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2017年5月21日 (日)

李下に冠を正さず

SNSを利用されている方々の間で、よく使われる言葉に「拡散希望」というものがあります。自分の発信した情報を多くの方々に広めたい時に使います。広めたい言葉の前に「#」記号を付けることは「ハッシュタグ」と呼ぶそうです。その記号付の発言がツイッター上の検索画面などで一覧表示され、同じ経験や同じ興味を持つ方々が閲覧しやすくなります。最近では今村前復興相の失言を逆手に取った「#東北で良かった」が注目を集めていました。

このブログでも「拡散」という言葉を何気に使っています。前回記事「北朝鮮情勢から思うこと」の最後に『LITERA』に掲げられた記事「北朝鮮危機を煽っているのは世界中で日本の総理大臣だけ」の全文をそのまま紹介しました。その際、自分で綴る文章であれば違った表現や言葉を選んでいる箇所が多々ありますが、幅広い情報を拡散する目的のもと取捨選択等は一切しないで全文をそのまま転載した旨を書き添えていました。

安倍首相らが北朝鮮危機を必要以上に煽っているという印象を抱いています。これは私自身の印象であり、個々人で大きく違うのだろうと受けとめています。一方で国際社会の中でも突出し、北朝鮮危機を煽っているという現状は「事実」であるようです。その「事実」を不特定多数の方々に拡散する手っ取り早い記事として『LITERA』の文章が目に留まりました。このような事実関係について、もともと知っていたかのように振る舞いながら手間をかけ、自分自身の言葉の文章に置き換えることを省きがちです。

その際、最も多く掲げているのはメディアの報道記事です。メディアの中でも当ブログで『日刊ゲンダイ』の記事を紹介する時が目立っているかも知れません。大手新聞社では取り上げない独特の切り口からの記事内容が多いため、マイナーな情報を提供する場として結果的に多くなっているようです。 安倍政権を批判する内容が多く、その表現方法や言葉も激しい語り口であるため、不愉快に思われる方も多いはずです。

「日刊ゲンダイだから」という先入観を排することを目的に「森友学園の問題から思うこと」を投稿した際、一つの試みとして「被害者ヅラ」や「なんと軽い理念の共鳴か」という安倍首相を揶揄するような言葉や推論に近い記述箇所を外し、事実関係を中心に抜粋してみました。すると最後に引用した社名を紹介しなければ『日刊ゲンダイ』の記事だとは思われないような内容になっていました。事実関係の報告に限れば、どのメディアの記事内容も大差なくなることは当たり前だと言えば当たり前な結果です。

しかし、このような紹介の仕方は決して望ましくありません。一部抜粋と断り書きを入れたとしても著作権やマナーの問題として多用できないものと考えています。したがって、一度限りの試みにとどめ、少し扇情的な表現や言葉があったとしても当該のサイトに掲げられた文章をそのまま紹介することを基本としています。ちなみに当該サイトの全文が長すぎる場合、必要に応じて関連箇所のみの一部抜粋は想定しています。あくまでも文章の中から特定の言葉や修飾語を外し、原文の印象を変えるような行為は控えていくつもりです。

実は本題に入る前の前置きとして書き進めた話が、たいへん長くなってしまいました。前回記事のコメント欄で、nagiさんから「このサイトはレッテル貼りや侮蔑する発言が多いことはご存じのはずです。 それでも引用するということは、それらを許容してるあるいは受け入れていると見做すことができます」という指摘がありました。『LITERA』の記事紹介に関わる指摘でしたが、私からは「取り急ぎコメント欄でお答えすべきなのかも知れませんが、この点については新規記事の本文で考え方を伝えさせていただきます」とレスしていました。

『LITERA』のサイトはブックマークし、時々、閲覧しています。『日刊ゲンダイ』と同様、現政権に批判的な立場を前面に出し、確かに過激な言葉や表現が目立つ記事も少なくありません。もちろん私自身、誹謗中傷やヘイトスピーチを認めていません。そのような言葉が含まれていれば安易に当ブログの中で紹介しません。加えて、先入観や思い込みによるレッテルを貼った批判は控えるべきという考えを持っています。しかし、この点は私自身の考えであり、このブログを通した意見交換をされる際の「お願い」にとどまるものです。

他者が不愉快に思う言葉は侮蔑する発言と表裏一体となりがちです。むき出しの言葉による激しい応酬で感情的な対立を招き、建設的な議論につながらない場面が多々あります。一方で、直情的な言葉のほうが論点を浮き彫りにし、議論を活性化させるケースもあり得ます。異なる立場や考え方の方々に対し、感情を害させないように言葉を選び、婉曲な言い回しに終始した場合、伝えたいことが伝えられないのも問題です。

以前の記事に「批判意見と誹謗中傷の違い」というものがありますが、その峻別さえ間違えなければ、ある程度の自由さのあるほうが望まれているのかも知れません。このブログのコメント欄も「お願い」は多くても、即座にコメントは反映され、どのような辛辣な言葉や過激な表現だったとしても削除しないため、自由さの高い部類に位置付けられます。『LITERA』の件に戻りますが、私自身、たいへん恐縮ながらサイトに掲げられた記事すべてに目を通している訳ではありません。

その範囲内となりますが、前回記事の中で紹介した内容も含め、絶対容認できないという言葉は確認できていません。人によって不愉快に思われるような箇所は多いため、私自身が綴る文章であれば違った表現や言葉に置き換えるという釈明にとどまります。そのような取捨選択は前述したとおり望ましくないため、これまで『LITERA』の記事は原文をそのまま紹介しています。そもそも『LITERA』は一個人のサイトではないため、編集部の責任によるチェックが働いているはずであり、絶対容認できない言葉や表現は含まれていないものと理解しています。

いずれにしても物事を適切に評価していくためには、より正確な情報に触れていくことが欠かせません。誤った情報にしか触れていなかった場合は適切な評価を導き出せません。また、情報そのものに触れることができなかった場合、問題があるのか、ないのか、評価や判断を下す機会さえ与えられません。このブログを通し、これからも『LITERA』や『日刊ゲンダイ』などの記事も幅広い情報の一つとして紹介していくつもりです。人によっては偏った情報だとして切って捨ててしまうのかも知れませんが、どのように評価されるのかどうかも個々人の判断や選択だろうと思っています。

今回、タイミングで言えば「テロ等準備罪、賛否の論点」や「北朝鮮情勢から思うこと」の続きを取り上げることも考えていました。ここまでで相当長い記事となっていますが、安倍首相と加計学園の問題だけは少し触れてみます。国家公務員の倫理法に基づく倫理規程で、許認可等の相手方や補助金等の交付を受ける者など国家公務員の職務と利害関係を有する者(利害関係者)から金銭・物品の贈与や接待を受けたりすることなどが禁止されています。割り勘の場合でも利害関係者と共にゴルフや旅行などに行くことも禁止されています。

私どもの自治体も同様で、定年退職された先輩職員でも利害関係者にあたった場合、ゴルフに一緒に行くことも難しくなります。一般職公務員を対象にした規程であり、特別職公務員である安倍首相は対象外となります。ただ今回の記事タイトルにした「李下に冠を正さず」という言葉があるとおり誤解を招きかねない付き合い方は控えるべきだったのではないでしょうか。今のところ真相は不明瞭なままですが、東京新聞の社説「加計学園問題 首相は自ら真相を語れ」が目に留まりました。最後に、明らかになっている事実関係の情報の拡散を目的に社説の全文をそのまま紹介させていただきます。

安倍晋三首相に近い人物が経営する私立大学の学部新設に首相の意向が働いていたとしたら、権力乱用との批判は免れまい。首相は自らの関与の有無について、進んで真相を明らかにすべきである。李下に冠を正さず、という言葉は死語になってしまったようだ。学校法人「加計学園」(岡山市)系列大学の獣医学部を愛媛県今治市に新設する計画である。市と県が2007年から14年まで、15回にわたって申請しながら認められなかった獣医学部の新設が、なぜ安倍政権の下で一転、52年ぶりに、それも今治市で認められることになったのか。そこに安倍首相の意向は働いていなかったのか。不可解なことがあまりにも多い。

きのう明らかになった文部科学省が作成したとされる文書には、内閣府から「官邸の最高レベルが言っていること」「総理の意向だと聞いている」などと言われた、との内容が記載されていた。菅義偉官房長官は記者会見で文書の内容を全面否定し「首相からも一切指示はない」と強調した。しかし、にわかには信じ難い。というのも、首相と、同法人の加計孝太郎理事長とは極めて近しい関係にあるからだ。

本紙報道によれば、12年の第2次安倍内閣発足以降、首相は加計氏と13回にわたって会い、ゴルフを4回、夕食を9回ともにしている。首相自身、加計氏のことを「どんな時も心の奥でつながっている友人」「まさに腹心の友だ」と語ったことがある。首相が国会で答弁したように、本当に「加計学園から私に相談があったことや、圧力が働いたことは一切ない」のだろうか。単に否定するだけでなく、国民に説得力のある説明をすべきである。

文書の有無や真偽にかかわらず自らに近しい人物に対して、便宜を供与したように疑われる行為は厳に慎むのが、権力者としてあるべき振る舞いだろう。首相自らは仮に直接関与していなかったとしても、官僚組織に首相の意向を忖度させるようなことも、あってはならない。安倍首相夫妻は学校法人「森友学園」への格安での国有地売却をめぐっても、政治的関与の可能性が指摘されてきたが、与党側は昭恵氏の国会への招致を拒み、真相を闇に葬り去ろうとしている。権力の側にある人間は何をやっても許される、と考えているのだろうか。だとしたら、思い違いも甚だしい。【東京新聞2017年5月16日

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コメント

「LITERA」さんは、「噂の真相」のDNAを受け継いでおられるので、筆致にクセがある感じはします。
個別の記事を見ていくと、「事実誤認とはまでは言えないが、話を盛ってる」とか「事実誤認ではないが、論旨から都合の悪い部分は隠す」とか「明らかに事実誤認」とか「エンターテインメント性に寄りすぎ」とか、そういう内容も結構あるので。
掲載内容を全否定するつもりはないですけど、無条件に記事を前提にして論じるのは避けたい(一次情報や他の媒体の情報も参照してからでないと引用しがたい)傾向は感じるですよ、ワタクシなどは。

「日刊ゲンダイ」さんも同じく。

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「国際社会の中でも突出し、北朝鮮危機を煽っている」という印象はワタクシにもあります。
一方で、「国際社会の中でも突出し、もっとも脅威にさらされている」のも事実です。

軍事常識として、「脅威は距離の2乗に比例して強まる」というものがあって、EEZ内に着弾する日本と、アメリカとで温度差があるのは当然でしょう。
どちらかというと北朝鮮寄りの中国やロシアは言うまでもなくです。
あと、とりあえず日本を批判し日本側の行いに反発するのが国是(日本側の言い分の是非とは関係なく)な韓国に関しては、「韓国が批判してるから日本が悪い」という条件反射的な評価はできません。
というより、「朝鮮国連軍と基地提供義務のある条約を結んでいる為、事実上朝鮮国連軍の一部である日本」と、「休戦協定の当事者ではない(署名してはいない)韓国」や「同一の民族である韓国」との、- 北朝鮮側から見た立場の違い - も無視はできません。

従って、軍事的常識からしても、「国内の軍事アレルギーの強さ(故のアレルギー反応としてのショックの強さ)」からしても、「国際社会の中でも一番騒ぐのは、ある意味で当然」だと思っています。その程度(強弱)についての是非やそのこと自体についての是非とは別に。

なのでワタクシは、いわゆる「左右」のどちらにも、過度に「はしゃがない、騒がない、遊ばない、邪魔しない」でほしいと考えています。どちらを指向するにしても「行き過ぎはダメだ」ということです。
そうした観点からは、「LITERA」さんの一連の記事も、政権批判の立場から必要以上に「はしゃいでる、騒いでる、遊んでる、邪魔してる」という雰囲気を感じます。

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獣医学部の件は、民進党さん(与党で会った民主党さんの時期も含めて)のこれまでの態度との変貌ぶりに驚愕してして、「政局にしようとする態度にあきれて」います。
地元(自治体・経済界)の10年来の誘致活動(土地取得等の準備行為)を土壇場で崩そうとするというのもそうですが、なによりも、
昨年まで、国会審議で「当該事案について、政府に実現を強く迫っていた」のは他ならぬ民進党さんだからです。

一方、特区の早期実現を目指すのは政府の命題ですし、総理が一般論として「特区の早期実現を目指す」のはある意味で当然だと考えています。

地元では10年かけて土地の取得も進めてきたし、民進党さんからも強く現地での開設実現を迫られていたという背景事情からも、選に漏れたとされる京産大さんとは前提が違いすぎて、すべてを総理の意向に帰するのは難しいと考えています。
つまり、森友学園の問題とは同列には扱えないという印象です。

投稿: あっしまった! | 2017年5月21日 (日) 19時53分

あっしまった!さん、コメントありがとうございました。

私自身も『LITERA』や『日刊ゲンダイ』の記事内容を無条件に受け付けている訳でなく、共感する領域や少し極端だと思う点が織り交ざっています。その上で多面的な検証につなげるための幅広い情報の一つとして皆さんにも拡散しているつもりです。

最近、特に幅広い情報に触れていくことの大切さを痛感し、何が正しいのか、その判断は正しいのか、「誰が」や「どの政党が」に重きを置かない思考に努めたいものと考えています。ぜひ、そのような意味合いで今後もお時間等が許される際、あっしまった!さんから幅広い情報やご意見をお寄せいただければ幸いです。

投稿: OTSU | 2017年5月21日 (日) 22時13分

この記事がおもしろいので紹介します

>http://www.tachibana-akira.com/2017/05/7595

それと加計学園の記事について

>http://agora-web.jp/archives/2026171.html

なかなか興味深いですね。

投稿: nagi | 2017年5月23日 (火) 17時10分

nagiさん、コメントありがとうございました。

新規記事でも幅広い情報をもとに判断していくことの大切さを取り上げる予定です。その際、加計学園の問題についても触れることになりますが、ご紹介くださったサイトの戦略特区に関する情報なども添えた上、いろいろ考えてみるつもりです。

投稿: OTSU | 2017年5月27日 (土) 06時31分

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