役に立たない組合はいらない?
土曜日、三多摩メーデーが催されました。今年もご家族の方を含め、私どもの組合だけで300人以上の参加者を得られています。組合員の皆さんに配布したチラシの中で、私からの挨拶文には今年も「組合員にとってどうなのか」という視点を大事にしながら組合活動を進めていく旨を記しています。
この言葉の重さや広がりを踏まえながら今回の記事を書き進めてみるつもりです。かなり前の記事「組合に入らないデメリットは?」のコメント欄にichiさんから「組合なんてあってもなくても一緒なんじゃないの?」という問いかけがありました。その問いかけに対し、私からは「組合は必要です」と即答し、組合役員を長く続けている中で組合の役割を体感してきていることをお伝えしていました。
ただ組合役員がそのように考えていても、組合員の皆さんと認識にズレがあるようでは問題であり、その「溝」をどうしたら埋められるか、いつも苦慮していることも書き添えていました。そのような思いのもとに当ブログを長く続けているため、ichiさんから前回記事「JR東労組の組合員が大量脱退」にも寄せられた下記のコメントを受けとめ、私自身の思いを改めて綴る機会とさせていただきます。
コメントありがとうございました。私も組合の必要性は感じているのですが、それでも組合の活動に納得がいかなかったので加入しませんでした。ぜひ私と同じような考えの人にも納得して入ってもらえるようなそんな組織になって欲しいと願っています。
私の友人の会社は組合はないですが、サービス残業は皆無、賃金の保証もしっかりしています。私が以前勤めていた会社も労働組合はありませんでしたが、残業代はしっかり出してもらっていましたし、上司の身勝手な判断でサービス残業をさせられることはありませんでした。自分としては働いた分の賃金がしっかり出ればいいわけです。賃上げはもちろん大事ですが、まずはサービス残業をなくしてもらいたいんです。
組合は労働環境の改善、賃上げ交渉さえしていれば十分なんです。組合主催の飲み会(組合費から補助有)、政治活動への借り出し、組合員強制加入の保険、自動車購入などのための金貸し等々。必要のないものまで組合でやって、そのせいで組合費等の負担が跳ね上がってしまうのに、本来やるべき仕事はやらない。自治労全体で決まっていることだから、変えられないという事情はあるのかもしれません。
組合費が月1500円くらいまで下がって、サービス残業がなくなるなら、たぶん私も組合に加入すると思います。そうはいかないんですよね。3000円、保険含めたら6000円は出さないといけないのに、サービス残業は残り続ける。組合活動という余計な活動は増えるのにね。
私も労働組合は必要だとは思います(ちゃんと機能するのが前提)し、金額に見合った働きをしているのならぜひ加入したいと思っています。ですが、今のうちの組合の活動を見るとなくても変わらないんじゃないかと思わずにはいられないのです。私には、非組合員の市長や課長のほうが労働環境の改善に熱心に見えます。
最近の記事の冒頭にも記しましたが、このブログを定期的に訪問されている方が必ずコメント欄をご覧になっているかどうかと言えば、そうとも限らないようです。そのため、今回の記事を書き進めるにあたり、まずichiさんから寄せられていたコメントの全文を掲げさせていただきました。
真っ先に指摘しなければならない点として、サービス残業が上司の身勝手な判断で強いられているようであれば大きな問題です。サービス残業は違法であり、撲滅させなければなりません。そのことの問題意識が希薄な労働組合や組合役員であれば、ただちに猛省し、考え方を改めていく必要があります。
したがって、ichiさんの前の職場や友人の会社には労働組合がなくても、サービス残業はなかったという話が当たり前な姿だろうと理解しています。サービス残業を当然視する会社があれば、いわゆる「ブラック企業」と認定されることになります。そうならないための労働組合の役割があるはずですが、ichiさんの現況は異例なことだと言わざるを得ません。
ちなみに私どもの職場でも結果的に時間外勤務を申請しなかった、もしくは申請しづらかったという事例が生じがちな点を危惧しています。そのため、昨年6月に投稿した記事「20時完全退庁宣言」の中でも紹介していましたが、組合ニュース等を通して次のとおり具体的な例示をもとに日頃から注意喚起しています。
「19時までの残業は残業とは認めない」などという誤った運用があった場合、即刻改めてください。短時間の時間外勤務となった場合、事後でも問題ありませんので必ず実施申請してください。午後8時までの予定が長引いた場合も同様です。翌日以降、実態に合わせた申請をしてください。実施申請しないとサービス残業に該当します。業務に関連した地域団体等との会議や出張も時間外勤務に当たります。必要な旅費等が自己負担だった場合は問題です。このような問題が強いられた場合、ただちに組合まで連絡してください。
続いて、組合の役割は賃上げ交渉など労働環境の改善に絞るべきという指摘についてです。どのような活動をどの範囲まで取り組むのか、それぞれの組合が加入されている組合員の皆さん同士の議論を通して決めていく問題だろうと考えています。その一つに自治労加盟の選択肢もある訳ですが、自治労に結集しているスケールメリットがあるため、多くの自治体単組や公共サービス関連の組合が自治労に加盟しています。
このような関係性や政治活動の必要性については少し前の記事「自治労の4つの目的」などを通して数多く説明してきています。今回の記事では詳述できませんが、自治労加盟という判断も先輩組合員の皆さんが「組合員にとってどうなのか」という議論のもとに導き出した結論だと言えます。その上で「組合員のため」になることを目的に自治労に結集していることは昔も今も変わっていないはずです。
なお、ichiさんが少し誤解されているような点も見受けられます。「組合員強制加入の保険、自動車購入などのための金貸し等々」という記述が気になりました。私どもの組合では任意の保険が強制加入と位置付けられているのであれば状況は異なってしまいますが、自治労組合員として加入する共済掛金は300円です。保険料3千円については誤解されている可能性がありますので改めて確認してみてください。
自動車購入のためのローンも、あくまでも利用するかどうかは組合員本人の選択です。そのことを前提に労働金庫や全労済と連携しています。そもそも労働金庫も全労済も、労働組合が「組合員のため」に設立しています。組合員にとって優位なローンや保障を受けられるため、各組合が積極的に組合員の皆さんに対して利用を勧めているという関係性です。決して特定の団体のために余計な組合活動があるのではなく、すべて「組合員のため」を目的としています。
組合の大切な役割の一つとして、組合員が何か困った時に様々な相談を受けています。労働条件の問題であれば労使間の窓口となって解決をはかり、生活支援であれば前述したとおり労働金庫や全労済と連携しながら対応し、法律相談であれば顧問契約している法律事務所を紹介しています。いわゆる「駆け込み寺」の役割があり、そのような役割が果たせないようであれば組合の存続意義を問われかねません。
以前「パワハラ防止に向けて」という記事を投稿していますが、私どもの組合はハラスメントの対策に力を注いでいます。パワハラやセクハラという事態が生じた際、組合員から「組合には頼れない」と思われるようでは問題です。ichiさんのコメントを踏まえ、「組合は必要」という説明を加えています。たいへん長い記事になりつつありますが、せっかくの機会ですので、もう少し続けさせていただきます。
残念ながら私どもの組合でも様々な事情で組合に加入されていない方がいます。今のところ「加入率は100%近く」と言って間違いではありませんが、JR東労組の事態を「対岸の火事」とは見れない危機意識を抱えています。そのため、これまで組合の定期大会や新年度を節目にした時期に未加入者の方々に組合加入について呼びかけさせていただいています。今年3月末、機関誌『市職労報』を謹呈した際には次のような言葉を添えていました。
特集記事「春闘期、情勢や諸課題について 役に立たない組合はいらない?」を通し、組合の役割や直近の交渉結果をまとめました。その中で、組合に加入されていない方々を頭に浮かべながら綴っている箇所が多々ありましたので、お読みいただければ誠に幸いです。特に今回、「ここ数年の主な労使交渉の成果」を掲げてみました。このように組合があり、労使交渉を行なえたからこそ、市職員全体の賃金水準等を抑制する動きに一定の歯止めをかけてくることができました。このような労使交渉の成果を出せるのも大半の職員の皆さんが組合に加入いただけているからです。
しかしながら特集記事の中でも触れていますが、組合への加入者が激減するようであれば、組合の存続自体が危うくなります。そして、パワハラや違法な長時間労働を常態化させるような職場は労働組合がない、もしくは組合の存在感が希薄な場合に生じがちです。ぜひ、このような関係性を真摯に受けとめていただければたいへん幸いなことだと願っています。つきましては、この機会に改めて組合加入についてご検討いただけますようよろしくお願いします。
最後に、参考までに未加入者の方々を意識しながら綴った特集記事「役に立たない組合はいらない?」の冒頭に掲げた関連箇所をそのまま紹介させていただきます。パワハラへの対応について事実であれば、ichiさんの働く職場の組合側が改めるべき点もあろうかと思います。それこそ役に立たない組合はいりません。しかし、今回の記事に綴ったとおり組合活動はすべて「組合員のため」を目的にしている点などにご理解くださり、組合加入について改めてご検討いただければ幸いなことです。
* *
「組合は必要」という認識を広めるためには…
■まったく役に立たなければ「いらない」
ここ数年、この特集記事のトップ見出しに「役に立たない組合はいらない?」と掲げています。一歩間違うと大きな誤解を招き、組合をつぶそうと考えているような言葉です。決してそうではなく、組合員の皆さんに「何だろう」と関心を持っていただくための見出しの付け方でした。そもそも組合員の皆さんに対し、まったく役に立たない組合であれば、私自身も「いらない」と思います。
しかし、いろいろ力不足な点もあろうかと思いますが、一定の役割を果たしていることを確信しているため、組合は必要という認識を持ち続けています。ただ組合役員がそのように考えていても、組合員の皆さんと認識にズレがあるようでは問題です。そのようなズレを少しでも解消するためには、組合役員と組合員の皆さんと直接対話できる機会が多ければ多いほど望ましいのですが、それほど多く持てない現状です。
■一人は皆のために、皆は一人のために
組合は、一人ひとりが働き続ける上で困った時に支え合い、皆で助け合うための役割を負っています。いざという時の安心のため、つまり「保険」のような側面があります。中には組合加入を断る理由として「困ることはない」「困った時は自力で解決する」と話される方もいます。実際、ある程度「自助」だけで大きな支障がなく、過ごせる場合も多いのかも知れません。
それでも昔から「一人は皆のために、皆は一人のために」という組合を語る言葉があります。最近は「ワンフォーオール、オールフォーワン」と英語で強調される場面をよく見かけています。つまり一人の力には限りがあり、皆で支え合うことの大切さを表わした言葉です。特に労働条件を決める際は労使対等の原則が働きます。市役所の仕事において、一職員からすれば市長をはじめとした理事者の方々は「雲の上の存在」となります。
それが労使交渉の場では対等に物申すことができ、労使合意がなければ労働条件の問題は当局側の思惑で一方的に変更できないようになっています。このような原則のもとに労使交渉を積み重ね、現在の労働条件が築かれていることを機会あるごとに強調しています。仮に経営者の思惑だけで労働条件が決められていった場合、昨今、問題視されている「ブラック」を生み出す土壌につながりかねません。
また、パワハラや違法な長時間労働を常態化させるような職場は労働組合がない、もしくは組合の存在感が希薄な場合に生じがちです。直接的なメリットが感じられないからと言って、組合への加入者が激減するようであれば、組合の存続自体が危うくなります。ぜひ、このような総論的な意味合いでの「組合は必要」という見方について、ご理解いただければ本当に幸いなことです。
公務員をとりまく情勢がたいへん厳しい中、直接的なメリット、いわゆるプラスの成果にかかわる話は多くありません。しかし、個別課題においても組合員の皆さんの生活を守るため、いつも全力で労使協議を尽くしています。ここ数年の主な労使交渉の成果は別記のとおりです。今回の特集では時間外勤務や人事評価制度、嘱託職員の課題などを報告します。これからも組合員一人一人の思いを代弁する立場で労使協議に臨み、職場課題で結果を出していくことが「組合は必要」という認識を広め、組合への結集力を高めていくものと考えています。
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