諸手当の見直し提案
毎年、12月中旬に職員家族を対象にしたクリスマスパーティーを催しています。組合と職員共済会が共催し、年末の恒例行事として定着しています。主催者として挨拶した際、「私が市役所に入った頃はダンスパーティーでした」と昔話を披露させていただきました。
かなり前の記事「組合役員を続けている理由」の中で記していましたが、私自身が青年婦人部の幹事だった時、ダンスパーティーを小さなお子さんたちも楽しめる催しに切り替えていきました。社交ダンスを中心としたダンスパーティーの参加者は年々減っていました。事前にダンス講習会を開いても、新たに社交ダンスを覚えようとする人たちが少ない現状だったためです。
職員家族クリスマスパーティーという名称に改め、30年以上続いていることに感慨深いものがあることを主催者挨拶で一言添えさせていただきました。記事タイトルから離れた話題から入っていますが、記事タイトルの内容に関連したエピソードとして昨年末のクリスマスパーティーの時に交わした会話も紹介させていただきます。
職員共済会と共催しているため、団体交渉の相手側となる人事担当部署の部長と課長もクリスマスパーティーに出席しています。その日だけは労使の垣根を越え、ざっくばらんに歓談しています。すると部長も課長も、このブログをご覧になっていることを知りました。ひとしきり当ブログのことが話題になった訳ですが、私から次のような点を二人に強調する機会となっていました。
このブログの記事の中で、組合員の皆さんに伝えているニュースや機関誌の内容をそのまま掲げる時があります。組合ニュースそのものは組合員一人ひとりに配られ、配布後の取扱いは自由です。このようなオープンな配布の仕方ですので、組合ニュースが市議会議員や住民の皆さんの目に留まることも想定しています。
要するに誰に見られても困るような内容は掲げていません。ただ交渉結果の内容や組合の考え方に対しては人によって評価が分かれ、批判の対象になる場合があるのかも知れません。それでもコソコソ隠すような労使交渉や主張は行なっていないため、「内部資料」「取扱注意」のような但し書きは一切ありません。
仮に圧倒多数の方々から問題視されるような交渉結果や組合の主張だった場合、何か改める要素があることを察知する機会にすべきだろうとも考えています。そのような意味合いからも当ブログの記事の中で、組合ニュース等の内容をそのまま掲げる時があることを部長と課長に対して説明していました。
つまり団体交渉での組合の訴えは「住民の皆さんから理解を得られないような主張は一切ない」という認識であることを強調する機会につなげていました。労使の立場の違いから簡単に歩み寄れない課題が多かったとしても、お互い真摯な姿勢で議論を重ねていくことの大切さも改めて伝えていました。
言うまでもなく「ヤミ」と批判されるような労働条件は認められない時代であり、そのことを前提に組合は交渉に臨んでいます。喫緊の労使課題は諸手当の見直し提案です。すでに組合ニュースや職場委員会資料を通して組合員の皆さんに報告している内容を今回のブログ記事で紹介した後、直近の団体交渉の動きなどを踏まえ、組合としての考え方を補足してみるつもりです。
◇ ◇
11月13日夜の交渉で、下記のような諸手当の支給方法等の見直し提案が示されました。労使合意が得られれば来年度から改めたいという提案です。東京都に準拠した取扱いへの変更提案ですが、地域手当の支給率は都(20%)と当市(12%)で大きな開きがあります。このような大きな格差がある中、他の手当の取扱いを都並に引き下げる提案を容易に受け入れることはできません。
市町村ごとに細かく率を定めている地域手当は様々な点で不合理さが指摘されています。国家公務員の場合、私どもの市内に職場があると12%となり、区部で勤務すると20%となります。都の場合、人事異動によって支給率が大幅に変動する問題性を踏まえ、三多摩で働く都職員も20%に合わせています。したがって、地域手当に関して都は国の定めた基準に従わず自主的な判断を行なっています。
このような点を組合は訴え、手当全般を都並に揃えるのであれば地域手当の支給率の引き上げを同時に検討すべきではないかと申し入れています。人材確保や人材流出を防ぐ観点からも地域手当の支給率を12%にとどめておくことの問題性を組合は提起しています。13日の交渉では市当局としても地域手当の問題性を改めて受けとめ、どうすべきなのか検討していきたいという答えが示されています。
【参考情報】 H市の地域手当は10%です。国基準では6%ですが、独自な判断で10%としています。しかしながら現在、H市当局は財政難を理由に引き下げ提案を組合に示しています。H市職は「近隣自治体との水準均衡に鑑みても認められない」と強く反発しています。機関紙『自治労東京』で報告されているとおり当市とは異なる事情の中でH市職は厳しい労使交渉に入っています。
この機会に地域手当の問題に焦点を当てましたが、提案自体は一つ一つを検証し、年度末まで交渉を重ねながら納得できる決着点をめざしていかなければなりません。今回、私どもの市の提案理由にH市のような「財政難」は上げられていません。そもそも管理職手当の定額制への見直しは人件費原資を引き上げることになります。あくまでも都に準拠した取扱いへの見直しが大きな目的であるという点も踏まえ、できる限り組合員の痛みを回避した決着をめざしていきます。
① 住居手当12,000円を都と同額の15,000円に引き上げる。年齢要件がないのは三多摩26市で当市のみであり、この機会に支給対象を35歳未満とする。
※ 2012年度、住居手当を都と同じ取扱いにする見直し提案が示され、持ち家を対象から外すことは経過措置を設けて合意しました。しかしながら35歳未満の賃借者に限るという不合理な点は労使交渉を重ねた結果、年齢制限を外すことができました。この不合理さは当時とまったく変わっていません。加えて、国家公務員の住居手当支給に年齢要件はありません。
② 上限のなかった通勤手当の1か月あたりの支給額に上限55,000円を設ける。交通用具利用者に対する距離別の支給額や区分等を都と同じ扱いに改める。交通用具と公共交通機関を併用している場合、交通用具を利用する距離が2キロ(現行1キロ)以上から支給する。交通用具を2回使用している場合、それぞれの区間の距離を合算し、その合計額に応じた額を支給する。
※ 2013年度から通勤手当の支給要件を条例の本則通り1キロ以上から2キロ以上に改めることを合意しました。その際、交通用具のみ利用している場合、2キロ以上が支給要件となっています。なお、現在月額55,000円を超えている職員はいません。
③ 一時金の勤勉手当の算定基礎から扶養手当を除く。
④ 管理職手当(現行の部長職20%平均額99,545円、課長職17%平均額73,651円)を定額制(部長職115,000円、課長職80,000円)に改める。
※ 上記④は直接的な労使協議事項ではなく、組合への情報提供であるという説明を受けています。それに対し、組合は総人件費の原資配分の問題にも関わるため、これまで管理職に関しても労使協議事項の一つであることを確認してきていた経緯について指摘しています。
◇ ◇
提案が示された以降、書記長と担当課長レベルでの事務折衝は頻繁に行なっています。副市長が市側の責任者として臨む団体交渉は12月26日と年明けの1月9日に開いています。条例規則や来年度予算案に絡む事項もあるため、1月9日の団体交渉では労使双方、その時点までに判断できることを整理しました。
組合員の皆さんに対し、交渉結果の詳細は次号の組合ニュースで報告する予定です。組合員の皆さん全員が当ブログを閲覧している訳ではなく、そもそも組合の公式なサイトでもありませんので、そのあたりの関係性をわきまえながら組合側の問題意識や考え方などを示させていただきます。
まず4年前の記事「地域手当を巡る問題点」に記しているとおり地域手当の支給率の不合理さは労使で共通認識しています。しかし、市側の判断は「国の定めたルールに従う」というものでした。今回の交渉を通し、前述したとおり組合は地域手当の不合理さを改めて訴えています。その結果、年末の交渉では予想した以上に前向きな考え方が市側から示されていました。
1月9日の交渉では住民の皆さんや市議会での理解を求めなければならないため、現時点で確約した回答は示せないという説明を受けています。そのような事情は充分理解できる難しい問題であり、9日の交渉では引き上げに向けた正式な回答を引き出せていません。それでも「国の見直しを待たず、近隣市の支給率を踏まえ、自主的に判断する必要がある」という前向きな姿勢を改めて確認しています。
このような基本的な方向性を確認した上、都準拠とする諸手当の見直し提案の取扱いを判断しました。さらに管理職手当の定額制への移行は人件費を膨らませる見直しでした。そのため、今回の見直し提案は財政難を理由としたものではないことを確認し、ことさら係長以下の組合員のみに痛みを強いるような意図がないことも確認していました。
このような前提のもと年末の交渉で、組合からは勤勉手当の算定基礎から扶養手当を除くのであれば、その原資を充てることで人事評価の拠出金制度の見直しをはかるべきではないのかと訴えていました。拠出金制度ではB評価(標準的な評価)でも勤勉手当が減らされるため、多くの職員が不満を抱いていました。
今回、諸手当の見直し提案を受け入れる中で拠出金制度を改めさせ、少しでも組合員の痛みを回避した決着をはかっています。そして、懸案課題である地域手当の問題に関しても一歩前に踏み出す考え方が示されていることを大きく評価しています。地域手当の引き上げが実現できれば全体的な給与改善につながるため、たいへん大きな成果を上げたことになります。
実は1月9日の交渉で継続協議の扱いを確認した提案事項があります。それは住居手当の見直しです。もちろん額の引き上げは歓迎すべき提案です。しかし、年齢要件の問題は容易に受け入れられないものでした。35歳という線引きは自宅を所有する比率が高まる傾向から判断したようですが、必ず35歳までに自宅を所有できるものではなく、一定の年齢をもって住居手当が支給されなくなる制度は不合理だと考えています。
そもそも国家公務員の制度に年齢要件はなく、民間企業の支給実態を調べてみても都の制度自体が特異なものとなっています。そのため、私どもの市以外の三多摩各市が都に準拠したという実情は意外なことでした。組合からは発想を変え、住居手当に年齢要件がないことを強みとし、そのことをアピールすることで新規採用時の人材確保面でのセールスポイントにすべきではないのかと訴えています。
住居手当について、都は制度導入当初より国とは別の主旨に基づく制度として設計してきた背景がある。平成24年に都が現行の年齢要件を入れた際の考えは、それまでの世帯主等を支給要件とした制度により、結果として高年齢層、上位職層ほど受給割合が高い実態を是正し、「住居費負担が給与水準に比して相対的に過重となっている職員に限定する」との考えのもと、自宅に居住する職員を対象外とし、若年層の賃貸者に限定して支給対象としたもの。35歳という年齢は、採用状況、昇任状況、支給される給与水準等を総合的に勘案した結果、設定されたもの。
上記は組合の訴えに対し、事務折衝の際、市側から説明された「メモ」の内容の一部です。当初から国と都が別の主旨での制度だったことは理解できます。しかし、住居費の負担が変わらない中、ある一定の年齢で支給が打ち切られることの説明としてはあまり納得できません。35歳になれば住居手当の支給額に見合った昇給があるのかと言えば必ずしもそうではありません。
そもそも都の労使交渉の中で、手当よりも基本給に原資配分を厚めにするため、35歳という年齢要件を設けたという話も耳にしています。つまり組合側も納得した上で、一般的には馴染みの薄い年齢要件を設けたものと見られています。それにも関わらず、三多摩各市も都と横並びの支給方法に改めていることに正直なところ違和感を覚えています。
ちなみに「住居手当 年齢要件」で検索した際、トップに掲げられたサイト「日本の人事部」で専門家が「年齢によって支給制限する方法ですが、不法とまでは言えないと思われますが、筆者の長年の経験の中でも、こうした仕組みをまだ見たことはないほど、稀な仕組みです」と解説しています。
条例規則や来年度予算案に絡む期限を踏まえ、1月9日に団体交渉を開き、住居手当の見直しは継続協議としています。したがって、来年度は現行制度のままとなる見通しです。ただ市側としては都準拠の方針を下ろしていないため、引き続き年齢要件の問題は労使間での協議事項となっていきます。
以上のような組合の問題意識が広く共感を得られるのか、独りよがりなものなのか、前者であれば自信を持って年齢要件の導入に引き続き反対していくことができます。地域手当の引き上げが実現し、住居手当の額だけ増額し、35歳という不合理な年齢要件を押し返せれば本当に望ましい決着だと言えます。いずれにしても組合員の皆さんから最も期待される組合活動の本務として今後も精一杯力を注いでいきます。
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コメント
週末だと言うのに、沖縄は混乱してますね。予想どおりと
言いますが、やはり日本型リベラルあるいは革新と呼ばれ
る人々はなぜ、ダブスタばかりなんでしょうか。
玉城知事も国会議員当時は、少数派の声を聞け、丁寧に
話し合え、強硬するなと声高に主張していました。しかし
自らが権力の座につくと、県民投票が2択では問題がある
との声を無視し、強引に結果ありきで進めていますね。
さらに市町村に圧力をかけている。県が決めたことに市町
村は従えというのは、日頃の発言と矛盾しないのか
辺野古の埋め立ては反対で、浦添の埋め立ては環境破壊で
はないのか?
本当に日本や韓国には人権派と呼ばれる人物にろくなのが
いない。
投稿: nagi | 2019年1月19日 (土) 09時08分
nagiさん、コメントありがとうございました。
この問題も様々な見方があるようです。投票日は2月24日であり、まだ先ですので機会があれば記事本文で取り上げてみたいものです。
今週末に更新する記事はレーダー照射事件について取り上げる予定です。幅広い見方や情報を提供するサイトの一つとしてご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2019年1月19日 (土) 19時47分