核先制不使用、安倍首相が反対
このブログは週に1回更新しています。1週間あると取り上げたい題材に事欠きません。先週日曜の午後、「徴税吏員」というキーワードから当ブログを訪れる方が急増していました。週の初め、次に更新する記事はその理由に絡む話題を取り上げるつもりでした。それが火曜日になって、その話題よりも鮮度の落ちないタイミングで当ブログで扱いたい題材が浮上しました。核先制不使用の問題で、8月16日、新聞各紙の夕刊やネット上に下記のようなニュースが配信されていました。
米ワシントン・ポスト紙は15日、オバマ政権が導入の是非を検討している核兵器の先制不使用政策について、安倍晋三首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えたと報じた。同紙は日本のほか、韓国や英仏など欧州の同盟国も強い懸念を示していると伝えている。
「核兵器のない世界」の実現を訴えるオバマ政権は、任期満了まで残り5カ月となる中、新たな核政策を打ち出すため、国内外で意見調整をしている。米メディアによると、核実験全面禁止や核兵器予算削減など複数の政策案を検討中とされる。核兵器を先制攻撃に使わないと宣言する「先制不使用」もその一つだが、ケリー国務長官ら複数の閣僚が反対していると報道されている。同盟国も反対や懸念を示していることが明らかになり、導入が難しくなる可能性がある。
同紙は複数の米政府高官の話として、ハリス氏と会談した際、安倍首相は米国が「先制不使用」政策を採用すれば、今年1月に4度目の核実験を実施するなど核兵器開発を強行する北朝鮮に対する核抑止力に影響が出ると反対の考えを述べたという。同紙は、二人の会談の日時は触れていないが、外務省発表によると、ハリス氏は7月26日午後、首相官邸で安倍首相と約25分間会談し、北朝鮮情勢をはじめとする地域情勢などについて意見交換している。
日本政府は、日本の安全保障の根幹は日米安保条約であり、核抑止力を含む拡大抑止力(核の傘)に依存しているとの考えを米国に重ねて伝えている。先制不使用政策が導入されれば、「核の傘」にほころびが出ると懸念する声がある。
2010年には当時の民主党政権が、米国が配備している核トマホーク(巡航)ミサイルの退役を検討していることについて、日本に対する拡大抑止に影響が出るのかどうかを問う書簡を、岡田克也外相がクリントン米国務長官(いずれも当時)などに対して送ったと公表している。核軍縮を目指す核専門家からは「核兵器の廃絶を目指す日本が、皮肉なことにオバマ政権が掲げる『核兵器のない世界』の実現を阻んでいる」という指摘も出ている。
《核兵器の先制不使用》 核保有国が、他国から核攻撃を受ける前に先に核兵器を使わないこと。核兵器の役割を他国からの核攻撃脅威を抑止することに限定する。核兵器を使用するハードルが高くなり、核軍縮への理念的な一歩と見なされる。すべての国が対象だが、核保有国同士の約束の側面が強い。核拡散防止条約(NPT)で核兵器保有が認められている米、露、英、仏、中国の5カ国の中では現在、中国のみが先制不使用を宣言している。【毎日新聞2016年8月16日】
新聞もテレビもオリンピックの報道に力を注いでいます。自分自身もいろいろな競技をリアルタイムで観戦することが多く、その結果に一喜一憂していますので「五輪だらけでニュースがない」というような冷めた言い方は慎まなければなりません。この瞬間にも内戦やテロなどによって人命が奪われていることを忘れてはなりませんが、戦争状態ではないからこそ「平和の祭典」と称せるオリンピックが開催できていることも間違いないはずです。
そのような意義や純粋にスポーツを楽しむという意味合いからもオリンピックは確かに大勢の方々が注目する一大イベントです。それでもオリンピックの報道が優先されすぎて、大事なニュースが小さく扱われるようではマスメディアの役割や責任を問わなければなりません。今回、紹介した核先制不使用の問題に対し、各メディア、1回は何らか内容の報道を行なっていたようです。ただ本質的な問題の重大さに比べ、あまりにも通り一遍の軽い扱いだったように感じています。
官邸によるメディアコントロールの成果かどうか分かりませんが、あえて日本政府や安倍首相に対して批判の矛先が向かわないように配慮している姿勢さえ疑わざるを得ません。初めに紹介した毎日新聞も批判の論調を抑えた内容にとどめています。マスメディアの中立さが取り沙汰されがちとは言え、このような安倍首相の姿勢に対し、強い批判の声が上がっていることなども合わせて報道することはマスメディアの大切な役割であるように考えています。
米紙ワシントン・ポストは15日、オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用を巡り、安倍晋三首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えていたと報じた。同紙によると、首相は最近、ハリス氏に対して、オバマ氏が核兵器の先制不使用を宣言した場合、北朝鮮などの国への抑止力が低下し、地域紛争のリスクが高まるとの懸念を直接、伝達したという。伝えた日時や場所には触れていないが、首相は7月26日、来日したハリス氏と首相官邸で会談している。
日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器の廃絶を国際社会に訴えている。一方で、日米安全保障条約の下、米国の「核の傘」に依存しており、国連での核兵器禁止条約の制定議論にも消極的な姿勢を示している。米国の核先制不使用宣言の検討に対しては、日本だけでなく、英国やフランス、韓国などが反対の意向を伝えているという。ケリー国務長官やカーター国防長官ら有力閣僚も「核の傘」に依存する同盟国の不安を招くなどとして反対の立場とされ、核政策の変更の見通しは立っていない。オバマ氏は、核実験の禁止を呼び掛ける国連安全保障理事会決議の採択や核近代化予算の削減なども検討している。
◆広島・長崎憤りの声 オバマ米政権が検討している核兵器の先制不使用政策に安倍晋三首相が反対の意向を伝えたと米紙が報じたことを受け、広島、長崎の被爆者から16日「被爆地の思いに逆行する」と憤りの声が上がった。広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(76)は「核の先制不使用は核廃絶を求める被爆者や非核保有国の思いに沿った政策だ。安倍首相は保有国以上に核に依存している。けしからん」と強く非難した。
安倍首相は反対する理由として、核開発を続ける北朝鮮などに対する核抑止力に影響が生じることを挙げたが、大越氏は「北朝鮮は核実験を繰り返している。抑止力にはなっていない」とくぎを刺した。9日の長崎の平和祈念式典で被爆者代表を務め、安倍首相と面会した井原東洋一さん(80)は「日本政府は口では核兵器廃絶を訴えながら、実際の行動は反している。国際社会から信頼を失ってしまうのではないか」と指摘した。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の和田征子事務局次長(72)は、5月のオバマ氏の広島訪問に同行し「核兵器のない世界を必ず実現する」と表明した安倍首相の矛盾した姿勢を批判した上で「核先制不使用だけでは核攻撃による報復を制限したことにならない。核廃絶が絶対だ」と話した。
《核の先制不使用》 敵の核攻撃を受けない限り、核兵器を使用しないとの政策。現在、米ロ英仏中の五大核保有国のうち先制不使用を宣言しているのは中国のみ。オバマ米政権は2010年の「核体制の見直し(NPR)」で、核拡散防止条約(NPT)を順守している非核国には核攻撃を行わないと明記したが、先制不使用は宣言しなかった。【東京新聞2016年8月16日】
毎日新聞の報道内容と重なる箇所が多くて恐縮ですが、参考までに東京新聞の取り上げ方を紹介させていただきました。上記のように被爆者らの憤りの声を伝えることで核先制不使用の問題、それに反対する安倍首相に対する印象が変わる可能性もあります。もちろん被爆者らの反対する声を聞いても聞かなくても、この問題に際し、ご自身の評価や結論が決まっている方々も多いはずです。
それでも各ニュースに対する関心の度合いは人それぞれ異なり、幅広い立場や年齢層の方々が接するマスメディアの役割を重視した場合、できる限り詳しい事実関係や多種多様な情報を丁寧に発信していくことが求められています。一つの「答え」に誘導するものではなく、あくまでも多面的な情報を提供する役割をマスメディアには強く期待しています。このような情報に接することで、あまり関心のなかった方々も含め、もう少し核先制不使用の問題に対する認識が共有化されていくものと受けとめています。
当然、限られた紙面や放送時間の中で取捨選択という編集権はマスメディア側にあります。しかしながら今回、核先制不使用の報道ぶりは前述したとおり私自身の問題意識とマスメディア側の取り上げ方に大きなギャップを感じていました。そのため、たいへんマイナーな場ですが、このブログの新規記事で取り上げることで、一人でも多くの方に情報を提供する機会に繋げています。ちなみに発行部数トップの900万部を超える読売新聞は8月16日の段階では一切報道していませんでした。
翌17日の夕刊で、16日に行なわれた米国務省のトナー副報道官の記者会見「(オバマ米政権が検討している核戦略の見直しについて)米国や同盟国のための確実な抑止力も重要だ」という内容を伝えた際、この核先制不使用の問題に触れていました。日本政府は米側に「核の傘の抑止力が弱まる」として、先制不使用宣言への反対を非公式に伝えている、と補足していました。夕刊の一面に掲げた毎日新聞や東京新聞の扱いに比べた場合、あまりにも地味な取り上げ方でした。
私自身が過剰に受けとめすぎなのでしょうか。いずれにしても安全保障に対し、個々人での考え方には大きな隔たりがあります。しかし、核兵器の先制不使用は中国も宣言しているように基本的な立場の表明として、本来、核保有国すべてが速やかに行なうべきものだろうと考えています。それにもかかわらず、専守防衛を厳格化した平和憲法を抱き、被爆国である日本の首相が「核兵器のない世界」をめざすオバマ大統領の判断に水を差す、たいへん残念で悲しいことです。
安全保障は軍事力での抑止に依存しすぎた場合、際限のない軍拡競争に陥りがちです。さらに外交関係での疑心暗鬼は、追い詰めすぎた先の暴発や一触即発の事態を招くリスクを高めます。せめて核兵器を先制使用しないという宣言を行なうだけでも、外交関係における信頼や安心感を高めていく一因に繋がるはずです。「核の傘の抑止力が弱まる」という他力本願で後ろ向きな評価ではなく、核先制不使用は安全保障面でも前向きな発想として安倍首相や日本政府にはとらえて欲しかったものと考えています。
この問題に対し、とりまく情勢に対する認識をはじめ、個々人での「答え」は枝分かれしていくものと受けとめています。きっと安倍首相の判断を支持される方々も多いのだろうと思っています。しかし、どちらの「答え」が正しいのか、間違っているのか簡単に結論は出せないのではないでしょうか。ただ歴史を振り返り、「『ロンドン狂瀾』を読み終えて」で紹介した軍縮条約を結ぶことが国益だと考えた浜口雄幸元首相らとそれを阻もうとした勢力との構図などを思い起こすことも大切な試みであるように感じています。
最後に、この問題を取り上げた他のブログ記事も紹介させていただきます。一つは外交官だった天木直人さんの「核先制不使用に反対していた事を米紙にばらされた安倍首相の恥」で「安倍首相は総辞職ものだ。国民に対する裏切りになる」と強く非難されています。もう一つは弁護士の澤藤統一郎さんの「憲法の理念に真逆の首相をもつ、ねじれた日本の不幸」で「非武装の平和も、武力による平和もともにリスクはある。武力による平和を求める方策は、際限のない武力拡大競争と極限化した戦争の惨禍をもたらすという大失敗に至った」という言葉が記されていました。
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コメント
米国が所有する兵器を、他国が使う使うなを求める事態がすでに不可思議な気がしますね。日本にとって重要な議論は核兵器を先か後に使うことではなく、廃止する道を探すことではないのでしょうか。先制不使用を宣言すれば核兵器を所有することもかまわないと言ってるように思えるですがね。
どちらにしても、政権を攻撃する材料探しの一環にしか思えません。
経済産業省前から脱原発テントが強制的に排除されました。最高裁判所の判決があったので、自発的に撤去されることを期待したのですが、残念ですね。OTSU氏がこの件について何ら言及されなかったのも同様です。
投稿: nagi | 2016年8月22日 (月) 09時20分
アメリカの所有物なのだから、「日本が賛成しようと反対しようと、そんなことは関係なく」て、アメリカが自国の都合で決めることでしょう。
日本国政府の意見が、この件に関するアメリカ政府の決定に与える影響力は皆無に近いと思っているので。
この件では、日本はアメリカに口出しする力もなければ、アメリカも日本による口出しを認めないでしょう。
日本の内閣総理大臣が「慎重意見を伝達した」として、それにどれほどの意味があるんですかね。ということで、真偽不明のこの案件について騒ぐ意味がどれほどあるんでしょ。騒ぎすぎと違いますかね。
もちろん、日本としては影響を受けるので、アメリカ政府の対応に応じて検討すべきことはあるし、状況を注視するのは当然として。
ところで、内閣総理大臣は、報道記者の問いかけに対して、事実関係を否定されてるみたいですね。
事案の性質上、事実があってもなくても、「事実はない」と応答するのが当然でしょうが。
投稿: あっしまった! | 2016年8月22日 (月) 22時28分
前々回の私の質問をお読みくださり
ご意見を頂いた方々、この場をお借りして御礼致します。
貴重なご意見ありがとうございました。
未熟な私の価値観の糧とさせていただきます。
さて、今回のブログ主様の問題意識ですが
安倍さんの要請の真偽は別として
私は直ちに問題とすべき事、非難に値する事とは
到底思えません。
「他国の武力で日本を守る」事は
これまで70年間日本がやってきた事と何ら矛盾しませんし
違憲にならないと砂川判決が既に結論を出してます。
非核三原則にも違反しません。
安倍さんの今回の要望と
「核兵器のない世を目指すのが日本の務めである」
という正義がかみ合ってないから問題だと
ブログ主様は主張しておられる様に私は感じましたが
他国の所有物であっても
盲目的に核を否定すべきであるなんて
そんな事、憲法には一言も書いていません。
北朝鮮情勢を見ると、日本の平和を守る手段として
今は米国の核兵器が必要だと判断しただけの事です。
核の否定は、一見、正義に思えます。
当然です。核兵器なんか、なくなるに越したことはない。
誰でもそう思います。
しかし、実はこの主張の先には
「他国の批判」「盲目的な否定」以上のものが
存在していないのです。
この表面的な「独善行動」こそが
憲法擁護の理論と全く同じである事に
私たちは気が付かなければなりません。
何度も書いてますが
日本国憲法は専守防衛を厳格化したものでは
ないと思います。
非武装であり、完全なる戦争の放棄です。
憲法は侵略戦争も自衛戦争も区別していません。
国と国が武力で争う国際紛争(戦争)そのものを
日本は放棄した国なのです。
ただし「他国に守ってもらう」のは違憲ではないと
砂川判決で判断している訳です。
その点では、今回の安倍さんの主張は
ブログ主様の「専守防衛を厳格化した」という主張よりも憲法に則ったモノであると私は思います。
投稿: いまさらですが | 2016年8月22日 (月) 23時17分
OTSU氏が紹介していた記事を読ませていただいたのですが、聖書にでてくる美しい寓話のようでした。しかし、強盗に対してハグして笑顔で別れる話は本当に素晴らしい。で、世界中で発生してる強盗による悲劇の被害者にこの話をできるのかと私は思いますね。
是非、このプログを書かれた弁護士がヨハネスブルクかリオかワシントンで、実践していただきたいと心から思います。そして平和の体現者として、いかに日本政府が愚かなことをしてるか示していただきたい。
投稿: nagi | 2016年8月23日 (火) 08時48分
nagiさん、あっしまった!さん、いまさらですがさん、コメントありがとうございました。
常連の皆さんに対し、いつも恐縮ながら一問一答に至らないことをご理解ご容赦を願い、基本は記事本文に集中させていただいています。そのため、経産省前のテントの件について「残念ですね。OTSU氏がこの件について何ら言及されなかったのも同様です」というnagiさんの言葉は意外でした。
答えづらい、答えたくない、だからスルーしたと思われているようでしたらたいへん不本意で残念なことです。ルールは守る、当たり前なことであり、様々な運動もその枠内で取り組むべきものと考えています。ただ枠内かどうかという意識や運動の進め方について、個々の団体や個々人での温度差もあるように感じています。
このように記すと自発的に退去しなかったことを肯定しているように取られてしまうのかも知れません。私自身の考えは前述したとおりであり、仮にその運動体の一員で発言する機会があれば自分なりの意見を表明する、そのような関係であることを説明させていただきます。
なお、このような論点について新規記事を通し、もう少し私なりの考え方を整理してみるつもりです。ぜひ、引き続きご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2016年8月27日 (土) 08時28分
OTSU 様
この問題。 事実も錯綜していまして、関連の議論も各自の価値観に依り錯綜しています。
安全保障に止まらず、事実認識を客観的に行えないと、その認識に基づく判断も狂います。
その観点から、貴ブログに投稿しようとしたのですが、スパム判定されたようで、投稿が出来ませんでした。
概要は、別途、会員制言論媒体に掲載されていますので、御紹介をさせて頂きます。
尚、これは、貴ブログへのコメントではありませんので、念のため。 事実関係のみ何かの参考にして頂ければ幸いです。
オバマ大統領の核先制不使用宣言問題に観るアベ化の危険 ちきゅう座 2016年 8月 26日
http://chikyuza.net/archives/65847
投稿: とら猫イーチ | 2016年8月27日 (土) 13時42分
とら猫イーチさん、コメントありがとうございました。
ご紹介くださったサイト、閲覧させていただきました。なお、スパム判定の件ですが、このブログへのコメント投稿は即時に反映されるようになっています。ただ以前の記事に投稿する際、コメントの検証機能として「スパム・コメント防止のために、以下の画像の文字を入力してください」と表示されるようになっています。
表示された画像の文字を指定の枠内に半角で入力されれば、すぐコメントは反映されるはずです。そのような手間を省くためには新規記事への投稿が手軽ですので適宜ご判断くださるようよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2016年8月27日 (土) 21時02分
ワタクシも、日本の内閣総理大臣がこれを口にする(直接伝達する)というのは「詮無きこと」だと思っていて、なんだかなぁっていう印象はあります。
ただ否定的に観ているのは、「総理大臣が直接伝達すること」についてであって、「先制不使用を宣言することの意義 と同時に 宣言しないことの意義」を否定するつもりはないのですけどね。
日本には、「国の四方に存在する隣国がそれぞれ核兵器を持っている」という向き合うべき現実があるので。
このうち、アメリカの核が日本に向けられる可能性は、現状では低いでしょう。
ロシアは、先制不使用どころか、クリミアの時に積極的に使用を検討し、準備に着手しようとした(つまり、先制使用を考えた)って、最高責任者が公言してるうえに、北方領土を巡る領土問題があるわけで。
北朝鮮は、「ソウルと在日米軍基地が最優先攻撃目標」であって、ほんとに遣りかねないので。先代や先々代が「北朝鮮が滅ぶときは、核を打ち込んで道連れにする。独りでは滅ばない。」なんて公言してた位ですし。
中国(共和国政府)は、かつて先制不使用を唱えていたものの、最近は公式文書からその記述が消えたことが話題になりましたよね。「核を持たない国に対しては使用しない」と言っているものの、「核を持たない国の領域内にある核を持つ国の基地への核攻撃は、核を持つ国への核攻撃としてあり得るのではないか?」という命題には明確な否定はしてないみたいですし。
加えて日本は、唯一実戦で核兵器を使用された国という事情もあって、核の抑止力を肯定しその必要性を認めつつ、しかし核兵器の廃絶を指向するというような、まぁその、なんというか、「一見して言行不一致に見えるような、複雑な思考様式と行動様式をもつ国」だったりして。
日本としては、斯くの如き微妙な問題を抱えてるのも事実なので、為政者には「現実の国際社会の状況や、潮流のようなもの」を聢と見据えた対応をして欲しいですが。
有権者には感情論や願望論を唱えていれば済むという側面があっても、為政者がおなじようにそんな調子であれば、文字通り国が危ういので。
「現状認識を誤った、空想世界を前提にして、その上に(現実世界を前提にしてもハードルが高い)理想を掲げて邁進したら、ホントに洒落にならん」ので。
それは、現政権与党に対しても、先代の政権与党に対しても、同じ。
どちらの方向性を指向するにしても、”現実世界を前提にした現状認識に基く判断”が是非とも必要な政策領域だから。
とまぁアレコレ言っても、「日本の内閣総理大臣がこれを口にする(直接伝達する)というのは妙手とは思えない」ですけれども。
投稿: あっしまった! | 2016年8月28日 (日) 17時14分
あっしまった!さん、コメントありがとうございました。
今回の問題、ご指摘のとおり様々な見方や評価ができます。私自身の問題意識は記事本文に綴ったとおりですが、機会があれば追記となる内容の投稿も考えてみたいものです。
いずれにしてもコメント欄で幅広いご意見を伺えることの貴重さにはいつも感謝しています。ぜひ、これからもお時間等が許される際、あっしまった!さんからコメントを頂戴できれば幸いなことですのでよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2016年8月28日 (日) 22時21分