人事院勧告の話、インデックス
カテゴリー別に検索できる機能を使いこなせず、これまで「自治労の話、2012年夏」 のように記事本文の中にインデックス(索引)代わりに関連した内容のバックナンバーを並べていました。その発展形として「○○の話、インデックス」を始めています。その記事の冒頭、インデックス記事のバックナンバーを並べることで「インデックス記事のインデックス」の役割を持たせています。カテゴリー別のバックナンバーを探す際、自分自身にとっても役に立つ整理の仕方であり、時々、そのような構成で新規記事をまとめています。
これまで投稿したインデックス記事は「平和の話、インデックス」「職務の話、インデックス」「原発の話、インデックス」「定期大会の話、インデックス」「年末の話、インデックス」「旗びらきの話、インデックス」「春闘の話、インデックス」「コメント欄の話、インデックス」「非正規雇用の話、インデックス」「定期大会の話、インデックスⅡ」「年末の話、インデックスⅡ」「平和の話、インデックスⅡ」「組合役員の改選期、インデックス」「人事評価の話、インデックス」「図書館の話、インデックス」「旗びらきの話、インデックスⅡ」「憲法の話、インデックス」となっています。
さて、地方公務員の賃金にも大きな影響を及ぼす人事院勧告が8月8日に示されました。公務員は争議権など労働基本権が制約されています。その代償措置として人事院や都道府県の人事委員会があり、民間賃金水準との均衡をはかるべく勧告を年に1回行なっています。ブログのタイトル名を「公務員のためいき」としているため、ほぼ毎年、人事院勧告の話題は取り上げてきています。改めて整理してみたところバックナンバーは次のとおりでした。
- 2005年8月18日 地域給導入とマイナス人勧
- 2006年8月12日 プラマイゼロの人事院勧告
- 2007年8月11日 人事院、6年ぶりのプラス勧告
- 2008年8月16日 ベア見送りの人事院勧告
- 2009年8月15日 阿久根市のその後 Part2
- 2010年8月15日 人事院勧告と最低賃金目安
- 2012年8月12日 退職手当削減と人事院勧告
- 2013年8月13日 長崎市の平和宣言
- 2014年8月 9日 7年ぶりに引き上げ、人事院勧告
- 2015年8月15日 戦後70年、終戦記念日に思うこと
上記の他にも人事院勧告に絡む内容は数多く取り上げています。今回のインデックス記事では、8月に人事院勧告が示された際、その直後に投稿した記事に絞って掲げています。記事タイトルが人事院勧告とは縁遠いものもありますが、記事本文の中で少し触れているため、上記インデックスに並べてみました。ちなみに今年の人事院勧告は下記の報道のとおりの内容となっています。
人事院は8日、2016年度の国家公務員一般職の月給を平均708円、ボーナス(期末・勤勉手当)を0.10カ月分それぞれ引き上げるよう国会と内閣に勧告した。引き上げ勧告は3年連続。年収は平均5万1000円増える。配偶者手当は17年度から段階的に減額して18年度に半額とし、課長級は20年度に廃止するよう勧告した。勧告を受け、政府は給与関係閣僚会議を開き、給与水準を決める。昨年は勧告を完全実施した。
月給の引き上げ率は平均0.17%。民間の賃金水準改善が続いており、足並みをそろえる。民間の伸び率が鈍化しているのを踏まえ、上げ幅は14年度の1090円、15年度の1469円を下回った。ボーナスの年間支給月数は4.30カ月分。勧告対象の国家公務員は約27万人だが、人事院勧告に沿って改定される地方公務員を含む約300万人が影響を受ける。財務省と総務省の試算では、国家公務員で550億円程度、地方公務員で1370億円程度が必要になる。
配偶者手当は年収130万円未満の配偶者を持つ課長級以下の職員に月額1万3000円を支給している。130万円以上の年収があれば対象外となるため、妻の就業意欲をそぐとの指摘があり、安倍晋三首相が見直しの検討を求めていた。勧告では17年度に1万円、18年度に6500円に減額すると明記。課長級は19年度に3500円に下げ、20年度に廃止する。配偶者手当の削減分を原資に扶養する子を持つ職員への手当を拡充。現行の6500円を17年度に8000円、18年度に1万円にする。
人事院の調べでは、15年時点で配偶者を対象にした手当を支給している民間の事業所は69%。低下傾向にあるものの、政府は配偶者手当削減・廃止を公務員に適用することで、民間企業にこうした流れを加速させる狙いがある。妻を扶養している会社員や公務員は税金や社会保険料の負担も軽減されている。妻の年収が103万円以下なら夫の課税所得から38万円の控除を受けられる配偶者控除などだ。人事院は女性の就労促進の観点から「今後は社会保険料や税の仕組みと一体的な議論が必要になる」としている。【日本経済新聞2016年8月8日】
今回の勧告内容に対し、連合は「2016春季生活闘争における民間企業などの賃上げ・一時金の回答状況を踏まえたものであり、月例給および一時金のいずれも3年連続の改善となったことは評価できる」という事務局談話を発表しています。公務労協公務員連絡会は声明の中で、非常勤職員や両立支援の制度確立に向けた姿勢が消極的であるという指摘を加えていました。
人事院勧告が示された当日、公務員連絡会は山本国家公務員制度担当大臣、塩崎厚生労働大臣にそれぞれ要求書を提出し、「人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であることや、国家公務員給与が民間給与に影響する観点を踏まえ、賃上げによる経済の好循環、そして消費の拡大に資する意味でも勧告通り実施すべき」と要請しています。
その要請に対し、山本大臣は「国家公務員の給与については、国家公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、国政全般の観点から、その取扱いの検討を進める。その過程においては、皆様方の意見も充分にお聞きしたいと考えている」と回答しています。
今回、最も大きな課題として、扶養手当の見直しがあります。上記の報道に「妻の就業意欲をそぐとの指摘があり、安倍晋三首相が見直しの検討を求めていた」と記されているとおり人事院は政府の要請に応えるかたちで扶養手当の見直し、配偶者手当の削減勧告に至っています。このような動きは第三者機関としての人事院の役割を損ねるものであり、民間企業の支給実態から乖離した拙速な見直しだと言わざるを得ません。親の介護などの事情で働きたくても働けないような場合、配偶者手当の削減は世帯収入を純減させるだけの結果を招きます。
さらに税金の控除や社会保険の被扶養者等の支給要件そのものが女性の就労抑制の一因となっているという見方も疑問です。今回の配偶者手当削減も女性の就労促進の一環として考えられているようですが、果たして「女性活躍」に向けた実効ある方策に繋がっていくのかどうか分かりません。まずは雇用環境の全体的な改善をはじめ、待機児童や介護離職の対策が先行した上で、ライフスタイルの多様さを保障していく方向性が求められているはずです。
ネット上を検索したところ「シンプルライフ」(「年収103万円の壁」について嫁いだばかりの私が不安に思うこと)というサイトを見つけました。その中では「育児だけでも大変だというのに、その傍らで非正規雇用の条件下で長時間働くなんていうのは社会進出でもなんでもなく、単なるお母さんの酷使です」というような意見が綴られていました。人口減少社会をにらみ、女性を単に労働力の補填と見た「女性活躍」だった場合、このサイトにあるような声が広がっていくのではないでしょうか。
私どもの市は東京都人事委員会の勧告を基本に賃金改定の交渉を進めます。とは言え、人事院勧告に示された制度見直しは、各都道府県や政令市の人事委員会の勧告内容にも大きな影響を与えていきます。そのため、私どもの市の扶養手当制度にも大きな影響を及ぼしていくことは間違いありません。実は昨年11月、市当局から扶養手当を東京都と同じ内容に改めたいという提案が示されていました。配偶者の扶養手当を14,100円から13,500円、その他の扶養手当を8,900円から6,000円にしたいという提案内容でした。
扶養手当の額が都の水準を上回っているのは三多摩地区の中で数市にとどまっているため、都と同額に引き下げたいという理由です。しかし、地域手当に関しては都が20%に対し、私どもの市は12%であり、たいへん大きな開きがあります。したがって、組合は都と必ずしもすべて同じではない点を指摘しながら「扶養手当を東京都に合わせるのであれば地域手当も都と同じ水準に引き上げるべきだ」と交渉の中で強く訴え、組合員の生活に大きな影響を及ぼす引き下げ提案に反対してきました。
その結果、年明け2月に開いた団体交渉の中で今年4月からの実施は見送るという回答を引き出しました。ただ市当局が提案を撤回した訳ではなく、都や他市よりも高い水準であることも認めざるを得ない中、新年度に入ってから労使協議を再開しています。来年度からの見直しの是非について独自な労使協議を継続している中、今回、扶養手当を大幅に改める人事院勧告が示されたことになります。たいへん悩ましい局面だと言えますが、これからも組合員の皆さんと情勢認識や問題意識の共有化に努めながら全力で労使協議にあたっていきます。
| 固定リンク
コメント
>http://www.peace-forum.com/seimei/160815kotoba.html
平和フォーラムの記事が素晴らしいので紹介します。
私にはこのような方々が平和という言葉を口にするのがたまらく嫌でしかたありません。
特に素晴らしい現状認識を示したこの文
>また日本でも安倍自公政権の暴走により、社会が右傾化し、戦後の平和と民主主義・憲法体制が最終的に崩されようとしています。そしてこうした安倍自公政権の動きが、東アジアに、世界に不安と軍事的緊張をさらに加速させています。
なるほど、日本の政権が世界にあたえる影響がこれほど巨大とは私も認識してませんでした。世界の平和の安寧の為に安倍政権は今すぐ総退陣してほしいですね。そうすれば世界の平和は間違いないでしょう。
そうならなかったらこの団体の幹部は全員、檻の付いた病院に永遠に入院されることがよいと思いますね。
投稿: nagi | 2016年8月18日 (木) 12時38分
nagiさん、この前の記事も含め、コメントありがとうございました。
平和フォーラムの発信する言葉がnagiさんのような視点や考え方をお持ちの方々に届きづらく、逆に反発を招きがちな点について本当によく理解できるようになっています。正しいと信じている「答え」に対する支持を広げていくためには、nagiさんたちからも少しでも共感を得られるような言葉や事実に基づく問題提起が欠かせないものと考えています。
新規記事は基本的な視点や考え方が異なる場合、大きく賛否が分かれがちな問題を取り上げる予定です。その際、前述した点に留意しながら客観的な情報発信と自分自身の問題意識を織り交ぜた内容の発信に努めるつもりです。ぜひ、引き続きご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2016年8月20日 (土) 06時36分