新しい判断で消費増税再延期
このブログに書き込んだ記事内容の反応は専らコメント欄を通して把握できます。私どもの組合員や知り合いの皆さんらにとって匿名のブログではなく、実名での発信と同じ扱いになっているため、直接感想を耳にすることもできます。もう一つ、他のサイトに「公務員のためいき」のことが取り上げられる場合もあり、たいへん貴重な意見を把握できる機会に繋がっています。
以前の記事「長島昭久さんとの関係」の中でも紹介させていただいた「市役所職員の生活と意見」は当ブログを開設した頃からご縁のあるサイトです。いつも興味深い内容の投稿が多く、ほぼ毎日、訪問させていただいています。お互い気になった記事を自分のブログの中で紹介する時があり、最近では「パワハラ被害の駆け込み先。」という記事に当ブログのことが触れられていました。
その際、「政治絡みのネタはいつも取り上げられるものの、パワハラなどの問題が話題の中心として取り上げられているのを見た記憶は、ほとんど無いように思います」という一言が気になっていました。過去、直接的な題材にした記事(「投資」となるパワハラ対策)もありますが、政治的な話題の記事の数に比べれば皆無に等しいバランスであることも確かです。
以前の記事(『「憲法改正」の真実』を読み終えて)の冒頭で丁寧な情報発信のツールの一つとして、このブログを通して意識的に組合の政治活動について数多く取り上げていることをお伝えしました。一方で、日常の組合活動の中で政治的な課題が占める割合はごくわずかであり、賃金や人員確保、人事評価制度の労使協議などが重要な取り組みとなっています。要するにブログでの題材の取り上げ方と日常の組合活動に対する力点の置き方にはギャップがあることを強調させていただきました。
また、不特定多数の方々が関心を寄せやすく、話題や論点も共通認識できるため、地味でローカルな話となりがちな日常の活動よりも政治的な題材を多く取り上げている側面もあります。さらに「運動のあり方、雑談放談」の中で記したことですが、不特定多数の皆さんへ「働きかける」という自分なりのささやかな運動と位置付け、このブログに向き合っていることも以前の記事でお伝えしています。
組合活動の中でパワハラ対策も重要な取り組みの一つであり、今回、久しぶりに直接的な題材として取り上げることも考えました。しかし、時機的な面や旬な話題であることを優先し、記事タイトルに掲げたとおり安倍首相が新しい判断で消費増税を再延期した話を取り上げることにしました。そのため、パワハラ防止に向けた私どもの組合の取り組みに関しては機会を見て改めて取り上げさせていただくつもりです。
2017年4月の消費税率10%への引き上げについて、増税に耐えられる環境にないとして再延期を正式表明した安倍晋三首相。リーマン・ショックのような重大な事態が起こらない限り引き上げるとしてきた、従来の説明と整合性が乏しい。首相は1日の記者会見で「新しい判断」と説明しつつ、公約違反との指摘は「真摯に受け止める」と認めた。
10%への引き上げを延期するのは2回目。当初予定した15年10月から4年遅れることになる。首相は14年11月、10%への増税時期を17年4月に一年半先送りすると表明した際「再び延期することはない。(アベノミクスの)『三本の矢』をさらに前に進め、必ずや(増税できる)経済状況を作り出す」と約束した。
さらに、日本の財政への信認を保つため「景気判断による再延期は行わない」とも述べ、消費税増税法を改正して「景気弾力条項」を削除。リーマン・ショック級の金融危機や東日本大震災並みの自然災害が起きた場合の再延期は、あくまで例外と位置付けていた。国会論戦でも、リーマン・ショックなどの場合を除いて予定通り実施するという見解を繰り返してきた。
だが、現在の世界経済はリーマン・ショックのような危機的状況にはない。首相は先の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、新興国経済の減速をきっかけとした下振れリスクを各国首脳に訴えたが、理解は広がらなかった。多くの犠牲者が出た熊本地震についても、首相は「政治利用は被災者に失礼」として、従来の再延期要件に該当しないと説明した。
結局首相は、一貫して否定してきた景気判断を再延期の理由にせざるを得ず、この日の会見で「これまでの約束とは異なる新しい判断。公約違反との批判は真摯に受け止める」と述べた。従来の説明に固執して、苦しい立場に追い込まれるよりも、自ら公約違反との言葉を使うことで国民に潔さを印象づけ、野党の批判をかわす狙いもある。【東京新聞2016年6月2日】
上記の報道のとおり消費税の引き上げは再び延期されます。この会見で安倍首相は参院選で「国民の信を問いたい」と述べ、衆院を解散して衆参同日選を行なう考えがないことも明らかにしました。これまで安倍首相は非改選の議員を含め、自民・公明の与党で過半数を維持できる46議席を参院選での獲得目標としてきました。与党の改選議席数は59であり、与党内からも「低すぎる」という声が上がっていました。今回の会見で安倍首相は獲得目標を与党で改選議席の過半数とし、現有議席に2議席を上積みする61という数字に改めました。
私自身、安倍首相を誹謗中傷するような言葉は慎んでいます。このブログでは批判的な記事内容が多いことも確かですが、あくまでも安倍首相の言動や考え方に対する批判であって人格を攻撃するような記述は一切ないはずです。そのような批判の仕方は安倍首相を支持されている皆さんに対して失礼なことであり、言葉の真意そのものが届きにくくなるものと考えています。今回の記事も同様な趣旨で書き進めていくつもりです。
ただ消費増税の再延期を表明した記者会見の内容を受け、そのような心構えが揺らぎそうです。『日刊ゲンダイ』を久しぶりに購入しましたが、「自己愛の激しい首相」という言葉をはじめ、「失速したアベノミクスの成果を誇り、失笑されたサミットでの独り相撲を正当化し、反省の弁すらなく野党を罵る支離滅裂」「ここまで勝手な理屈で自己弁護に終始するのは人格破綻か」という辛辣な言葉が並んでいました。言いすぎではないかと思う一方、その通りかも知れないという思いが錯綜していました。
『日刊ゲンダイ』の記事内容の一部を引用したことにお叱りを受けるのかも知れませんが、もう少し大手メディアも安倍首相の会見内容や消費増税の再延期を決めるまでの経緯などの問題性を大きく扱うべきものと考えています。前回記事「サミット、広島、そして沖縄」の冒頭で、安倍首相が世界経済討議の際にリーマンショック直前と似ているという資料を提示した話を紹介しました。
土曜夕方の『報道特集』で、この資料のことなどが取り上げられていました。政府関係者からも「G7のような国際会議で議論する資料なのに財務大臣などと事前にすりあわせをしないというのは通常ありえない」「サミットでは自らの責任を免れるために世界経済のせいにして、国際会議を政治利用した。これを放置していたら長い歴史の中で役人やメディアは何をしていたのかと笑われますよ」と問題視する声が上がっていたことを伝えていました。
そもそも安倍首相は世界経済の危機を「G7はその認識を共有し、強い危機感を共有した」と話していましたが、出席した首脳らは「我々は危機にない」と反論し、G7として同意していないことが明らかになっています。そのため、再延期を表明した記者会見では「新しい判断で」という言葉が枕詞に浮上していました。「再び延期することはない」と断言した約束を新しい判断で覆す、このような理屈がまかり通れば約束事に対する信頼関係の低下は免れません。
以前の記事「消費税引き上げの問題」に記したとおり私自身は消費税の引き上げの必要性を認めています。国債の信用を落とさないためには財政の健全化が欠かせず、社会保障財源の確保のためにも消費税の引き上げは避けられないものと考えています。そのため、民進党の岡田代表が党首討論で再延期を訴えたことを残念に思っています。不足する財源を赤字国債に頼るという発言も評価できません。
赤字国債のことを安倍首相も批判していましたが、安倍首相の税収増を前提にした財源確保の説明も安定性の面で危うい発想だと見ています。国民の大半が消費税の引き上げに反対しているため、消費増税を参院選での争点にすることの難しさも理解しています。それでも野田前首相が「再延期」を強く批判しているとおり民進党には3党合意の基本を貫いて欲しかったものと思っています。そのような構図に至っていた場合、将来に対する政治の責任を争点に問えたはずです。
いずれにしても安倍首相の判断が正しかったのか、誤りだったのか、すぐ結論は出ません。ただ再延期によるリスクや混乱が数多くあることも確かです。それにも関わらず、サミットで配付した資料に象徴されるように最近の安倍首相は限られた側近との間だけで物事を判断しているように見受けられます。自民党総務会で示された「首相が言ったらすべて従うのか。今後の見通しを示さないまま増税を見送り、誰が財政規律を体を張って守るのか」という村上元行革担当相の異論に安倍首相は真摯に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。
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コメント
前回のコメ欄で私の考えとブログ主様のご意見は
総論では変わらないとのお言葉を頂戴いたしました。
私のような若輩者を同列で扱われる
気恥ずかしさがあります。大変恐縮です。
しかしながら、私はどこをどう見直しても
「総論では同じ」だとは思えません。
だからこそ、主様がお書きになっているご意見を拝読して
私自身も勉強させていただいておりますし
新たな価値観を身につけたいなぁという
欲求も出るわけでして。。。
総論として違うという内容を書きましょう。
私は匿名ですので論点をぼかす必要はありません。
反感を買うほど誇張させて書きます。
匿名である以上、賛同を得ようという思いは
卑怯だと思うからです。
結論から先に書きますと
公務員の加盟する労働組合は
政治的な活動は一切慎むべきであり
どうしても政治的行為をしたいのならば
労働組合とは別の組織を立ち上げるべきです。
運営費は組合費とは当然別納付で
チェックオフもなくすべき。
これは、ブログ主様がおっしゃる枝分かれではなく
もう、根っこの段階で違いますw。
公務員の給与から天引きされた金で
組織として政治的行為をするならば
活動の大小に関わらず非難を免れることは不可能です。
今流行りの「適法だが不適切」以上に
「不適法な事例もあって、その上に不適切」
という認識です。あくまで私個人は。
さらに、決定的な認識の違いは、組合への不信感。
労働組合という組織の意味合いは
今や、すでに時代遅れの産物と化していると思います。
現組織は、利権にしがみつく一部の亡霊によって
運営されていると私は思っています。
組合員一人一人の意見とはかけ離れた化石のような人物が
政治家と結託していかがわしい行為をしているイメージ。
そういう印象です。
組合の歴史や背景は橋下前大阪市長が
さんざん悪態をついたために一般国民に露呈し
結果、無党派層へ民主党に対する不信感を植え付けた。
組合の政治的行為は、奇しくも逆効果を生んだと
私は分析しています。
もっと言えば
これまで取り組まれた政治的行為の結果も散々かと。
原発反対を叫んで、日本から原発がなくなりましたか?
組合が核兵器の廃絶を叫んだから、オバマさんが広島に来たのですか?
戦争法反対を叫んで、安保法制が否決できたのですか?
アメリカ軍は出て行けとデモをしたら
沖縄の人が犯罪に巻き込まれる事がなくなるのですか?
組合が正当化する政治的行為は、法のグレーゾーンに侵入してまでもやらなければいけない
本当に必要なものなのでしょうか?
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「組合費高いな。署名活動も面倒だし。
でも新人研修の時に訳も分からず
給与天引きにしちゃったんだよな。
今さら組合費払わないなんて言いずらいし
波風立たせるのも嫌だから黙ってよ。」
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こんな公務員、腐るほどいると思います。
この声が、実際に噴出するのも時間の問題かと。
組合の存続に意味があるのであれば
真摯に耳を傾けるべき声がこのブログのコメント欄には
溢れていると私は思います。
投稿: いまさらですが | 2016年6月 8日 (水) 00時54分
橋下前市長が組合活動や政治活動について厳しく批判され、労組側との激しい対立が報道され、当時話題になったことを思い出しました。
当時の報道も確かに橋下氏の主張を支持するという風潮がありましたが、その後の裁判結果などについては大きく取り上げられていませんね。
以下は、2015年12月16日付「産経WEST」のコピペです。
(以下引用)
橋下徹大阪市長の要請に基づき、平成24年に実施された組合活動に関する職員アンケートの違法性が争われた訴訟の控訴審判決が16日、大阪高裁であった。中村哲裁判長は22項目の質問のうち5項目について、職員の団結権やプライバシー権を侵害するものだったと1審に続き違法と認定。さらに政治活動の自由を侵害する質問もあったと述べ、1審より広く職員や組合側の主張を認めた。市の賠償額も増額した。
就任早々から「組合適正化」を訴えた橋下市長の施策をめぐっては、相次いで法廷闘争に発展。市教職員組合が主催した教育研究集会の学校使用不許可訴訟では市側が敗訴、庁舎から連合系労組の事務所を立ち退かせた訴訟では平成24年度の退去処分のみが違法と判断され、いずれも確定している。
訴えていたのは、市労働組合連合会(市労連)など5団体と組合に加入している職員ら。
判決によると、アンケートは市の第三者調査チームの代表を務めた野村修也弁護士が作成した。組合加入の有無や職場での組合活動などについて尋ねるもので、24年2月に約3万4千人の職員を対象に記名式で実施された。橋下市長は職員に回答を義務付ける職務命令を出し、正確に答えない場合は処分の対象となるとしていた。アンケートは最終的に未開封で破棄された。
判決理由で中村裁判長は、特定政治家を応援する活動に参加したことがあるかどうかを聞く質問について「個人のプライバシーに属する事項だ」と指摘。さらに「市長の方針に反する政治的行為をすることに強い萎縮効果を与える」として違法と判断した。また、組合加入の有無などを尋ねた4項目についても団結権を侵害するなどとした
http://www.sankei.com/west/news/151216/wst1512160070-n2.html
(引用終了)
まあ、すでに辞めた市長の話なのでどうでもよいですが、結局何をしたかったのでしょうか?
投稿: ベンガル | 2016年6月 8日 (水) 11時06分
>まあ、すでに辞めた市長の話なのでどうでもよいですが、結局何をしたかったのでしょうか?
まさに組合適正化のための活動だと思いますね。裁判では法律の判断ですから負けたことはしかたありません。
労働組合は労働者の為に活動すべきであり、政治活動はしないのが原則と考える方は多いのではないでしょうか。
労働組合が本来すべき活動から外れ、政治活動やその他の活動に熱をあげるからこそ、労働者からの支持を失い加入率の低下を招いてるのではないのでしょうか。
投稿: nagi | 2016年6月 8日 (水) 11時46分
参議院選挙が近づいてるので、みなさんに読んでほしい記事を紹介します
>http://agora-web.jp/archives/2019615.html
投稿: nagi | 2016年6月 8日 (水) 11時48分
法治国家なので、法を超えた適正化などありえないですね。本人も弁護士なら、わかった上で適正化をすべきでしたね。
市の受けた賠償金や裁判費用、裁判に費やした時間など批判されて当然だだと思いますが。
投稿: ベンガル | 2016年6月 8日 (水) 12時43分
あの、いきなり何を言い出すのか?といわれそうですが、
野党統一候補さんって、当選後は”党籍はどこ?”になるのでしょうか。
民進党さん?共産党さん?統一候補の擁立に参加した別の政党?無所属で(統一候補だけの)新会派?
真面目な話、どう考えて良いのか、悩むのですが。せめて、それだけは明らかにして貰えませんか?
「反安保・反安倍で一致してる」ってのは判るんです。
そこまでは良いのですが、「では当選された後、それ以外の諸課題も含めて、国政全般にどういう方針で臨まれるのですか?」ってのが判らないと、賛否の判断に困るんですよ。
せめて、当選後の所属政党が判ると、ある程度の目安になるのですが。。。
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G7のときの提出資料は、「よくあれを国際会議(首脳の)に出したな。政府部内で、聢と検討したのか?」って疑念は感じますね。
一部海外メディアの「世界経済の危機でなく、日本経済の危機だろう」って論評も、判らなくもないというか。
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野田氏が3党合意の当事者として、あるいは、当時の政府与党として合意(政策)を主導した当事者として、増税延期を批判するのは判るんですよ。
野田氏が「3党合意を反故にした」って仰るのも、判るんですよ。
判らないのは、その野田氏と同じ政党のトップである岡田氏の言動なんです。
少くとも、政府・与党というか首相は、増税の延期を”公式”には決定してないし、表明してない段階だったですよ。
そこで、党首討論という場で「公式に、増税延期を与党に”お勧めしたい”といって、お勧めした」ってのが判らない。で、首相に「今のお勧めを重く受け止めたい」みたいな応答をさせてる。
3党合意の当事者(主導する側だった当事者)が、野党側から、率先して(先回りして)「合意の破棄を勧める」ってのは、なんなのだろうって。
政府・与党側が、増税延期を正式に表明した”後”で、
「アベノミクスの失敗の帰結だ」とか、
「3党合意を反故にするのは許せない」とか、
「当時の政府与党として、代償を払ってまで、3党合意に持って行ったのに、軽く扱われた」とか、そういう態度(批判の行い方)なら、- 増税延期の是非とか、3党合意の内容の是非とかは、別にして -政策的一貫性はあると思ったですけど。
というか、岡田氏と野田氏の言動を並行してみると、「同じ政党なの?党内で意思統一は聢と行ったの?やっぱり選挙後には空中分解?」って疑念がふつふつと…。
今回も、「とにかく首相を批判する」のが”目的”になってしまって、主客転倒してしまったのだなぁって印象。
「今の政府与党を批判するのは、”手段”に過ぎない」ってことを、体得して貰わないと、まともな政権与党にはなれないとおもうですよ。
これでは、今夏の参院選で勝利しても、仮に将来の衆院選の結果、与党となるようなことがあっても、結局は前回と変らないだろうなって印象が残るんですよね。
中身は何も変ってないし、やはり党名は変っても「マトモな野党にはなりきれてないなぁ」っていう落胆というか失望というか。
投稿: あっしまった! | 2016年6月 9日 (木) 10時55分
いまさらですがさん、ベンガルさん、nagiさん、あっしまった!さん、コメントありがとうございました。
幅広いご意見や情報に触れられる場としての貴重さをいつもたいへん感謝しています。本来、このコメント欄を通し、一問一答での対応が望ましいことであることも理解しています。常連の皆さんには今さらの話で恐縮ですが、それでも従来通り記事本文に集中していくことを改めてご理解ご容赦ください。
その上で、今回のコメント欄に提起されているよう論点について、できる限り新規記事の中で答えられるよう努力してみるつもりです。ぜひ、これからもご注目いただければ幸いですのでよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2016年6月12日 (日) 07時03分