再び、組合役員の担い手問題
シリアで武装組織に拘束されて3年4か月ぶりに解放されたジャーナリストの安田純平さん、日本の首相として7年ぶりに中国を公式訪問した安倍首相、注目すべき時事の話題は豊富にあります。そのような中で当ブログではマイナーな情報を提供する場として、あまり注目されていない話題を意識的に取り上げるように努めています。
大阪府の松井一郎知事が議会開会中の休憩時間に、公用車に乗って府庁舎周辺を巡回し、車内で喫煙していたことが分かった。11日の府議会総務委員会で取り上げられ、府秘書課は「コーヒーブレークとして段取りした。不適切ではない」と釈明したが、質問した府議は「あまりにもお粗末な使い方だ」と引き続き追及する方針だ。自民党の密城浩明府議が質問し、府の伊藤弘三秘書課長が答えた。委員会に松井知事は出席しておらず、22日に改めて直接質問する予定。
府によると、松井知事は府議会の休憩時間だった今月2日午後3時3分、府庁舎正面から公用車に乗り、府庁舎周辺を巡回して同9分に戻った。車内でたばこを吸って休憩したという。 府の規定では、職務の遂行や警護上の必要性がある場合に公用車を使用できる。車内禁煙の規定はない。一般職員は勤務時間中は禁煙で、抜け出して「一服」すると処分の対象になるが、地方公務員法上の特別職である知事は対象外だ。
松井知事は愛煙家で知られるが、府庁内は知事室も含め全館禁煙。また、府は国よりも厳しい内容で、受動喫煙防止に関する条例制定を目指している。委員会で密城府議は「休憩するなら知事室でできる。たばこを吸うために税金で動かしている車を用意するのはいかがなものか」と問題視した。伊藤課長は「警護上の必要性から休憩するために公用車を使用した。たばこを吸うためではない」と否定しつつ、「公用車の使用について府民から誤解を受けることがないよう心がけたい」と述べた。【毎日新聞2018年10月11日】
このような情報は些末な話なのかも知れません。ただ些末なのかどうかの判断も含め、情報を得られたことによって、受けた側がそれぞれ評価できる関係性に至るものと考えています。そのため、これまで私自身が気になったニュースの中で、あまりマスメディアでは大きく扱っていなかった話題を数多く取り上げてきました。今回の話題もそのようなニュースの一つでした。
その後、委員会での直接的な質疑応答があり、松井知事は記者団の取材に対して「府民から誤解を受けないよう今後は短時間での公用車の利用はやめたい」と答えています。ただ「庁舎外の喫煙スペースに僕が行くと職員が気を遣う」とも説明していました。結局、誤解ではなくて喫煙するために公用車を利用していたようです。余計なコスト負担や運転手の受動喫煙の問題をはじめ、そもそも府職員に厳しい対応を求めている松井知事は率先垂範する立場であり、不適切な行動だったことは明らかです。
しかし、元アナウンサーの長谷川豊さんはブログ記事「毎日放送のバカ報道局に告げる いい加減にしておけ」を通し、質問した自民党の府議や報道した毎日放送に対して怒りをぶつけていました。その記事内容に賛同するコメントも多く、たいへん驚きました。33分間も追及したことについて府議側を批判していましたが、すぐに松井知事が不適切さを認めていれば33分間もかからなかったという見方もできます。
このように同じ事例に接していながら立場や視点によって、受けとめ方や評価が大きく分かれる場面は数多くあります。記事タイトルに掲げた本題から離れた話が長くなっていますが、労使関係において顕著な関係性だと言えます。使用者側と労働者側、やはり立場や視点によって様々な事例に対して評価が分かれる場面も多く、真摯な労使交渉を通して、より望ましい決着点を見出していくことになります。
健全なチェック機能を発揮できる労使関係は非常に重要なことだと考えています。組合役員を長く続ける中で実感してきた関係性です。だからこそ組合は大事、つぶしてはいけない、そのためには担い手が必要、ここ数年、そのような思いを強めながら持続可能な組合組織に向け、できる限りの努力を重ねています。前々回記事「組合役員の担い手問題」に記したとおり引き続き執行委員長に立候補しています。
組合役員を長く続ける中で「組合は必要」という思いを強めています。人事評価制度の本格実施や時間外勤務縮減の動きを受け、ますます職員一人一人の声を労使交渉に反映させていくことの大切さを認識しています。このような役割を果たせる組合組織を維持していくためには幅広い職場から多くの担い手が必要です。残念ながら次年度に向けては担い手の広がりを見出すことができていません。活動全般を見直しながら「ピンチをチャンス」に変えられるよう努力してきましたが、引き続き大きな課題として残されています。
このような中、様々な事情を抱えながらも組合役員に立候補された皆さんには本当に感謝しています。それぞれの力を合わせることで「組合があって良かった」と多くの方から評価されるような組合活動をめざしていきます。新たな一年、様々な難題に対し、引き続き組合運動の先頭に立ち、全力を尽くす決意ですので、よろしくお願いします。
◎ 毎週1回更新しているブログ『公務員のためいき』もご覧いただければ幸いです。
上記は立候補にあたり、組合員の皆さんに回覧し、お示ししている私自身の選挙広報に掲げた内容です。11月9日夜の定期大会に先がけて行なわれる組合役員選挙は定数内の立候補のため、現在、信任投票の実施期間となっています。今回、前々回記事「組合役員の担い手問題」の続きとして「再び」を付けた新規記事を書き進めています。たいへん残念ながら担い手の広がりは見出せず、ピンチは広がっていると言わなければなりません。
選挙広報に記しているとおり人事評価制度の本格実施を受け、ますます「組合は必要」という思いを強めています。管理職からの評価結果が昇給額を左右し、生涯賃金に影響を与えていきます。冗談半分だったのか、もしくは奮起を促すためのものだったのか、真意は分かりませんが、「評価を下げるぞ」という管理職の言葉が部下からすれば場合によってハラスメントという関係性につながっています。
全職員に対して匿名で実施したハラスメントアンケートの結果が安全衛生委員会で示されました。5年前に同様のアンケートを実施していましたが、「セクハラを受けた」という比率は横ばいである一方、パワハラについては上昇しています。特に自由記載欄に書き込まれた内容は深刻なものが多数見受けられています。真偽は確認できませんが、管理職に対する不満の声が5年前に比べて増加していることは確かでした。
組合は査定昇給の実施にあたって慎重な労使協議を求めてきました。合意する際、第1次評価者と第2次評価者とのダブルチェック機能の強化など恣意的な評価を防ぐ手立てなどを取り入れさせてきました。管理職の皆さんが初めから恣意的な評価を下そうと考えていないものと思いますが、制度や運用面でのチェック機能を設けることは大切です。場合によって個々の管理職と直接話し、「気付き」の機会につなげていくことも組合役員の役割となっています。
時間外勤務縮減の課題に際し、市長らにとって20時完全退庁宣言は「職員のため」という意識からでした。しかし、組合員からは「残りたくて遅くまで残っている訳ではない」という声があり、組合はそのことを申し入れた上、20時に完全退庁できる職場体制の確立こそ急務という認識を労使で確認しています。一職員の立場であれば、市側が進めている制度や運用に修正をかけることは難しく、まして市長や副市長らに率直な意見を伝える機会も皆無に近いのだろうと考えています。
職員の大半が加入している労働組合があり、実際に活動を担う組合役員がいるからこそ発揮できる組合の大事な役割だと言えます。しかしながら担い手がいなくなれば充分な役割を果たせず、看板だけの組合になりかねません。そして、役に立たない組合であれば脱退する組合員が増えていく恐れもあります。立場上、このような危機感を誰よりも強く持ちながら、組合役員の改選期には多くの方々と接触をはかってきています。
直近の執行委員会の後、組合役員の一人から「委員長、危機感が薄いんじゃないですか」と問われました。耳を疑いましたが、執行委員会の中で私が示した「協力委員」の案について立ち上げる時期を不明確にしていたため、そのような印象を与えてしまったようです。定期大会後の新年度中に立ち上げようと考えていましたが、11月9日以降、早々に立ち上げられるような案を取り急ぎまとめることにしました。
発案者の私がまとめ、次の執行委員会で確認を得られれば定期大会当日に提起する議案とする予定です。「協力委員」という名称は仮称ですが、次のような問題意識から発案しています。現在、組合役員の担い手不足の問題が深刻化しています。信任投票の対象とされている執行委員長、副執行委員長、書記長、書記次長、会計幹事、会計監査は欠員とせず、充足してきているため、執行委員の欠員の多さが大きな課題となっています。
執行委員の立候補について個別に勧誘した際、任務の負担感の大きさが引き受けてもらえない主な理由となっていました。以前に比べれば執行委員の負担軽減ははかっていますが、そのように見られている現状は率直に受けとめなければなりません。そもそも隔週夕方に執行委員会があること自体、新たに担う方々にとって大きな負担であることも確かです。しかし、このまま担い手の減少が続くようであれば、前述したとおり組合活動そのものに支障を来すことになります。
現時点でも執行委員の減少は任期中の組合役員個々の役割に負担をかけています。その結果、きめ細かく迅速な対応をはかりにくくしています。そのことは組合員からの要望や期待に充分応え切れない場面につながりかねず、組合に対する結集力に悪影響を与えていくことになります。
個別に勧誘した際、「執行委員と職場委員との中間的な役割であれば引き受けることも考えられる」という趣旨の意見が複数寄せられていました。今後、組合役員の選出方法を各職場からの輪番制にすることの是非など抜本的な議論も必要ですが、次年度に向けた緊急的な対応として「協力委員」の創設を考えたところです。
創設する目的として「①組合規約上の役員の担い手不足という深刻な現状を踏まえ、組合活動の広がりや活性化を目的に協力委員制度を創設する。②執行委員までは担えないが、できることは協力したいという組合員の思いを受けとめ、幅広い職場から組合活動に関与できることを目的とする。③協力委員を引き受けることで、次年度以降、執行委員まで担えるかかどうか段階的な経験の機会につなげることを目的とする。④任期中の組合役員の負担軽減につなげることを目的とする」という点を考えています。
協力委員の役割として「①協力委員の申出や必要に応じ、執行委員会や団体交渉等にオブザーバーとして参加できる。②各種集会や学習会等の日程について個別に案内を受け、可能であれば参加する。③本庁の協力委員は分担した上、月2回、各職場委員あてにニュース等を配布する。④メーデー等の取り組みの際、必要に応じて応援の要請を受ける」という内容を想定しています。
あくまでも現時点での私案であり、今後の議論でどのような修正をはかるべきなのか、そもそも不要という判断に至るのか、まったく分かりません。毎週1回更新しているブログの場で私案とは言え、執行委員会前に示す手順は異例なことです。組合役員の担い手問題について、より望ましい方向性を探り当てていくためにも、取り急ぎ当ブログの場でお示ししています。私どもの組合員の皆さんに限らず、ご意見等がありましたらお気軽にコメントをいただければ幸いですのでよろしくお願いします。
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