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2016年10月 9日 (日)

パワハラ防止に向けて

今年6月に投稿した記事「新しい判断で消費増税再延期」の冒頭に「パワハラ防止に向けた私どもの組合の取り組みに関しては機会を見て改めて取り上げさせていただくつもりです」と記していました。「機会を見て」が直後の記事の題材になる場合もありますが、かなり月日を経過させてしまう場合もあります。後者の場合、たいへん申し訳ないものと思いながらも「機会を見て」と記したことを決して忘れないようにしています。

ようやく今回、パワーハラスメント、いわゆるパワハラを題材にした新規記事を書き進める機会とさせていただきます。自治体職員によるパワハラの問題がマスコミ報道されるケースも少なくありません。先月には自治労がパワハラ実態調査の結果を公表しました。今年5月に自治労組合員5万人を対象にした調査で、私どもの組合も協力していました。前回調査から6年が経過していますが、前回の調査結果と同様、5人に1人がパワハラの被害を受けていることが明らかになっています。

自治体関連の労働組合でつくる自治労(約83万人)が組合員ら約10万人を対象にしたパワーハラスメントに関する調査で、3人に1人が上司などからパワーハラスメントを受けた経験があると回答したことが8日、分かった。複数回答で、パワハラで「心療内科や精神科に通院した」が7.5%、「休みがちになった」も5.3%に上り、職場で追い込まれている状況が浮かんだ。自治労によると、パワハラに関する大規模な調査は初めて。自治労は「民間の職場でも同じような実態があるのではないか。早急に取り組まねばならない」としている。

自治労は5~9月に調査。組合員の地方公務員ら約10万3800人にアンケートを配布し、消防職員約2600人を含む約6万2200人(うち男性55.5%)から回答を得た。平均年齢は40.6歳。過去3年間でパワハラを受けた人は全体で21.9%に上った。男女別では男性は19.7%、女性は24.5%がパワハラがあったと答えた。さらに3年より前に受けた人は10.6%だった。

過去3年間で受けたパワハラは「大声など感情的にしかる」が16.4%で一番多かった。「ささいなミスをしつこくしかる」13.3%、「意向を無視した一方的な指示をする」12.8%、「性格や容貌をからかったり非難する」10.3%と続いた。パワハラに対して職場で取った行動では「何もしなかった」が42.4%。「先輩や同僚に相談した」33.0%を上回った。【日本経済新聞2010年12月8日

上記の報道は6年前のものですが、その深刻な結果を受けとめ、自治労はもちろん各自治体もパワハラをなくすため、様々な努力を重ねてきています。実態把握、マニュアル作成、職員研修、相談窓口の設置など前回調査に比べてパワハラ対策が急速に進んでいることを最新の調査から把握できています。組合員のパワハラに対する周知度も高まっていますが、残念ながら被害状況は前回と同様の結果を示しています。

ちなみに上記報道は「3人に1人」となっていますが、自治労としては前回も今回も「5人に1人」という結果を把握しています。いずれにしても高い比率で推移している状況には変わらず、対策が功を奏していないというよりも、それ以上に自治体職場の中でパワハラが横行する素地の広がりがあり得ることを危惧しています。そのため、仮にパワハラ対策が進んでいなかった場合、被害状況の数字はもっと高くなっていたのかも知れません。

横行する素地として以前の記事「脱成果主義の動き」「協力関係を築く評判情報」の中で提起した問題意識が思い浮かんでいます。さらに自治体行革の柱とされがちな職員数の削減が急激に進んだ結果、職員一人ひとりに余裕がなくなり、他者を思いやったり、積極的に手助けするという組織風土が後退しがちな傾向にも注意しなければなりません。能力や経験が不足した部下や後輩らに対し、苛立ちを前面に出した叱責が増えている可能性に思いを巡らしています。

以前の記事(「投資」となるパワハラ対策)の中で綴った要旨ですが、企業側にとってパワハラ対策はセクハラ対策と同様、労務管理の責任が厳しく問われるようになっています。これらの対策は「コスト」がかる厄介なものだと敬遠され、「あれはパワハラ、これはセクハラと言われたら、逆に職場がギスギスしてしまう」とネガティブにとらえられがちです。しかし、パワハラ対策は「コスト」ではなく、生産性向上のための「投資」であり、良好な人間関係を築いていくパワハラ防止対策は従業員のやる気や目的意識を高め、組織の生産性の向上に繋がると見られています。

今回の自治労のパワハラ調査で「言葉も内容も知っている」は87.9%に上っています。「言葉は知っているが内容はよく知らない」と答えた組合員は11.6%となっています。後者の数字を少ないと見るのか、多いと見るのか分かりませんが、内容は知っているつもりでも実際の場面で、パワハラの加害者となっていることに気付いていない人も多いのではないでしょうか。至らない点は手取り足取り指導することが「部下のため」であり、称賛されるべき行為だと考え、パワハラであることを自覚していない上司は多いようです。

パワハラを許さない職場づくりのためには、まず皆がパワハラについての知識を深めることが必要です。セクハラと同様に「それって、パワハラじゃないですか?」と気軽に指摘できるようになれば、自覚のなかった加害者に自制を促す機会となり得ます。このような問題意識のもと7年前の安全衛生委員会で、組合側から「パワハラ対策も安全衛生委員会の重要な課題とすべき」と要請し、即座に賛同を得られ、安全衛生委員会としてパワハラ対策についても力を注いでいくことを確認しました。

その頃からパワハラによる自殺が労災認定されるようになっています。パワハラは、職場から撲滅すべきものであることは言うまでもありません。労使双方でパワハラに対する定義を共通理解し、実態の点検を進めながらパワハラと認定すべき行為が発覚した際は適切な対応に努めています。また、セクハラ防止についても安全衛生委員会や労使での重要な課題としていますが、2年前に「職場におけるハラスメントに関する相談又は苦情の処理要綱」を定め、パワハラとセクハラの相談窓口等の一本化をはかっています。

相談窓口やハラスメント防止等対策委員会には組合役員も加わっています。自治労の調査で、重大なパワハラ被害を受けた場合、専門機関に委託した外部設置窓口に相談すると答えた方が54.3%と半数以上となっています。自治体内部の窓口では「プライバシーが守られないのではないか」という声が多いようです。確かに内部の窓口に相談することは敷居が高いのかも知れませんが、各自治体が責任持って正式な相談窓口等を整えることは重要な動きだと考えています。

組合の大切な役割の一つとして、組合員が何か困った時に相談を受けています。労働条件の問題であれば労使間の窓口となって解決をはかり、生活支援であれば労働金庫全労済と連携しながら対応し、法律相談であれば顧問契約している法律事務所を紹介しています。いわゆる「駆け込み寺」の役割があり、そのような役割が果たせないようであれば組合の存続意義を問われかねません。

長く組合役員を務めているとパワハラに関する相談も数多く受けてきました。その際、加害者にあたる管理職の方に直接事情を伺うと、まず間違いなく「パワハラという自覚はない」という答えが返ってきます。前述したとおり上司として当然行なうべき指導や業務命令であるという認識が大半でした。被害を受けている組合員の救済が最優先であることは言うまでもありませんが、無自覚のままパワハラを繰り返す上司の言動が改まることを強く願っています。

このような言動はNGであることをしっかり自覚することによって、第二、第三のパワハラ被害者を生じさせないようになるはずです。パワハラかどうかの線引きを明確化でき、再発させないことは、部下にとっても組織にとっても、さらに上司本人にとってもプラスに繋がる話だと考えています。職員が健康でいきいきと働き続けられ、組織の士気や業務効率を高めるためにも、パワハラを許さない職場づくりが今後も重要な課題だと言えます。

その一環として毎年、組合が職場ごとに実施する「人員確保・職場改善要求アンケート」の中に「管理職によるパワーハラスメントについて、受けた、見聞きした例などありましたらお書きください」という一項目を加えています。実態を把握し、早急に必要な手立てを講じることを目的としています。加えて、加害者と見込まれる管理職を特定できる調査を毎年行なうことで、管理職の方々にパワハラに至っていないかどうか意識啓発に努めていただき、抑止効果が生み出せることも期待しています。

実は最近、エディフィストラーニングの主席研究員で、日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事である見波利幸さんの著書『心が折れる職場』を読み終えていました。今回、パワハラの問題から『心が折れる職場』の話に繋げてみるつもりでした。いつものことですが、ここまでで相当長い記事となっています。そのため、これも常套句になりつつありますが、『心が折れる職場』の話は機会を見て(coldsweats01)改めて取り上げさせていただくつもりです。

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コメント

やれやれ蓮舫さんはどうやらアウトのようですね。

自民党で2重国籍が発覚したので、うやむやに終わると
思ったのですが、自民党議員側は謝罪して戸籍謄本を
開示して疑惑を消したのが、余計に蓮舫さんの疑惑を
深めてしまいました。

これでは何を国会で追及しても、あなたが言うなの
ブーメランになってしまう。これは山尾議員も同様ですね。

せっかくの新代表が泥にまみれて残念です。蓮舫さんの
肩をもったOTSU氏が応援してる江崎議員もどう思ってる
のでしょうか。もともと問題を指摘したアゴラの公開
質問に堂々と答えてたら、よかったのですがね。
おそらく答えると矛盾や嘘が発覚するからできなかったと
考えることが正しいのでしょう。

本当に残念ですね。

投稿: nagi | 2016年10月16日 (日) 13時53分

nagiさん、コメントありがとうございました。

この件は最近の記事「民進党代表選と豊洲移転問題」の中で私自身の問題意識を綴っていました。江崎さんに対してもその記事の中で触れたとおりです。要点だけ繰り返せば、リスクマネジメントの基本として、すみやかに正確な「事実」を示した上、正当な評価や批判を甘受することが結果的にダメージコントロールの近道に繋がるように考えています。そのため、この問題での蓮舫代表の対応は省みるべき点が多々あるものと思っています。

投稿: OTSU | 2016年10月16日 (日) 22時01分

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