« 2018年12月 | トップページ | 2019年2月 »

2019年1月27日 (日)

厚労省の不適切統計の問題

毎週1回、土曜か日曜に更新しているブログです。コメント欄に寄せられた難しい問いかけは記事本文を通してお答えしています。そのため、新規記事の題材選びに悩むことは滅多にありません。前回の記事「レーダー照射事件から思うこと」の冒頭で「厚労省の不適切統計の問題など注視すべき時事の話題は数多くあります」と記していました。

今週末に投稿する新規記事では厚労省の不適切統計の問題について、いろいろ思うことを書き進めてみます。この問題では不適切どころか統計法に対する違法行為だと断罪され、多くの関係者が処分されています。まず何が問題だったのか、分かりやすくまとめている新聞記事を紹介します。

賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計調査」について、全数調査が必要な対象事業所の一部を調べない不適切な調査が2004年から行われていたことが分かった。担当者間で15年間引き継がれてきた可能性があり、データを正しく装うため改変ソフトも作成していた。統計を基に算定する雇用保険などが過少に給付されていたことも判明し、厚労省は不足分を支払うことを検討する。

勤労統計は厚労省が毎月、都道府県を通じて調査し、従業員5人以上の事業所が対象で、従業員500人以上の場合は全てを調べるルール。しかし、東京都内では全数調査の対象が約1,400事業所あったが、実際には3分の1程度しか調べられていなかった。さらに、全数調査に近く見せかけるため、統計上の処理が自動的に行われるようプログラミングされたソフトも作成されていたという。

賃金が比較的高いとされる大企業の数が実際より少ないと、実態よりも金額が低く集計される可能性がある。勤労統計は月例経済報告といった政府の経済分析や、雇用保険や労災保険の算定基準など幅広い分野で用いられる国の「基幹統計」。雇用保険の失業給付の上限額は、勤労統計の平均給与額を踏まえて決まる。

仕事で病気やけがを負ったと労災認定された場合に支払われる休業補償給付も、平均給与額の変動に応じ見直される仕組みで、正しい手法で調査した結果、平均給与額が高くなれば、こうした保険が過少に給付されていたことになる。厚労省は近く、これまでに判明した事実関係について公表する。政府統計を所管する総務省も、17日に専門家らによる統計委員会を開催し、厚労省から今回の事態について説明を求める。【中日新聞2019年1月10日

定められたルールを勝手に変えて、やりやすいように運用してきた行為は決して許されるものではありません。ただ最初、抽出調査そのものは統計結果の精度を落とすものではない点について思いを巡らしていました。少し前の読売新聞の『編集手帳』では次のような事例を紹介していました。1936年のアメリカ大統領選で、ある有力誌は200万人以上を対象にした調査で「共和党のランドン氏勝利」を予想しました。

これに対し、3千人の調査で民主党のルーズベルト大統領の再選を的中させたのが、後に有名調査会社となるギャラップ社だったことを『編集手帳』の中で伝えていました。「抽出調査でも確度の高い結果が得られることは、もはや周知のことだろう」と続き、「大切なのは母集団の傾向をつかむ正しい手順であり、そんなイロハのイを国の統計を担う専門家がご存じないとは思えない」と厚労省のずさんな調査を批判していました。

つまり今回の問題は東京都内のみ抽出調査だったため、「賃金が比較的高いとされる大企業の数が実際より少ない」という母集団の不適切さが生じていました。さらに「全数調査に近く見せかけるため、統計上の処理が自動的に行われるようプログラミングされたソフトも作成されていた」という話まで耳にすると、厳しく批判されて然るべき問題が発覚したものと受けとめています。

この勤労統計は雇用保険や労災保険の算定基準など幅広い分野で用いられる国の「基幹統計」であり、雇用保険の失業給付の上限額等に影響を与えるため、追加給付に必要な経費は7,950億円に上ると見込まれています。国の「基幹統計」に対する信頼を失墜させ、誤ったデータをもとに進めてきたことになる政府の経済政策等の信憑性が疑われる事態を招いています。

さっそく野党は厚労委員会(閉会中審査)で「アベノクス偽装だ」という言葉を使って政権批判を強めていました。前述したとおり経済政策等に信頼性の揺らぎが生じたことは確かですが、ことさら安倍政権のイメージダウンにつなげる意図で批判した場合、問題の本質的な解明から遠ざかってしまうような懸念があります。そもそも15年近く放置されてきた問題であり、民主党政権も含め、複数の内閣の責任が問われているはずです。

もし現政権の責任に絞って批判するのであれば、次のような具体的な事例を示しながら追及しなければ単なる「批判のための批判だ」というそしりを免れないのではないでしょうか。『毎勤不正で新疑惑「数値上昇」の発端は麻生大臣の“大号令”』という扇情的な見出しの記事に興味を持たれた方はリンク先をご覧いただくこととし、事実関係を報じた下記の記事を紹介します。

「サンプルの入れ替え時に変動がある。改善策を早急に検討してほしい」。2015年10月16日、首相官邸であった政府の経済財政諮問会議。毎月勤労統計についてこう問題提起したのが麻生氏だった。同統計はもともと、調査対象となる比較的大きな事業所について3年ごとにサンプルを総入れ替えし、入れ替えに伴う誤差を補正して数字をはじいてきた。このため15年1月の入れ替えでも、過去にさかのぼって実績値を補正。ところがこの結果、安倍政権が発足した12年12月以降の数字が下振れしてしまった。

アベノミクスの旗振り役として賃金の動きを注視していた麻生氏。見直しに向けた議論は、この「鶴の一声」に歩調を合わせるように始まった。数字が変動する事後的な補正を避けるため、サンプルは総入れ替えでなく段階的な部分入れ替えとする-。こうした厚労省方針は17年に政府の統計委員会に承認され、18年から実行に移された。これにより、統計上の賃金上昇率は急伸する。「賃金伸び 21年ぶり高水準」。8月上旬、全国紙や通信社の記事にこんな見出しが躍った。6月の現金給与総額(速報値)は前年同月比3・6%の急上昇。力強い賃上げが実現したかのような数字だった。【西日本新聞2018年9月29日

そもそも客観的な現況を把握するための統計調査において、恣意的な操作によって数字が変動するようでは問題です。加えて、2015年10月の経済財政諮問会議の関係者が、このような問題を議論した際、500人以上の事業所は全数調査であるというルールを承知していたのかどうか、承知していた場合、なぜ、その時点で厚労省の不適切な調査手法が問題視されなかったのか、今から思えば残念なことです。

統計の専門家、弁護士等の外部有識者で構成される「毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会」の報告書の中では「継続調査(全数調査)の事業所については企業から特に苦情が多く、大都市圏の都道府県からの要望に配慮する必要があった」という始めた当時の事情が記されていました。担当課である統計情報部雇用統計課の当時の担当係長は「誤差計算しても大丈夫だという話だったと記憶している」と話しています。

結局、この調査結果は厚労省による「お手盛り調査」などという批判を受け、発表してからわずか3日後に再調査することを根本厚労相が明らかにしています。さらに国の基幹統計(56種類)のうち22統計で不適切な処理が確認されています。政策立案の重要な材料となる基幹統計をはじめ、公的統計全体に対する信頼を失墜させる事態に至っています。

このような問題が生じている背景として、日本はアメリカや中国などに比べて統計の専門家の育成が遅れ、深刻な人材不足に陥っていることが伝えられています。統計学の重要性に対する認識不足があり、統計を担当する部署の人材配置や予算措置等が軽視されているという現状につながっています。しかし、だからと言って勝手にルールをねじ曲げ、手を抜いて良いと言えるものではありません。

実は法律の条文と現状が必ずしも一致していない事案をいくつか頭に浮かべています。このブログの記事「再び、職務に対する心構え Part2」でも取り上げた国税徴収法第47条のことが真っ先に頭に浮かんでいました。条文では「滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないとき」は「差し押さえなければならない」と規定されています。

確かに「ならない」とされていますので厳格に文言を解釈すれば、差押ができるのに見送っていた場合、行政の不作為を問われる可能性もあります。一方で、国税徴収法には換価の猶予など徴収における緩和制度も設けられています。さらに法律を目的論的な解釈でとらえた際、一定期間後に滞納金を徴収できるのであれば、機械的に差押を執行していくことの不合理さや非効率さがあるため、条文と現状とのミスマッチ感につながっています。

36協定について」という記事の中では「36協定は労働者が1人だった場合でも締結と届出を必ず行なわなければなりません。ただ厚労省の調査によると中小企業の56.6%は36協定を締結していません」と記し、そのうちの半数以上が「時間外労働や休日出勤があるにも関わらず労使協定を締結していない」、つまり「違法残業を課している」という実態であることを伝えていました。

後者の場合、法律の条文が適確に把握されていないため、生じている実態であるように見受けられます。厳格に取り締まりを受ければ「知らなかった」という言い訳は通用せず、法律違反を問われることになります。様々な事情や背景があったとしてもコンプライアンスの重要性が強調されている中、定められているルールは守る、とりわけ公務職場で率先垂範していかなければなりません。

条文と現状が乖離し、条文を杓子定規に解釈して遂行するほうが明らかに不合理だった場合、条文自体を見直していくことも責務の一つなのかも知れません。今回の厚労省における不適切統計の問題は「漫然と踏襲」という言葉で総括されています。勝手な解釈や理解不足のまま前例踏襲されている問題を抱えていないかどうか「対岸の火事」とせず、自らの足元を見つめ直す機会にすべきものと考えています。

最後に、下記のような見方があることも紹介させていただきます。『余計な仕事やらせた歴代大臣にも責任ある』という見出しが付けられた記事でした。実名を上げていませんが、何人かの元大臣の顔が思い浮かびます。厚労省は予算額や事業の範囲に比べ、下記記事のとおり人員不足が慢性化しています。人的な手立てが後回しにされているため、今回のような問題を生じさせている可能性が否めないのであれば、そのような問題を解決する視点も欠かせないものと思っています。

毎月勤労統計の不正調査問題をめぐり、厚生労働省の「闇」が深まっている。昨年12月に総務省統計委員会の指摘を受けながら、公表が遅れたうえ、いまだに原因も解明できていないのだ。厚労省が不正に手を染めた原因は何なのか、責任は誰にあるのか。中央省庁再編との関係とは。霞が関を熟知する元通産官僚の評論家、八幡和郎氏が読み解いた。「仕事のやり方もしっかりしていて、制度も安定的に運用されている国税庁などに比べると、厚労省は『できの悪い組織』といえる。人員も足りないし、仕事のやり方もコロコロ変わり、(2001年、厚生省と労働省の廃止・統合という)組織変更まで行われた」

八幡氏は「歴史的不祥事」を起こした厚労省について、こう指摘した。確かに、厚労省では「薬害エイズ事件」や「消えた年金問題」という不祥事が繰り返されている。その際の対応が、今回の不正調査の根本原因にあるという。八幡氏は「ミスや問題が発覚すると、政治家は『早急に調査して全部正す』と安請け合いして、費用対効果も何も考えずに作業をやらせる。(限られた人員のなか)役所は肝心な仕事ができなくなり、ごまかしたり、体系的に対策を立てずに適当にやってしまう。もともと無理なことをやらせているから、こういう事態になるのではないか」という。

不適切な手法による調査は04年から行われており、雇用保険の失業給付などの過少受給を受けた追加給付の対象は2015万人、額は564億円に上る。対象者からすれば、一刻も早い追加給付が望ましい。ただ、八幡氏は「能力のない組織に『ちゃんとしろ』と言っても、ロクなことがない。今回の補正作業もあまり慌てず、コストパフォーマンスのいい形でやらないと同じことになるだろう。組織として問題の多い役所を、どう改革していくのかをきちんと考えるべきだ」と警鐘を鳴らす。

今回の問題を受けて、政府は鈴木俊彦厚労事務次官ら関係者の懲戒処分を検討している。他に責任を取るべき人物はいないのか。八幡氏は「本当に誰が失敗したのかを究明すべきだ。不正調査を始めた当時の責任者をはっきりさせるとともに、問題に気づきながら直さなかった人もいるはずだ。そのあたりの事情を調べるべきだ。当然、組織改革をきちんとやらず、余計な仕事をやらせたという歴代厚労相の責任もあるだろう」と話した。【ZAKZAK2019年1月21日

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2019年1月20日 (日)

レーダー照射事件から思うこと

年末の記事「2018年末、気ままに雑談放談」と年賀状バージョンの記事「2019年、しなやかに猪突猛進」、それぞれのコメント欄にKEYさんから「レーダー照射事件に関するOTSUさんの見解はお伺いしたいですね」という問いかけがありました。年末の記事のコメント欄でも取り急ぎ一言レスし、新年の記事でも次のようにお答えしていました。

韓国海軍のレーダー照射事件に関し、問題視すべき点があれば日本側が抗議することは当然です。韓国側に非があるのであれば率直に認め、謝罪すべきものと考えています。残念ながら事態は収束する見通しが立っていませんが、険悪な関係が早く修復されることを願っています。

なお、新規記事は職場課題について取り上げる予定です。言うまでもありませんが、レーダー照射事件に対して「沈黙を守る」意図など一切ありません。そのため、必要と判断すれば次回以降の記事本文を通して「何が問題なのか、どうすべきなのか」という自分なりの問題意識をまとめてみるつもりです。

前回の記事は職場課題を取り上げた「諸手当の見直し提案」というローカルな内容でした。厚労省の不適切統計の問題など注視すべき時事の話題は数多くありますが、今回の記事では韓国海軍のレーダー照射事件について取り上げてみます。どのような事件だったのか後ほど思い返すためにも、最初にMAG2NEWSに掲げられていた記事『韓国レーダー照射事件でわかった、日本を見くびる韓国の愚かさ』の中から事実経過の分かる箇所を転載させていただきます。

12月20日、日本の排他的経済水域内の公海上である石川県能登半島沖で、海上自衛隊のP-1哨戒機が韓国海軍の広開土王級駆逐艦によって火器管制レーダーを照射されるという事件が起こりました。いわば韓国海軍の駆逐艦によって、攻撃のためのロックオンされたということになります。

これは「攻撃動作」であり、どう考えても敵対行為で、反撃されても文句が言えないほどの行為です。実際、朝鮮日報は、「同じことを韓国軍が自衛隊からされたら、もっと深刻な対応を取るだろう」という韓国側の専門家の意見を載せていました。要するに、韓国軍なら同様のことをされたら即時攻撃するということです。

日本側は韓国の駆逐艦に意図を問い合わせましたが応答がなく、その後の日本政府の猛抗議に対して韓国側は、「レーダーを運用したが日本の哨戒機を追跡する目的で使用した事実はない」「遭難した北朝鮮の捜索のために火器管制レーダーを可動させたが、瞬間的に日本の哨戒機が入り込んできた」などと例によって言い訳をくるくると変えて弁明。韓国の軍関係者は海上自衛隊の哨戒機のほうが威嚇的だったとまで言う始末です。

上記の記事は台湾出身の評論家である黄文雄さんのメルマガからの抜粋です。黄さんは「日本の場合は専守防衛のため、ロックオンされただけでは攻撃できません。相手から撃たれてはじめて反撃できるのです。韓国軍も当然、そのことはわかっているはずです。だから日本側をナメてロックオンなどというふざけたことをしてくるのでしょう」と解説しています。その記事の最後には次のような問題意識が示されていました。

今後、日本の対韓国姿勢は大きく変更せざるをえないでしょう。日韓友好を叫びながら、日本批判や日本攻撃を繰り返す韓国は、何をやっても日本は怒らないと見くびっていることは明らかです。だから韓国では、日本は韓国の都合よく利用する対象であるという「用日論」が流行るわけです。このように韓国を増長させてしまったのは、日本側にも責任があります。

何度ゴールポストを動かされても、日本は忍耐強く韓国のワガママに付き合ってきました。そのことが、韓国を勘違いさせてしまったのです。すでに韓国の勘違いは、両国間の軍事的一触即発を招くほどまでエスカレートしてしまいました。ここで日本が断固たる姿勢を見せなければ、韓国の勘違いはいつまで経っても治らず、さらに最悪の事態を招くことになるでしょう。

今回の事件では身勝手な言い分を繰り出し、自らの非を認めず、日本への反発を強めている韓国に対して憤られている方々が多いのだろうと思っています。黄さんの問題意識と同様、これまでの日本の対応が甘すぎたとお考えの皆さんも多いはずです。さらに「韓国の愚かさ」「韓国の勘違い」という言葉に首肯し、徹底的に韓国を叩くことが不可欠だと考えている方も多いのかも知れません。

曖昧な決着を避け、客観的なデータを公表することで韓国側の非を明らかにすることで、これまでとは異なる未来志向の日韓関係につながるのであれば何よりなことです。したがって、今回の日本政府の対応は望ましい判断であり、下記報道にあるような事実関係であれば安倍首相ならではのリーダーシップを発揮した結果であることを肯定的にとらえられます。

韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題をめぐり日韓の主張がぶつかる中、防衛省が「証拠」として当時の映像の公開に踏み切った。同省は防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った。日本の正当性を世論に訴える狙いだが、泥沼化する恐れもある。

防衛省は当初、映像公開について「韓国がさらに反発するだけだ」(幹部)との見方が強く、岩屋毅防衛相も否定的だった。複数の政府関係者によると、方針転換は27日、首相の「鶴の一声」で急きょ決まった。韓国政府は11月、日韓合意に基づく元慰安婦支援財団の解散を決定。元徴用工訴訟をめぐり日本企業への賠償判決も相次ぎ、首相は「韓国に対し相当頭にきていた」(自民党関係者)という。そこに加わったのが危険な火器管制レーダーの照射。海自機への照射を否定する韓国の姿勢に、首相の不満が爆発したもようだ。

首相の強硬姿勢は、2010年9月に沖縄県・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件で対応のまずさを露呈した旧民主党政権の教訓も背景にある。当時、海上保安庁が撮影した映像を菅内閣は公開せず、海上保安官がインターネット動画サイトに投稿して騒ぎが拡大。首相は13年12月の党首討論で「出すべきビデオを出さなかった」と批判した。政府関係者は今回の首相の胸の内を「後で映像が流出するのも嫌だから『出せ』と言っているのだろう」と解説した。【JIJI.COM 2018年12月28日

事件発覚後、日韓防衛当局間での実務協議を通し、再発防止策やトラブルの原因究明について何らかの結論が出る可能性も残されていたようです。それにも関わらず、安倍首相の指示で映像の公開に踏み切ったため、お互いの対立感情が煽られ、時事通信の記事の中で懸念されていた「泥沼化する恐れ」が現実化した模様です。

日本側が過剰に譲歩した「玉虫色の決着」は望ましくないため、「安倍首相の判断は誤りだった」と決め付けた批判は避けなければなりません。私自身の思いは前述したとおり「問題視すべき点があれば日本側が抗議することは当然です。韓国側に非があるのであれば率直に認め、謝罪すべきものと考えています」という当たり前なものであり、事実関係に対して謙虚な姿勢で向き合い、お互いが信頼関係を高めていく努力を尽くすべきものと考えています。

一方で「過剰に譲歩」とは次元の異なる話として、相手側の言い分や置かれた立場にも思いを巡らせながら最適な解決策を探るという姿勢も欠かせないものと考えています。そのためには相手側を「愚かでワガママだ」と見下すような認識は拭う必要があります。韓国との関係は絶っても構わないという極端な声も耳にしますが、良好な関係を築きたいという目的を重視するのであれば、このような姿勢が求められていくものと思っています。

今回のレーダー照射事件に際し、安倍首相の判断を強く支持される方々が多いことは前述したとおりです。安倍首相と同じような価値観をお持ちの方が多いからこそ、安倍政権の支持率は極端に低下せずに推移している一因であるはずです。このようなコアな支持者の思いを背にしているため、安倍首相ならではの政治的な判断を積み重ねていけるのだろうと見ています。

韓国に対しては強く出るべき、このようなコアな支持者の声があり、防衛省の意向とは異なる対応をはかったことになります。逆に前例にならい、穏便な決着をはかった場合、安倍首相はコアな支持者からの反発を招いていたのかも知れません。いずれにしても政治家が支持者の声を受けとめ、支持率を意識することは当たり前な話だと思っています。

5年前の記事「政治改革の熱狂と崩壊」の中で、「当時、7千万人の日本人が戦争に熱狂する中、冷静に日本の行く末を案じた人物」について記していました。このことは日本中が熱狂する中、政治家が対米戦争を回避する判断を下すことは難しい時代だったという話につながっていました。幸いにも現在、安倍首相や政府の判断を表立って批判できる社会であることも確かです。

世論が単色の意見に染まってしまい、政治的な判断を下す際の選択肢の幅が狭まるようでは国民にとって望ましいことではありません。このような関係性に思いを巡らした時、韓国側の選択肢は極めて狭まってしまっているようです。日本側がレーダー照射事件に関する事実関係を粛々と示していったとしても、韓国側が率直に非を認め、謝罪できるような環境から遠ざかっています。

韓国の世論調査で8割以上の国民が、この問題で日本に対する反発を強めているようです。韓国の国内では客観的な事実関係が適確に伝わっていないためなのかも知れませんが、反日感情が高まった非常に残念な現況だと言わざるを得ません。安全保障面や経済的な関係を考慮した際、韓国とは友好的な関係を維持したいものと考えています。そのことを最優先の目的とした場合、もう少し相手側の言い分や立場を尊重した対応もあり得たのかも知れません。

昨年9月の記事「自民党総裁選と改憲の動き」の中では「安倍首相がプーチン大統領の性格を気遣いながら低姿勢で接していることを責める気持ちは一切ありません。首脳同士の良好な関係が私たち国民にとって最良の結果を引き出していただけることを期待しながら、私自身は安倍首相の今回の沈黙も含めてロシアとの関係性を評価しています」と綴っていました。

北方領土交渉は大きな山場を迎えつつあります。ここ最近、本来であれば日本側が即座に批判や訂正を求めなければならないような発言がロシア側から発せられています。ロシア側は自国内の世論を踏まえた戦略的な発言であり、日本側の沈黙に近い対応は大きな目的を達成させるために欠かせない振る舞い方なのかも知れません。そうであれば納得できる対応であり、日刊ゲンダイの記事『前のめり安倍首相に露が食わす「条文作成」の毒まんじゅう』のような結果に至らないことを願っています。

このような事情を理解しながらも、ロシアとの関係に比べて韓国に対する安倍政権の接し方は極端に厳しい気がしています。この話を組合員と雑談した時、「韓国を叩いても反撃されることや損することはないから言いたいことを言えるんじゃないのですか」と答えが返ってきました。あまりに率直な答えが返り、「なるほど」と思わざるを得ませんでした。安倍首相がそのような発想で対応しているのかどうか分かりませんが、お互いが相手を見下し、見くび合っていては関係修復も険しい道のりだろうと思っています。

| | コメント (23) | トラックバック (0)

2019年1月12日 (土)

諸手当の見直し提案

毎年、12月中旬に職員家族を対象にしたクリスマスパーティーを催しています。組合と職員共済会が共催し、年末の恒例行事として定着しています。主催者として挨拶した際、「私が市役所に入った頃はダンスパーティーでした」と昔話を披露させていただきました。

かなり前の記事「組合役員を続けている理由」の中で記していましたが、私自身が青年婦人部の幹事だった時、ダンスパーティーを小さなお子さんたちも楽しめる催しに切り替えていきました。社交ダンスを中心としたダンスパーティーの参加者は年々減っていました。事前にダンス講習会を開いても、新たに社交ダンスを覚えようとする人たちが少ない現状だったためです。

職員家族クリスマスパーティーという名称に改め、30年以上続いていることに感慨深いものがあることを主催者挨拶で一言添えさせていただきました。記事タイトルから離れた話題から入っていますが、記事タイトルの内容に関連したエピソードとして昨年末のクリスマスパーティーの時に交わした会話も紹介させていただきます。

職員共済会と共催しているため、団体交渉の相手側となる人事担当部署の部長と課長もクリスマスパーティーに出席しています。その日だけは労使の垣根を越え、ざっくばらんに歓談しています。すると部長も課長も、このブログをご覧になっていることを知りました。ひとしきり当ブログのことが話題になった訳ですが、私から次のような点を二人に強調する機会となっていました。

このブログの記事の中で、組合員の皆さんに伝えているニュースや機関誌の内容をそのまま掲げる時があります。組合ニュースそのものは組合員一人ひとりに配られ、配布後の取扱いは自由です。このようなオープンな配布の仕方ですので、組合ニュースが市議会議員や住民の皆さんの目に留まることも想定しています。

要するに誰に見られても困るような内容は掲げていません。ただ交渉結果の内容や組合の考え方に対しては人によって評価が分かれ、批判の対象になる場合があるのかも知れません。それでもコソコソ隠すような労使交渉や主張は行なっていないため、「内部資料」「取扱注意」のような但し書きは一切ありません。

仮に圧倒多数の方々から問題視されるような交渉結果や組合の主張だった場合、何か改める要素があることを察知する機会にすべきだろうとも考えています。そのような意味合いからも当ブログの記事の中で、組合ニュース等の内容をそのまま掲げる時があることを部長と課長に対して説明していました。

つまり団体交渉での組合の訴えは「住民の皆さんから理解を得られないような主張は一切ない」という認識であることを強調する機会につなげていました。労使の立場の違いから簡単に歩み寄れない課題が多かったとしても、お互い真摯な姿勢で議論を重ねていくことの大切さも改めて伝えていました。

言うまでもなく「ヤミ」と批判されるような労働条件は認められない時代であり、そのことを前提に組合は交渉に臨んでいます。喫緊の労使課題は諸手当の見直し提案です。すでに組合ニュースや職場委員会資料を通して組合員の皆さんに報告している内容を今回のブログ記事で紹介した後、直近の団体交渉の動きなどを踏まえ、組合としての考え方を補足してみるつもりです。

             ◇             ◇

11月13日夜の交渉で、下記のような諸手当の支給方法等の見直し提案が示されました。労使合意が得られれば来年度から改めたいという提案です。東京都に準拠した取扱いへの変更提案ですが、地域手当の支給率は都(20%)と当市(12%)で大きな開きがあります。このような大きな格差がある中、他の手当の取扱いを都並に引き下げる提案を容易に受け入れることはできません。

市町村ごとに細かく率を定めている地域手当は様々な点で不合理さが指摘されています。国家公務員の場合、私どもの市内に職場があると12%となり、区部で勤務すると20%となります。都の場合、人事異動によって支給率が大幅に変動する問題性を踏まえ、三多摩で働く都職員も20%に合わせています。したがって、地域手当に関して都は国の定めた基準に従わず自主的な判断を行なっています。

このような点を組合は訴え、手当全般を都並に揃えるのであれば地域手当の支給率の引き上げを同時に検討すべきではないかと申し入れています。人材確保や人材流出を防ぐ観点からも地域手当の支給率を12%にとどめておくことの問題性を組合は提起しています。13日の交渉では市当局としても地域手当の問題性を改めて受けとめ、どうすべきなのか検討していきたいという答えが示されています。

参考情報】 H市の地域手当は10%です。国基準では6%ですが、独自な判断で10%としています。しかしながら現在、H市当局は財政難を理由に引き下げ提案を組合に示しています。H市職は「近隣自治体との水準均衡に鑑みても認められない」と強く反発しています。機関紙『自治労東京』で報告されているとおり当市とは異なる事情の中でH市職は厳しい労使交渉に入っています。

この機会に地域手当の問題に焦点を当てましたが、提案自体は一つ一つを検証し、年度末まで交渉を重ねながら納得できる決着点をめざしていかなければなりません。今回、私どもの市の提案理由にH市のような「財政難」は上げられていません。そもそも管理職手当の定額制への見直しは人件費原資を引き上げることになります。あくまでも都に準拠した取扱いへの見直しが大きな目的であるという点も踏まえ、できる限り組合員の痛みを回避した決着をめざしていきます。

① 住居手当12,000円を都と同額の15,000円に引き上げる。年齢要件がないのは三多摩26市で当市のみであり、この機会に支給対象を35歳未満とする。

※ 2012年度、住居手当を都と同じ取扱いにする見直し提案が示され、持ち家を対象から外すことは経過措置を設けて合意しました。しかしながら35歳未満の賃借者に限るという不合理な点は労使交渉を重ねた結果、年齢制限を外すことができました。この不合理さは当時とまったく変わっていません。加えて、国家公務員の住居手当支給に年齢要件はありません。

② 上限のなかった通勤手当の1か月あたりの支給額に上限55,000円を設ける。交通用具利用者に対する距離別の支給額や区分等を都と同じ扱いに改める。交通用具と公共交通機関を併用している場合、交通用具を利用する距離が2キロ(現行1キロ)以上から支給する。交通用具を2回使用している場合、それぞれの区間の距離を合算し、その合計額に応じた額を支給する。

※ 2013年度から通勤手当の支給要件を条例の本則通り1キロ以上から2キロ以上に改めることを合意しました。その際、交通用具のみ利用している場合、2キロ以上が支給要件となっています。なお、現在月額55,000円を超えている職員はいません。

③ 一時金の勤勉手当の算定基礎から扶養手当を除く。

④ 管理職手当(現行の部長職20%平均額99,545円、課長職17%平均額73,651円)を定額制(部長職115,000円、課長職80,000円)に改める。

※ 上記④は直接的な労使協議事項ではなく、組合への情報提供であるという説明を受けています。それに対し、組合は総人件費の原資配分の問題にも関わるため、これまで管理職に関しても労使協議事項の一つであることを確認してきていた経緯について指摘しています。

             ◇             ◇

提案が示された以降、書記長と担当課長レベルでの事務折衝は頻繁に行なっています。副市長が市側の責任者として臨む団体交渉は12月26日と年明けの1月9日に開いています。条例規則や来年度予算案に絡む事項もあるため、1月9日の団体交渉では労使双方、その時点までに判断できることを整理しました。

組合員の皆さんに対し、交渉結果の詳細は次号の組合ニュースで報告する予定です。組合員の皆さん全員が当ブログを閲覧している訳ではなく、そもそも組合の公式なサイトでもありませんので、そのあたりの関係性をわきまえながら組合側の問題意識や考え方などを示させていただきます。

まず4年前の記事「地域手当を巡る問題点」に記しているとおり地域手当の支給率の不合理さは労使で共通認識しています。しかし、市側の判断は「国の定めたルールに従う」というものでした。今回の交渉を通し、前述したとおり組合は地域手当の不合理さを改めて訴えています。その結果、年末の交渉では予想した以上に前向きな考え方が市側から示されていました。

1月9日の交渉では住民の皆さんや市議会での理解を求めなければならないため、現時点で確約した回答は示せないという説明を受けています。そのような事情は充分理解できる難しい問題であり、9日の交渉では引き上げに向けた正式な回答を引き出せていません。それでも「国の見直しを待たず、近隣市の支給率を踏まえ、自主的に判断する必要がある」という前向きな姿勢を改めて確認しています。

このような基本的な方向性を確認した上、都準拠とする諸手当の見直し提案の取扱いを判断しました。さらに管理職手当の定額制への移行は人件費を膨らませる見直しでした。そのため、今回の見直し提案は財政難を理由としたものではないことを確認し、ことさら係長以下の組合員のみに痛みを強いるような意図がないことも確認していました。

このような前提のもと年末の交渉で、組合からは勤勉手当の算定基礎から扶養手当を除くのであれば、その原資を充てることで人事評価の拠出金制度の見直しをはかるべきではないのかと訴えていました。拠出金制度ではB評価(標準的な評価)でも勤勉手当が減らされるため、多くの職員が不満を抱いていました。

今回、諸手当の見直し提案を受け入れる中で拠出金制度を改めさせ、少しでも組合員の痛みを回避した決着をはかっています。そして、懸案課題である地域手当の問題に関しても一歩前に踏み出す考え方が示されていることを大きく評価しています。地域手当の引き上げが実現できれば全体的な給与改善につながるため、たいへん大きな成果を上げたことになります。

実は1月9日の交渉で継続協議の扱いを確認した提案事項があります。それは住居手当の見直しです。もちろん額の引き上げは歓迎すべき提案です。しかし、年齢要件の問題は容易に受け入れられないものでした。35歳という線引きは自宅を所有する比率が高まる傾向から判断したようですが、必ず35歳までに自宅を所有できるものではなく、一定の年齢をもって住居手当が支給されなくなる制度は不合理だと考えています。

そもそも国家公務員の制度に年齢要件はなく、民間企業の支給実態を調べてみても都の制度自体が特異なものとなっています。そのため、私どもの市以外の三多摩各市が都に準拠したという実情は意外なことでした。組合からは発想を変え、住居手当に年齢要件がないことを強みとし、そのことをアピールすることで新規採用時の人材確保面でのセールスポイントにすべきではないのかと訴えています。

住居手当について、都は制度導入当初より国とは別の主旨に基づく制度として設計してきた背景がある。平成24年に都が現行の年齢要件を入れた際の考えは、それまでの世帯主等を支給要件とした制度により、結果として高年齢層、上位職層ほど受給割合が高い実態を是正し、「住居費負担が給与水準に比して相対的に過重となっている職員に限定する」との考えのもと、自宅に居住する職員を対象外とし、若年層の賃貸者に限定して支給対象としたもの。35歳という年齢は、採用状況、昇任状況、支給される給与水準等を総合的に勘案した結果、設定されたもの。

上記は組合の訴えに対し、事務折衝の際、市側から説明された「メモ」の内容の一部です。当初から国と都が別の主旨での制度だったことは理解できます。しかし、住居費の負担が変わらない中、ある一定の年齢で支給が打ち切られることの説明としてはあまり納得できません。35歳になれば住居手当の支給額に見合った昇給があるのかと言えば必ずしもそうではありません。

そもそも都の労使交渉の中で、手当よりも基本給に原資配分を厚めにするため、35歳という年齢要件を設けたという話も耳にしています。つまり組合側も納得した上で、一般的には馴染みの薄い年齢要件を設けたものと見られています。それにも関わらず、三多摩各市も都と横並びの支給方法に改めていることに正直なところ違和感を覚えています。

ちなみに「住居手当 年齢要件」で検索した際、トップに掲げられたサイト「日本の人事部」で専門家が「年齢によって支給制限する方法ですが、不法とまでは言えないと思われますが、筆者の長年の経験の中でも、こうした仕組みをまだ見たことはないほど、稀な仕組みです」と解説しています。

条例規則や来年度予算案に絡む期限を踏まえ、1月9日に団体交渉を開き、住居手当の見直しは継続協議としています。したがって、来年度は現行制度のままとなる見通しです。ただ市側としては都準拠の方針を下ろしていないため、引き続き年齢要件の問題は労使間での協議事項となっていきます。

以上のような組合の問題意識が広く共感を得られるのか、独りよがりなものなのか、前者であれば自信を持って年齢要件の導入に引き続き反対していくことができます。地域手当の引き上げが実現し、住居手当の額だけ増額し、35歳という不合理な年齢要件を押し返せれば本当に望ましい決着だと言えます。いずれにしても組合員の皆さんから最も期待される組合活動の本務として今後も精一杯力を注いでいきます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2019年1月 1日 (火)

2019年、しなやかに猪突猛進

あけましておめでとうございます。Inosisi

今年もよろしくお願いします。 

毎年、元旦に年賀状バージョンの記事を投稿しています。いつも文字ばかりの地味なレイアウトであり、せめてお正月ぐらいはイラストなどを入れ、少しだけカラフルになるように努めています。2005年8月に「公務員のためいき」を開設してから791タイトル目となりますが、必ず毎週土曜又は日曜に更新し、昨年1年間で52点の記事を投稿していました。

2015年1月にココログのアクセス解析の管理機能が大きく変わり、累計数が分からなくなっています。一時期に比べ、1日あたりのアクセス数は減っています。それでも週に1回の更新にも関わらず、毎日500件ほどのアクセスがあります。これまで時々、いきなりアクセス数が急増する場合もありました。Yahoo!のトップページに掲げられた際のアクセス数23,278件、訪問者数18,393人が1日あたりの最高記録となっています。

ことさらアクセスアップにこだわっている訳ではありませんが、やはり多くの人たちにご訪問いただけることは正直嬉しいものです。特に当ブログは不特定多数の方々に公務員やその組合側の言い分を発信する必要性を意識し、個人の判断と責任でインターネット上に開設してきました。したがって、より多くの人たちに閲覧いただき、多くのコメントを頂戴できることを願っているため、毎日、たくさんの方々にご訪問いただき、ブログを続けていく大きな励みとなっています。

一方で、たいへん恐縮ながら2012年の春頃から私自身はコメント欄から距離を置くようになっています。身の丈に合ったペースとして、週に1回、土曜か日曜のみにブログに関わっている現状です。そのことだけが理由ではないようですが、以前に比べるとお寄せいただくコメントの数も減っています。それでも記事内容によっては、貴重なコメントが多数寄せられる時も少なくありません。いずれにしても当ブログをご注目くださっている皆さんにいつも感謝しています。本当にありがとうございます。

さて、今年は亥(イノシシ)年です。年賀状には【イノシシで真っ先に思い浮かぶ言葉は「猪突猛進」です。この言葉には「まっしぐらに突き進む」という前向きな面と合わせ、「後先のことも考えずに」というネガティブな意味が含まれています。もちろん2019年は前者の意味合いで過ごせればと考えています。】と書き添えていました。

12年前の年賀状バージョンの記事タイトルは「2007年、しなやかに猪突猛進」でした。今回、少し迷いましたが、結局のところ年号を「2019年」に変えただけのタイトルとしています。前回記事2018年末、気ままに雑談放談」に続き、安直な付け方となっていますが、年頭の抱負が12年前と大きく変わっていないのであれば迷う必要もないのだろうと判断したところです。

「しなやか」という言葉を辞書で調べると「柔軟で、弾力に富んでいるさま」と書かれています。猪突猛進の「後先のことも考えずに」というネガティブな意味を打ち消すため、12年前、新たな年に向けた私なりの思いを「しなやかに猪突猛進」というタイトルに込めていました。前向きな1年間を過ごしたい、そのような思いは変わらず、2019年を迎えています。

今年は4月に統一地方選挙、7月に参院選挙が行なわれます。統一地方選挙は4年に1回、参院選挙は3年に1回であり、12年に1回、同じ年に行なわれます。12年に1回のサイクルは十二支と同じであり、いつも亥年に重なってきたことになります。亥年は私自身にとって節目の年でしたが、あまり認識していなかった巡り合わせでした。

12年前は第1次安倍政権の時代で、自民党は参院選挙で歴史的敗北を喫していました。それ以降、「衆参ねじれ」国会と呼ばれ、政権与党の思惑だけで法案が通らなくなっていました。「決められない政治」と批判されることもありましたが、多面的なチェック機能を充分発揮できないまま「決めすぎる政治」もそれはそれで問題だろうと思っています。

年末のラジオ番組で、安倍首相は衆参同日選の可能性について「頭の片隅にもない」と否定していました。しかし、「その時は頭の片隅にもなかった」と釈明し、ダブル選挙に踏み切る可能性も充分あり得るはずです。ただ同日選に至らなかったとしても、2019年は今後の政治の行方を左右する重要な年になるのではないでしょうか。このまま安倍政権が衆参両院で安定多数を占めていくことを望む方々も多いのだろうと思っています。

その選択肢のほうが「日本のため、国民のため」につながるという判断であろうことも理解しています。一方で、このままで良いのかという国民の声があることも確かです。私自身の問題意識は前回記事に綴ったとおり左や右の立場に関わらず、異なる「答え」を持つ他者を全否定するのではなく、「何が問題なのか」という点を強調していく必要性を痛感しています。安倍政権を批判するのであれば、それこそ「何が問題なのか」という具体的な事例を上げながら論点を提起していくことが欠かせないものと考えています。

捕鯨を巡る長年の日本外交が挫折した。極めて残念な事態である。政府が、クジラの資源管理を行う国際捕鯨委員会(IWC)に対し、日本が脱退すると通告した。来年7月から、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)で、約30年ぶりに商業捕鯨を再開する。脱退により、日本が南極海と北西太平洋で行ってきた調査捕鯨はできなくなる。IWCは、クジラの保護と捕鯨産業の秩序ある発展を目的に設立された。だが、動物愛護を主張する反捕鯨国が過半数に達した。9月の総会では、日本が提起した商業捕鯨の再開案が否決された。

菅官房長官は「クジラ資源の保護のみを重視する国から歩み寄りが見られず、今回の決断に至った」と述べた。政府は、このままIWCに残っても商業捕鯨の再開は難しいと判断したのだろう。懸念されるのは、国際社会の反発が強まることである。日本は戦後、国際協調主義を掲げ、他国と主張が対立しても協議による合意を重んじてきた。その日本が、意見が通らないからと国際機関を脱退しては、日本外交全体にマイナスとなりかねない。脱退を検討した経緯も見えにくい。国会や審議会などでの踏み込んだ議論はなかった。多角的な検討を欠いたまま、政治決着を急いだと見られても仕方あるまい。

商業捕鯨は資源回復が確認された鯨種に限り、IWCの算定方式による捕獲枠を設定して行う。政府は今後もIWCにオブザーバーとして参加する考えだ。商業捕鯨を再開する狙いや食文化の違いに関し、各国に丁寧な説明を続けることが欠かせない。日本の調査捕鯨は、海洋資源の実態把握に貢献してきた。政府は今後、南極海などでクジラを捕らずに目視による調査を続けるという。だが、データの精度は大きく落ちる。貴重な知見の蓄積が途絶えることになる。

クジラの国内消費は低迷している。1960年代には年20万トン前後あったが、最近は5000トン程度で推移している。調査捕鯨の終了で、副産物として供給されてきた鯨肉は市場に出回らなくなる。商業捕鯨を始めた後、全体の需給バランスがどうなるか見通しは立っていない。商業捕鯨を再開する以上、補助金頼みの現状から脱却して、産業として自立することが大切だ。政府と民間が連携し、持続可能な捕鯨産業のあり方について真剣に考えていく必要がある。【読売新聞2018年12月28日

年末にIWC脱退という上記の報道に接した時、各論と総論、両面から現政権の問題性を表出させた事例だと思いました。各論の問題で言えば、読売新聞の記事が分かりやすくまとめています。特に「日本は戦後、国際協調主義を掲げ、他国と主張が対立しても協議による合意を重んじてきた。その日本が、意見が通らないからと国際機関を脱退しては、日本外交全体にマイナスとなりかねない」という見方に大きく首肯しています。

総論の問題で言えば、国会に対して事前の説明はなく、政権与党内でも多面的なチェック機能を働かせず、国家としての重要な決定が下されていることです。自民党の二階幹事長の地元が沿岸捕鯨で有名な和歌山県太地町であり、安倍首相も捕鯨船の拠点である山口県下関市を地盤としています。国際社会の反発を懸念し、政府内にはIWCを脱退することへの慎重論もあったようですが、二人の意思や判断には抗えない構図となっています。

IWC脱退という判断が正しかったのかどうかは各論の問題です。しかし、本当に正しい判断なのか多角的な検証を尽くせたのかどうかは総論の問題であり、残念ながらそうではなかったことは上記の報道が明らかにしています。安倍首相は自民党総裁に返り咲いた以降、全国規模の国政選挙では5連勝中です。前述したとおり6連勝を望む方々が多いことも理解した上で、幅広い考え方や情報を提供する場として、このブログでは引き続き政治的な話題も取り上げていくつもりです。

組合の執行委員長としては、ますます大事な1年になろうかと思います。組合役員の担い手不足が大きな課題となっています。「定期大会を終えて、2016年秋」に綴ったとおり持続可能な組合組織に向け、引き続き組合活動全般を見直しながら「ピンチをチャンス」に変えられるよう努力していかなければなりません。その一歩として協力委員制度を創設しています。今後も新たな発想で創意工夫した活動に心がけ、よりいっそう組合員の皆さんから信頼される組合活動に高める努力を尽くしたいものと考えています。

組合役員の担い手不足の理由として「組合方針に政治的な活動が含まれているから距離を置かれてしまう」という声があることも承知しています。このような声に対して「等身大の組合活動として」や「組合民主主義について」という記事を通して私自身の考え方をお伝えしています。職場課題と政治活動に対する力点の置き方を主客逆転させないことはもちろん、「なぜ、取り組むのか」という出発点からの周知の仕方にも、よりいっそう注意を払っていきます。

最後に、このブログは実生活に過度な負担をかけないよう留意しながら引き続き週に1回、土曜か日曜の更新を基本としていきます。いつもお正月のみ少し変則な日程となっています。次回は来週末に更新する予定です。きめ細かいコメント欄への対応がはかれずに恐縮ですが、一人でも多くの方にご覧いただければ誠に幸いなことだと思っています。それでは末筆ながら当ブログを訪れてくださった皆さんのご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年早々の記事の結びとさせていただきます。

     ☆新春特別付録☆ 「2018年ブログ記事回想記」 

年賀状バージョンの恒例となっていますが、今回も2018年に投稿した記事をインデックkadomatsuス(索引)代わりに12点ほど並べてみました。改めて皆さんに紹介したい内容を中心に選び、いわゆる「ベスト」ではありません。したがって、12点の並びも投稿日順となっています。それぞれ紹介した記事本文へのリンクをはってありますので、のんびりご覧いただければ幸いです。

  1. 2018年、犬も歩けば ⇒ 今回と同じ年賀状バージョンです。戌(犬)年の年頭に「犬も歩けば棒に当たる」という諺を紹介しながら為せば成る、為さねば成らぬ何事も」という言葉のような心構えの大切さを記していました。やはり特別付録として「2017年ブログ記事回想記」も掲げています。
  2. 多面的に見た時の明治維新 ⇒ 明治維新から150年、 明治維新という過ち~日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト~』という文庫本の内容を紹介しながら見る位置や角度を変えると物事に対する評価が大きく変動する象徴的な一例として取り上げていました。
  3. 平昌オリンピック、強まる政治色 ⇒ 韓国で開かれた冬季大会に北朝鮮が参加し、朝鮮半島を巡る政治色の強い大会となっていました。政治の動きとスポーツを100%切り離すことはできないのであれば、文字通りオリンピックが「平和の祭典だった」と称賛されるような場になって欲しいものと願いました。  
  4. 人事・給与制度見直しの労使協議 ⇒ 能力評価を中心にした査定昇給は生涯賃金に大きく影響するため、より慎重な労使協議を重ねてきました。一人ひとりのやる気を損ねず、組織そのものを活性化させていくため、どのような制度が必要なのか、その労使協議結果をまとめた内容を報告した記事でした。 
  5. 日本国憲法が大きな岐路に  ⇒ 定期的に訪問しているブログの一つが「澤藤統一郎の憲法日記」です。澤藤さんの講演に参加できる機会があり、弁護士の視点から憲法を切り口にした平和的生存権などに関する講演内容を紹介していました。最後のほうでは組合機関誌に寄稿した私自身の問題意識を綴った原稿も掲げています。
  6. 市議選が終わり、今、思うこと ⇒  私が勤めている自治体の市議会議員選挙が終わった後、いろいろ思うことを書き残していました。 もともと市議選は候補者と有権者との顔が見える中での関係性を深めているため、国政での風の影響はそれほど受けない傾向があります。それでも世論調査の一つとして市議選の結果をとらえながら国政のことにも触れていました。
  7. 平和の話、サマリー ⇒  直前の記事は「平和の話、インデックスⅢ」とし、原爆忌から終戦記念日に続く時期、「平和の話」を「Part2」にかけてまとめてみました。長い記事になることが見込まれたため、「誰もが戦争は避けたい、防ぎ方に対する認識の違い」「歴史を振り返る中で、広義の国防や安心供与について」などという小見出しを付けていました。
  8. 横田基地にオスプレイが正式配備 ⇒ 三多摩平和運動センターが呼びかけたオスプレイの正式配備に反対する駅頭での宣伝活動に参加しました。このような行動の際、私自身もマイクを持つ一人として指名されます。出番があるのであれば、最も訴えたいことを自分の言葉を尽くして訴えています。その時に訴えた内容を紹介した記事でした。
  9. 子どもの貧困と社会的養護の問題 ⇒ 連合三多摩の政策・制度討論集会の第1分科会「子どもが安心して暮らせる社会をめざして」の中で「公益財団法人あすのば」と「里親ひろば ほいっぷ」の方々から伺ったお話を紹介していました。特に当事者だった方から実際に経験してきたお話を伺うことができ、たいへん貴重な機会だったものと考えています。   
  10. 再び、組合役員の担い手問題 ⇒  組合役員の担い手問題」の続きとして「再び」を付けた記事でした。組合役員を長く続ける中で、組合は大事、つぶしてはいけない、そのような思いを強めています。だからこそ担い手の問題が重要であり、緊急的な対応として「協力委員」の創設を考えた経緯等を綴っていました。
  11. 原発の話、インデックスⅡ ⇒  最近の原発報道から思うこと」のコメント欄に引き続き、この記事のコメント欄でもqurさんとAlberichさんとの興味深い議論が交わされています。いろいろな考え方や情報に触れ合うことで「やはり原発はなくしたい」と思うのか、「それでも原発は必要」と思うのか、このブログが原発の将来のあり方について関心を高めていくための一つの材料になれれば幸いなことです。
  12. 働き方改革への労組の対応 ⇒  連合地区協議会として労働学習会『働き方改革への労組の対応』を催し、講師は連合東京の労働政策局長にお願いしました。働き方改革関連法は昨年6月に成立し、今年4月から順次施行されていきます。私たち労働組合の役員は法改正の内容を的確に把握し、働き方改革の流れを受けとめながら組合員の皆さんの待遇改善につなげていかなければなりません。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

« 2018年12月 | トップページ | 2019年2月 »