« 2017年、翼はいらない | トップページ | 36協定について »

2017年1月 7日 (土)

働き方改革の行方

元旦に投稿した前回の記事「2017年、翼はいらない」の中で、少し話を広げて国全体としても「あまり背伸びせず、置かれた環境の中で一歩一歩前に進むことが大事な道筋」という問題意識を示させていただきました。いみじくも1月4日の朝日新聞には『「経済成長」永遠なのか』という見出しの特集記事が1面と2面にわたって掲げられていました。低成長を容認していくことも必要ではないかという問題提起でした。

この特集記事に対し、ネット上では強い批判意見を目にすることができます。朝日新聞の記事を読みましたが、決して経済成長を否定している内容ではありません。私自身の問題意識も同様ですが、簡単に経済成長できない時代に直面し、今後も成長力を重視していくことが適切なのかどうかを論点としています。賛否が分かれがちな重要な論点ですが、今回の記事はずっと先送りしてきた題材を取り上げ、経済成長の話は機会を見て掘り下げてみるつもりです。

さて、昨年11月末、私も役員の一員に連なっている連合地区協議会が『「働き方改革」を考える』という労働学習会を催しました。講師は連合東京の労働局長を兼務されている副事務局長に依頼し、たいへん多岐にわたり、奥深い論点を限られた時間の中で分かりやすく説明していただきました。現在進行形で議論が進んでいる話題であり、必ず当ブログの題材として取り上げてみようと考え、ようやく今回の新規記事に至っています。

昨年夏の参院選挙後に発足した第3次改造安倍内閣は「未来チャレンジ内閣」と称し、働き方改革を一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置付けています。労使の代表も有識者として構成した働き方改革実現会議を発足させ、政府は「多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます」と広報しています。検討事項としては次の9項目があげられています。

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善 
  2. 賃金引き上げと労働生産性の向上 
  3. 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正 
  4. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題 
  5. テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方 
  6. 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備 
  7. 高齢者の就業促進 
  8. 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立 
  9. 外国人材の受け入れの問題

上記の中でも、非正規労働者の処遇改善と長時間労働の是正が会議の2大テーマとなっています。このような問題の解決に向け、連合は以前から訴えてきていますので国が本腰を上げたこと自体は歓迎しています。ただ労働学習会の中で講師の方からいくつか懸念点も指摘されています。まず働き方改革実現会議のメンバーがILOの三者構成原則から外れ、有識者15名のうち労働側代表が連合の神津会長一人であるというバランスの問題です。

一人だったとしても神津会長には連合組合員686万人の代表として影響力を発揮していただかなければなりません。さらに組合員として組織化されていない多くの労働者、とりわけ非正規の方々の声も連合全体として受けとめていくことによって、働き方改革実現会議の中での神津会長の発言力が高まっていくものと見ています。とは言え、構成メンバー全体の中で労働問題として働き方について語れる有識者が極めて少数であることを講師の方は懸念されていました。

いずれにしても官邸主導で使用者側の目線を優先した「働かせ方」改革にならないよう連合運動の正念場であるという講師の方の強い問題意識が伝わってきた学習会でした。具体的な論点となる長時間労働是正の問題ですが、36協定を結べば時間外労働ができるようになり、法的には残業時間が青天井となっています。これまでも過労死を防ぐための月80時間という目安はありましたが、今後は労働基準法を見直し、明確な上限規制を設けるべきかどうかが働き方改革実現会議の中で議論されています。

この説明を受けた際、講師の方から学習会の参加者全員に問いかけがありました。残業時間の上限規制は必要かどうか、設ける場合は月何時間が適当かどうか、一人ひとりに挙手を求められました。連合地区協議会の議長代行を務めているため、閉会の挨拶を担いました。その挨拶の中で「私は手を挙げられませんでした。ボーッとしていた訳ではありませんが、難しい問題だったため、決められませんでした」と皆さんに明かしていました。

時間外労働を法律で規制しても、こなさなければならない業務があれば実効力に疑問を残しがちとなります。サービス残業などの脱法行為を増やすことになるようであれば本末転倒な話だろうと思っています。上限規制を設けることは賛成ですが、同時に労働の中味やルールを守らせていく仕組みの検討も欠かせないものと考えていたため、手を挙げそびれたという説明を加えさせていただきました。

閉会の挨拶の中では電通社員が過労自殺した話にも触れていました。このような痛ましい出来事が二度と起こらない働き方改革の実現を願いながら、決められたルールを職場の中で守っていくためには労働組合の役割が重要であることを訴えさせていただきました。学習会の中で講師の方から「電通の組合の組織率は30%ほど」と伺っていたため、労働組合の影響力は組織率の高さに左右され、有名無実化しない存在感の大切さを思い返していることを参加者の皆さんにお伝えしていました。

もう一つの柱である非正規労働者の処遇改善は働き方改革実現会議の中で同一労働同一賃金の考え方に照らした議論が進んでいます。職務内容が同一又は同等の労働者に対し、同一の賃金を支払うべきという考え方です。EUやドイツなどの法律では正規と非正規の処遇格差問題にあたり、非正規労働者に対して「合理的な理由のない不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。つまり「職務内容が同一であるにもかかわらず賃金を低いものとすることは、合理的な理由がない限り許されない」と解釈されています。

このような論点のもと不合理な格差や合理的な理由について様々な検討が加えられ、昨年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が策定されました。ちなみに左記の下線をクリックしていただければリンク先で厚生労働省のホームページに掲げられたガイドライン案の全文を参照できます。学習会の中で伺った話ですが、労働の負荷、熟練度、免許の有無、責任の度合い、経験などは格差を生じさせる合理的な理由として認められるそうです。

合理的な理由にならないものとして学歴や性別があり、基本給や手当の取扱い、休暇、福利厚生などは正規と非正規を同一のものにしなければなりません。このような端的な説明では誤解を招きかねませんが、非正規労働者の処遇改善に向けて一歩踏み出したことは確かです。今後、2019年度からガイドラインの運用開始、新制度の施行という計画のもとに具体的な議論が深化されていくはずです。他の課題でも働き方改革の行方は労働組合にとって非常に重要なものですので、これからも機会を見ながら当ブログで取り上げていければと考えています。

|

« 2017年、翼はいらない | トップページ | 36協定について »

コメント

ガイドライン2017年からに
なりませんかね?
年齢的にも体力的にも
もちそうにありません

投稿: 一生非正規 | 2017年1月 7日 (土) 18時43分

一生非正規さん、コメントありがとうございました。

法的拘束力を持たせた施行が数年先になる計画ですが、リンク先の厚労省のQ&Aにあるとおり不合理な格差は早急に是正しなければなりません。したがって、実質的な意味合いで各企業が法改正を待たずに実施していくべきものと考えています。そのような方向性をもとに私どもの組合も非正規組合員の待遇改善を促進していくチャンスだととらえています。

投稿: OTSU | 2017年1月 7日 (土) 21時42分

お返事ありがとうございます
勉強になります

2年後だと非正規のまま
定年を迎えてしまう人がいます
当然退職金もないまま
何十年も年収155万で働いて…

あと、就職氷河期官庁嘱託職員は何年頑張っても正規に登用する事はありませんか?
もう、年齢で採用職員は受ける事も
出来ず、また、採用試験も見送られて
いました
民間で役立つスキルもないので
定年まで頑張りたいのですが

投稿: 一生非正規 | 2017年1月 7日 (土) 22時12分

一生非正規さん、コメントありがとうございました。

今後、正規への登用など課題によってハードルの高さが異なっていくものと思います。その中で、地方公務員の非常勤職員制度では下記報道のような追い風も吹き始めています。このような追い風を活かし、昨夜記したとおり私どもの組合では嘱託職員に関する要求を2017年度から一つでも実現できるよう頑張っていくつもりです。


【参考・日本経済新聞2016年12月27日】

非常勤の地方公務員にボーナス支給を 総務省研が報告書

 総務省の有識者会議「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」は27日、非常勤の地方公務員にボーナスを支給できるよう制度改正を求める報告書を高市早苗総務相に提出した。正社員と非正規社員の賃金格差を是正する民間の「同一労働同一賃金」と歩調を合わせる。総務省は地方公務員法の改正も視野に検討する方針だ。

 地方公務員の臨時・非常勤職員は2016年で64.5万人。事務補助のほか教員や保育士、給食調理員、図書館職員など分野も幅広い。現行制度では国家公務員の非常勤職員にはボーナスを支給できるが地方公務員の非常勤には支給できない。

 報告書では地方公務員法に一般職非常勤職員の採用方法などが明記されていないことも問題視し、制度改正を求めた。自治体によっては、本来専門性の高い弁護士や医師らを想定する「特別職」として事務補助職員を採用するケースもみられる。特別職は育児休業の取得が認められず、出産後に退職を余儀なくされる例が目立つという。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS27H2F_X21C16A2PP8000/

投稿: OTSU | 2017年1月 8日 (日) 06時44分

ありがとうございます

私の市の嘱託職員は特別職扱いで
地方公務員法は適応されません

厚生年金を払っているので一般の
労働法が適応されないのかな?と思うの
ですが、契約社員五年以上で正規登用
にはあてはまらないんですよね
時短ですし…
10年以上いますが、その前に
雇い止めされそうで、なかなか
声をあげるのも、生意気だと思われ
そうで、出せません

今のガイドラインの感じでは、
非正規の待遇はよくなりますが、
結局非正規雇用が拡大され、
使い捨てが増えるガイドラインに
なっているように思います

やむなく非正規にとって喉から
手がでるほどほしいのは
安定です
従って定年まで安心して働き続ける
正規職員になりたいのです

就職氷河期世代救済も昨年打ち出され
ましたが、五回以上転職とか、
ハードル高過ぎでした💦
官民問わず就職氷河期非正規で15年以上
で正規登用に助成金とかに
してほしいものです

見ず知らずの者の突然のメールにも
親切にご解答いただき、
本当にありがとうございました

少し、思いを吐き出せて楽になりました
ありがとうございました

投稿: 一生非正規 | 2017年1月 8日 (日) 10時11分

一生非正規さん、コメントありがとうございました。

今回のような課題は今後も取り上げていく予定です。ぜひ、これからもご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします。また、お時間等が許される際はお気軽に当欄をご利用ください。

投稿: OTSU | 2017年1月 8日 (日) 21時08分

ありがとうございました
一緒に戦って下さり、感謝いたします

役所に何年も勤めていると、貧困で
行き場をなくし絶望している方々の
話を伺ったり、公務員を恨んでいる
方の話を伺えたりします
何とかして差し上げたいのですが、
自らも不安定な立場のため、
どうすることも出来ずにいます

正規登用し、安定を手に入れたら、
発言も出来るし、子供食堂などの
奉仕活動も、生活に安定と
給与に余裕があれば実行する事が
出来、夢が広がります
もう、持病で自ら子供をもうける
事も出来ないため、地域の子供達の
育成に協力したいです

力強いお言葉励みになります

諦めず、今の仕事も大変遣り甲斐を
感じておりますし、私なんかを
信用してくれ、仕事を任せて
下さってくれる方々に感謝しながら
正規登用し、地域の子供育成の夢の
ため、頑張っていこうと思います

ありがとうございました!
私も頑張るので、
頑張って下さい!

投稿: 一生非正規 | 2017年1月 9日 (月) 13時51分

いつもお世話になってます
自治労の非正規の組合への入りかたを
教えて下さい

ようやく非正規公務員の処遇改善の
波がきてたのですが、
私の職場では正規を増やすため
非正規に相談なしに異動、嫌なら
辞めろの波が来てしまいました

投稿: 一生非正規 | 2017年1月13日 (金) 11時20分

昨日のトランプ氏の会見を見た後、最近のマスコミに対して
思うことを上手く説明している記事があったので紹介します。

>http://agora-web.jp/archives/2023733.html

多様な情報、そして膨大な情報の中でどうやって真実を
見つければよいのか悩む思いです。報道機関にバイアスが
掛かって情報を都合のよい方に誘導してるのはよくあるの
ですが、そのことを理解すると、何をもって事実を確認
すればよいのでしょうか。段々と疲れてしまい。結局は
自分が信じたい情報を信じるようになるのでしょうか。

投稿: nagi | 2017年1月13日 (金) 13時48分

一生非正規さん、nagiさん、コメントありがとうございました。

各自治体の職員組合の大半は自治労に属していますが、中には自治労連、もしくはどちらの産別にも加盟していない組合があります。さらに組合そのものがない自治体もあるようです。このように個々の自治体における状況は様々ですが、組合があれば本庁舎内に組合事務所があるはずです。したがって、まず組合事務所を訪ねていただければ組合役員と相談ができるのではないでしょうか。

そのあたりが不明だった場合や敷居を高く感じられるようであれば、都道府県ごとに自治労の県本部等があります。このブログの右サイドバーの用語解説「自治労」のリンク集から電話番号等が調べられます。電話をおかけいただければ、いろいろアドバイスが得られるものと思います。平日はブログから距離を置いているため、レスが遅れて申し訳ありませんでしたが、また何か不明な点がありましたらお問い合わせください。

nagiさんの問題提起ですが、私自身、最近の記事「SNSが普及した結果…」「SNSが普及した結果… Part2」の中で記したとおりの考え方に至っています。インターネットなしの生活はあり得ないため、ますます情報の受け手側のリテラシーを鍛えていくことが必要だと考えています。マスメディアやSNSの特性や難点を的確に理解した上、一つの経路からの情報だけを鵜呑みせず、意識的に幅広く多面的な情報に触れていくことが強く求められています。より望ましく、より正しい「答え」を見出すためには欠かせない心構えだろうと考えています。

ちなみにコトバンクでリテラシーとは「与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力、応用力」と解説されています。

投稿: OTSU | 2017年1月14日 (土) 06時31分

教えて下さり有難うございます
本庁に組合はあるのですが、
小さな市町村なので、
すぐに噂になり、風当たりが
強くなりそうなので、
県本部に電話してみようと
思います
正規と非正規って結局敵なんですかね?
すぐに、生意気だ、やめればと
言われてしまいます
一生懸命働き続けたいだけなのに…

早速来週にでも電話してみます
有難うございました

投稿: 一生非正規 | 2017年1月14日 (土) 12時01分

一生非正規さん、コメントありがとうございました。

個々の場面の詳しい事情が分かりませんので踏み込んだ論評は避けなければなりませんが、「正規と非正規って結局敵なんですかね?」という見られ方は悩ましく、たいへん残念な言葉だと感じています。少なくとも私どもの組合は正規と数多い非正規職員が同じ組合員として労働条件の維持向上をめざしています。きっと一生非正規さんの自治体の組合役員も基本的には同じ思いを抱えているのではないでしょうか。

なお、同じ文章のコメント投稿が続いていましたので一つ削除させていただきました。

投稿: OTSU | 2017年1月14日 (土) 20時32分

http://ameblo.jp/gagome-yokoyama/entry-12240166100.html?frm=theme

働き方改革で特別職の嘱託は
単なる事務補助員ということで
雇い止めされそうです
助けて下さい

投稿: 一生非正規 | 2017年1月30日 (月) 20時30分

一生非正規さん、コメントありがとうございました。

本来、非正規の方々の待遇改善を目的にした法改正等の動きの中で、ご指摘のような問題が生じかねないことを憂慮しています。一生非正規さんに対し、直接的な手助けは難しい関係ですが、私自身ができること、すべきことに力を注がせていただきます。

まず何よりも私どもの自治体に雇用され、組合加入されている嘱託の方々の一方的な雇い止めを許さないこと、このような法改正等の動きについて当ブログを通して情報発信や問題提起していくことなどがあります。一生非正規さんからの切実な訴えに呼応できず、たいへん申し訳ありませんがご理解ご容赦くださるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2017年2月 4日 (土) 06時45分

ご返答ありがとうございます
私も、いち、官製ワープアとして
色々調べていますが
東京都荒川区や愛知県豊平市では、
非正規公務員の実情に合わせ、
モチベーションをたかめ、
行政サービスを向上させる活用法を
用いていて、大変羨ましい限りです

総務省から出された報告書を読みましたが
雇い止め推進、10回以上更新をしても
既得権を持たせないなど
非正規公務員の人権を認めない
報告書になっていて驚きました

有識者ってなんなんですかね?

私は、単なる事務補助員ですが、
恐らく、正規の公務員よりも
自分の街の市民の暮らし、過疎化に
大して問題意識を持っています

働き方のなみがきている
今を逃したら何も変わらないと
思い、私なりに微力ながら動いて
いこうと思います

また、こちらのブログが大変参考に
させていただいております
ありがとうございます

投稿: 一生非正規 | 2017年2月 4日 (土) 15時40分

一生非正規さん、コメントありがとうございました。

情報の共有や交流という意味合いで、ぜひ、これからも当ブログをご注目いただければ幸いです。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2017年2月 4日 (土) 20時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/130697/64579611

この記事へのトラックバック一覧です: 働き方改革の行方:

« 2017年、翼はいらない | トップページ | 36協定について »