大分県警が隠しカメラ設置
グーグルをはじめとした検索エンジンで「公務員のためいき」と検索すれば当ブログがトップに掲げられます。他にも過去の記事内容に絡むキーワードで検索した場合、いくつかの記事が上位のページに掲げられます。「カエルの楽園」「感情的にならない本」「憲法改正の真実」「平和フォーラム」などがあり、書籍を扱った時の記事が検索エンジンの上位に選ばれやすくなっています。意外に思われるかも知れないキーワードの一つに「徴税吏員」があり、「徴税吏員としての職務」が上位に顔を出します。
前回記事「核先制不使用、安倍首相が反対」の冒頭に触れたとおり先々週の日曜、8月14日の午後、突然、このブログのアクセス数が増えていました。昼間は外出していたため、帰宅した後の夜、いつものようにアクセス数の推移を確認した際、普段とは異なる上昇カーブに気付きました。何か理由があるはずであり、興味が沸いたため、アクセス解析機能の詳細を調べてみました。
すると午後3時過ぎから「徴税吏員」というキーワードから訪れる方が急増していました。最初、税務に関する研修などがあり、このブログのことが話題になったような理由を思い浮かべました。次にグーグルの検索機能を使い、日曜の午後に何があったのか分かるかどうか調べてみました。「徴税吏員 8月14日」のクロス条件検索したところ下記のような報道があったことを知りました。
大分県警別府署が野党支援団体の施設の敷地に無許可で隠しカメラを設置した問題で、同署の目的が選挙運動を禁じられた自治体の特定公務員「徴税吏員」の出入りを確認するためだったことが、捜査関係者への取材で分かった。署に事前に情報が寄せられたが、カメラを設置した参院選公示前後の6月18〜24日の間、この公務員の出入りは確認されなかったことも判明した。
徴税吏員は地方税法に基づき首長から委任され、税金を徴収するなどの権限がある。県警は2013年の前回参院選後、県内の別の市の税務課職員を公職選挙法違反(特定公務員の選挙運動の禁止)容疑で書類送検しており、今回も同様の立件を狙ったとみられる。一方、県警は週内にもカメラ設置に関わった署員数人を建造物侵入容疑で書類送検する方針を固めた。設置を認めた上司の署長らを含めて懲戒処分を出すことも検討している。
捜査関係者によると、書類送検するのは、カメラを設置した署員2人の他、設置場所の決定に関わった同署の刑事官、刑事2課長らとみられる。同署員2人は民進、社民両党を支援する連合大分の東部地域協議会と別府地区平和運動センターが入居する別府地区労働福祉会館(大分県別府市)の敷地内に、無断でカメラ2台を設置した。【毎日新聞2016年8月14日】
大分県警の隠しカメラ設置事件において上記のような新たな事実が判明し、そこに示された「徴税吏員」という言葉に注目が集まったものと見受けられます。その言葉をネットで検索された方が多かったため、トップページに掲げられている当ブログへの訪問者が急増したようです。それまでの報道でカメラを設置した場所が別府地区労働福祉会館の敷地内だったことは承知していましたが、自分自身の足元にも関係する背景があったことを知り、たいへん驚きました。
冒頭で紹介した記事のとおり私自身の職務は徴税吏員です。上記の新聞記事の中にも記されていますが、徴税吏員という立場には選挙運動に対して一定の制約があります。このあたりは以前の記事「再び、地公法第36条と政治活動」などに記し、選挙期間中、実生活はもちろん当ブログに書き込む内容にも注意を払ってきています。今回の報道に接し、徴税吏員という職務に課せられた制約の重さや厳しさを改めて実感する機会に繋がっています。
さらにルールを厳守しているのかどうか警察当局から常に注視されている現状を目の当たりにしたことになります。大分県警の隠しカメラ設置に関する記事を検索していく中で、次のような報道があったことも知りました。上記新聞記事の中で2013年に税務課職員を書類送検したことが記されていますが、今年7月の参院選挙でも3人の徴税吏員が書類送検されていたことを知り、自治体職員の一人として忸怩たる思いを強めています。
7月10日投開票の参院選道選挙区で、再選した民進党現職の徳永エリ氏(54)陣営の選挙運動をしたとして、道警捜査2課などは8日、公選法違反(特定公務員の選挙運動禁止)の疑いで、いずれも名寄市税務課の男性主査(42)ら職員3人を書類送検した。3人の送検容疑は、選挙運動が禁止されている税務職員という立場にありながら、徳永氏を支援する集会で、プラカード式立て看板を掲示するなどの選挙運動をした疑い。
公選法は、選管職員や徴税吏員(徴税を担当する税務職員)など、より公平性を求められる特定の公務員については一切の選挙運動を禁止している。男性主査は連合名寄の事務局長。参院選で連合北海道は、徳永氏を全面支援していた。徳永氏は2010年の参院選道選挙区で初当選。現在は民進党道連代表代行で、今回再選を果たした。【北海道新聞2016年8月9日】
「選挙違反に当たるとは知らなかった」という言い訳は許されません。「この程度は大丈夫」「今までは問題なかった」という認識だった場合、絶対に改めなければならない身勝手な認識です。ルールは守る、当たり前なことであり、様々な運動もその枠内で取り組むべきものと考えています。今回、このブログで徴税吏員の問題を取り上げた大きな目的として、税務職員の皆さんへの注意喚起の意味合いを込めています。
法律に対する理解や認識を高め、今後、この問題で自治体職員が書類送検されることのないよう強く願っています。このブログを目にした自治労組合員、特に組合役員の皆さんが徴税吏員という職務の重さや厳しさについて、改めて意識していく機会になり得ることを望みながら書き進めています。ぜひ、このような趣旨について多くの方々にご理解いただければ幸いです。
ちなみに私自身は現在、連合地区協議会の議長代行を務めています。選挙の取り組みも連合運動の領域の一つとしているため、選挙期間中、推薦候補者のポスター貼りや電話かけなどの行動が提起されます。それらの要請に対し、前述したとおりの制約があるため、私自身は一切協力できません。法的な制約という事情を地区協役員の皆さんに説明し、協力できないことにご理解をいただいています。
それでも街頭演説会の聴衆の一人として足を運ぶことなど可能な範囲で連合運動に結集できるよう努めています。また、選挙運動以外の連合の活動に可能な限り力を注ぐことで、地区協役員の皆さんとの信頼関係は得られているものと思っています。ポスター貼りなど負担に感じる任務を分かち合うことはできていませんが、いつも日常の会議の中では自由闊達な意見を述べさせていただいています。
そのことに対しても幸いにも今のところ「面倒な仕事をしないくせに好き放題発言している」というような批判の声を耳にすることもありません。ただ議長代行という役職も荷が重いように感じていますが、連合の運動面で一定の制約のある関係上、それ以上に重い役職は固辞させていただいています。ここで話が少し広がってしまいますが、選挙運動の制約に絡みながら日本国憲法の話に繋げてみます。
最近の記事「平和主義の効用」のコメント欄で『細谷雄一×モーリー「英国のEU離脱と日本の安保論争」〜孤立主義(ニッポン)vs国際協調主義(シン・ニッポン)〜』という題名のニコ生アーカイブ動画をサイアム さんから紹介いただきました。二人の対談の中では憲法の制約のある日本の国際貢献に関わる話が出てきますが、どこの国も嫌がるトイレ掃除をしないという例え話に結び付けていました。
戦場に出向くことをトイレ掃除に例えるよりも、前述したような選挙運動に制約のある連合役員の話のほうが近いように考えています。国際社会の中で日本の制約について理解を求め、非軍事の面で最大限貢献しながら平和主義の効用を重視していく姿勢が欠かせないのではないでしょうか。 このような見方や評価は個々人で大きく分かれがちですが、私自身は国際社会の中で今までも、また、これからも認められていく日本の姿勢だろうと受けとめています。
今回も記事タイトルには迷いました。「大分県警が隠しカメラ設置」としながらタイトルから離れた内容が長くなりました。改めて最後に大分県警の問題に触れていきます。下記の報道のとおり関係者に対する処分が下されました。いずれにしても隠しカメラの設置自体は日常の捜査の中で多用されている現状がうかがえる事件でした。ぜひ、警察全体の問題として、隠しカメラ設置の問題に対する認識を改めていく機会に繋げて欲しいものと願っています。
大分県警別府署員が野党の支援団体が入る建物敷地に無断で隠しカメラを設置した問題で、県警は二十六日、建造物侵入の疑いでカメラを設置した署員二人と、二人の上司に当たる同署の刑事官、刑事二課長の計四人を書類送検した。県警は同日、敷地への侵入を指示、容認したとして刑事官、刑事二課長をそれぞれ減給六カ月や戒告の懲戒処分とした。署員二人のほか、横山弘光署長、衛藤靖彦副署長についても監督責任を問い、本部長・所属長訓戒とした。
県警によると、今年の参院選に絡む選挙違反捜査の一環でカメラを設置。徴税を担当する自治体職員など選挙運動を禁じられている特定公務員に関する情報が署に複数寄せられており、その人物の行動確認が目的だった。県警の江熊春彦首席監察官は記者会見で「(捜査手法は)建造物侵入罪に当たる違法行為である上、他人の敷地内を撮影する必要性、相当性はなく、不適正な捜査だった。プライバシーの侵害にも当たる」との県警の見解を明らかにし、陳謝した。
四人の書類送検容疑では参院選公示前の六月十八日~二十一日、社民党支援団体や、連合大分東部地域協議会が入る別府地区労働福祉会館(別府市)にカメラ二台を設置するなどの目的で、敷地に計七回無断で侵入したとされる。県警によると、四人は「軽率だった」と容疑を認めている。【東京新聞2016年8月26日】
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