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2019年4月27日 (土)

時間外勤務における移動時間の取扱い

心配した雨の影響をそれほど受けず、10連休の初日、連合の三多摩メーデーが催されました。いつも全体では2万人ほどの参加者が集まり、今年もご家族の方を含め、私どもの組合だけで300人近くの参加を得られています。リンクした当ブログの以前の記事の中で綴っていますが、三多摩メーデーは中央メーデーよりも一足早く組合員の皆さんが参加しやすいゴールデンウィークの初日に催していました。

メーデー、つまりMayDayは毎年5月1日に行なわれる世界中の労働者の祭典です。1886年5月1日にアメリカの職能労働組合がシカゴを中心に8時間労働制を要求したデモンストレーションを行なったことが起源とされています。そのため、初めの頃は5月1日に催さないことの批判もあったようですが、そのような声はほとんど聞かれなくなっています。

労働組合は当たり前なこととして「組合員にとってどうなのか」という視点を大事にしていかなければなりません。その意味で三多摩メーデーのような柔軟な対応を私自身は当初から支持する立場でした。今回の記事も「組合員にとってどうなのか」という目線のもと実際に組合員から寄せられた疑問の声を受けとめた労使協議課題の一つを取り上げさせていただきます。

最近の記事「会計年度任用職員制度の労使協議を促進」の冒頭にも記したことですが、私どもの組合の労使課題の論点や協議状況などは月2回以上発行する組合ニュースを通し、組合員の皆さんにお知らせしています。組合員一人ひとりに配られ、配布後の取扱いは自由です。このようなオープンな配布の仕方ですので、組合ニュースが市議会議員や住民の皆さんの目に留まることも想定しています。

要するに誰に見られても困るような内容は掲げていません。ただ交渉結果の内容や組合の考え方に対しては人によって評価が分かれ、批判の対象になる場合があるのかも知れません。それでもコソコソ隠すような労使交渉や主張は行なっていないため、「内部資料」「取扱注意」のような但し書きは一切ありません。

仮に圧倒多数の方々から問題視されるような交渉結果や組合の主張だった場合、何か改める要素があることを察知する機会にすべきだろうとも考えています。そのような意味合いからも当ブログの記事の中で、組合員の皆さんに伝えているニュース内容をそのまま掲げる時があります。今回の記事内容も、そのような考え方をもとに書き進めてみます。

今年3月、組合員から次のような問いかけがありました。時間外勤務(休日含む)における庁舎外での会議やイベント等に参加した際、会議等の開始と終了までの時間のみを時間外勤務手当として申請すべきという考え方が正しいのかどうかという質問でした。この問いかけを受け、時間外勤務手当の申請方法を改めて人事当局と確認しました。

その際、実際の拘束時間でとらえた勤務命令を発すべきという点が基本であることを確認しています。この基本的な考え方を踏まえ、個別具体例に対する時間外勤務の申請方法について引き続き労使協議を進めていました。そのような最中、組合ニュースの一部の内容について、人事当局と真っ向から見解の分かれる論点が浮上していました。

新しい年度に入り、これまで周知してきた確認事項を改めてお伝えします。労使交渉や安全衛生員会などの場を通し、時間外勤務縮減の必要性を労使で確認しています。組合は各職場と連携しながら増員要求や減員提案の見送りを求め、必要な部署に必要な人員の配置をめざしています。

それでも時間外勤務を必要とされる場合があるため、次のような取扱いを改めてご理解ご確認ください。また、時間外勤務の実績が人員確保交渉の中で当局側の大きな参考材料とされています。このような点も踏まえ、時間外勤務の申請漏れがないようにご注意ください。

  1. サービス残業は違法行為であり、撲滅していかなければなりません。したがって、時間外に勤務した際は必ず事前もしくは事後に申請してください。
  2. 時間外勤務が必要な場合は、なるべく事前申請に努めてください。早く終わる見込みがあれば6時又は7時までの申請も可能です。結果的に早く終わる、逆に予定時間が伸びた場合は、その時間までを翌日に実施申請してください。午後8時以降は特別時間外勤務の申請も必要になります。
  3. 勤務の状況によって事後でも問題ありません。翌日以降、すみやかに実施申請してください。
  4. 水曜は「ノー残業デー」ですが、必ず特別時間外勤務の申請が必要です。
  5. 昼休み時間、突発的な勤務に対応した場合、その時間分のズレ休憩を取得できます。ズレ休憩できない場合は15分単位での時間外勤務を申請できます。
  6. 予算不足を理由にサービス残業を強いられた場合は組合まで連絡願います。ただちに是正するよう求めていきます。
  7. 時間外勤務(休日含む)として、庁舎外での会議やイベント等に参加した際の時間外勤務手当申請の考え方を参考までに例示します。その他の事例で判断を迷う場合、組合まで連絡ください。

(例1) 平日の午後6時から8時まで庁舎外で会議があった際、その場所までの移動時間を含め、5時15分から時間外勤務とします。ただし、その45分間に個人的な買い物等を行なう自由時間があった場合、勤務時間に当たらなくなります。

(例2) 休日の朝、職場に集合し、当日2回以上の会議やイベントに出席した場合、出勤から退勤までが拘束時間であれば、その時間が時間外勤務となります。途中に昼食休憩等の時間があれば、その時間は除きます。

(例3) 休日、イベント等の会場に自宅から直行直帰だった場合、その移動時間は通勤時間に相当するため、当該の場所への集合時間から解散時間までが時間外勤務となります。

上記は4月9日発行の組合ニュースに掲げた内容です。毎年、新年度に入った早々、これまで周知してきた時間外勤務に関する確認事項を組合ニュースで組合員の皆さんに伝えています。3月に寄せられた組合員からの問いかけを受け、今回、新たに7項目を付け加えていました。

組合ニュースを発行する前、上記のような内容を周知することを事務折衝で人事当局に伝えていました。事務折衝の窓口である人事課長は横浜地裁の裁判例(日本工業検査事件)を示し、上記(例1)について疑義を示していました。

「出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」という裁判例です。

さらに「出張中に正規の勤務時間を超える時間に移動した場合、単なる移動時間については超過勤務手当は支給することはできない」という解説文も示していました。「移動時間中に、特に具体的な業務を命じられておらず、労働者が自由に活動できる状態にあれば、労働時間とはならないと解するのが相当」という解釈を組合も否定していません。

事務折衝の組合側の窓口である書記長から人事課長の疑義を伝え聞いた時も、私自身は当該の裁判例等を把握した上で上記(例1)から(例3)までのような事例を紹介しているという認識でした。したがって、当たり前なことを指摘されているという理解のもと上記のような表現での組合ニュースを発行していました。

しかしながら組合ニュースを発行した後、人事課長から改めて裁判例や解説を踏まえ、上記(例1)の下線(下線は後から追加)の箇所が誤りであるという指摘を受けました。休日や遠方への出張時と同様、平日の夜であっても正規の勤務時間帯以外での移動時間は労働時間ではないという解釈を人事課長は示していました。それに対し、組合は裁判例等も踏まえた上で下記のように考えています。

労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間である。移動時間について「通勤時間と同質であり、労働時間ではない」とする考え方がある一方、「使用者の支配管理下にある移動時間は労働時間である」という説もある。

取り上げられている横浜地裁の裁判例として、出張中の往復時間は労働時間ではない、出張中に正規の勤務時間を超えても時間外勤務手当は支給できないと示されている。そのため、休日に会議やイベント等に出席する場合、自宅から現地までの往復時間は労働時間に当たらないことは理解できる。

当たり前なこととして、上記(例1)に掲げているとおり午後6時の会議等の時間まで自由時間ということであれば労働時間ではない。しかし、正規の勤務時間帯から連続した平日の夜、庁舎外に移動する時間まで「労働時間ではない」と見なすのは不合理である。あくまでも会議等の時間まで勤務命令を受けた拘束時間として必要な業務に当たり、移動は必要最低限の時間を想定している。

人事当局の解釈が正当なものと判断した場合、正規の勤務時間帯以外に災害や道路補修等のため、庁舎から現場に向かうまでの時間も労働時間から除くべきという考え方に至ってしまう。したがって、正規の勤務時間帯の移動時間が労働時間に当たるように正規の勤務時間帯から連続した平日の夜であれば、使用者の指揮命令下での拘束時間に当たるものと解釈することが妥当であるものと組合は考えている。

言うまでもありませんが、法令遵守は当然です。人事当局の指摘のとおり明らかに違法だと判断されてしまうのであれば素直に従わなければなりません。きっと近隣市の例を確認したとしても「他市は他市」という話になりかねません。そのため、私どもの組合の考え方が移動時間に関する時間外勤務の認定基準として正当なのかどうか、顧問契約を交わしている法律事務所の弁護士と相談しました。

結論として、上記のような経緯と論点について説明したところ組合の考え方が誤りではないという助言を得られています。移動時間の取扱いについて様々な見方や解釈があることを前提にした所見でしたが、組合ニュースの上記(例1)に「自由時間があった場合、勤務時間に当たらなくなります」という但し書きもあるため、問題ないのではないかという説明を受けています。

相談を終えた後、弁護士から移動時間に関する資料のコピーをいただきました。その資料には移動時間について労基法・労基則に特段の定めがないため、1984年8月28日の労基研第二部会中間報告で「次のような考え方に立って労働省令で定めるものとする」という提言のあったことが記されていました。

結局、これまで省令は定められていませんが、中間報告には移動時間の取扱いについて参考とすべき考え方が示されていました。「移動時間の取扱い」という項目の中には「労働時間の途中にある移動時間は労働時間として取り扱う」と明記されていました。この一文を参考にすれば組合ニュースの上記(例1)を誤りとすることのほうが問題であるものと考えられます。

10連休明け、会計年度任用職員制度の労使協議の正念場を迎えます。その課題に比べてしまうと重大さや優先度は劣ってしまいますが、時間外勤務における移動時間の取扱いも組合員から寄せられた声を受けとめた大切な労使協議の一つとして力を尽くしていくつもりです。

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2019年4月20日 (土)

『官邸ポリス』を読み終えて

このブログでは時々、読み終えた書籍の感想を綴った記事を投稿しています。もともと幼い頃から読書好きでしたが、ブログを始めてからは新規記事の題材になるかも知れないという意識も働き、手に取る書籍の数は増えています。今回、紹介する『官邸ポリス』もその一つでした。

元警察キャリアが書いたリアル告発ノベル!! 文科省局長の収賄や事務次官のスキャンダル、近畿財務局による国有地の不当売却、財務省の公文書改竄とセクハラ地獄、野党幹事長候補のセックス・スキャンダル……こうした事件の裏に蠢いた「最強権力」が、日本の政官界には存在した!?

東日本大震災の原発事故の際に目撃した政治の機能不全――このとき「日本国にとって必要なのは、40年間ひたむきに国家のため奉職する官僚である」と確信した警察官僚のグループが存在する。そして、政権交代が起きても常に日本国を領導し続ける組織、すなわち「官邸ポリス」が組織されていったのだ! 現在の長期政権のあと、「官邸ポリス」が牛耳る日本は、一体どのような国になるのか!?

上記はリンク先のサイトに掲げられている書籍の紹介内容です。著者の幕連さんはプロフィールとして「東京大学法学部卒業。警察庁入庁。その後、退職」だけ明らかにしています。この書籍に興味を持った理由は「本書の92%は現実」という帯封に書かれた宣伝文句です。

書籍の紹介内容にあるとおり現実に起こった事件やスキャンダルが取り上げられています。登場人物は架空な名前ですが、容易に実名に置き換えられる設定でした。ノベル、つまり小説という形式を取っているため、名誉棄損や守秘義務違反から免れる逃げ道を作っているようです。しかし、宣伝文句からすればフィクションは8%にとどまり、書かれている内容は、ほぼ事実だと受けとめさせる体裁になっています。

もう少し書籍の内容を紹介できるようネット上を検索したところ「田中龍作ジャーナル」の記事「『官邸ポリス』 安倍政権を永続させる世界最強の機関」が目に留まりました。登場人物の実名を解説した記述もありましたので、参考までに内容の一部をそのままご紹介します。

『官邸ポリス』は内閣府本庁舎6階にアジトを構える。そう。実在するのだ。元警察庁警備局長の杉田和博(作品中は瀬戸弘和)官房副長官をトップに警察官僚で固める。詩織さん事件で名を馳せた中村格(作品中は野村覚)元警視庁刑事部長・現警察庁組織犯罪対策部長らがメンバーだ。

官邸ポリスの強さの秘訣は、卓抜した情報収集力と巧みな情報操作にある。尾行、盗聴、自白の強要と何でもありの警察組織から上がってくる情報はいうまでもない。驚くのは各省庁やその出先機関にまで張り巡らしたスパイ網から、もたらされる情報だ。

官邸ポリスは見事なダメージコントロールをする。それを思い知らされる出来事があった。森友学園事件で文書改ざんに手を染めさせられていた近畿財務局職員が自殺した事件だ。父親は息子の遺書を見ていない。警察が押収したからである。遺書は改ざんの最高責任者だった財務省の佐川理財局長(作品中は佐藤)の やり口を 糾弾していた。

国会答弁でシラを切り抜いた佐川理財局長は、安倍首相を守り抜いた格好で国税庁長官に栄転したが、世論は許さなかった。税金不払い運動が起きるほど怒りは沸騰した。政権崩壊にまでつながる恐れがあった。官房副長官は、遺書の写しを兵庫県警から直接入手していた。

佐川国税庁長官を官邸の自室に呼びつけ遺書の写しを見せたが、国税庁長官は開き直った。そこで官房副長官は言った。「これを公表しようか」と。この後、佐川氏は国税庁長官を辞任する。官邸への延焼が必至だった「佐川騒動」にピリオドが打たれたのである。

相当な冊数を売り上げているはずですが、マスメディアでの取り上げ方が少ないという印象を抱いています。いくら小説という形を取っているからとは言え、登場している政治家らが反発や反論しようと考えないことも不思議でした。ほぼ事実であるため、騒ぐことで注目を集めることを避けているのか、もしくは相手にする必要のないほど荒唐無稽な話ばかりなのかも知れません。

一方で、この小説のような「官邸ポリス」が実在するのであれば、きっと「暴露本」を出す意図があったはずであり、マスメディアとの距離感なども想定しているのだろうと思っています。いずれにしてもイメージを棄損される登場人物が多い中、「官邸ポリス」そのものと現在の官邸の力だけは誇示されていくストーリー仕立てとなっていました。

読み終えたのは随分前で、このブログに取り上げるタイミングを見計らっていました。今回、そのタイミングだと判断した理由として、レイプ疑惑事件で係争中のジャーナリストの山口敬之さんが「1億3千万円の損害賠償」を求めて伊藤詩織さんを反訴したという報道に触れたからです。この問題については以前「2冊の『ブラックボックス』」という記事を投稿していました。

どのような案件に対しても事実関係の全容が明らかになっていない中、決め付けた言い方は慎まなければなりません。伊藤さんの事件の事実関係で明らかな点は「準強姦罪で検察が逮捕状の請求を認め、裁判所が許可していたのにも関わらず、逮捕予定の前日に警視庁トップからストップがかかった」という点です。このようなケースは本当に稀であり、逮捕を見送った直後、担当していた捜査員まで変えられてしまったそうです。

その時の警視庁トップは中村格警視庁刑事部長で、かつて菅官房長官の秘書官を務めていました。ここまでは紛れもない事実関係です。ここから先は疑惑の域に入る話ですので決め付けた言い方は慎まなければなりませんが、山口さんが安倍首相と近しいジャーナリストであるため、何らかの稀な判断が働いたのではないかと見られがちです。もし逮捕に値する被疑者を不当な圧力で見逃していたとしたら、たいへん憂慮すべき事態だと言えます。

これも安倍首相の「お友達」事件であるというような揶揄は不適切です。今回のブログ記事を通して強調したい点は、安倍首相を支持している、支持していない、そのようなことは関係ありません。冷静に、客観的に、物事を多面的に見ながら「おかしいものはおかしい」と言える感覚を磨くべきものと考えています。

上記は以前の記事「2冊の『ブラックボックス』」 の最後のほうに残した言葉です。ちなみにブックマークしている元アナウンサーの長谷川豊さんのブログ「本気論 本音論」では『ジャーナリスト山口敬之氏が正しい「女性がこう言ったら全部真実」と考えなしに信じ込む風潮は完全に間違いだ』という記事があります。このような主張は主張として分かりますが、事実関係をどれほど理解された上での発信なのかどうかは疑問です。

「本書の92%は現実」という宣伝文句のもと、すべてを鵜呑みにできませんが、この事件も『官邸ポリス』に取り上げられていました。そこに記された内容は、ほぼ事実に近いのだろうという印象を抱いています。最後に『官邸ポリス』の第4章「御用記者の逮捕状」の中から興味を引いた箇所を参考までに紹介させていただきます。

そのときスマホが鳴った。液晶画面には「山本記者」と表示されている。それを確認して、通話ボタンを押した。「山本さん、こんな時間に珍しいですね。どうかなされましたか?」 工藤が聞くと、その声にかぶせるように、切羽詰まった山本の声が聞こえた。「工藤さん、助けてください!実は厄介なことに巻き込まれていまして・・・・・・恥ずかしくて、いまのいままで相談できなかったのですが、私は逮捕されるかもしれません・・・・・・」

声の主は、多部総理や須田官房長官にも近い、東日本テレビ元ニューヨーク支局長の山本巧記者である。内閣情報調査室のトップとして情報を収集することを任務とする工藤にとって、米国や北朝鮮の情勢について情報をもたらしてくれる山本は、大事な存在であった。「ある女性と合意のうえに関係を持ったのですが、最近、関係がこじれてしまいまして、彼女が私に強姦されたとして警視庁に告訴したらしいのです」

倫理意識の強い工藤は、内心、そんな痴話喧嘩くらいで電話するな、と思った。もし事実なら、そんな輩は罰せられればいい。しかし、総理の盟友を無碍にするわけにもいかない。「状況がよく分かりませんので、現時点では何とも申し上げられません。もちろん、いわゆる事件のもみ消しなど、当然できませんが、少々お時間をください」 そう答えて、電話を切った。

       *                *

瀬戸は、そうそう、と言って続けた。「山本は、言ってみれば総理を宣伝する本の出版も計画しているらしい。その山本を助けられれば、ことによると官僚嫌いの多部総理も、内務官僚だけは評価してくれるかもしれない。山本みたいな人間でも、政権の広報マンとして使えるなら助けてやれ。しかし、言わずもがなだが、くれぐれも違法なことはするな。黒を白にするような無茶もダメだ」

       *                *

「逮捕状は、絶対に執行しないでください」「どういう意味ですか?」と、署長が抵抗する。野村は既に冷静な声に戻っている。「意味も何も、文字通り、逮捕状を使わないでください、ということです。釈迦に説法ですが、捜査は、任意が原則です。山本は有名人であり、逃走の恐れはありません。そして、いまさら証拠隠滅の恐れもなさそうです。逮捕しなくとも、任意で話を聞けばいいでしょう」

署長はまだ諦めない。「ただ、マメは逮捕するのが通常じゃないですか。それに山本は、被害者の女性に、介抱しただけで合意のうえだ、という趣旨のメールを送っています。これは口封じ、つまり証拠隠滅に当たるでしょう。そもそも捜査員が捜査を積み重ねて取った逮捕状を執行しないなんて、少なくとも私は経験したことがない。これは命令ですか?」 

しかし、野村は冷徹に言い放つ。「そう理解していただいても結構です。何も、彼の事件をもみ消せと言っているわけではありません。有名人物である山本については、マスコミからの反響も大きい。その捜査については特に慎重に進めるべきであり、原則に従って任意にすべきだ、と申し上げているだけです。その辺を誤解しないでください。ちなみに、政府レベルでの重要人物であることも申し添えておきます。ご斟酌ください」  野村は署長の返事も聞かずに、ここで受話器を置いた。

              *                *

すぐに瀬戸に電話して、事の次第を報告する。瀬戸も安心したようだ。「とりあえず良かった。検察庁には、もうすぐ官邸に近い大物記者が送検されるけど、被害者の言い分と食い違いが多いので、証拠をきっちり吟味してほしいと伝えておいたよ・・・・・・もっとも我々ができるのはここまでだ。総理には、俺から耳打ちしておく。まあ、総理に恩を売るには十分なケースだったろう」 こうして品川中央署で取り調べを受け、後に書類送検された山本は、東京地検でも取り調べを受けたが、結局、嫌疑不十分で不起訴処分となった。

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2019年4月13日 (土)

平成の大合併、残された課題

統一地方選挙の後半、政令市以外の基礎自治体の首長と議会議員の選挙が明日日曜に告示されます。投票日は1週間後となる短期決戦です。戦後まもない1947年、新憲法施行前に自治体の首長と議員の選挙が一斉に行なわれました。その後も任期はすべて4年ですので選挙への関心を高めるため、全国的に日程を統一してきました。ただ任期途中での首長の辞職や死去、議会の解散があった場合、統一地方選の日程から外れていきます。

さらに市町村合併の広がりによって、ますます統一的な日程で実施される選挙の数は減る傾向を強めていました。今年1月の時点で総務省は、今回の統一地方選での知事選、市区町村長選、議員選は計973選挙で2015年の前回より11少なくなっていることを発表していました。全地方選に占める統一率27.21%は、過去最低だった2011年の27.40%を下回る数字です。

2012年に石原慎太郎元都知事が国政に復帰するため、任期途中で辞任しました。その結果、私が勤める自治体は都知事、都議会、市長、市議会、すべて統一地方選から外れています。それでも三多摩地区では3分の2ほどの自治体で、この時期に選挙が行なわれます。私どもの組合が発行するニュース等を通し、自治労都本部や連合東京が推薦する候補者を紹介しています。働く者の声を的確に反映できる議員が各自治体議会に増えていくことの大切さについてご理解ご協力いただければ幸いです。

火曜の朝、読売新聞の一面トップに「平成の大合併 経費削減 推計の2割」という見出しが掲げられていました。「民間委託費が大幅増」という見出しもあり、下記のような記事内容が続いていました。私自身、読売新聞の読者会員であるため、ネット上の当該記事にアクセスできます。読者会員以外に向けては1週間無料のお試しサービスもあるようですので、当該記事をそのまま転載させていただきます。

「平成の大合併」の効果として期待された市町村の経費削減について、国の研究会が、人件費など年間約1兆8000億円を削減可能と推計したものの、実際は2割にあたる約3800億円の削減にとどまることが読売新聞の調べでわかった。正規職員を減らしたことで人件費の抑制など一定の合併効果はあったが、施設管理などの民間委託費が増えていた。行政の効率化に向けた取り組みが、なお必要であることが浮き彫りになった。

正規職員や建設費は抑制 総務省の「市町村の合併に関する研究会」は2005年度、1999~2005年度に合併で誕生した557自治体の財政見通しを原則03年度決算を使って推計。「合併効果が表れるとされる10年後には、年間計約1兆8000億円の経費削減が見込める」としていた。本紙は、557自治体の17年度決算を集計。研究会が「合併による効率化が期待される」として試算した4費目を比較した。

正規職員の給与などの「人件費」は、推計の約5500億円削減には届かなかったが、合併前と比べ約3600億円減少した。学校や役場庁舎の建設費といった「普通建設事業費」も約7600億円減り、共に一定の効果はみられた。企業や団体への補助金などの「補助費等」は約1700億円増加していた。

事務用品代や職員の旅費などの「物件費」は、推計より約8200億円多い約2兆9100億円にのぼった。物件費を押し上げたのは、公共施設の管理や行政サービスの民間委託にかかる「委託料」で、合併前の約1・5倍に増えていた。合理化で正規職員の人件費を減らす一方、民間委託が進んだためとみられる。アルバイトなどへの給与に当たる「賃金」も2割ほど増えていた。

民間委託は、庁舎の清掃やごみ収集などの現業部門で始まり、90年代から拡大した。体育館・公民館の施設管理などにも広がり、窓口業務を委託する市町村も出てきた。正規職員が直接行うより経費を削減でき、民間のノウハウを生かしてサービスを向上させるのが目的だ。

自治体の財政分析を行っている「多摩住民自治研究所」の大和田一紘理事は「福祉や災害対策など正規職員しか担えない業務もあり、職員の削減には限度がある。行政サービスを維持しつつ経費を削減するには、民間委託とともに住民の協力も必要だ。合併自治体に限らず、人口減社会の中で市町村は新しい組織の在り方を粘り強く考えてほしい」と指摘している。【読売新聞2019年4月9日

多摩住民自治研究所の大和田理事の「福祉や災害対策など正規職員しか担えない業務もあり、職員の削減には限度がある」という言葉は、まったくそのとおりであり、このブログの以前の記事「激減する自治体職員と災害対応」などを通して訴えてきた問題意識につながるものです。これまで私どもの組合は防災・減災対策の視点から職員数削減を行革の最優先課題に位置付けていくことへの疑義、とりわけ避難所となる学校職員の態勢充実の必要性について訴えてきています。

リンク先の記事を改めて読み返してみると、自治体議会に緊密な連携をはかれる議員の存在の貴重さを伝える内容でもありました。労使交渉の場だけでは到底解決できない問題について、住民の皆さんにも理解を求めていく必要性があり、その一つのアピールの場として市議会での質疑があります。

いずれにしても行政の大きな方向性を決めるためには民意の後押しが欠かせません。民意を推し量る方策として、首長や各議会議員を決める選挙があり、場合によって住民投票が行なわれます。そして、それらの投票結果が最大限尊重されることこそ民主主義の基本だと言えます。

統一地方選の前半戦、注目を集めていた大阪の選挙戦は地域政党「大阪維新の会」の勝利に終わっています。知事と市長が入れ替わった選挙のあり方について「奇策」という批判もありました。とは言え、そこに暮らす皆さんの民意が明らかになったことも確かです。したがって、大阪都構想の是非を問う住民投票自体は再び行なう必要性が高まっているのだろうと思っています。

その際は当ブログの以前の記事「東京の自治と大阪都構想」の中で提起していたとおり大阪都構想が本当に望ましいものなのかどうか、具体的な推計数字や費用対効果などを示した上、理性的な議論が交わせられることを願っています。上記の報道のとおり平成の大合併は、経費削減が予想した数字の2割程度にとどまり、正規職員減の歪みなどが問題視されています。

堺市をはじめとした周辺自治体まで巻き込む形での大阪都構想には至らず、二重行政解消による財政効果も当初4千億円と言われていましたが、年間1億円程度という試算結果が明らかになっています。逆に分割にかかるコストが680億円とも言われている現状です。さらに今までの大阪市の規模で行なったほうが望ましい数多くの業務を処理するため、5つの特別区の他に一部事務組合が設置されることになっています。大阪府、一部事務組合、特別区という三層構造になり、二重行政どころか三重行政という弊害が生じる恐れもあります。

上記は以前の記事「東京の自治と大阪都構想」の中の一文です。このような試算に触れると大阪都構想に疑義が生じがちです。この問題に限らず、「バラ色の未来」が強調された聞き心地の良いフレーズは支持を得やすくなります。しかし、本当に「バラ色」だけなのかどうか、幅広い見方や情報に触れることでイメージに流されないように努め、いずれの選挙でも熟慮しながら貴重な一票を投じていく心構えが大事だろうと考えています。

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2019年4月 6日 (土)

新入職員の皆さんへ 2019

4月1日、新元号「令和」が発表されました。この話題を切り口として、いろいろ書き残したいことがあります。ただ話は広がりそうであり、中途半端な触れ方は控え、記事タイトルに掲げた内容にすぐ入ることにしました。その日、私どもの市役所は26名の新入職員を迎えています。他に文化振興財団の職員や嘱託職員の方々にも組合加入を呼びかけ、金曜夜には組合の説明会を兼ねた歓迎会を開きました。

ブログを開設した翌年の4月に「新入職員の皆さんへ」という記事があり、その後「新入職員の皆さんへ 2014」「新入職員の皆さんへ 2017」という記事を投稿しています。今回もタイトルに「2019」を付けて新規記事を書き進めています。新任研修初日の昼休み、組合として挨拶に伺うのが毎年の恒例となっています。委員長挨拶から組合の簡単な説明、そして、早期の組合加入を呼びかける場です。

今年、初めてその場に伺うことができませんでした。正午前、予定外の来庁者との相談が入ってしまったためです。定型的な内容や経緯のない相談だった場合、昼休み当番の職員にお願いすることもできます。今回、担当者が直接対応すべきケースだと判断し、新入職員の皆さんに対する挨拶は副委員長に委ねることになりました。

もともと昼休み時間に行なうため、研修初日の挨拶は非常に簡単なものにとどめています。1週間ほどの研修期間中、必ず金曜日の夜に定めて新人歓迎オリエンテーションと呼んでいる本格的な組合説明会を催しています。その会での私自身の持ち時間は10分ほど割り当てられています。定期大会や職場委員会での委員長挨拶も長くて5分以内をいつも心がけています。

このブログで様々な内容の記事を投稿していますので、挨拶する時の題材に困ることがありません。人前で挨拶する機会も多いため、檀上で緊張することはありません。原稿がなくても大丈夫ですが、話を広げてしまい、時間オーバーとならないように定期大会での挨拶は事前に原稿を用意しています。

新歓オリエンテーションでの持ち時間10分は多少ゆとりがあるため、数年前まで特に原稿は用意していませんでした。すると「そろそろ10分近くかな」と腕時計を目にした時点で、すでに2分超過していた時がありました。そのため、ここ数年は新歓オリエンテーションに向けても事前に原稿を用意するように努めています。

このブログは不特定多数の方々へ公務員組合側の言い分を発信するとともに、一人でも多くの組合員の皆さんにも読んでもらいたいと思いながら続けています。つまり新入職員の皆さんに伝えたいこと、イコール不特定多数の皆さんにも伝えたいことでもあり、今回も参考までにその会の挨拶原稿の内容をそのまま掲げさせていただきます。

4月に入所された皆さん、新たな門出おめでとうございます。1日の昼休み、急な仕事が入り、ご挨拶できず、たいへん失礼致しました。新元号が発表された日に入所されたことは印象深く、ずっと貴重な思い出として残られていくのではないでしょうか。昨年度途中、組合加入された皆さんに際しては、その都度このような会を催せず申し訳ありません。

本日は新入職員の皆さんとともに昨年度途中に入所された皆さん、新たに組合加入いただいた嘱託職員の皆さんにお声かけし、組合の説明会を開かさせていただいています。説明会の後、懇親会には昨年4月に入所された皆さんも参加します。ぜひ、いろいろな職場の方々と交流を深める機会とし、金曜の夜ですのでお時間等の許す限り、最後までお楽しみいただけれぱ幸いです。

さて、組合の執行委員長という役割上、人前で挨拶する機会が多いため、まず緊張することはありません。その上で普段から挨拶は短めにするように心がけています。この会での持ち時間は10分です。いつもより長い持ち時間を割り当てられていますが、安心して話が広がりすぎないよう事前に原稿も用意しています。

すでに皆さんにお配りしていますが、組合のことを少しでも分かってもらうため、毎年春闘期に機関誌『市職労報』を発行しています。私が寄稿した特集記事のトップ見出しには「役に立たない組合はいらない」と掲げています。一歩間違うと大きな誤解を招き、組合をつぶそうと考えているような言葉です。決してそうではなく、組合員の皆さんに「何だろう」と関心を持っていただくための見出しの付け方でした。

私自身も組合員の皆さんに対し、まったく役に立たない組合であれば「いらない」と思います。しかし、いろいろ力不足な点もあろうかと思いますが、一定の役割を果たしていることを確信しているため、組合は必要という認識を持ち続けています。そもそも組合は、一人ひとりが働き続ける上で困った時に支え合い、皆で助け合うための役割を負っています。いざという時の安心のため、つまり「保険」のような側面があります。

中には組合加入を断る理由として「困ることはない」「困った時は自力で解決する」と話される方もいます。実際、大きな支障がなく、過ごせる場合も多いのかも知れません。それでも昔から「一人は皆のために、皆は一人のために」という組合を語る言葉があるように一人の力には限りがあります。公務員にも団結権が認められ、様々な労働条件の問題を労使で協議しています。特に労働条件を決める際は労使対等の原則が働きます。

市役所の仕事において、一職員からすれば市長をはじめとした理事者の方々は「雲の上の存在」となります。それが労使交渉の場では対等に物申すことができ、労使合意がなければ労働条件の問題は当局側の思惑で一方的に変更できないようになっています。このような原則のもとに労使交渉を積み重ね、現在の労働条件が築かれていることを機会あるごとに強調しています。

仮に経営者の思惑だけで労働条件が決められた場合、昨今、問題視されている「ブラック」を生み出す土壌につながりかねません。パワハラや違法な長時間労働を常態化させるような職場は労働組合がない、もしくは組合の存在感が希薄な場合に生じがちです。ひ、このような総論的な意味合いでの「組合は必要」という見方について、ご理解いただければ本当に幸いなことです。

財源の問題をはじめ、公務員をとりまく情勢が厳しい中、直接的なメリット、いわゆるプラスの成果にかかわる話は多くありません。しかし、個別課題においても組合員の皆さんの生活を守るため、いつも全力で労使協議を尽くしています。『市職労報』の中で「ここ数年の主な労使交渉の成果」も掲げていますので後ほどご参照ください。さらに良質な住民サービスの維持・向上のためにも必要な部署に必要な人員を配置し、職員が健康でいきいきと働き続けられる職場の確保が欠かせないものと考えています。

一人の力が小さくても皆で力を合わせるという考え方は、組合間の関係でも当てはまります。職場内の交渉だけでは解決できない社会的・政治的な問題に対し、多くの組合が自治労や連合に結集することで大きな力を発揮しています。何々ファーストという言葉が流行りましたが、それぞれの立場や組織にとって、それぞれの構成員のために力を尽くすことは、ある意味で当たり前なことです。私たち労働組合は組合員ファーストであり、組合活動のすべてが「組合員のため」にとってどうなのかという視点で進めています。

労使交渉はもちろん、政治的な活動も同様です。後ほど説明がありますが、さらに全労済労働金庫の活動も「組合員のため」に進めています。それぞれ労働組合が出資し、設立した歴史があり、営利を目的にせず、組合間の相互扶助のための組織となっています。組合の説明会にそれぞれの担当者をお呼びしているのも、このような経緯があるからです。組合活動は特定の誰かや団体のために行なっているものではなく、組合員全体で方針を決め、その目的は「すべて組合員のため」につながっていることをご理解くださるようよろしくお願いします。

結局、用意した挨拶原稿にはまったく目を通さず、上記の内容の要旨を参加された皆さんにお話させていただきました。触れなかった箇所がある一方で、諸手当の見直し提案会計年度任用職員制度のことなども説明しながら話をいろいろ広げすぎてしまったため、3分ぐらい持ち時間をオーバーしてしまいました。1時間の説明会の後、会場を移動し、懇親会を催しました。途中、組合役員も含め、一人ひとり自己紹介を行なう時間があります。

改めてマイクを持った際、このブログ「公務員のためいき」について今年もPRさせていただきました。もし新歓オリエンテーションに参加された方が当ブログを訪れてくださった時、上記の文章が「あれっ、挨拶の時と随分違う」と思われるかも知れません。大切な要旨は変わっていないはずですので言い回しや例示の仕方などが若干() 異なることをご容赦ください。

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