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2017年6月25日 (日)

20時完全退庁宣言

前々回記事「もう少し加計学園の話」の冒頭に「そろそろ政治の話から離れた身近な職場課題を取り上げるつもり」と記しながら、前回も政治の話(いわゆる「共謀罪」成立)でした。金曜日には東京都議会議員選挙が告示され、7月2日に投票日を迎えます。政治の話題は尽きない時期ですが、今回は久しぶりに職場課題を取り上げます。ただ少しだけ自民党を離党した女性代議士の「絶叫暴言」報道に関わる話に触れさせていただきます。

リンクをはった先のサイトに自民党の「魔の2回生」の問題が紹介され、中選挙区時代を知る自民党重鎮の「小選挙区制は大嫌い。振り子のように振れるから育つ人も育たないし、追い風が続くと淘汰されるべき人も淘汰されない」と苦い表情で語っていることが掲げられています。都議選は1人を選ぶ選挙区と複数名当選する選挙区が混在していますが、その時々の国政の動きなどを反映した「風」が選挙結果に大きな影響を及ぼしたケースも少なくありません。

地方自治体の選挙とは言え、注目を集める選挙であればあるほど直近の民意が都議選の結果に影響を与えることも必然です。しかし、「魔の2回生」と揶揄されるような「追い風」頼みの都議会議員が誕生していくことだけは避けなければなりません。そのためには有権者一人ひとりが、各候補者の属性よりも候補者自身の主張や資質を吟味していく心構えが重要です。特に都民ファーストの会という新たな政治勢力が登場しているため、これまで以上にそのような心構えが求められているものと考えています。

さて、本題から離れた話だけで3段落費やしてしまいましたが、今回のブログ記事を書き進めるにあたって『週刊朝日』の記事『都庁、電通でも悲鳴が…働き方改革の裏で「ジタハラ」が急増中』に注目していました。その記事の内容はネット上で調べてみたところ「アエラドット」から閲覧できるようになっていました。リンク先のサイトに飛ばれる方は少ないものと思いますので、たいへん長くなりますが掲げられていた全文をそのまま紹介させていただきます。

「ジタハラ」なる言葉をご存じだろうか?時短ハラスメント、つまり労働時間短縮にまつわるハラスメント(嫌がらせ)を指す新しい造語だ。多くの企業が時短に踏み切る昨今、ジタハラに苦しむ従業員の増加を懸念する声があがっている。なぜ時短が労働者を苦しめるのか?2015年12月、電通の新入社員・高橋まつりさん(当時24)が過労自殺した事件を機に、「時短」に踏み切る企業が相次いでいる。渦中の電通は、昨年10月から全館22時消灯を宣言。同時期に、東京都庁が小池百合子都知事の鳴り物入りで20時完全退庁を開始したことも記憶に新しい。

「そのころから、長時間労働を是正したいという企業からの相談が急増しました」 こう言うのは、経営コンサルタントの横山信弘氏(株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長)だ。「時短の相談は昨年の秋から増え、以前の5倍くらいになっています。長時間労働の問題じたいは何年も前から言われていますが、電通の事件以降、あまりにメディアが騒ぐので、経営陣も動かざるを得なくなったのでしょう」 横山氏によると、このような状況が「ジタハラ」の増加を招くのだとか。たとえば、企業が「残業禁止」という方針を打ち出せば、管理部門は現場にそれを徹底させようとする。

しかし現場では、残業をしなければ仕事が終わらない。仕事が終わらなければ、当然のことながら顧客に迷惑がかかる。にもかかわらず、残業しようとすると、上司や管理部門から「帰れ、帰れ」と責めたてられる──このように時短を強要しプレッシャーを与える行為がジタハラだという。「今、多くの企業が時短を推進していますが、残念ながら、管理部門は現場の状況をわかっていないことが多い。そのため、仕事が回らなくて現場がパニックに陥るというパターンが増えています。

責任感の強い真面目な人ほど、『帰れ、帰れ』と言われることをプレッシャーに感じます。精神的に追い詰められ、うつ病に発展するケースも出てくるでしょう」(横山氏) 今回の働き方改革で政府は労使協定により残業は月60時間までを上限としているが、経団連は繁忙期のみ月100時間上限を認めるよう主張。3月28日の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)では、残業規制は繁忙期の上限を「2~6カ月平均でいずれも月80時間」とすることなどを定めた。このような状況で、時短に踏み切る企業が増えているのは、連合にとって良いニュースと思えるが?連合東京の組織化担当・古山修氏に聞いた。

「今盛んに行われている時短は、一見、悪しき慣習を是正する動きのように見えますが、そうとは限りません。労働基準監督署がうるさいから、あるいは企業イメージが良くないから、見せかけとして残業を減らしているだけという企業も多い。単に残業を削減するだけでは、本当に長時間労働を是正することにはつながりません」 時短にするだけで人員を増やさなければ、仕事はたまる一方だ。となると、従業員は仕事をこっそり家に持ち帰り「隠れ残業」をするか、早朝勤務をするしかない。それでは長時間労働が是正されたとは言えないし、隠れ残業は情報流出のリスクが大きい。そのリスクを避けるために、企業はアウトソーシングを増やすことが予想される。

「下請け業者に外注するのであれば、時間外労働も何も関係なく、いくらでも働かせられます。企業側が従業員にやみくもに『帰れ、帰れ』と言うのは、アウトソーシングを増やし、最終的には雇用関係をなくすためではないか、と私には思われてなりません。『働き方改革』という名のもとに、正社員を減らす政策と結局は同じです」(古山氏) 安倍政権の働き方改革は、「副業などダブルワークを良しとすることで正社員を減らす政策」だと古山氏。正規雇用を減らす代わりに非正規雇用や個人事業主が増えるが、彼らの立場では交渉力が弱く、長時間労働を押しつけられかねない。結局、「長時間労働の温床になる」と警鐘を鳴らしているのだ。

では、時短を進める企業では何が起こっているのか。Tさん(52)の勤める金融系リース会社では、数年前から時短を取り入れている。それまでは毎日21~22時まで残業していたのだが、労基署の監査が入ったことをきっかけに、20時以降は原則残業禁止となった。「時短になると聞いたときは、早く帰れてラッキーと思いました。が、実際に始まると大変でした。明日までにやらなければならない仕事があるのに、帰れと言われるのです。仕事がどんどんたまっていき、お客さんとのアポを延期してもらうという、本来あってはならないこともしていました。当時は周りもみんな同じで、時短なんてやめて残業させてほしいと思っていましたね」(Tさん)

しかし、3カ月もすると20時退社のペースに慣れてきた。仕事の優先順位を考えて、無駄な作業を極力排除したのだ。たとえばお客さんのところへ4回顔を出していたのを3回にする。自分がしなくていい仕事は人に代わってもらった。昨年10月から「20時退庁」に踏み切った東京都庁でも、総務部などに懸念の声が寄せられている。「午後8時を過ぎたら15分おきに消灯されるので、都議会の資料作成などで仕事が山のように増えても残業できなくて困る」「クオリティーはある程度犠牲にせざるを得ない」「早朝出勤や休日出勤が増えないか懸念」「年度後半は業務量が大幅増になるので継続が心配」 

同じく1年前から定時退社を導入したある企業は、サービス残業、休日出勤、持ち帰り残業も厳禁という徹底ぶりだったが、社員によると、残業できなくなったからといって増員されることはなかった。「上司は時間内に終わらせられるように配慮して指示を出さなければならなくなり、部下にたとえばプレゼン用に三つ案を作れとは言えなくなった。部下からも提案が減り、最低限、言われたことしかやらなくなる。皆で意見を出し合うミーティングは時間がかかるので廃止となり、コミュニケーションが悪くなった」(関係者) 終わらない仕事は、アウトソーシングにすればひとまず解決かと言うと、そうでもない。連合東京の古山氏はこう言う。

「本人が好きでやっている仕事であれば、部分的にアウトソーシングをすることでモチベーションが下がってしまいます。仕事というのは、楽しければ長く働いても疲れません。楽しく仕事をしている人間にとって、『帰れ』と言われるのはつらいものです。また、本人にしかできない仕事もあり、物理的にアウトソーシングが不可能という場合もあります」 確かに、自分に任されたプロジェクトは最後まで責任を持ってまっとうしたいと思う人が多いだろう。そういう仕事の「やりがい」の面を無視するのも、ジタハラの一種と言えそうだ。前出のTさんが言う。「切りの良いところまで仕事ができないのは非効率的と感じます。提案書を書いている途中で時間切れになると、翌日、また一から考え直さなければならない。かえって時間がかかってしまいます」

メディア、広告会社などクリエーティブな要素のある仕事は、単純に時間で区切ることができない。「突然、22時消灯に踏み切った電通の現場は、おそらく今パニック状態に陥っているのではないでしょうか」(横山氏) 古山氏もこう指摘する。「かつては、企業によって研究職の人を自由に遊ばせておくという風土がありました。そうすると、画期的なアイデアが生まれることがある。世紀の発見とか大ヒット商品の発明などといったものは、時間に縛られていては生まれません。こういう仕事は、賃金体系から見直す必要があります」一方で、労働時間の長さでしか成果を測れない仕事もある。

「店舗スタッフや事務作業員、物流スタッフなどは、働いた時間の分だけ加算されるという考え方の仕事です。そういう仕事をする人たちは、残業代で収入を保っている面があるので、残業削減などしてほしくない。これが時短が進まない大きな理由のひとつです」(横山氏) 長時間労働は、賃金体系の差や個々人の意識の差などが複雑に絡んだ根深い問題なのだ。時短を進めるにしても、すべての従業員に一律に適用するのではなく、個々の仕事内容や状況に合わせて斟酌するのが理想と言える。(ライター・伊藤あゆみ)【週刊朝日2017年4月14日号抜粋

これまで当ブログでは昨年10月に電通の高橋まつりさんの事件を取り上げた「電通社員が過労自殺」以降、「働き方改革の行方」や「36協定について」など長時間労働に関する記事を投稿していました。それらの記事を通し、36協定は締結そのものが目的ではなく、重要な目的は労働者が健康を害さないよう長時間労働を規制するためのものであるという点を綴っていました。使用者側だけの都合による恣意的な時間外労働を防ぐための制度であり、36協定を締結していても電通のような実情に至ってしまっては論外な話です。

決められたルールを職場の中で守っていくという当たり前な意識を使用者側も労働者側も徹底し、36協定を実効あるものにしていくためには労働組合を有名無実化させないことが重要であることを記してきました。『週刊朝日』の記事に掲げられているとおり東京都では昨年10月から20時完全退庁を始めています。都庁職員からは「帰りやすい雰囲気ができた」という肯定的な声がある一方、「仕事が山のように増えても残業できなくて困る」「クオリティはある程度犠牲にせざるを得ない」「早朝出勤や休日出勤が増えないか懸念」という声が上がっていました。

民間企業でも同様な動きがあり、「残業禁止」という方針を打ち出せば現場の管理部門はそれを徹底させようとします。急ぎの仕事があって残業しようとすると上司から「帰れ、帰れ」と責め立てられ、責任感の強い真面目な人ほどプレッシャーを感じがちです。時短を強要する行為をジタハラ(時短ハラスメント)とも呼ばれていることを『週刊朝日』の記事で初めて知りました。このような動きが強まる中、私どもの市でも5月31日に20時完全退庁宣言を行ない、6月から実施に移されています。

残業縮減の具体策を検討してから宣言すべきという意見が幹部の中から示されたようですが、市長には「精神疾患、過労につながってしまう問題」という強い危機感がありました。そのため、まず宣言することで職員の意識啓発に努め、具体的な取り組みは走りながら検討していくという判断に至っていました。5月31日水曜のノー残業デーの就業時間終了後、市長自ら本庁職場を巡回し、時間外勤務縮減の協力を求めるとともに残業中の職員に事情を聞いて回られていました。

そもそも長時間労働の是正は労使でめざすべき共通した課題ですが、この宣言によってサービス残業を増やすような悪影響が出てしまっては問題です。組合は宣言がされる前、5月29日に緊急の申し入れを市当局に行ないました。組合からは本来、すべての職場で完全退庁できる職場体制を確立した後に宣言すべものではないか、この宣言によって時間外勤務の未申請が増えないか、様々な懸念点を訴えました。この申し入れを通し、宣言したから一律に現状を改めることを強要するものではない、都のような一斉消灯は行なわないことなどを確認していました。

通常、労使交渉の窓口は副市長が担当しています。この申し入れの後、市長とも直接話す機会があり、私から「いろいろな意見もありますから」と伝えていました。市長ご自身もそのような声があることを理解され、これからの取り組みが重要であるという認識を共有できました。ちなみに5月末の時点で、組合から今回の問題に絡んだ具体的な要求書を提出することを伝えていました。市当局も職員の働き方改革に関する検討を進めていく際、労使で協議していくことが不可欠であることを認識しています。

20時完全退庁宣言がされ、よりいっそう時間外勤務のあり方が問われる局面を迎え、5月末に発行した組合ニュースの見出しは「20時に完全退庁できる職場体制の確立こそが急務」でした。6月に入ってから発行したニュースでも時間外勤務の問題を大きく取り上げ、働き方改革が「働かせ方」改革になってしまうようでは問題であり、職員一人ひとりの健康を第一に働きがいのある職場をめざすことを記していました。あわせて次のとおり具体的な例示をもとに注意喚起する機会にもつなげていました。

「19時までの残業は残業とは認めない」などという誤った運用があった場合、即刻改めてください。短時間の時間外勤務となった場合、事後でも問題ありませんので必ず実施申請してください。午後8時までの予定が長引いた場合も同様です。翌日以降、実態に合わせた申請をしてください。実施申請しないとサービス残業に該当します。業務に関連した地域団体等との会議や出張も時間外勤務に当たります。必要な旅費等が自己負担だった場合は問題です。このような問題が強いられた場合、ただちに組合まで連絡してください。

先週木曜、6月22日には「時間外勤務縮減に関する要求書」を市当局に提出しました。要求書では欠員による時間外勤務の影響や職場ごとの時間外勤務縮減策の提示を求めています。また、特別時間外勤務申請手続きや代休制度の運用がサービス残業を助長している状況に対し、是正するよう要求しています。日程が調整できれば6月末までに団体交渉を開き、交渉の場での回答を求めています。

都政新報』の取材に人事課長が「実際の仕事がある中で、いかに折り合いを付けていくかが改革の本丸。人事課が先行的に改善策を打ち出すよりもボトムアップで意見を吸い上げ、改革につなげたい」と語っています。問題意識のスタートラインは同じであり、労使協議の本格化に向け、職場実情や各自のライフスタイルを踏まえた組合員それぞれの率直な声の把握が欠かせません。ぜひ、お気軽に組合までご意見や要望をお寄せください。このような労使協議を通し、組合は誰もが20時までに完全退庁でき、健康でいきいきと働き続けられる職場の確立をめざしていきます。

最後に、20時完全退庁宣言に際し、組合が迅速に対応し、市当局に懸念点を率直に申し入れたことが組合員の皆さんから思っていた以上に評価されています。ある組合員の方からは「いつも組合をやめようと考えていたけれど今回のような動きがあると、やっぱり組合は必要だなと思いました」と話していただけました。労働組合の存在感が問われがちな中、たいへん有難い励みとなる言葉を頂戴できたものと考えています。

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2017年6月17日 (土)

いわゆる「共謀罪」成立

前回記事「もう少し加計学園の話」の冒頭、そろそろ政治の話から離れた身近な職場課題を取り上げるつもりであることを記していました。国会の会期が延長されているようであれば今週末に投稿する新規記事は「ジタハラ」に絡んだ内容を考えていました。しかし、与党は参院法務委員会での採決を省く「中間報告」という異例な手法を強行し、組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」を成立させました。このようなタイミングとなり、今回も政治の話を書き進めていきます。

犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法は15日朝の参院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。参院法務委員会での採決を省略し、本会議で「中間報告」を行う異例の手法で、与党が採決を強行した。14日から徹夜の攻防で、抵抗する野党を押し切った。一般市民が処罰対象になったり、内心の自由が侵されたりする恐れが指摘される中、政府は同法を7月11日に施行する方針だ。採決の結果は、賛成165、反対70だった。参院で自民党と統一会派を組む日本のこころも賛成に回った。民進、共産、自由の各党は反対した。

安倍晋三首相は成立を受け「東京五輪・パラリンピックを3年後に控え、一日も早く国際組織犯罪防止条約を締結し、テロを未然に防ぐために国際社会と連携していきたい」と官邸で記者団に強調。その上で「適切、効果的に法律を運用していきたい」と述べた。民進党の蓮舫代表は、参院本会議での採決に先立つ討論で「安倍内閣に共謀罪の執行を委ねたら、どんな運営をされるかという不安は、際限なく膨らんでいる」と批判した。野党4党は成立阻止を目指し、14日夜に安倍内閣不信任決議案を出したが、衆院本会議で15日午前2時前に与党などの反対多数で否決された。これを受け同3時半ごろ、参院本会議で秋野公造法務委員長(公明)が中間報告を実施。続いて採決が行われた。

与党は、性犯罪の厳罰化を柱とする刑法改正案を16日の参院本会議で可決、成立させ、18日までの会期を延長せず国会を閉会する方針。学校法人「加計学園」問題を巡る野党の追及を避け、23日告示の東京都議選への影響を最小限にとどめる狙いがある。「共謀罪」法は犯罪の実行を2人以上で計画し、うち1人が準備行為をした場合に罰せられる内容。実行後の処罰を原則としてきた刑法体系が大きく変わる。【東京新聞2017年6月15日

上記報道のとおり「共謀罪」が成立したことで6月18日までの会期だった通常国会は延長されずに閉じられることになりました。「加計学園の問題を巡る野党の追及を避け、23日告示の東京都議選への影響を最小限にとどめる狙いがある」と記されていますが、この思惑を否定できる方は極めて少数なのではないでしょうか。ただ法案そのものの成立に関しては賛同されている方々が決して少数でないことも認識しています。例えばフリーアナウンサーの長谷川豊さんは『「共謀罪がぁ」と言って必死になって論のすり替えをしている連中に言いたい』というブログ記事を投稿されていました。

テロ等準備法について。というか「改正組織犯罪処罰法」について。必死になって「共謀罪」「共謀罪」と訴え、唾を飛ばしながら反対を唱える方々がいるが、そのロジックがこちら。「捜査機関が解釈で法に触れると判断すれば、一般市民だって捜査の対象とされて、
盗聴や監視や密告などの手段を通じ、話し会いや計画の段階から情報の収集が行われて、処罰の対象となる危険性が生まれた。これは言論・思想の自由が脅かされることに他ならない!」 おいおいおいおい。話のすり替えも甚だしい。勘弁してくれ。私のコラム読者ならもう解説もいらないだろうが、あまりにふざけているのでコメントさせてほしい。

「一般市民が捜査機関の解釈で法に触れると判断」され、その結果【捜査の対象】になることが重要なんじゃないか。それを今まではな~~~~んにもしてこなかったから、危険だって話だろ? 話のすり替えはその後だ。「処罰の対象となる危険性が生まれた!」 おい、いい加減にしろ。「捜査の対象」となることと「処罰の対象になる」は全くリンクしていない話だ。いい加減な論説を広めるんじゃあない。「捜査するぞ!」「テロ行為を準備しようとするなら、それだけでも捜査してやるぞ!」

ここが大事なんじゃないか。その捜査の結果、一般市民は何にも悪いことなどしていないし、テロの準備など全くしていない訳だ。その段階で「捜査のご協力、ありがとう」でおしまいだ。なんでこれに「一般市民」が巻き込まれるんだ?どういうロジックなんだ。それ?どうも、こういうことを必死に叫んでいる人々というのは、年末に飲酒運転の検閲を行っているあの交通安全課の取り締まりを許すことが出来ない人らしい。「何の罪もない一般人」」が「死ぬほど捜査対象になって」るが、あの息をスーハーする奴が何があっても許せないらしい。

きっと空港のサーモ検査とか、腹が立ってしょうがないのだろう。何の罪もない乗客をエックス線検査するのだから。体のラインまで分かっちゃうんだから。「容疑者」と「犯罪者」は違う。「捜査」と「処罰の対象になる」は全然違う。その程度の日本語が分かっていないらしい。「警戒」は当然必要なことだ。どの世論調査を見ても賛成多数の「テロ等準備罪」を盛り込んだ「改正組織犯罪処罰法」。安保法案の時と全く同じことを繰り返したい。こんなもん、普通だ。騒ぐだけ勉強不足がバレるだけであることを自覚した方がいい。

長谷川さんは最後に「勉強不足がバレるだけ」と記されていますが、本当にその通りなのでしょうか。言うまでもありませんが、テロを未然に防ぐための手立てを全力で構築するという考え方は誰も否定できないはずです。したがって、今回の法案がテロ防止に特化したものであれば、もっと世論調査等で賛同する声が増えていたように思っています。ちなみに金曜夜の『報道ステーション』に出演した憲法学者の木村草太さんは今回の法案とテロ対策との関係を次のように語っています。

共謀罪については、政府は2つの目的があるとずっと説明してきた訳で、パレルモ条約批准とテロ対策と言ってきた訳です。しかしパレルモ条約というのは、そもそもテロ対策の条約ではなく、マフィアや暴力団の対策のものですし、それから日本は暴力団対策も進んでいますし、重大犯罪については、予備罪が処罰され、しかも予備罪の共謀共同正犯ということで、予備行為の共謀した関わった人はみんな逮捕出来るという法律ですから、これは今回の法律が無くてもパレルモ条約に批准できるのだろうという、専門家のあの強く言われていた意見でした。

それから、やはりテロ対策の法律という点も大きな問題があって。テロ対策については、実は関連する条約に基づいて充分な立法がなされていると言われています。実際下見とか資金準備など、今回の法律で捕まえるぞという問題については、『公衆等の脅迫目的の犯罪行為の為の資金等の提供等の処罰に関する法律』というちょっと長い名前の法律があって、既に包括的に処罰対象になっていました。ですからテロ対策に、今回の法律が付け加えることは何もなかったんですね。今回テロの危険と監視社会のどっちを選ぶか?みたいな論点が形成されてたんですが、そもそも今回の共謀罪、テロ対策には使えない、使わないものな訳ですから、そういう論点の形成自体が間違っていた。

本当の論点というのは、テロ対策という政府の噓を許すかどうかという論点で。この論点であれば結論は明らかである訳ですね。やはりあの政府の目が、政府が国民を誤摩化しにきた時に、やはり多くのメディアがきちんとそれを見抜き、また有識者もテロ対策というのは噓だなということをきちんと見抜かないと、国民が正しい判断ができません。ですからやはり、メディアの側も日頃から優秀な専門家とコミュニケーションを取って欲しいと思いますし。やはり今回、あのテロ対策だからこの法律に賛成したという有識者の方は、是非本当に自分が発言した資格があったのかどうか、きちんと考えて欲しいと思いますね。

予備罪と共謀共同正犯との組み合わせでテロを計画・準備していた場合、現行法でも逮捕できることが説明されています。「テロ対策という政府の嘘」とまで言い切ってしまうのはどうかと思いますが、テロ対策を前面に押し出せば法案が通しやすいと考えたことは間違いないはずです。嘘と言えば、安倍首相は五輪招致の際に「東京は世界有数の安全な都市」と強調していましたが、「国内法を整備し、国際組織犯罪防止条約を締結できなければ東京オリンピックを開けない」と矛盾する発言に転じていました。

「安全な都市」が嘘だったのか、「国内法を整備しなければオリンピックは開けない」が嘘だったのか、どちらかが嘘だったことになります。ただ第1次政権の時から安倍首相の言動を注視してきていますが、嘘をついているという認識のないまま発言しているようにも見受けられます。話は少し横道にそれますが、安倍首相は国会で答弁中に「野次を止めてください」と発言した直後、閣僚席に戻ると自分も野次を放っていました。嘘云々以前の問題としてトップリーダーの資質が問われてしかるべき振る舞いであるように危惧しています。

これまでも当ブログの中で記していますが、安倍首相が「国民を豊かにするため」「平和を守るため」という信念のもとに様々な政策判断を重ねているものと信じています。そのため、安倍首相が進める法案だから反対するという思考は避け、何が正しいのか、どの選択肢が正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくように努めています。このような思考や判断基準のもと今回の組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」の成立に私自身は反対していました。

一方で、パレルモ条約批准の必要性は認識していますので、その目的に特化した法整備は進めるべきものと考えています。民主党政権時代、実現できていれば今回の課題の一つは解決済みだった訳であり、たいへん残念なことだと思っています。共謀罪のある国でもテロは防げないという言い分を耳にします。しかし、どれほど法整備を進め、罰則を強めても犯罪を根絶させることは困難です。残念ながら現状ではテロも同様な見方をしなければなりません。そのような中でも可能な限りテロは未然に防ぐべきものであるため、共謀罪だと批判されないようなテロ対策に特化した法案であれば前述したとおり賛同者は多数を占めていたはずです。

法案が成立後、幅広い情報を得ることの大切さを踏まえ、ネット上で数々の意見に目を通しています。その中でも弁護士の方々が強く反対していることに着目しています。一つ一つ紹介し、私自身の拙い文章を補強したいところですが、これ以上長い記事になることも控えなければなりません。そのため、最後に弁護士であり、自民党の衆院議員だった早川忠孝さんのブログの記事「さて、こういう質問にはどうやって答えるのがいいのだろうか」に絞って紹介させていただきます。

捜査の対象になったことがない方に、警察の捜査の現場でどういうことがあるのかを理解していただくのは難しい。裁判所や検察のチェックが十分機能していれば、警察の暴走などあり得ない、何も心配しなくてもいい、ということになるのだが、私の拙い経験から言うと、裁判所は殆どチェック機能を果たしていないし、検察が警察を適正にチェック出来ているとも言い難い。検察官が捜査指揮をしているような刑事事件であれば、それなりに適正な捜査が行われている、と信頼していいケースが多いのだろうが、多くの場合は、検察の捜査は警察の捜査を事後的にチェックして起訴するかしないか決めるための上書き捜査をするだけに終わってしまうだろうから、まずは、警察の捜査がどんな風に行われているかを理解してもらう必要がある。

所詮は人間がやることだから、警察にも見込み違いや勘違いがあることは否定できない。組織的犯罪処罰法の適用となる団体について、「『団体』とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。」と規定されているから、反復性のない一般の人にはこの法律は適用されるはずがない、と主張される方がおられるが、反復性があるのかないのかは、調べなければ分からないことだから、警察の方で反復性がありそうだ、というあたりを付けられてしまえば、とりあえずは捜査の対象になってしまう可能性は否定できない。

捜査の結果反復性がないことが明らかになれば、検察が起訴しないことは当然だが、一旦なされた警察の捜査がそれで帳消しになったり、なかったことになるようなことはない。起訴はされないんだし、裁判所で有罪の裁判を受けることにもならないのだから、それで構わないんじゃないか、と言われても、捜査の対象となった人にはとても我慢できないはずだ。テロという凶悪重大な犯罪の嫌疑をかけられたのだったら、被害の発生を未然に防ぐためだからある程度は我慢してくださいね、ぐらいのことは言えるだろうが、およそテロとは関係がない一般犯罪について、その計画に加わっただろうなどと言われて捜査の対象にされてしまうことまで甘受すべし、とはなかなか言えないはずである。

反復性が求められているのは、あくまで組織的犯罪集団そのものであって、個々の個人について計画関与の反復性まで求められているわけではない、ということにも留意しておくべきだろう。反復性が認められる組織的犯罪集団の犯罪実行計画のいずれかに関わったのではないか、という嫌疑が掛けられると、計画に関わったいずれか一人が準備行為まで行ってしまうと、計画に関わったすべての者が計画罪を行った、となってしまうところが、最大の問題点になるだろう、というのが私の見立てである。

テロ等の凶悪重大犯罪の実行を計画するような組織的犯罪集団の構成員やその周辺にいる組織的犯罪集団と密接な関係を有する人間を一網打尽にして、テロ等凶悪重大犯罪が発生する温床を根絶やしにすべし、という議論には賛同するが、テロ等の重大凶悪な犯罪を実行するような組織的犯罪集団とはとても思えないような一般の団体や企業、労働組合の様々な経済行為にまで網を拡げるようなことは止めておくべきだ、というのが私の基本的見解である。

テロ等の凶悪重大な犯罪ならともかく、著作権侵害、意匠権侵害、法人税逋脱、詐欺破産、集団的威力業務妨害などなど、そもそも犯罪になるのかならないのか境界線が不分明な行為について、その実行の計画に関与した、という嫌疑で逮捕されたり、捜査の対象になってしまうことは、さすがに行き過ぎだろうと思う。具体的にどういう風に法の執行がなされていくのか分からない状態で、政府当局の、大丈夫、大丈夫という、いささか自信なげな保証を鵜呑みにすることは出来ない。そんなことは杞憂だ、絶対にそんなことはない、と仰る方は、何を根拠にそう仰るのだろうか。

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2017年6月10日 (土)

もう少し加計学園の話

このブログでは政治的な話題の投稿が多くなっています。以前の記事「組合の政治活動について」の中で説明したとおり「丁寧な情報発信」のツールの一つとして、意識的に政治に関わる内容を取り上げている傾向があります。その一方で、日常の組合活動の中で政治的な課題が占める割合はごくわずかであり、賃金や人員確保、人事評価制度の労使協議などが重要な取り組みとなっています。

ブログでの題材の取り上げ方にギャップがあり、もちろん四六時中、政治的な問題に頭を悩ましている訳でもありません。不特定多数の方々が関心を寄せやすく、話題や論点も共通認識できるため、地味でローカルな話となりがちな日常の活動よりも政治的な題材を取り上げている側面もあります。さらに前回記事「一つの運動として」に記したとおり不特定多数の方々に「働きかける」という自分なりのささやかな運動と位置付け、このブログに向き合っています。

そろそろ今回は政治の話から離れた身近な職場課題を取り上げるつもりでした。それでも結局、今、最も提起したい自分なりの問題意識を書き進めることにしています。その時々に訴えたいこと、書きたいことを綴るスタイルが私的なブログを長く続ける秘訣かも知れませんのでご理解ご容赦ください。そのような中で、記事タイトルに掲げたとおり私自身が最も注目している話題は加計学園に絡む問題でした。

これまで加計学園の問題に対する私自身の認識は最近の記事「李下に冠を正さず」「共謀罪の構成要件を厳しくしたテロ等準備罪」「一つの運動として」の中で立て続けに触れていました。その中で「もし政府が解明に向けて消極的なままであればあるほど疑惑は高まっていくと言わざるを得ません」と記していました。この見通しは当たってしまい、かたくなに再調査を拒む政府に対する風当たりは強まっていきました。ようやく先週金曜、国民からの厳しい声を受け、松野文科相は省内の内部文書等の再調査に入ることを明らかにしました。

学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、内閣府が文部科学省に早期開学を促したとされる文書について、再調査を拒み続けた文科省が9日、ようやく重い腰を上げた。「文書の存在は確認できなかった」と言い切った調査から21日。文書の存在を認める前事務次官の証言などに追い込まれた末の方針転換で、同省の信頼は失墜した。「追加調査の必要があると国民の声が多く寄せられた。真摯に向き合い、徹底した調査を行いたい」。松野博一文科相は9日の記者会見で再調査の理由をこう説明した。だが、調査する文書の範囲や聞き取りの対象人数など具体的な方針は明らかにしなかった。

記者から「前回の調査が不十分だったのでは」などと責任を問う質問が相次ぎ、松野氏は時折首をかしげたり、聞き直したりする場面も。質問を求める手が挙がる中、「行政がゆがめられたことはない」と強調し、13分で会見を打ち切った。この日国会内で開かれた民進党のヒアリングでも、出席した担当職員が「方針を検討している」とあいまいな説明を繰り返した。今回も第三者は入れず、文科省だけで調査するという。同党の玉木雄一郎幹事長代理は「メールの確認なら半日どころか30分でできる。時間稼ぎで文書を削除しているのではないか」と批判した。

再調査の表明に、ある同省職員は「遅きに失した感はある。もし文書が見つかればさらにダメージを受けるだろう」と肩を落とす。同省幹部は「息を潜めて国会の閉会を待っていたのだろうが、官邸がもう持たないと再調査を決めたのだろう。大臣は会見で『私が調査をしたいと総理に伝えた』と言ったが、誰もそんな話は信じない」と突き放した。別の職員は「文書問題にけりをつけ、認可をめぐる行政のゆがみがあったかどうかという本質の議論に向かってほしい」と話した。

先月25日、前川喜平前事務次官が記者会見して「文書は確実に存在していた」と証言。現役職員が野党に内部告発したとみられる動きも相次いだ。一方、文科省による先月19日の調査は実質的にわずか半日で終わり、「文書の存在は確認できなかった」との結果を明らかにした。高等教育局の幹部ら7人への聞き取りと共有フォルダー内の文書を確認しただけで個人パソコンを調べない調査方法に、疑問の目が向けられていた。【毎日新聞2017年6月9日

記者会見で松野文科相は安倍首相から「徹底した調査を速やかに実施するように」と指示されたことを伝えていましたが、なぜ、もっと早い段階で安倍首相が同様な指示を出さなかったのか疑問です。「あったものをなかったものにできない」ことを覚悟されたのかも知れませんが、文書が本当にあったとしても「首相の指示はなく、加計学園への利益誘導は一切ない」という立場を貫く構えであることも報道されています。

安倍晋三首相は5日の参院決算委員会で、学校法人「加計学園」(岡山市)による国家戦略特区での獣医学部新設計画について、「(首相は)関与できない仕組みになっている。国家戦略特区諮問会議でしっかりと議論がなされ、そこで決まる。介入する余地はない」と述べ、制度上、自身が選定過程に関わることはできないと強調した。文部科学省の前川喜平前事務次官は、和泉洋人首相補佐官や加計学園理事の木曽功内閣官房参与(当時)から昨年、早期開学を求められたと主張している。これに関しても、首相は「(両氏に)私が指示したことはあり得ない」と自身の関与を否定した。民進党の平山佐知子氏への答弁。

首相はまた、前川氏が獣医学部新設を批判したことに対し、「(次官在任中に)私と会う機会があったのに、このことは一言も話さず、松野博一文科相にも全く主張していない。驚くしかない」と反論。「天下り隠蔽の責任を取って辞めざるを得なくなった方が、今になって急になぜ言うのか、当惑している」とも語った。日本維新の会の石井苗子氏への答弁。参院決算委はこの後、2015年度決算を与党などの賛成多数で可決した。【時事通信2017年6月5日

上記のとおり政府は今後、国家戦略特区法に基づき適正に手続きを進めたことをよりいっそう強調していくのかも知れません。和泉洋人首相補佐官の「総理は自分の口から言えないから私が代わりに言う」との発言などは直接指示されていない忖度であり、あくまでも安倍首相の意向も四国に獣医学部を新設することの意義を踏まえたものであり、決して知人に便宜をはかろうとしたものではない、結果的に「腹心の友」が経営している加計学園に決まった、このような説明が改めて繰り返されていくのではないでしょうか。

国家戦略特別区域諮問会議の議長は安倍首相であり、議事録に「総理のご意向」が残っていても不思議ではありません。それでは、なぜ、ただちに徹底した調査を指示できなかったのでしょうか。やはり不本意な疑惑を招かないためには「李下に冠を正さず」という姿勢が必要だったように思っています。「誰が」や「どの政党が」に重きを置かない思考に努めたいため、橋下徹前大阪市長の主張もよく目を通しています。加計学園問題における安倍政権の対応を指摘した記述の中で下記の内容には大きく首肯しています。

問題があるとすれば特区というものを活用する際に、首相と非常に近しい間柄の人に利益を与えることになる場合の政治的な振る舞い方。僕ならこういう状況では自分の友人にはあえて辞退してもらうね。どうしても親しい友人が利益を受けそうであれば、それこそ幾重にも手続きを被せて後から批判されることがないように細心の注意を払っただろう。少なくとも自分の友人だけでなく複数事業者を審査のテーブルに載せて、フルオープンの場で厳しく審査してもらうことは絶対に必要不可欠だった。今回は色々な条件が事前に付されて結局首相の友人である加計さんの学園だけが審査対象になった。これは非常にまずかった。

ちなみに加計学園の問題を追及する野党や大きく取り上げるメディアが批判される場合もあります。経団連の榊原会長も「集中して議論してほしい項目が山ほどある。優先順位からすれば加計学園ではないだろう」と苦言を呈しています。優先順位を付けて議論することは重要です。ただ疑念が解消されないまま幕を閉じれるような問題ではないはずであり、元外務官僚の天木直人さんは「これでも安倍政権を倒せないなら国民の怒りは野党に向かう」とまで指摘されています。

実は今回、もう少し加計学園の話を取り上げようと考えた理由として、次のような問題意識があったからです。政府が「あったものをなかったものにする」疑念をはじめ、そのことを文科省末端まで強要しているような現状を強く危惧しています。紹介した時事通信の記事によれば、安倍首相は「(前川前次官が在任中に)私と会う機会があったのに、このことは一言も話さず、松野博一文科相にも全く主張していない。驚くしかない」と反論しています。

確かに前川前次官にも反省すべき点があったのかも知れませんが、現職ではないからこそ覚悟を決めて詳らかにできたという側面も押さえなければなりません。つまり部下が上司に意見具申しづらくなっている政府組織に陥っていないか、安倍首相側にも省みるべき点があるはずです。そもそもトップの強い意向に真正面から反論できる官僚のほうが稀なのではないでしょうか。このような問題意識を強めた一因は下記のような報道に接していたからです。

安倍晋三政権が、慰安婦問題の「日韓合意」を順守する決然とした姿勢を示した。外務省は1日付で、森本康敬釜山総領事の後任に、道上尚史ドバイ総領事を充てる人事を発表したのだ。森本氏は今年1月、韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことへの対抗措置として一時帰国した際、政府方針に異を唱えたとされる。事実上の更迭といえそうだ。森本氏は昨年5月に着任したばかりで、約1年での交代は異例。外務省は1日付で森本氏に帰国命令を出した。日本政府は昨年12月、釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことを受け、長嶺安政駐韓大使と森本氏を一時帰国させた。

これは、日韓合意の交渉過程で、安倍首相が、当時の朴槿惠(パク・クネ)大統領に対し、ソウルの日本大使館前の慰安婦像の撤去を強く求めたうえで、「韓国内外の新たな慰安婦像設置も、明確な合意違反です」と伝えていたためだ。早期帰任を模索した外務省に対し、官邸は長嶺、森本両氏の「無期限待機」を指示した。森本氏は帰国後、知人との会食の席で、自身の帰国を決めた官邸の判断を批判したとされ、この話は官邸関係者の耳にも入った。森本氏は周辺に「酔って覚えていない」と話したとされるが、官邸は「一枚岩で韓国と対峙する」との方針を示しており、「韓国側に誤ったシグナルを送りかねない」と問題視していた。

その直後、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮が、「6回目の核実験」や「ICBM(大陸間弾道ミサイル)発射」など、米国が設定した「レッドライン」を超える可能性が急浮上した。ドナルド・トランプ大統領が「斬首作戦」「限定空爆」に踏み切るとの観測も出てきたため、今年4月、「邦人保護」を優先させて、長嶺、森本両氏を帰任させていた。日韓合意は「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したもので、慰安婦像撤去は韓国の義務だ。今回の更迭は、「極左・従北・反日」とされる文在寅(ムン・ジェイン)新政権に対し、日本の断固たる姿勢を示す意味もありそうだ。【ZAKZAK2017年6月2日

上記のケースは私的な場での発言が更迭の理由にされています。安倍首相自身は総理と自民党総裁の立場を使い分け、首相夫人は公人と私人の立場を使い分けても官僚には公私の立場を峻別させない、たいへん驚きました。一枚岩で対峙することは重要ですが、締め付けが度を越せば、組織全体が委縮し、より望ましい判断を見出すための多面的なチェック機能が働かなくなります。最後に「またか」と言われそうですが、ちょうど同じような切り口で『日刊ゲンダイ』も記事にしていましたので全文をそのまま掲げさせていただきます。

霞が関にとって、6月は人事のシーズン。「加計学園文書」の流出で官邸の怒りを買った文科省には、粛清の嵐が吹き荒れるとみられ、職員は戦々恐々となっている。文科省の前川前次官の捨て身の告発に、心ある官僚が続くことを期待したいが、現役職員は今回の騒動の“とばっちり”を恐れて逃げ腰だ。「もちろん、心情的には前川前次官に共感するところはあります。でも、官邸に牙をむくなんて、そんな恐ろしいこと、できるわけがない。この夏の人事でどんな報復が待っているか、分かったものじゃありませんから」(文科省関係者)

実際、官邸は文科省にカンカンだ。審議官や局長クラスに息のかかった経産官僚を送り込み、文科省を解体するプランも浮上しているという。「加計文書」共有の実名入りEメールを民進党に流出させた犯人捜しにも血眼になっている。例年、通常国会が閉じると、中央省庁の人事異動が行われる。安倍官邸は内閣人事局の創設で幹部の人事を掌握し、霞が関に睨みを利かせてきた。官邸の方針に逆らえば左遷、忠犬のように働けば昇進というアメとムチ。そういう情実人事で官僚機構を支配下に置き、かつては政権を潰す力をも持っていた財務省も軍門に下った。某省の幹部職員が言う。

「大臣が了承した人事案も、菅官房長官が首を縦に振らないと通らない。官邸の意向を反映するまで、何度でも突き返されます。財務省、経産省のような主要省庁だけでなく、昨年はTPP関連で、農水省人事にまで手を突っ込んで、霞が関を震え上がらせた。官邸の方針に抵抗した局長を飛ばして、経産省から幹部を送り込み、農水省を事実上の“子会社化”したのです」

安倍首相は1日、ニッポン放送の番組収録で一方的な前川批判を展開。「次官であれば、『どうなんですか』と大臣と一緒に私のところに来ればいい」「なんでそこで反対しなかったのか」などと不満をブチまけた。だが、在任中に批判しようものなら、容赦なくクビにするのが、この政権のやり方だ。1日、森本康敬釜山総領事を退任させて、後任にドバイ総領事を充てる人事が発表された。報道によれば、森本氏が知人との会食の席で、官邸の方針を批判したことが総領事交代の原因とされる。

「私的な会合での発言まで問題視するのは異常ですよ。誰が密告したのか知りませんが、審議中の共謀罪の懸念がすでに現実のものになっている。また、こういう記事が出ることで、官邸批判は絶対に許さないという霞が関へのメッセージにもなります」(元外交官の天木直人氏) しかも、森本氏はノンキャリだ。出世レースや退官後の生活で生殺与奪を官邸に握られたキャリア官僚は、輪をかけて物を言えなくなる。

「今はまともな行政を取り戻せるかの瀬戸際です。官僚機構が一致団結して抵抗すれば、政権はひとたまりもないのです。官僚は自らの保身や組織防衛より、まず国家国民のことを考えて欲しい。官邸のために体を張った財務省の佐川局長が出世し、公正公平な行政を取り戻そうとした文科省の前川一派が粛清されるようなことがあれば、この国はオシマイです」(天木直人氏=前出)霞が関の反乱を潰すために、官邸はどんな手を使ってくるのか。この夏の人事に注目だ。【日刊ゲンダイ2017年6月6日

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2017年6月 4日 (日)

一つの運動として

前回記事「共謀罪の構成要件を厳しくしたテロ等準備罪」のコメント欄で、初めて投稿くださったoyabunさんから「自分に有利な情報を優先的に選択し、反対意見を添える程度でも、公平・中立に接していますと主張は可能です」という指摘があり、そこに詐術的なモノを感じてしまうという言葉も添えられていました。誤解されている点が気になったため、私から取り急ぎ次のようにお答えしていました。

「公平・中立に接しています」というお話ですが、私自身の立ち位置や主張は明確にして当ブログを運営しています。私が書き込む記事本文だけで多面的な情報をいつも提供している訳ではありません。マスメディアが取り上げないような主張や情報を発信することで多面的な見方に触れていただければと思い、このブログを続けています。

つまりNHKのように当ブログが「公平・公正の立場を堅持する」という性格を打ち出している訳ではありません。より望ましい「答え」を見出すためには幅広い情報や見方に触れていくことが大切です。そのための一助になれることを願いながらマイナーな情報を提供する場として、このブログを続けています。「誰が」や「どの政党が」に重きを置かない思考に努めたいという記述が誤解を与えていた場合、あくまでも「願望」という調味料を加えず、集団心理のデメリットに陥らないための心構えを記したものです。

いきなり馴染のない言葉を並べてしまいましたが、それぞれ過去の記事タイトルだった言葉であり、リンク先で詳しく私自身の問題意識を綴っています。自分の見たいものしか見ない、自分の立ち位置に好都合な解釈を付与させがち、このような傾向を日頃から戒めています。そのため、手軽に素早くコストをかけずにアクセスできるインターネット上では意識的に幅広い情報に接するように努めています。そのような意味合いで多様な主張や意見に触れられるBLOGOSなどはいつも注目しています。

昨年末に「SNSが普及した結果…」という記事を投稿していましたが、法政大学総長の田中優子さんの「SNSが普及した結果、人は自分と同じ意見や感性にしかアクセスしなくなった。異なる立場の人々の意見と接する機会がなくなり、人々は極端な意見をもつようになっている」という言葉が意外だったことを記していました。私自身、インターネットやSNSの普及は大多数の方が「異なる立場の人々の意見と接する機会が増えている」傾向にあるものと見ていたからでした。

自分自身が正しいと信じている「答え」とかけ離れた主張や情報に触れていくことに貴重さを感じるのかどうか、確かに人によって受けとめ方は大きく分かれていくのかも知れません。このブログを定期的に訪れてくださる皆さんは「異なる立場の意見」に接することに貴重さを感じられる方が多いのだろうと思っています。単なる興味本位や冷笑の対象として当ブログを観察されている方も多いのかも知れませんが、いわゆる左や右に偏らず幅広い立場の方々からご注目いただけていることにいつも感謝しています。

このブログの管理人として、そのような関係性をたいへん貴重なことだと受けとめ、毎週末の新規記事の投稿に臨んでいます。さらに以前の記事に「運動のあり方、雑談放談」というものがありますが、私自身にとって当ブログの運営は一つの運動として位置付けています。運動という言葉を辞書で調べれば「目的を達成するために積極的に活動すること、各方面に働きかけること、選挙運動、労働運動、学生運動」という説明が加えられています。

様々なテーマごとに反対集会やデモ行進が取り組まれていますが、私自身、介護の事情があって参加する機会は限られています。そのため、自宅で取り組める私なりの運動として、このブログに向き合っているとも言えます。特に反対集会やデモ行進が異なる立場の方々に共感を呼びづらく、そこで訴える主張が広がりを得られにくくなっている中、このようなSNSを通した情報発信や意見交換の貴重さを感じ取っているところです。

余計な話かも知れませんが、このような私自身の思い入れも「自己満足な取り組み」「しょせん個人的なブログ」という見られ方をされがちです。それも非常に残念ながら同じ組合の役員からそのように見られている現状もあります。また、異なる立場の方々からすれば一つの運動という言い分に対し、「冗談ではない、そんな運動の場に踏み込んでいるつもりはない」というお叱りを受けてしまうのかも知れません。

このような私自身の言い分が不愉快に感じられるようであれば、ご訪問いただけなくなる関係性だろうと受けとめています。それでも管理人の思惑は思惑として横に置かれ、これからも多くの方々に出入り自由な場としてご訪問いただけることを願っています。 とは言え、一つの運動だと身構えてみても基本的な立場や視点が異なる方々と分かり合うことの難しさを自覚しています。このような自覚もブログを長く続けてきたことによってたどり着いた認識です。

しかしながら深い「溝」も接点を持たない限り、「溝」が埋まる可能性は皆無だと言えます。その接点の一つに当ブログがなり得ているため、これからも心が折れない限り継続していくつもりです。その上で二極化する報道が顕著な昨今、マスメディアが取り上げないマイナーな情報を提供することに力を注いでいます。安倍政権を批判、もしくは擁護する場合も、より正しく、より多面的な情報をもとに判断すべきものと考えているからです。

特に最近、政権側の情報操作や隠蔽体質が目立つようになっています。加計学園の問題に対する私自身の認識は「李下に冠を正さず」の中で綴ったとおりですが、前川前次官のスキャンダルに関しては別な案件として問題があれば処罰されるだけの話だと理解しています。しかしながら官邸側は出会い系バー通いを重視し、前川前次官の「貧困女性の実地調査」という釈明に対し、「女性に小遣いを渡した。さすがに違和感を覚えた」とし、この問題で個人的な資質を貶めようとしていることも明らかでした。ただ正直なところ前川前次官の釈明には違和感がありました。

記者会見の後、その点を知人が前川前次官に問いかけたところ「本当のことですから」と答えていたそうです。このやり取りだけを耳にすれば、ますます違和感が高まってしまいます。しかし、次のような情報に触れていくと「本当のことかも知れない」と思えるようにもなります。『週刊文春』の記事『前川喜平と出会系バーで30回超会った女性「私は前川さんに救われた」』やギッズドアの渡辺由美子さんのブログ『「あったものをなかったものにできない。」からもらった勇気』に目を通すと見方が変わります。真実は断定できませんが、前川前次官に対する印象や資質を判断するためには上記のような情報も加味しなければフェアでないように感じています。

「一つの運動として」という記事タイトルから話は広がりそうですが、もう一つだけ現政権の情報操作だと感じがちな具体例を紹介させていただきます。『国連事務総長と安倍首相会談に関する報道に疑問 特別報告者・共謀罪について、食い違うプレスリリース』というサイトで、国連事務総長は安倍首相に「特別報告者は国連人権理事会に直接報告をする独立した専門家である」と述べ、「国連の立場を反映するものではない」とまで説明していないという事実関係が綴られています。合わせて『日刊ゲンダイ』の記事も参考までに掲げますが、このような傾向が現政権には目立つことを拡散させていただきます。

これぞ“二枚舌”政権の正体見たりだ。国連人権理事会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が共謀罪法案の問題点を指摘する文書を安倍首相宛てに送ったことに対し、安倍首相と菅官房長官のコンビは「国連の総意じゃない」などと猛反論しているが、「無知」にもホドがある。G7サミットでイタリア南部、シチリア島を訪れた安倍首相は、27日に国連のグテレス事務総長と立ち話。グテレス氏から「(ケナタッチ氏の)主張は必ずしも国連の総意を示すものではない」との発言を引き出してニンマリ顔。22日の会見で菅官房長官が「特別報告者は個人の資格で調査報告を行う。国連の立場を反映するものではない」という“裏付け”を得て上機嫌だったのだろうが、全く分かっちゃいない。

そもそもケナタッチ氏の指摘が現時点で国連の総意でないのは当たり前のことだ。日本のプライバシー権の保護状況を調査する義務を負うケナタッチ氏の報告を基に、人権理事会が「問題あり」と判断し、採択されて初めて「総意」となるからだ。調査途上にあるケナタッチ氏の指摘は総理や閣僚が感情ムキ出しで反論するようなことではない。しかも、政府は昨年7月15日、「世界の人権保護促進への日本の参画」と題した文書を公表し、人権理事会の調査に協力姿勢を示している。文書には〈特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため、今後もしっかりと協力していく〉と明記されているのだ。特別報告者に協力する――と約束しながら、問題提起されると「個人」扱い。世界もア然ボー然だ。

しかもだ。日本政府は今春、北朝鮮の日本人拉致などの人権問題解決に尽力し、16年まで特別報告者を務めていたインドネシア国籍のマルズキ・ダルスマン氏に旭日重光章を授与している。政権にとって都合のいい人物は絶賛するが、苦言を呈する人物はこき下ろす。まったくデタラメだ。「今回の対応は、分かりやすいダブルスタンダードで、安倍政権らしい考え方と言える。ケナタッチ氏は特別報告者として、日本社会を調査する権限を持っています。しかるべき立場の人物が調査のために送った『質問書』を『国連の総意ではない』と切り捨て、抗議するなど全くの見当外れです」(日弁連共謀罪法案対策本部事務局長の山下幸夫弁護士) 安倍政権から抗議文を送りつけられたケナタッチ氏は、「(抗議文は)中身のあるものではなかった」と憤慨。いやはや、世界中に恥をさらすのはいい加減にしてほしい。 【日刊ゲンダイ2017年5月29日

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