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2016年8月27日 (土)

大分県警が隠しカメラ設置

グーグルをはじめとした検索エンジンで「公務員のためいき」と検索すれば当ブログがトップに掲げられます。他にも過去の記事内容に絡むキーワードで検索した場合、いくつかの記事が上位のページに掲げられます。「カエルの楽園」「感情的にならない本」「憲法改正の真実」「平和フォーラム」などがあり、書籍を扱った時の記事が検索エンジンの上位に選ばれやすくなっています。意外に思われるかも知れないキーワードの一つに「徴税吏員」があり、「徴税吏員としての職務」が上位に顔を出します。

前回記事「核先制不使用、安倍首相が反対」の冒頭に触れたとおり先々週の日曜、8月14日の午後、突然、このブログのアクセス数が増えていました。昼間は外出していたため、帰宅した後の夜、いつものようにアクセス数の推移を確認した際、普段とは異なる上昇カーブに気付きました。何か理由があるはずであり、興味が沸いたため、アクセス解析機能の詳細を調べてみました。

すると午後3時過ぎから「徴税吏員」というキーワードから訪れる方が急増していました。最初、税務に関する研修などがあり、このブログのことが話題になったような理由を思い浮かべました。次にグーグルの検索機能を使い、日曜の午後に何があったのか分かるかどうか調べてみました。「徴税吏員 8月14日」のクロス条件検索したところ下記のような報道があったことを知りました。

大分県警別府署が野党支援団体の施設の敷地に無許可で隠しカメラを設置した問題で、同署の目的が選挙運動を禁じられた自治体の特定公務員「徴税吏員」の出入りを確認するためだったことが、捜査関係者への取材で分かった。署に事前に情報が寄せられたが、カメラを設置した参院選公示前後の6月18〜24日の間、この公務員の出入りは確認されなかったことも判明した。

徴税吏員は地方税法に基づき首長から委任され、税金を徴収するなどの権限がある。県警は2013年の前回参院選後、県内の別の市の税務課職員を公職選挙法違反(特定公務員の選挙運動の禁止)容疑で書類送検しており、今回も同様の立件を狙ったとみられる。一方、県警は週内にもカメラ設置に関わった署員数人を建造物侵入容疑で書類送検する方針を固めた。設置を認めた上司の署長らを含めて懲戒処分を出すことも検討している。

捜査関係者によると、書類送検するのは、カメラを設置した署員2人の他、設置場所の決定に関わった同署の刑事官、刑事2課長らとみられる。同署員2人は民進、社民両党を支援する連合大分の東部地域協議会と別府地区平和運動センターが入居する別府地区労働福祉会館(大分県別府市)の敷地内に、無断でカメラ2台を設置した。【毎日新聞2016年8月14日

大分県警の隠しカメラ設置事件において上記のような新たな事実が判明し、そこに示された「徴税吏員」という言葉に注目が集まったものと見受けられます。その言葉をネットで検索された方が多かったため、トップページに掲げられている当ブログへの訪問者が急増したようです。それまでの報道でカメラを設置した場所が別府地区労働福祉会館の敷地内だったことは承知していましたが、自分自身の足元にも関係する背景があったことを知り、たいへん驚きました。

冒頭で紹介した記事のとおり私自身の職務は徴税吏員です。上記の新聞記事の中にも記されていますが、徴税吏員という立場には選挙運動に対して一定の制約があります。このあたりは以前の記事「再び、地公法第36条と政治活動」などに記し、選挙期間中、実生活はもちろん当ブログに書き込む内容にも注意を払ってきています。今回の報道に接し、徴税吏員という職務に課せられた制約の重さや厳しさを改めて実感する機会に繋がっています。

さらにルールを厳守しているのかどうか警察当局から常に注視されている現状を目の当たりにしたことになります。大分県警の隠しカメラ設置に関する記事を検索していく中で、次のような報道があったことも知りました。上記新聞記事の中で2013年に税務課職員を書類送検したことが記されていますが、今年7月の参院選挙でも3人の徴税吏員が書類送検されていたことを知り、自治体職員の一人として忸怩たる思いを強めています。

7月10日投開票の参院選道選挙区で、再選した民進党現職の徳永エリ氏(54)陣営の選挙運動をしたとして、道警捜査2課などは8日、公選法違反(特定公務員の選挙運動禁止)の疑いで、いずれも名寄市税務課の男性主査(42)ら職員3人を書類送検した。3人の送検容疑は、選挙運動が禁止されている税務職員という立場にありながら、徳永氏を支援する集会で、プラカード式立て看板を掲示するなどの選挙運動をした疑い。

公選法は、選管職員や徴税吏員(徴税を担当する税務職員)など、より公平性を求められる特定の公務員については一切の選挙運動を禁止している。男性主査は連合名寄の事務局長。参院選で連合北海道は、徳永氏を全面支援していた。徳永氏は2010年の参院選道選挙区で初当選。現在は民進党道連代表代行で、今回再選を果たした。【北海道新聞2016年8月9日

「選挙違反に当たるとは知らなかった」という言い訳は許されません。「この程度は大丈夫」「今までは問題なかった」という認識だった場合、絶対に改めなければならない身勝手な認識です。ルールは守る、当たり前なことであり、様々な運動もその枠内で取り組むべきものと考えています。今回、このブログで徴税吏員の問題を取り上げた大きな目的として、税務職員の皆さんへの注意喚起の意味合いを込めています。

法律に対する理解や認識を高め、今後、この問題で自治体職員が書類送検されることのないよう強く願っています。このブログを目にした自治労組合員、特に組合役員の皆さんが徴税吏員という職務の重さや厳しさについて、改めて意識していく機会になり得ることを望みながら書き進めています。ぜひ、このような趣旨について多くの方々にご理解いただければ幸いです。

ちなみに私自身は現在、連合地区協議会の議長代行を務めています。選挙の取り組みも連合運動の領域の一つとしているため、選挙期間中、推薦候補者のポスター貼りや電話かけなどの行動が提起されます。それらの要請に対し、前述したとおりの制約があるため、私自身は一切協力できません。法的な制約という事情を地区協役員の皆さんに説明し、協力できないことにご理解をいただいています。

それでも街頭演説会の聴衆の一人として足を運ぶことなど可能な範囲で連合運動に結集できるよう努めています。また、選挙運動以外の連合の活動に可能な限り力を注ぐことで、地区協役員の皆さんとの信頼関係は得られているものと思っています。ポスター貼りなど負担に感じる任務を分かち合うことはできていませんが、いつも日常の会議の中では自由闊達な意見を述べさせていただいています。

そのことに対しても幸いにも今のところ「面倒な仕事をしないくせに好き放題発言している」というような批判の声を耳にすることもありません。ただ議長代行という役職も荷が重いように感じていますが、連合の運動面で一定の制約のある関係上、それ以上に重い役職は固辞させていただいています。ここで話が少し広がってしまいますが、選挙運動の制約に絡みながら日本国憲法の話に繋げてみます。

最近の記事「平和主義の効用」のコメント欄で『細谷雄一×モーリー「英国のEU離脱と日本の安保論争」〜孤立主義(ニッポン)vs国際協調主義(シン・ニッポン)〜』という題名のニコ生アーカイブ動­画をサイアム さんから紹介いただきました。二人の対談の中では憲法の制約のある日本の国際貢献に関わる話が出てきますが、どこの国も嫌がるトイレ掃除をしないという例え話に結び付けていました。

戦場に出向くことをトイレ掃除に例えるよりも、前述したような選挙運動に制約のある連合役員の話のほうが近いように考えています。国際社会の中で日本の制約について理解を求め、非軍事の面で最大限貢献しながら平和主義の効用を重視していく姿勢が欠かせないのではないでしょうか。 このような見方や評価は個々人で大きく分かれがちですが、私自身は国際社会の中で今までも、また、これからも認められていく日本の姿勢だろうと受けとめています。

今回も記事タイトルには迷いました。「大分県警が隠しカメラ設置」としながらタイトルから離れた内容が長くなりました。改めて最後に大分県警の問題に触れていきます。下記の報道のとおり関係者に対する処分が下されました。いずれにしても隠しカメラの設置自体は日常の捜査の中で多用されている現状がうかがえる事件でした。ぜひ、警察全体の問題として、隠しカメラ設置の問題に対する認識を改めていく機会に繋げて欲しいものと願っています。

大分県警別府署員が野党の支援団体が入る建物敷地に無断で隠しカメラを設置した問題で、県警は二十六日、建造物侵入の疑いでカメラを設置した署員二人と、二人の上司に当たる同署の刑事官、刑事二課長の計四人を書類送検した。県警は同日、敷地への侵入を指示、容認したとして刑事官、刑事二課長をそれぞれ減給六カ月や戒告の懲戒処分とした。署員二人のほか、横山弘光署長、衛藤靖彦副署長についても監督責任を問い、本部長・所属長訓戒とした。

県警によると、今年の参院選に絡む選挙違反捜査の一環でカメラを設置。徴税を担当する自治体職員など選挙運動を禁じられている特定公務員に関する情報が署に複数寄せられており、その人物の行動確認が目的だった。県警の江熊春彦首席監察官は記者会見で「(捜査手法は)建造物侵入罪に当たる違法行為である上、他人の敷地内を撮影する必要性、相当性はなく、不適正な捜査だった。プライバシーの侵害にも当たる」との県警の見解を明らかにし、陳謝した。

四人の書類送検容疑では参院選公示前の六月十八日~二十一日、社民党支援団体や、連合大分東部地域協議会が入る別府地区労働福祉会館(別府市)にカメラ二台を設置するなどの目的で、敷地に計七回無断で侵入したとされる。県警によると、四人は「軽率だった」と容疑を認めている。【東京新聞2016年8月26日

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2016年8月20日 (土)

核先制不使用、安倍首相が反対

このブログは週に1回更新しています。1週間あると取り上げたい題材に事欠きません。先週日曜の午後、「徴税吏員」というキーワードから当ブログを訪れる方が急増していました。週の初め、次に更新する記事はその理由に絡む話題を取り上げるつもりでした。それが火曜日になって、その話題よりも鮮度の落ちないタイミングで当ブログで扱いたい題材が浮上しました。核先制不使用の問題で、8月16日、新聞各紙の夕刊やネット上に下記のようなニュースが配信されていました。

米ワシントン・ポスト紙は15日、オバマ政権が導入の是非を検討している核兵器の先制不使用政策について、安倍晋三首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えたと報じた。同紙は日本のほか、韓国や英仏など欧州の同盟国も強い懸念を示していると伝えている。

「核兵器のない世界」の実現を訴えるオバマ政権は、任期満了まで残り5カ月となる中、新たな核政策を打ち出すため、国内外で意見調整をしている。米メディアによると、核実験全面禁止や核兵器予算削減など複数の政策案を検討中とされる。核兵器を先制攻撃に使わないと宣言する「先制不使用」もその一つだが、ケリー国務長官ら複数の閣僚が反対していると報道されている。同盟国も反対や懸念を示していることが明らかになり、導入が難しくなる可能性がある。

同紙は複数の米政府高官の話として、ハリス氏と会談した際、安倍首相は米国が「先制不使用」政策を採用すれば、今年1月に4度目の核実験を実施するなど核兵器開発を強行する北朝鮮に対する核抑止力に影響が出ると反対の考えを述べたという。同紙は、二人の会談の日時は触れていないが、外務省発表によると、ハリス氏は7月26日午後、首相官邸で安倍首相と約25分間会談し、北朝鮮情勢をはじめとする地域情勢などについて意見交換している。

日本政府は、日本の安全保障の根幹は日米安保条約であり、核抑止力を含む拡大抑止力(核の傘)に依存しているとの考えを米国に重ねて伝えている。先制不使用政策が導入されれば、「核の傘」にほころびが出ると懸念する声がある。

2010年には当時の民主党政権が、米国が配備している核トマホーク(巡航)ミサイルの退役を検討していることについて、日本に対する拡大抑止に影響が出るのかどうかを問う書簡を、岡田克也外相がクリントン米国務長官(いずれも当時)などに対して送ったと公表している。核軍縮を目指す核専門家からは「核兵器の廃絶を目指す日本が、皮肉なことにオバマ政権が掲げる『核兵器のない世界』の実現を阻んでいる」という指摘も出ている。

核兵器の先制不使用》 核保有国が、他国から核攻撃を受ける前に先に核兵器を使わないこと。核兵器の役割を他国からの核攻撃脅威を抑止することに限定する。核兵器を使用するハードルが高くなり、核軍縮への理念的な一歩と見なされる。すべての国が対象だが、核保有国同士の約束の側面が強い。核拡散防止条約(NPT)で核兵器保有が認められている米、露、英、仏、中国の5カ国の中では現在、中国のみが先制不使用を宣言している。【毎日新聞2016年8月16日

新聞もテレビもオリンピックの報道に力を注いでいます。自分自身もいろいろな競技をリアルタイムで観戦することが多く、その結果に一喜一憂していますので「五輪だらけでニュースがない」というような冷めた言い方は慎まなければなりません。この瞬間にも内戦やテロなどによって人命が奪われていることを忘れてはなりませんが、戦争状態ではないからこそ「平和の祭典」と称せるオリンピックが開催できていることも間違いないはずです。

そのような意義や純粋にスポーツを楽しむという意味合いからもオリンピックは確かに大勢の方々が注目する一大イベントです。それでもオリンピックの報道が優先されすぎて、大事なニュースが小さく扱われるようではマスメディアの役割や責任を問わなければなりません。今回、紹介した核先制不使用の問題に対し、各メディア、1回は何らか内容の報道を行なっていたようです。ただ本質的な問題の重大さに比べ、あまりにも通り一遍の軽い扱いだったように感じています。

官邸によるメディアコントロールの成果かどうか分かりませんが、あえて日本政府や安倍首相に対して批判の矛先が向かわないように配慮している姿勢さえ疑わざるを得ません。初めに紹介した毎日新聞も批判の論調を抑えた内容にとどめています。マスメディアの中立さが取り沙汰されがちとは言え、このような安倍首相の姿勢に対し、強い批判の声が上がっていることなども合わせて報道することはマスメディアの大切な役割であるように考えています。

米紙ワシントン・ポストは15日、オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用を巡り、安倍晋三首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えていたと報じた。同紙によると、首相は最近、ハリス氏に対して、オバマ氏が核兵器の先制不使用を宣言した場合、北朝鮮などの国への抑止力が低下し、地域紛争のリスクが高まるとの懸念を直接、伝達したという。伝えた日時や場所には触れていないが、首相は7月26日、来日したハリス氏と首相官邸で会談している。

日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器の廃絶を国際社会に訴えている。一方で、日米安全保障条約の下、米国の「核の傘」に依存しており、国連での核兵器禁止条約の制定議論にも消極的な姿勢を示している。米国の核先制不使用宣言の検討に対しては、日本だけでなく、英国やフランス、韓国などが反対の意向を伝えているという。ケリー国務長官やカーター国防長官ら有力閣僚も「核の傘」に依存する同盟国の不安を招くなどとして反対の立場とされ、核政策の変更の見通しは立っていない。オバマ氏は、核実験の禁止を呼び掛ける国連安全保障理事会決議の採択や核近代化予算の削減なども検討している。

広島・長崎憤りの声 オバマ米政権が検討している核兵器の先制不使用政策に安倍晋三首相が反対の意向を伝えたと米紙が報じたことを受け、広島、長崎の被爆者から16日「被爆地の思いに逆行する」と憤りの声が上がった。広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(76)は「核の先制不使用は核廃絶を求める被爆者や非核保有国の思いに沿った政策だ。安倍首相は保有国以上に核に依存している。けしからん」と強く非難した。

安倍首相は反対する理由として、核開発を続ける北朝鮮などに対する核抑止力に影響が生じることを挙げたが、大越氏は「北朝鮮は核実験を繰り返している。抑止力にはなっていない」とくぎを刺した。9日の長崎の平和祈念式典で被爆者代表を務め、安倍首相と面会した井原東洋一さん(80)は「日本政府は口では核兵器廃絶を訴えながら、実際の行動は反している。国際社会から信頼を失ってしまうのではないか」と指摘した。

日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の和田征子事務局次長(72)は、5月のオバマ氏の広島訪問に同行し「核兵器のない世界を必ず実現する」と表明した安倍首相の矛盾した姿勢を批判した上で「核先制不使用だけでは核攻撃による報復を制限したことにならない。核廃絶が絶対だ」と話した。

《核の先制不使用》 敵の核攻撃を受けない限り、核兵器を使用しないとの政策。現在、米ロ英仏中の五大核保有国のうち先制不使用を宣言しているのは中国のみ。オバマ米政権は2010年の「核体制の見直し(NPR)」で、核拡散防止条約(NPT)を順守している非核国には核攻撃を行わないと明記したが、先制不使用は宣言しなかった。【東京新聞2016年8月16日

毎日新聞の報道内容と重なる箇所が多くて恐縮ですが、参考までに東京新聞の取り上げ方を紹介させていただきました。上記のように被爆者らの憤りの声を伝えることで核先制不使用の問題、それに反対する安倍首相に対する印象が変わる可能性もあります。もちろん被爆者らの反対する声を聞いても聞かなくても、この問題に際し、ご自身の評価や結論が決まっている方々も多いはずです。

それでも各ニュースに対する関心の度合いは人それぞれ異なり、幅広い立場や年齢層の方々が接するマスメディアの役割を重視した場合、できる限り詳しい事実関係や多種多様な情報を丁寧に発信していくことが求められています。一つの「答え」に誘導するものではなく、あくまでも多面的な情報を提供する役割をマスメディアには強く期待しています。このような情報に接することで、あまり関心のなかった方々も含め、もう少し核先制不使用の問題に対する認識が共有化されていくものと受けとめています。

当然、限られた紙面や放送時間の中で取捨選択という編集権はマスメディア側にあります。しかしながら今回、核先制不使用の報道ぶりは前述したとおり私自身の問題意識とマスメディア側の取り上げ方に大きなギャップを感じていました。そのため、たいへんマイナーな場ですが、このブログの新規記事で取り上げることで、一人でも多くの方に情報を提供する機会に繋げています。ちなみに発行部数トップの900万部を超える読売新聞は8月16日の段階では一切報道していませんでした。

翌17日の夕刊で、16日に行なわれた米国務省のトナー副報道官の記者会見「(オバマ米政権が検討している核戦略の見直しについて)米国や同盟国のための確実な抑止力も重要だ」という内容を伝えた際、この核先制不使用の問題に触れていました。日本政府は米側に「核の傘の抑止力が弱まる」として、先制不使用宣言への反対を非公式に伝えている、と補足していました。夕刊の一面に掲げた毎日新聞や東京新聞の扱いに比べた場合、あまりにも地味な取り上げ方でした。

私自身が過剰に受けとめすぎなのでしょうか。いずれにしても安全保障に対し、個々人での考え方には大きな隔たりがあります。しかし、核兵器の先制不使用は中国も宣言しているように基本的な立場の表明として、本来、核保有国すべてが速やかに行なうべきものだろうと考えています。それにもかかわらず、専守防衛を厳格化した平和憲法を抱き、被爆国である日本の首相が「核兵器のない世界」をめざすオバマ大統領の判断に水を差す、たいへん残念で悲しいことです。

安全保障は軍事力での抑止に依存しすぎた場合、際限のない軍拡競争に陥りがちです。さらに外交関係での疑心暗鬼は、追い詰めすぎた先の暴発や一触即発の事態を招くリスクを高めます。せめて核兵器を先制使用しないという宣言を行なうだけでも、外交関係における信頼や安心感を高めていく一因に繋がるはずです。「核の傘の抑止力が弱まる」という他力本願で後ろ向きな評価ではなく、核先制不使用は安全保障面でも前向きな発想として安倍首相や日本政府にはとらえて欲しかったものと考えています。

この問題に対し、とりまく情勢に対する認識をはじめ、個々人での「答え」は枝分かれしていくものと受けとめています。きっと安倍首相の判断を支持される方々も多いのだろうと思っています。しかし、どちらの「答え」が正しいのか、間違っているのか簡単に結論は出せないのではないでしょうか。ただ歴史を振り返り、「『ロンドン狂瀾』を読み終えて」で紹介した軍縮条約を結ぶことが国益だと考えた浜口雄幸元首相らとそれを阻もうとした勢力との構図などを思い起こすことも大切な試みであるように感じています。

最後に、この問題を取り上げた他のブログ記事も紹介させていただきます。一つは外交官だった天木直人さんの「核先制不使用に反対していた事を米紙にばらされた安倍首相の恥」で「安倍首相は総辞職ものだ。国民に対する裏切りになる」と強く非難されています。もう一つは弁護士の澤藤統一郎さんの「憲法の理念に真逆の首相をもつ、ねじれた日本の不幸」で「非武装の平和も、武力による平和もともにリスクはある。武力による平和を求める方策は、際限のない武力拡大競争と極限化した戦争の惨禍をもたらすという大失敗に至った」という言葉が記されていました。

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2016年8月13日 (土)

人事院勧告の話、インデックス

カテゴリー別に検索できる機能を使いこなせず、これまで「自治労の話、2012年夏」 のように記事本文の中にインデックス(索引)代わりに関連した内容のバックナンバーを並べていました。その発展形として「○○の話、インデックス」を始めています。その記事の冒頭、インデックス記事のバックナンバーを並べることで「インデックス記事のインデックス」の役割を持たせています。カテゴリー別のバックナンバーを探す際、自分自身にとっても役に立つ整理の仕方であり、時々、そのような構成で新規記事をまとめています。

これまで投稿したインデックス記事は「平和の話、インデックス」「職務の話、インデックス」「原発の話、インデックス」「定期大会の話、インデックス」「年末の話、インデックス」「旗びらきの話、インデックス」「春闘の話、インデックス」「コメント欄の話、インデックス」「非正規雇用の話、インデックス」「定期大会の話、インデックスⅡ」「年末の話、インデックスⅡ」「平和の話、インデックスⅡ」「組合役員の改選期、インデックス」「人事評価の話、インデックス」「図書館の話、インデックス」「旗びらきの話、インデックスⅡ」「憲法の話、インデックス」となっています。 

さて、地方公務員の賃金にも大きな影響を及ぼす人事院勧告が8月8日に示されました。公務員は争議権など労働基本権が制約されています。その代償措置として人事院や都道府県の人事委員会があり、民間賃金水準との均衡をはかるべく勧告を年に1回行なっています。ブログのタイトル名を「公務員のためいき」としているため、ほぼ毎年、人事院勧告の話題は取り上げてきています。改めて整理してみたところバックナンバーは次のとおりでした。

上記の他にも人事院勧告に絡む内容は数多く取り上げています。今回のインデックス記事では、8月に人事院勧告が示された際、その直後に投稿した記事に絞って掲げています。記事タイトルが人事院勧告とは縁遠いものもありますが、記事本文の中で少し触れているため、上記インデックスに並べてみました。ちなみに今年の人事院勧告は下記の報道のとおりの内容となっています。

人事院は8日、2016年度の国家公務員一般職の月給を平均708円、ボーナス(期末・勤勉手当)を0.10カ月分それぞれ引き上げるよう国会と内閣に勧告した。引き上げ勧告は3年連続。年収は平均5万1000円増える。配偶者手当は17年度から段階的に減額して18年度に半額とし、課長級は20年度に廃止するよう勧告した。勧告を受け、政府は給与関係閣僚会議を開き、給与水準を決める。昨年は勧告を完全実施した。

月給の引き上げ率は平均0.17%。民間の賃金水準改善が続いており、足並みをそろえる。民間の伸び率が鈍化しているのを踏まえ、上げ幅は14年度の1090円、15年度の1469円を下回った。ボーナスの年間支給月数は4.30カ月分。勧告対象の国家公務員は約27万人だが、人事院勧告に沿って改定される地方公務員を含む約300万人が影響を受ける。財務省と総務省の試算では、国家公務員で550億円程度、地方公務員で1370億円程度が必要になる。

配偶者手当は年収130万円未満の配偶者を持つ課長級以下の職員に月額1万3000円を支給している。130万円以上の年収があれば対象外となるため、妻の就業意欲をそぐとの指摘があり、安倍晋三首相が見直しの検討を求めていた。勧告では17年度に1万円、18年度に6500円に減額すると明記。課長級は19年度に3500円に下げ、20年度に廃止する。配偶者手当の削減分を原資に扶養する子を持つ職員への手当を拡充。現行の6500円を17年度に8000円、18年度に1万円にする。

事院の調べでは、15年時点で配偶者を対象にした手当を支給している民間の事業所は69%。低下傾向にあるものの、政府は配偶者手当削減・廃止を公務員に適用することで、民間企業にこうした流れを加速させる狙いがある。妻を扶養している会社員や公務員は税金や社会保険料の負担も軽減されている。妻の年収が103万円以下なら夫の課税所得から38万円の控除を受けられる配偶者控除などだ。人事院は女性の就労促進の観点から「今後は社会保険料や税の仕組みと一体的な議論が必要になる」としている。【日本経済新聞2016年8月8日

今回の勧告内容に対し、連合は「2016春季生活闘争における民間企業などの賃上げ・一時金の回答状況を踏まえたものであり、月例給および一時金のいずれも3年連続の改善となったことは評価できる」という事務局談話を発表しています。公務労協公務員連絡会は声明の中で、非常勤職員や両立支援の制度確立に向けた姿勢が消極的であるという指摘を加えていました。

人事院勧告が示された当日、公務員連絡会は山本国家公務員制度担当大臣、塩崎厚生労働大臣にそれぞれ要求書を提出し、「人事院勧告が労働基本権制約の代償措置であることや、国家公務員給与が民間給与に影響する観点を踏まえ、賃上げによる経済の好循環、そして消費の拡大に資する意味でも勧告通り実施すべき」と要請しています。

その要請に対し、山本大臣は「国家公務員の給与については、国家公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、国政全般の観点から、その取扱いの検討を進める。その過程においては、皆様方の意見も充分にお聞きしたいと考えている」と回答しています。

今回、最も大きな課題として、扶養手当の見直しがあります。上記の報道に「妻の就業意欲をそぐとの指摘があり、安倍晋三首相が見直しの検討を求めていた」と記されているとおり人事院は政府の要請に応えるかたちで扶養手当の見直し、配偶者手当の削減勧告に至っています。このような動きは第三者機関としての人事院の役割を損ねるものであり、民間企業の支給実態から乖離した拙速な見直しだと言わざるを得ません。親の介護などの事情で働きたくても働けないような場合、配偶者手当の削減は世帯収入を純減させるだけの結果を招きます。

さらに税金の控除や社会保険の被扶養者等の支給要件そのものが女性の就労抑制の一因となっているという見方も疑問です。今回の配偶者手当削減も女性の就労促進の一環として考えられているようですが、果たして「女性活躍」に向けた実効ある方策に繋がっていくのかどうか分かりません。まずは雇用環境の全体的な改善をはじめ、待機児童や介護離職の対策が先行した上で、ライフスタイルの多様さを保障していく方向性が求められているはずです。

ネット上を検索したところ「シンプルライフ」(「年収103万円の壁」について嫁いだばかりの私が不安に思うこと)というサイトを見つけました。その中では「育児だけでも大変だというのに、その傍らで非正規雇用の条件下で長時間働くなんていうのは社会進出でもなんでもなく、単なるお母さんの酷使です」というような意見が綴られていました。人口減少社会をにらみ、女性を単に労働力の補填と見た「女性活躍」だった場合、このサイトにあるような声が広がっていくのではないでしょうか。

私どもの市は東京都人事委員会の勧告を基本に賃金改定の交渉を進めます。とは言え、人事院勧告に示された制度見直しは、各都道府県や政令市の人事委員会の勧告内容にも大きな影響を与えていきます。そのため、私どもの市の扶養手当制度にも大きな影響を及ぼしていくことは間違いありません。実は昨年11月、市当局から扶養手当を東京都と同じ内容に改めたいという提案が示されていました。配偶者の扶養手当を14,100円から13,500円、その他の扶養手当を8,900円から6,000円にしたいという提案内容でした。

扶養手当の額が都の水準を上回っているのは三多摩地区の中で数市にとどまっているため、都と同額に引き下げたいという理由です。しかし、地域手当に関しては都が20%に対し、私どもの市は12%であり、たいへん大きな開きがあります。したがって、組合は都と必ずしもすべて同じではない点を指摘しながら「扶養手当を東京都に合わせるのであれば地域手当も都と同じ水準に引き上げるべきだ」と交渉の中で強く訴え、組合員の生活に大きな影響を及ぼす引き下げ提案に反対してきました。

その結果、年明け2月に開いた団体交渉の中で今年4月からの実施は見送るという回答を引き出しました。ただ市当局が提案を撤回した訳ではなく、都や他市よりも高い水準であることも認めざるを得ない中、新年度に入ってから労使協議を再開しています。来年度からの見直しの是非について独自な労使協議を継続している中、今回、扶養手当を大幅に改める人事院勧告が示されたことになります。たいへん悩ましい局面だと言えますが、これからも組合員の皆さんと情勢認識や問題意識の共有化に努めながら全力で労使協議にあたっていきます。

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2016年8月 6日 (土)

もう少し選挙制度ついて

リオディジャネイロ五輪が始まりました。ブラジルとの時差は12時間ですので、テレビの前に釘付けになって寝不足に悩まされる方も多いのかも知れません。4年後の五輪開催を控えた首都東京の知事選挙は事前の予想通りの結果となりました。東京都知事としては初めての女性知事となる小池百合子候補が圧勝し、自民党と公明党が推薦した増田寛也候補、野党統一候補の鳥越俊太郎候補らを退けました。

都知事選投票日の前日、民進党の岡田代表が9月に行なわれる代表選への不出馬を表明しました。選挙戦の後、そのタイミングの悪さや責任を回避したような姿勢について、民進党の都連から苦言が呈されていました。一方、自民党の都連会長である石原経済再生担当大臣は「知事選は党本部マター。お金も都連でなく党本部が集めたのであり、責任者は幹事長だ」という入院中の谷垣前幹事長に責任を転嫁するような発言を行なっていました。

結局、石原大臣以下、都連五役が都知事選惨敗の責任を取って辞任することになりました。であれば初めからそのような発言をしなければ良いのに思うのですが、驚いたことに翌々日の記者会見では石原大臣が党本部マターという発言を「そんな話してません」と否定したそうです。このあたりについて木走日記のコラム(「マター」「マター」って喚く「マター」)の中で詳しく取り上げられています。

さて、前回の記事「米大統領選と都知事選の違い」の最後のほうで「日本の選挙制度全般について、いろいろ思うことを書き進めてみるつもりでした」と記していました。機会を見て、と記しましたが、さっそく今回の記事を通し、もう少し選挙制度について掘り下げてみます。日本の選挙制度は公職選挙法に基づき様々な規定が明文化されています。公職の定義は「衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の職」とし、それらの選挙に適用される法律が公職選挙法です。

第一条には「この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする」と記されています。つまり立候補や投票の自由を保障するため、公明かつ適正さを確保し、民主政治の健全化を目的にした法律です。

公職選挙法は様々な活動制限を定めているため、「べからず法」という指摘があります。その一方で、様々な抜け道があることから「ざる法」とも呼ばれています。日本国憲法の精神とは、できる限り選挙運動は自由であるべきというものです。しかしながら欧米諸国に比べた場合、日本の公職選挙法には選挙運動の規制や制限が多岐にわたって設けられています。子細に設けていながら、すべて守ることは至難とも言われているため「ざる法」と呼ばれてしまっているようです。

次に供託金について考えてみます。供託金の制度は各国にあるものですが、その額の高さは日本が際立っています。知事選挙では300万円が必要とされています。衆院・参院選挙の比例区候補者の600万円が最高額で、市区議会議員選挙の30万円が最も低い額となっています。なお、町村議会議員選挙には供託金が必要とされていません。供託金は冷やかしでの立候補や売名行為を防ぐ目的で導入され、有効投票総数の10分の1以上の得票がない場合などは没収されてしまいます。

候補者の選挙事務所スタッフの人件費やポスター作製費などに対する公費負担制度がありますが、供託金没収者はその制度も利用できません。それでも立候補者全員が自己負担なく、選挙広報(知事選などでは政見放送も)に自己PRや自分の主張を自由にアピールできる機会を得られます。知事選の供託金300万円が没収されても、費用対効果の面で考えれば1億円以上の宣伝費用に相当するとも言われています。⇒参考サイト「東京都知事選を費用対効果抜群の広告だと考える泡沫候補者たち

刑事事件で起訴され、身柄を拘束されていた時、保釈金を支払うことで保釈される場合があります。その際、保釈金の額は被告人の経済状況によって大きく変わります。保釈金を預けた被告人から「返ってこないと困る」と感じる金額が設定されます。選挙の供託金は一律の額であるため、財力のある方からすれば「300万円は返ってこなくても困らない」という安易さが生じる可能性もあります。もし、このような現状があるのであれば、立候補者の年収や資産によって供託金の額に幅を持たせることも一考の余地があるのかも知れません。

前回記事の最後に「誰もが自由に立候補できることの意義に対し、安易な立候補や乱立を防ぐ手立てのバランスの取り方が非常に悩ましいものと考えています」と記しました。さらに脳科学者の茂木健一郎さんの問題提起「都知事選挙の候補者ポスターは、なぜ一部しか貼られていないのか」を紹介していました。21人が立候補した都知事選の場合、候補者の半数以上が揃ったポスター掲示板は非常に少なかったはずです。

この問題について、大阪市の橋下徹前市長が『問題解決の授業』で示された「24歳です。日本の政治をなんとかしたいと思って、4年後実家に帰り市議会選挙に立候補したいと思っております。世襲ではありません。選挙に金をつぎ込むシステムがおかしいと思うので、供託金と最小限の費用にしたいと思っていますが、やはり選挙カーなど使い、ある程度の金をつぎ込まないと当選は厳しいのでしょうか」という問いかけに対し、次のように答えています。

やっぱ、お金は必要ですよ。名前を知ってもらわなきゃどうしようもないから、そこに一定の費用はかかる。けど、それって公職選挙法が問題なんです。これだけインターネットが普及して、ICTが発達しているんだから、公職選挙法を変えれば、お金のかからない選挙は実現可能です。じゃあ、何でいまだにお金がかかる選挙の仕組みになってるかと言えば、そりゃ、既得権を持っている現職の人たちにとって、今のほうが都合がいいからです。彼らは今のやり方で、つまり後援会組織を作って、手足として動いてくれる人たちが必要不可欠な選挙の仕組みで当選している。だからそれを変えたくないんです。

現行のやり方で人とお金がかかる部分っていうのは決まっています。一つはポスター貼りですね。選挙掲示板へのポスター貼りは、人海戦術でやらなきゃいけない。あちこちに掲示板が設置されたあとに、選挙陣営がそれぞれの掲示板を回って、ポスター貼っていくわけですけど、これって非効率極まりない。普通に事務作業やったことがある人なら、こんな非効率なやり方しませんよ。どこか1カ所にベニヤ板を並べといて、ポスターを貼らせてから、各所に掲示板を設置すればいいじゃないですか。先に掲示板を設置して後からポスターを貼るなんて、こんなばかみたいな事務のやり方をやってる企業なんか倒産しますよ。

こんなやり方が変わることなくずっと続いているのは、やっぱり古い政治家にとって、今のやり方のほうがいいから。どうやったって人手が必要で、それを確保できなければ、選挙にならない。人手を確保できない若い新規参入者を拒んでるわけです。こんなの、電子掲示板とかデジタルサイネージに切り替えれば人手も金も不要になります。行政がいろんなところに電子・デジタル公営掲示板を設置しておいて、普段は行政広告に使い、選挙のときにはボタン一つで候補者の顔を映し出せばいい。テレビなど何だの、全部インターネットでつないだような社会になれば、選挙期間中はずっと候補者の政策を流していくような仕組みもできる。そうなると選挙カーなんていらない。

候補者の政策がきちんと有権者に届く仕組みは、ICTを活用すれば必ずできる。そして人手も金もかからない。そうなれば若い候補者がどんどん誕生しますよ。そういう日本に早くしなければなりませんね。今はまだ古臭い選挙の仕組みですが、この仕組みを変えるためにも、若いあなたに政治家になって欲しいものです。人手もお金もかからない選挙の仕組みは技術的には可能なんですから。じじい政治家じゃ、今の仕組みを絶対に変えません。古臭い選挙の仕組みは大変ですが、頑張って下さい!

選挙ポスターの掲示方法の効率化に関して考えれば、橋下前市長が語られているとおりだと思います。ただ「既得権を持っている現職の人たちにとって、今のほうが都合がいいからです」という見方は一面的なような気がしています。市議会、都議会、国会議員の方々と話す機会がありますが、ポスター掲示の効率化や合理化に反対する政治家は皆無に近いのではないでしょうか。所属する政党や人によって考え方が多少異なるのかも知れませんが、ベテラン、新人を問わずポスター貼りの負担が軽減化されることを大半の立候補者は歓迎していくものと見ています。

ポスター貼りは労務に位置付くため、従事者に報酬を支払えます。そのため、ボランティアでの協力が得られず、都道府県単位の選挙だった場合、莫大な費用を用意しなければなりません。猪瀬直樹元都知事の「連合が貼ってくれることになり徳洲会からの借金は使わずに済んだ」という言葉が象徴的ですが、資金力があるか、組織力があるか、どちらもなければ都内全域の掲示板にポスターを貼ることは難しい現状であることも確かです。

立候補者の参入障壁を低くするためには橋下前市長の問題意識のとおり効率化が欠かせません。ただ自治体の規模にもよりますが、市町村単位の選挙であれば候補者一人で全掲示板に自分のポスターを貼り出すことは可能だろうと思います。供託金の問題と同様、安易な立候補を防ぎ、候補者本人の覚悟を試す意味合いとしてポスター掲示を考えた場合、また違った視点からとらえ直すことができます。

候補者一人ではポスター貼りが到底対応できない都知事選クラスの場合、参入障壁を高くすることで当選の可能性のある少数の候補者同士で争う選挙戦に繋げることも重要な気がしています。なるべく資金のかからない選挙、誰もが自由に立候補できる選挙制度、それぞれ重要な点です。一方で、投票する側に回った場合、知名度で判断するのではなく、劇場型のイメージ戦略に流されることなく、プラス面とともにマイナス面の情報も踏まえて一票を投じられる選挙のあり方にも思いを巡らしています。

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