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2018年2月 3日 (土)

自治労の4つの目的

インデックス記事の先がけとなった「自治労の話、2012年夏」があるとおり「自治労」を直接的な題材にした内容の投稿は多数あります。最近は少なくなっていましたが、久しぶりにタイトルに「自治労」を掲げた内容の新規記事に取りかかってみます。前回記事「憲法の話、インデックスⅡ」に寄せられた下っ端さんとnagiさんからのコメントが切っかけとなっていますが、最近、全国紙の政治面に「自治労」の名前を見かけたことも後押ししていました。

自治労は30日の中央委員会で当面の国政・地方選挙の運動方針を決めた。立憲民主党の綱領や基本政策が「自治労の政策、運動方針とおおむね一致すると評価できる」と明記し、同党支持の姿勢を鮮明にした。連合傘下の産別組織で立憲民主党への支持を明確化したのは初めて。今後、官公労系労組を中心に同様の動きが出そうだ。一方、民間労組には立憲民主党と距離を置く傾向もあり、来年夏の参院選は、連合が傘下産別ごとに支持政党が分かれる「股裂き状態」に陥る可能性がある。

自治労の運動方針は、従来の「民進党を基軸」という表現を「立憲民主党、民進党を基軸」に改めた。希望の党に関しては「自治労の政策を理解する候補について支援する」との記述にとどめた。自治労出身の江崎孝参院議員は昨年末に民進党を離党し、立憲民主党に入党している。【産経新聞2018年1月30日

水曜の朝、自宅に届く読売新聞で見かけたトピックスでしたが、ネットで検索したところ産経新聞のサイトが上位に掲げられていました。全国紙それぞれが同じ内容の報道を行なっていたようです。翌々日には「旧総評系産別が相次ぎ立憲民主党支持 私鉄総連が民進党から“鞍替え”」という見出しの記事を産経新聞が掲げ、マスメディアも注目する一連の動きが続いています。

自治労の中央委員会に私自身は参加していませんでしたので、参加した私どもの組合の副委員長に新聞報道の話を投げかけてみました。すると全体的な議論の中で、ほとんど政治方針については取り上げられていなかったそうです。それよりも非常勤職員の待遇に大きな影響を及ぼす会計年度任用職員を巡る質疑が大半を占めていたようです。

この話を冒頭で取り上げた理由の一つとして政治的な動きが注目を集めがちですが、自治労そのものも職場に根差した活動が主体であることを強調したかったからです。一方で、やはり自治労の運動方針の中には政党との支持協力関係のあり方などが盛り込まれているのも事実であり、そのあたりについて改めて掘り下げる機会として中央委員会の話を紹介させていただきました。

前回記事に対し、下っ端さんから政治的な運動について「公務員の組合活動で取り組む必要があるのか?です。主たる活動か、少しだけの活動か、少しなら問題ないのか?などと、量の話もしていません。そもそも、扱うべきかどうかについてお伺いしたはずです」という問いかけなどがありました。組合員一人ひとりの政治意識が多様化している中、一つの考え方の押し付けにつながるような活動のあり方への疑念だと受けとめています。

日曜の朝に寄せられたコメントだったため、すでにコメント欄を通して私自身の考え方を改めて説明させていただきました。ただ残念ながら、その「答え」も下っ端さんには充分な理解を得られないものだったろうと思っています。大きく2点、論点を整理してみます。まず労働組合は職場課題のみに専念し、政治的な活動に関わるべきではない、このような考え方があります。

もう一つ、必要に応じて政治的な活動に関わったとしても、安全保障のあり方など組合員の中で評価が分かれるような活動は控えるべき、このような考え方もあります。以上のような考え方があることを認識している中、下っ端さんの問いかけに対する私自身の「答え」は下記のとおりでした。今回も長い記事になりそうですが、その時にお答えした内容をそのまま掲げさせていただきます。

私も下っ端さんのお考えや問題意識は充分理解しています。今回の記事の冒頭にも記したとおり「公務員の組合が政治的な活動に関わること自体に疑義を示される方々」の筆頭だろうと受けています。その上でお答えしてきているつもりですが、そもそも自治労のHPにも掲げられているとおり「自治労の4つの目的」の一つに「社会正義を実現すること」、要するに政治的な活動も大きな柱として位置付けられています。

それでも自治労は単位組合の連合体ですので、それぞれの組合独自の運動方針を確立することもできます。場合によって組合員の総意のもとに自治労を脱退するという選択肢もあり得ます。しかし、私どもの組合の方針として、ご承知のとおり私自身の考え方としても「自治労の4つの目的」を支持しています。その一方で、前回記事に記した次のような立場で日常の取り組みの是非を判断しています。

>自治労からの指令や要請だったとしても、絶対取り組むことができない、もしくは組合員にとってマイナスにつながるものと考えれば拒むつもりです。そのように判断しない限り、取り組む優先順位や濃淡があったとしても自治労という産別に結集している責務は果たしていくべきものと考えています。

だからこそ私自身にとって背伸びせず、主客逆転しないという「量」の問題が大きなポイントとなっています。加えて当たり前なことですが、これまで当ブログの記事で数多く綴ってきているとおり地方公務員として、職員団体として法律的に認められた範囲内で活動しています。

さらに一方で、組合員一人ひとりの政治意識が多様化しているため、個々の意に反する活動に対して批判を受けてしまう場面が増えている現状も重く受けとめています。そのため、このブログや日常の組合ニュースを通して「なぜ、取り組むのか」「なぜ、反対しているのか」という丁寧な説明や情報発信を心がけています。

幸いなことに日常の組合ニュース記事のバランスや内容に対し、下っ端さんと同じような問題意識を持っている組合員の皆さんから及第点をいただいています。「自治労の機関紙と違って、いつも職場課題が前面に出ているので」という率直な一言が添えられたものですので忖度や遠慮した声ではないものと理解しています。

組合役員の担い手の問題ですが、わずかでも政治的な課題に取り組むから新たな立候補者が激減している、そのような見方があることを頭から否定できません。それでも今まで政治的な取り組みや立場から距離を置いた上、職場課題を中心に組合役員を担っていただいた組合員も決して少数ではありません。

時代の変化に対応、そのとおりです。たいへん長く組合役員を務めているため、組合活動が昔に比べて大きく変化していることを体感してきています。その一つに「昔に比べて反戦平和の取り組みなどが減っている」という声もあります。今後、淘汰されない組合組織に向け、長く担ってきた責任者の立場から引き続き日々努力していくつもりです。

自民党と社会党が対峙していた55年体制の時代であれば、労働組合が政治的な活動に関わっていても不団結の要因として心配することも少なかったはずです。確かに今は組合の政治活動が組合員の「組合離れ」を進めかねないというリスク認識を持たなければなりません。しかし、だからと言って自治労が、これまで培ってきた運動方針を180度転換させることができるのか、そのほうが望ましいのか、現実的な問題としてはできない、望ましくないという「答え」に至ります。

真っ新なキャンバスに今から絵を描き始めるのであれば、もっと自由に様々な絵を描けるはずです。すでに完成している絵画を手直しすることは容易ではありません。その絵画を素晴らしいと思っている方が多ければ、ますます一から描き直すことは困難です。それでも本当に必要な手直しであれば、時間をかけて少しずつ手直しを加え、将来的にはまったく違った絵柄にすることもできるのではないでしょうか。

私自身、「自治労の4つの目的」や運動方針を基本的に支持している立場です。その上で自分なりの考え方や判断のもとに単組の活動につなげています。政治的な活動に関わるべきではないという下っ端さんからの問いかけに対し、関わるべきという「答え」であり、関わるのであれば組合員の不団結の要因とならないような情報伝達や進め方に留意していなかなければならないものと考えています。

だからこそ「憲法を生かす全国統一署名」に取り組む際などは「なぜ、取り組むのか」「なぜ、改憲の動きに反対するのか」という論点から組合ニュースや当ブログを通して発信していくように努めています。ここで自治労のホームページに掲げられている「自治労の4つの目的」を紹介します。そのサイトには「自治労は公共サービスを提供する労働者のために、4つの目標を掲げています」の後、次の内容の文章が並んでいます。

1 組合員の生活水準を向上させ、労働者の権利を守る
    自治労は、一人ひとりの組合員がゆとりを持って暮らせるよう、賃上げ、労働時間の短縮、必要な人員の配置、安全で快適な職場環境の確保などに取り組んでいます。また社会的にも年金や社会保障制度を充実させる活動を行い、トータルな生活水準の向上をめざします。実際に、制度や法律の設計や改正など必要に応じて、政党請願行動、省庁交渉、首長交渉などを行い、組合員だけではなく労働者の生活と権利を守るために行動しています。

2 やりがいのある仕事が出来るように
    私たちは、公共サービスを支える仕事をしています。そして、多くの組合員が住民・顧客に喜ばれ、自らも役に立っていると実感できる仕事がしたいと思っています。自治労は賃金・労働条件の改善だけでなく、やりがいのある仕事が出来るよう、住民や地域団体、企業、学識者と協力しながら地方自治研究活動(労働組合が主体的に、地方行政や自治体政策、公共サービスや自らの仕事のあり方について研究し、実践する活動)に取り組んでいます。自治労は地方自治研究活動を通じて、情報収集、研究分析、政策づくりを提言しています。実際に、現在多くの自治体で実施している「ごみの分別収集」「急病人の休日・夜間診療」は、自治労の自治研活動から実現した制度です。

3 社会正義を実現すること
    豊かで平和な暮らしは、職場の中の活動だけでは実現できません。地球的規模で起きる環境破壊や経済格差、戦争など現代社会はたくさんの問題を抱えています。それは、毎日の生活に直接的に影響する問題から、間接的に影響するものまで、広範囲にわたります。こうした個人では解決できないことでも、労働組合という組織で力を合わせ、大きな力とすることで問題の解決に近づけます。自治労はさまざまな団体等と連携し、“社会正義”の実現をめざします。その取り組みの一環として、自治労は原発再稼働を許さない取り組みや戦争につながる施策に反対する取り組み、賃金関係で言えば連合に結集して春闘に積極的に参加しています。 

4 労働者の助け合い活動の実践
    組合員が過ごしやすい環境づくりのために、「自治労共済」という非営利運営による福祉事業に取り組んでいます。2013年6月以降は「全労済自治労共済本部」として大きく助け合いの輪を拡大し活動しています。サービスの提供により、日々の生活に必要な保険料などを抑制し、より多く組合員の可処分所得を確保します。

1954年の自治労結成時からの綱領がありましたが、2003年9月の定期大会で新たな綱領的文書として「自治労21世紀宣言」を確認しています。その中では「自由・公正・連帯」の社会の創造という言葉が掲げられています。「4つの目的」でも示されているとおり自治労にとって組合員の労働条件向上のため、職場課題に全力を注ぐことと同時に政治的・社会的な活動にも関わっていくことが結党時からの基本的な立場とされています。

自治労の4つの目的のひとつである「社会正義を実現すること」。この「社会」は日本の国内にとどまるのか海外まで範囲に入るのですか? また自治労が考える「正義」とは具体的にどのようなことがらでしょうか。HPを参照すると、「社会正義」の為に原発再稼働反対や戦争につながる政策の反対とありますが、原発そのものが悪という仮定ならば、それは他国でも同様ですか。また、原発が悪ならば、それらを事業として展開する東芝や日立はどのような位置付になりますか。単純に素朴な疑問です。時間があれば教えて下さい。

上記は前回記事に寄せられたnagiさんからのコメントの一つです。電子辞書で調べてみると社会正義とは「社会生活を行う上で必要な正しい道理」と記されています。したがって、国内外問わず、改めるべきものは改めていくべきという主張だろうと理解しています。「4つの目標」の基本的な方向性等は支持していますが、nagiさんが疑問を呈しているとおり「社会正義」の項目に掲げられた原発に絡む話は今一つこなれていないように感じています。

そもそも「社会正義を実現」という考え方自体、大きな峻別を意識していかなければ、それこそ自治労組合員間での不団結の要因を助長していくことになりかねません。例えば戦争そのものは誰もが忌み嫌い、絶対避けたいものと考えているはずです。つまり戦争をなくすという運動の方向性は「社会正義を実現」と言えるのかも知れませんが、なくすための手法や各論に対しては個々人の評価が分かれがちです。

原発の問題も同様です。社会正義の範疇で括ってしまうとnagiさんのような疑問につながりかねません。原発を正義か、悪かでとらえるのではなく、このまま依存していくのが望ましいのか、政策を転換させていくためにはどうしたら良いのか、このような発想のもとでの是非論だろうと思っています。平和の築き方、安全保障のあり方、憲法9条の問題なども同様であり、自治労の運動方針が「社会正義」だと訴えていった場合、異なる価値観の方々から猛反発を受けてしまうのではないでしょうか。

そして、猛反発するかも知れない方々の中に自治労組合員も少なくないはずです。「社会正義を実現すること」という目的に賛同していますが、言葉の使い方や具体的な運動の進め方には注意を払っていく必要があります。下っ端さんとnagiさんからの問いかけに対し、私なりの問題意識を書き進めてきましたが、うまく伝えられているのかどうか分かりません。このブログは単発で終わるものではありませんので、表現や言葉が不足していた場合、次回以降の記事本文を通して補っていければと考えています。

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コメント

今回の記事でも特に言及がありませんでしたが、自治労や
労働組合がわずかでも政治活動をすることに反発や反対が
あることに対する方法論として、別途、政治活動をする
団体を設立し、自由意思でその団体に所属し、活動する。
なぜこのような簡単な手法をとらないのか理解できません。

単純に数の問題か組合費の問題なんでしょうか。

投稿: nagi | 2018年2月 6日 (火) 11時33分

OTSU氏に興味深い記事を紹介します。

>http://www.data-max.co.jp/281207_sm1/

私も近年まで知らなかったのですが、歴史に悲劇を埋める
ことなく、癒されることをねがっています。
これも日本の戦争責任のひとつですね。

投稿: nagi | 2018年2月 8日 (木) 09時13分

nagiさん、コメントありがとうございました。

現在でも必要に応じて別な団体はあります。労働組合そのものが一定の政治活動も必要であり、そのあり方を巡って是非や評価が人よって分かれているものと認識しているところです。

第2次世界大戦において、まだまだ知らなかった、あまり知られることのない史実が数多くあるようです。このブログを通し、機会を見ながらそのような史実について触れていければと考えています。ぜひ、これからもご注目いただければ幸いですので、よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2018年2月10日 (土) 06時53分

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