントやコンクリート業界で働く人が加盟する労働組合だ。昨年8月9日から今年2月18日に渡り、延べ56人が逮捕された。同組合と提携する協同組合の組合員も計7人が逮捕されている。

逮捕容疑はいずれも恐喝未遂や威力業務妨害だ。これに伴い、排外主義者たちがYoutubeやブログで関生への批判を繰り広げている。“関生は犯罪集団である”というイメージが流布しているのが現状だ。しかし労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「正当な組合活動が刑事罰に問われるのはおかしい」と指摘。関生を一方的に糾弾する風潮に疑問を呈している。

◆協同組合は値崩れを防ぐために価格交渉 2017年3~7月、滋賀県東近江市で清涼飲料水メーカーが倉庫建設の工事を実施した。工事を請け負ったのは、大和ハウス工業の子会社である大手ゼネコンのフジタ。生コンクリートの製造業者が共同受注・共同販売を行う「湖東(こと)生コン協同組合」(滋賀県東近江市)は、同社に対し、協同組合に加盟する業者からコンクリートを買うよう求めた。滋賀県警はこの組合の行動を「恐喝未遂」とした。

しかし指宿弁護士は、正当な協同組合の活動の範囲であると指摘する。「協同組合が、組合に加盟する企業から購入してほしいと求めることは何ら問題ではありません。営業活動の自由の範囲で、刑事罰に問われるのはおかしいと思います。関生と関係のある協同組合を狙いうちした弾圧ではないでしょうか」 中小企業等協同組合法では、規模の小さな事業者が協同組合を結成し、共同で購入・生産・販売を行うことを認めている。もちろん建設会社がより安いコンクリートを購入しようとするのは当然のことだが、コンクリートの値崩れを防ぐためには、協同組合による活動が不可欠になる。

組合に加盟しない事業者が価格を下げてゼネコンと取引をすれば、価格競争が激化し、砂利や砂といった粗悪な原材料を混ぜたり、加水したりした低品質のコンクリートが出回る危険がある。また価格競争は、従業員の労働条件悪化にもつながる。それを防ぐためにも、事業者が協同組合を結成し、足並みを揃えて価格交渉をする必要があるわけだ。協同組合はあくまでも中小企業が結成する組織で、関生は労働組合だ。しかし両者は、生コンクリート産業の健全化のために、協力して活動してきた。

◆「ストライキは憲法で保障された働く人の権利」 関生をターゲットにした「組合潰し」と言えるものは他にもある。それは、関生が2017年12月、近畿一帯でストライキを実施した件だ。狙いは、セメント輸送や生コン輸送の運賃を引き上げることだった。大阪府警はストライキに関わった組合員を「威力業務妨害」の容疑で逮捕した。指宿弁護士はこの逮捕も不当なものだと指摘する。

「憲法28条では、労働者の権利として、『団結権』、『団体交渉権』、『団体行動権』が認められています。労働組合を作って、経営者と交渉したり、ストライキをしたりする権利が保障されているわけです。本来は、ストライキで刑事罰に問われることはありませんし、損害賠償を請求されることもありません。ストライキが刑事事件になるのはきわめておかしいと思います」 このストライキをきっかけに、業者団体である大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協)と関生の関係は悪化。大阪広域協組は、関生を指弾する排外主義者らに接近するようになった。

◆企業の枠を超えて働く人を組織する関生 日本では、会社ごとに働く人を組織する企業別の労働組合が主流だ。しかし関生は、コンクリート業界で働く人を組織する産業別の労働組合。個別の企業の枠を超えて、産業全体の労働条件改善に向けて活動してきた。指宿弁護士は、関生が多数の逮捕者を出す背景について、「関生は生コン業界全体の改革を目指してきました。これを脅威に感じた大手ゼネコンの思惑が今回の刑事弾圧の背後にあるのではないでしょうか」と推測する。コンクリートの価格を安く抑えたい建設会社が、関生の活動を嫌って、警察を動かした可能性があるという指摘だ。

またネットを中心に「レイシスト(差別主義者)たちが弾圧を引き起こすよう暗躍している」(指宿弁護士)。一部の保守系活動家が、立憲民主党の本部前で関生批判の演説をしたり、YouTubeに“企業を恫喝している”、“たかり屋”と批判する動画を多数投稿したりしていたのだ。大手メディアでは、今回の事件を「組合潰し」という観点から報じる目立った動きがなかった。

この点についても指宿弁護士は危機感を覚えているという。「これは労働組合活動に警察や国家が介入した重大事件です。憲法で保障されている労働者の基本的人権が侵害されています。きちんと取材して報道するのが報道機関の責任だと思います。これを放っておいたら、労働者の権利を守る他の活動にまで弾圧が及びかねません」

威力業務妨害が争点化されていますが、車両を止めていたのは会社側の人間で、そもそも威力業務妨害自体が「自作自演」だったのではないかと疑われる場面も浮上しているようです。「関西生コン」で検索すると様々な情報が得られます。個人的な思いとして、このような事例に直面した際、それぞれの立場性の違いから見方や評価が大きく変わってしまうようでは問題です。弁護士の海渡雄一さんは「市民活動を抑圧する『威力』概念の増殖」という下記の論評の中で 「過激な労働組合がやったことで自分たちには関係ない」と見過ごすことの問題性を提起しています。

威力業務妨害における「威力」とは、判例上、「人の自由意思を制圧するに足りる犯人側の勢力」などと定義されてきた。労働組合は、団結した労働者の行動によって、使用者と交渉し、決裂すれば、ストライキによって事業をストップさせるわけであるから、もともとその行動は「威力」に当たりうる。しかし、日本国憲法は憲法28条で、労働者の団結権・団体交渉権・争議権を憲法上の基本的人権として保障している。労働基本権の保障は、労働者の団結および団結活動に支配・干渉してはならず、団結活動に対して刑罰権を発動してはならないという保障を含んでいる。労働組合法1条2項は、このことを確認して、刑事免責の原則(刑事責任からの解放)を定めている。

 沖縄の例のように、市民による環境保護のための活動も威力業務妨害に問われる場合がある。このような場合に比べても、労働組合に対する同罪の適用は、労組法の刑事免責の主旨を尊重し、慎重な上にも慎重な配慮が必要である。関生支部に加えられている弾圧は、現時点では共謀罪が直接に適用されてはいない。しかし、労働組合の日常的な活動の一部を「犯罪」事実として構成し、これに関与した組合員を一網打尽で検挙し、デジタル情報の収集によって関係者間の共謀を立証することで犯罪としようとしている点において、共謀罪型弾圧の大規模な開始を告げるものだ。

組織的威力業務妨害罪は共謀罪の対象犯罪である。このような共謀罪型弾圧が、仮に見過ごされ、捜査手法として定着してしまうと、将来、秘密保護法違反などの事件が起こった際に、同様の共謀罪型弾圧がなされ得る。この重大事件について、産経新聞などが警察発表をそのままにしたような報道をしているほか、一般のメディアは黙殺して報じない。確かに、ほとんどの労働組合がストライキをしなくなっている現代の日本では、関生支部の(本来は労働運動として当たり前であるはずの)活動は珍しい存在になっているかもしれない。

今回の弾圧は、労働組合と中小企業協同組合が連携して、ゼネコンと対等に渡り合うような産業別労働運動を敵視し、これを解体しようとする政治的な性格を帯びている。戦前の治安維持法による弾圧も、最初は共産党員とその周辺団体から始まり、新興宗教、社会主義運動、既成宗教、さらには満鉄調査部や企画院のような公的機関、ジャーナリストにまで拡がっていった。「過激な労働組合」がやったことで自分たちには関係ないと見過ごしていると、戦前のように、同様の弾圧が他の労働組合や原発反対・環境保護のための市民運動などにも飛び火しかねない。

関生支部の労働運動については、様々な意見があり得る。しかし、政治的な系列や労働運動上の方針の違いを乗り越えて、最初に共謀罪型弾圧のターゲットにされた生コン支部を幅広い勢力によって支援することが、弾圧拡大を食い止める上で、決定的に重要である。 逮捕された組合員には7ヶ月以上の長期勾留にさらされている者もいる。すでに、大阪、東京で、関生支部を応援する市民集会が開かれている。今も勾留されている組合員の速やかな釈放と公正な裁判を求める声を広げていきたい。

当該の労働組合側に行き過ぎた点があったとするのであれば反省し、改めるべき点は改めていかなければなりません。しかし、権力を行使する側に恣意的な判断が働き、正当な活動まで取り締まっているような事態であれば他の労働組合も一緒に声を上げていかなければなりません。自治労も全日本建設運輸連帯労働組合と日常的な連携があるため、各単組に団体署名の取り組みを呼びかけています。最後に、大津地方裁判所長あての要請署名に掲げられた内容を紹介し、多面的な情報提供を目的とした長い記事を終わらせていただきます。

滋賀県警組織犯罪対策課と大津地方検査庁が、昨年8月以来、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、関生支部)の正当な組合活動を刑事事件に仕立て上げ、多数の組合役員らの不当逮捕、起訴、再逮捕をくりかえしています。

しかし、関生支部がおこなったのは、建設現場における建設会社の違法行為を調査して施工業者に是正を申し入れたこと、行政機関等に申告したりビラを配布したことなど、法令遵守(コンプライアンス)を求める活動です。これは労働者や住民の安全を守るとともに建造物の品質確保を実現すること、生コン価格の値崩れを防ぐことなどを目的とした、産業別労働組合としてはごく当たり前の組合活動にすぎません。

いうまでもなく憲法28条は労働基本権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保障しており、労働組合法第1条2項は労働者の社会的地位向上や労働条件改善等を実現するための正当な組合活動を刑事罰の対象としないと定めています。それにもかかわらず、滋賀県警組織犯罪対策課と大津地検は、これら憲法・労働組合法の根幹をないがしろにして、関生支部の存在や産業別労働組合運動そのものを敵視して事件をつくりあげています。さらに、逮捕者に対して「労働組合が企業の外で活動するのはおかしい」「コンプライアンス活動は今後はやらせない」などと発言したり、組合脱退をはたらきかけるなど、捜査権を濫用した暴挙もくりかえしています。

貴裁判所のこの間の対応も、請求された逮捕令状を無批判に許可し、また起訴された被告らに長期間の接見禁止と勾留を強いるなど、違法な捜査をくりかえす警察と検察に事実上加担するものとなっているといわざるをえません。強く抗議するとともに、憲法・労働法を遵守して下記のとおり対処するよう要請します。

  1. 滋賀県警の不当な逮捕令状請求については、今後、憲法28条および労働組合法第1条2項に照らして許可しないようにされたい。
  2. 勾留中の組合員らに対する接見禁止をただちに解除するとともに、速やかに保釈を許可されたい。
  3. すでに起訴された被告らの裁判については、憲法28条および労働組合法1条2項に照らして迅速かつ公正な裁判をおこない、速やかに無罪判決を下されたい。

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2019年6月 2日 (日)

言論の自由と批判の仕方

前回の記事は「多面的な情報を提供する場として」でした。その中で私自身、いわゆる左や右の主張を問わず、なるべく幅広い情報や考え方に接するように努めていることを記していました。したがって、ブックマークし、日常的に閲覧しているブログ等から触れる主張も非常に幅広いものがあります。

その一つに当ブログの記事の中で時々紹介している「澤藤統一郎の憲法日記」があります。やはり前回記事の中で添えた話ですが、紹介する他のサイトに記された内容や言葉使いなど必ずしも全面的に賛同していない場合でも、多面的な情報を提供する主旨のもと参考までに掲げさせていただいています。

最近の記事「憲法記念日に思うこと 2019」の冒頭でも触れていますが、澤藤さんの意見には「なるほど」と思う時が多いことも確かですが、問題意識がすべて一致するものでもありません。特に澤藤さんの最近の記事『言論の自由は、権力と権威を批判するためにこそある。』は「なるほど」と思う箇所がある一方、私自身の問題意識とは真逆なことに興味深さを感じていました。

私がブログを書く基本姿勢は、「当たり障りのないことは書かない」「すべからく、当たり障りのあることだけを書く」ということに尽きます。「当たり障りのあること」とは、誰かを傷つけると言うこと。誰かを傷つけることを自覚しながら、敢えて書くということです。

「誰かを傷つける」言論は、当然にその「誰か」との間に、軋轢を生じます。それは、面倒を背負い込むことであり、けっして快いことではありません。場合によっては「裁判沙汰」にさえなります。それでも書かねばならないことがあります。

近代憲法を学ぶ人は、典型的な近代市民革命の成果としてのフランス人権宣言(「人および市民の諸権利の宣言」・1789年8月)に目を通します。その第4条に、有名な「自由の定義」が記載されています。

「自由とは、他人を害しないすべてのことをなしうることである。」という有名な一文。私は、これにたいへん不満です。えっ? たった、それだけ? 自由ってそんな程度もの?

「自由とは、他人を害しないすべてのことをなしうること」という文言では、論理的に「誰も、他人を害する自由を持たない」「他人を害することは、自由の範囲を越えている」ことになります。私には、到底納得できない「中途半端な人権宣言」でしかありません。

他人を害しない、当たり障りのない言論には、「自由」や「権利」として保護を与える必要はありません。「当たり障りのある言論」であってはじめて、保護しなければならないことになる。戦前、國體と私有財産制を擁護し、富国強兵や滅私奉公を鼓吹する言論は誰憚ることなく垂れ流されました。当時は、これが「権力に従順で、他人を害しない、当たり障りのない言論」でした。

その反対の、天皇の権威を傷つけ、生産手段の私有制を非難して資本家を排撃し、軍部・軍人を揶揄し、侵略戦争や植民地主義の国策を批判する言論は、多くの国民の耳に心地よいものではなく、当たり障りのある言論として徹底的に取り締まられました。

いま横行している、天皇を賛美し、アベノミクスを礼賛する言論。人をほめるだけの「当たり障りのない言論」は、ことさらに自由や権利として保護する必要はありません。他人を批判し、他人を傷つけ、他人との間に軋轢を生じる言論の有用性を認めることが、文明の到達した、表現の自由を筆頭とする自由や人権の具体的内容でなければなりません。

もっと端的に言えば、表現の自由とは、権力と権威を批判するためにあります。いうまでもなく、権力は批判されなけれ腐敗します。権力を担う者は、いかに不愉快でも、傷つけられても、批判の言論を甘受しなければなりません。批判さるべきは政治権力に限らず、社会的な強者、経済的な強者として君臨する者も同様。付け加えるなら、社会的多数者もです。

長い内容の紹介となっていますが、それでも上記は澤藤さんの当該記事の一部です。この後、権威と権力の関係性に対する考え方などを澤藤さんは述べています。興味を持たれた方は、ぜひ、リンク先の当該記事をご覧になってください。圧倒的な力を持つ権力者側は不愉快に思っても批判の言論を甘受しなくてはならない、そのための言論の自由であるという説明は共感できます。

一方で「当たり障りのあることだけを書く」という基本姿勢は、私自身の問題意識とは離れたものでした。単に権力者の振る舞いを批判し、溜飲を下げることが目的であれば過激な表現や言葉を使うことも理解できます。もしくは同じような考えを持つ方々だけに賛同を得られれば是とするのであれば、そのような基本姿勢も納得できます。

しかし、自分自身の主張や立場とは程遠い方々からも、できる限り共感を得られたいと望むのであれば言葉や表現方法は選ぶべきものと考えています。このあたりの問題意識は最近の記事「届く言葉、届かない言葉」を通して取り上げていました。自らの主張の正しさを信じ、本気で実現をめざさなければならないのであれば、安倍首相を支持している方々にも届く言葉を探さなければならないはずです。

ただ「悪名は無名に勝る」という言葉がありますが、どれほど重要な主張を発信していたとしても振り向きもされない状態では意味がないと考えがちです。当たり障りのない内容ばかりを語り、誰からも注目されない関係性よりも扇情的な言葉を駆使し、目立つことのほうを選ぶ方々も少なくありません。日本維新の会の参院選公認候補だった元アナウンサーの長谷川豊さんもその一人でした。

長谷川さんは講演会での差別発言が問題視され、公認が取り消しとなっていました。以前にも長谷川さんは人工透析患者に対するブログでの過激な発言が厳しく批判されていました。その時のことを長谷川さんは「強いタイトルを使わないと読んでもらえないという思いがあり、炎上商法といわれるネットのとにかく過激な言葉を使って、叩かれてもいいから知名度を上げようと考えていた」と釈明しています。

澤藤さんも先ほど紹介したブログ記事の中で、「誰かを傷つける」言論は、当然にその「誰か」との間に、軋轢を生じます。それは、面倒を背負い込むことであり、けっして快いことではありません。場合によっては「裁判沙汰」にさえなります。それでも書かねばならないことがあります、と語っています。安倍首相や大企業の経営者らを想定した問題意識であり、権力者に対し、ひるむなという意味合いであれば理解できる考え方です。

ただ「叩かれてもいいから」と考えていた長谷川さんは言葉の使い方を誤り、新たな分野で飛躍できたかも知れない貴重なチャンスを逸しています。それでも個々人の正しいと信じている「答え」があり、言論の自由のもと批判の仕方も人それぞれなのだろうと思っています。私自身は批判の仕方にも、その許容範囲があることを意識しながら、これからも安倍首相を支持されている方々にも届く言葉を探し続けていくつもりです。

安倍晋三首相は27日午前、東京・元赤坂の迎賓館で、国賓として来日したトランプ米大統領と会談した。トランプ氏は冒頭、日米貿易交渉について「おそらく8月に両国にとって素晴らしいことが発表されると思う」と語った。首相が6月中旬に訪問を調整しているイランについて「首相とイランが良い関係を築いていることを知っている。何が起きるか見てみよう」と述べ、期待感を示した。

会談は午前11時過ぎから始まった。首相は冒頭、「北朝鮮問題をはじめとする国際社会が直面する様々な課題、日米経済、G20(主要20カ国・地域首脳会議)の成功に向けてしっかりと日米の調整を図っていきたい」と語った。これに対し、トランプ氏は日米貿易について「我々は多くのビジネスを行ってきたが、米国は少しだけ日本に追いつく必要がある。貿易収支は急速に改善されるだろう」と述べた。

日米貿易交渉をめぐってトランプ氏は26日、ツイッターに「多く(の成果)は7月の選挙後に待つ」などと投稿、交渉妥結は夏の参院選後に持ち越す意向を示した。一方で「日米貿易交渉では大きな進展が起きつつある」とも記した。首脳会談やその後の共同記者会見で、トランプ氏が農産物や自動車などで踏み込んだ発言をするかが焦点となる。会談に先立ち、茂木敏充経済再生相は25日、ライトハイザー米通商代表と閣僚級会合を行った。

また、首相は米国がイランと対立する中、イランと伝統的に友好関係にある日本として仲介役を果たしたい考えだ。この日の首脳会談の冒頭でトランプ氏は「イランが対話を望むなら、我々も話したいと思う」と語った。北朝鮮問題で安倍首相は、条件をつけずに金正恩朝鮮労働党委員長との日朝首脳会談をめざす意向を表明しており、トランプ氏とは改めて日米の協力について協議。トランプ氏は首相との会談後、迎賓館で拉致被害者家族と面会する予定だ。日米は、北朝鮮が9日に発射した短距離弾道ミサイルなど最新の情勢を踏まえ、非核化に向けた対応もすり合わせる。

首相とトランプ氏の首脳会談は、4月に首相がワシントンを訪問して行われて以来、11回目。トランプ氏は6月28~29日に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席し、改めて首相と個別に会談する見通しだ。首相は、26日のゴルフ、大相撲観戦などでトランプ氏を手厚く歓待した。貿易交渉で強硬な要求をされることを避けるとともに、今回の日本訪問を通じてトランプ氏との蜜月、日米同盟やG20首脳会議の成功に向けた連携を参院選前にアピールしたい考えだ。【朝日新聞2019年5月27日

最近の事例を考えた時、トランプ大統領が訪日した際の一連の対応への評価も分かれがちです。ネット上では『安倍外交、「トランプ接待」の成果はあったのか』 という記事をはじめ、『田崎史郎、岩田明子の“安倍目線”がすごい! トランプが“参院選後の関税引き下げ”暴露しても「狙い通り」「先送り成功」』や『日本の遺産を食いつぶす安倍首相-「イラン緊張緩和に努力」の幻想』という痛烈な批判記事も目にすることができます。 私自身は以前の記事「何が正しいのか、どの選択肢が正しいのか」という記事の中に書き残したとおり首脳同士が信頼関係を高めていくことを肯定的にとらえています。

そのことによって私たち国民にとって望ましい結果が導き出されていくのであれば何よりなことです。さらにアメリカとイランとの仲介役を安倍首相が担い、両国の緊張緩和につなげていけるのであれば強く支持したい試みです。一方で、日米貿易交渉の結果発表が、参院選で自民党が苦戦しないために「7月の選挙後に待つ」という話であれば国民のために資する首脳間の信頼関係ではなく、単に「安倍首相のため」に資する信頼関係だと言わざるを得なくなります。

政府与党側は自分たちに判断の誤りがあり、国民に不利益を与えてしまう失政が認められた場合でも即座に公表することは多くないはずです。安倍政権に限らず、国民から不評を買いがちな情報は小出しにしがちだろうと思っています。本来、その政権に対する正当な評価を下すためには、望ましくない情報も含め、国民が適確に把握していかなければなりません。

そのためにも幅広く、多様な情報を提供するメディアの役割が重視され、メディアには政府側の広報機関にならないという矜持が求められています。多面的な情報を拡散する手段としての口コミやSNSの活用も大事なことであり、その中には言論の自由のもとに政権に対する辛辣な批判意見が多数あって当然です。いずれにしても幅広い言論空間に触れながら、より望ましい「答え」を見出していくために一人ひとりが思いを巡らしていけることの貴重さ受けとめています。

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