イライラ答弁が目立つ安倍首相
多様な考え方や情報に触れることで、より望ましい「答え」に近付ける、このような思いを強めています。このブログを通し、多様な見方やマイナーな情報に触れる機会の一つになっていただければ幸いなことだと考えています。ただ自分自身が正しいと信じている「答え」から極端に離れた言葉や内容だった場合、人によって非常に不愉快に感じられてしまうのかも知れません。
それでも集団心理のデメリットに陥らないためには日頃から幅広く、多様な情報に接していくことが欠かせないものと私自身は省みています。そのような趣旨のもと今回の記事はメディア報道の紹介を中心に書き進めてみるつもりです。それぞれの報道内容や私からの論評に対し、お読みいただいた方、一人ひとりの受けとめ方や評価は枝分かれしていくはずですが、多面的な情報の一つとしてご理解くださるようよろしくお願いします。
さて、記事タイトルに掲げたとおり最近の安倍首相の答弁を中心に綴るつもりですが、初めに1点だけ別の話題を紹介しなければなりません。前回記事のコメント欄でnagiさんから「時々記事に名前のでてくる江崎参議院議員ですが、8日の本会議に出席せず、福岡市内の会合に出席していたと記事を読みました。今年たしか改選ですよね。じゃあしかたないですねえ。国会開いても出席しないのなら、開けと騒いでもしかたないと思うのですがね」という指摘を受けていました。
民主党の江崎孝参院議員(比例)が8日の参院本会議を欠席し、福岡市内で開かれた部落解放同盟福岡県連の会合に出席した。江崎氏は産経新聞の取材に「本会議に出ないのは悪いとは思ったが、(会合の主催者側から)求められたので出席した」と説明した。江崎氏は当選1回で、夏の参院選で改選を迎える。【産経ニュース2016年1月8日】
上記の報道に接したnagiさんからのコメントでした。江崎さんについては新年の記事「2016年、三猿の真逆な心構え」の中でも触れましたが、自治労組織内の参院議員で私どもの組合も推薦しています。6年前には「参院選は、えさきたかしさん」という記事も投稿していました。直接お会いして何回か意見を交わしたこともあります。今回、与野党の計30人が欠席していました。内訳は自民16人、民主11人、共産2人、維新・元気の会1人で、このうち22人が今年7月に改選を迎える議員でした。
全員が欠席届などを提出して「無断欠席」はなかったようですが、病気や怪我など「やむを得ない」と見られるような理由ではない限り、国会議員の本会議欠席は批判が免れないものと思っています。その一人に江崎さんの名前が連なってしまったことは本当に残念であり、江崎さん自身が猛省しなければなりません。この件をもって推薦関係に影響を及ぼす事態にはならないものと見ていますが、今後、このような批判を受ける行動は慎まれるよう強く願っています。
安倍首相に絡む事実関係を伝える際、私自身にとって不都合な事実には触れないという批判を避けるためにも、まず江崎さんに関する報道内容から入らせていただきました。続いて、本題となる安倍首相の国会答弁に関する報道内容や関連サイトを紹介しながらトップリーダーの資質について考えてみます。1月14日の読売新聞朝刊、政治面に「イライラ答弁 目立つ首相」という大きな見出しが掲げられていました。声荒らげ「間違いなら議員を辞める」とも報じられていました。
「あなたがこういう質問をすること自体が、本当に残念」「一人の方の本で誹謗中傷するのは無責任だ」。12日の衆院予算委員会では、民主党の緒方林太郎氏が拉致被害者蓮池薫さんの兄、透氏の著書を根拠に安倍晋三首相が拉致問題を政治利用したのではないかと追及したのに対し、首相が猛反発する場面があった。緒方氏は、透氏の著書「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」を引用しながら、首相が官房副長官だった2002年当時、帰国した薫さんら5人の北朝鮮への再入国に当初は反対していなかったなどと指摘した。
首相は「当時は北朝鮮に戻す流れだったが、私は断固として反対した。私が言ってることが真実だと(国会議員)バッジを懸けて申し上げる」と色をなし、「私の言っていることが違っていたら、国会議員を辞める」と言い切った。緒方氏は「首相は拉致問題を使ってのし上がったのか」とも挑発。首相は「大切なことは、全ての拉致被害者を奪還するために全力を尽くすことだ。そういう質問をすること自体がこの問題を政治利用している」と「逆批判」を展開した。【時事通信2016年1月12日】
読売新聞の当該記事がネット上では見つかりませんでしたので、安倍首相をイライラさせた国会質問を伝えた内容を紹介します。その一つが上記の拉致問題に関わる事実関係です。質問で取り上げられた書籍『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』は昨年末に購入し、すぐ読み終えていました。あえて注目を集める書籍名にしたという話を耳にしていますが、全体を通して読み終えた印象は安倍首相の批判を目的にした内容ではありませんでした。
そのような中味を期待していた場合、少し肩透かしされた形になるほどです。北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の事務局長を務めた蓮池透さんが見聞きした事実関係を淡々と綴られた書籍だと言えます。感情的に特定の人物を批判されている箇所は皆無であり、安倍首相をはじめとした政治家が何をして、何をしなかったのかという事実関係が書き残されています。ただ蓮池さんが見てきた範囲内の記述であり、蓮池さんには把握できなかった事実関係も多かったはずであり、すべて「真実」だと言い切れないことも確かです。
それでも明らかに偽りだと分かるような内容を挑発的なタイトルの書籍に書きしるすのかどうか、そのような無謀な行為は控えるのではないでしょうか。2002年の拉致被害者帰国の際に「安倍首相は拉致被害者が北朝鮮に帰るのを一度も止めようとしなかった」という記述は、拉致被害者である蓮池薫さんの兄であり、家族会の事務局長だった蓮池透さんの立場から充分把握できる事実関係だったように見受けられます。
このような事実関係の指摘に対し、安倍首相は「私は断固として反対した。私が言っていることが真実だ。違っていたら、国会議員を辞めますよ」と言い切り、国会答弁で怒りをあらわにしていました。この安倍首相の答弁があった翌日、リテラというサイトが蓮池透さんに緊急インタビューを行なっていました。その全文は長い内容ですのでリンク先をご参照いただき、要旨となる箇所を下記に掲げます。
私が『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』に書いた内容はこれまで自分で体験し見聞きしてきたことです。Twitterにも書きましたが決してウソなど書いていません。それにしても、一国の最高権力者である総理大臣がですよ、私のような一介の市民が書いた本で批判されたからといって、本気で対決姿勢を示すというのはいかがなものかと思いました。最後にはキレ気味でしたからね。そうではなくさらりと流したほうが総理としての器を示せたのではないかと思います。
安倍さんが、拉致問題で総理大臣になったのは事実です。そして総理に返り咲いてからもまだ拉致問題を利用している。私は決して安倍さんを批判するために本を書いたのではありません。拉致問題の恩恵を受けて総理になったのであれば、恩返しという意味でも拉致問題の解決に向けきちんとやってください、そういう思いを込めたつもりです。しかし今回の発言を聞くと本当に残念です。
2002年の小泉訪朝から13年もの長い時間が経っているのに何も変わらない。だから一石を投じるつもりでこの本を書いたのです。弟家族が帰国できたのだから黙っていたほうが楽だろうとも言われます。しかし、こんな状態で黙っていることはできない。弟はまだ帰ってこない被害者の人々のことが頭にこびりついているんです。肉体的には解放されたけど、精神的にはまったく解放されていないんです。心身ともに自由に暮らせるようなってもらいたい。そんな思いもあって私は声をあげている。だから“批判のための批判”みたいに捉えられるとすごく嫌ですね。
安倍さんには、あなたがいつ説得などしたのか?と訊きたくなりましたよ。本にも書きましたが、弟を説得したのは私であって、安倍さんじゃない。実際に電話のひとつもなかったんですから。当時、政府は5人のスケジュールをびっちりと埋めて作っていましたし、「一時帰国」を変更不可能なものとして進めていたのです。家族たちの間では「帰りのチャーター便はどうするのか?」と、北朝鮮に戻すことを前提に具体的な話し合いまでもたれていたのです。
また、政府はこうも言っていました。「今回は一時帰国だけど、次回は子どもも含めて全員が帰ってきますよ」と。安倍さんも一貫して、5人を北朝鮮に戻すことを既定路線として主張していた。でも、弟と話し合うなかで「ああ、これは2回目などないな」と確信を持ったのです。だから必死で止めた。慌てていたというより「そうですか」って感じでしたね。ようするに、弟たちの日本に留まるという強い意志が覆らないのを見て、しぶしぶ方針を変えただけなんですよ。にもかかわらず、安倍さんは相変わらず「決断したのは自分だ」というようなことを言う。大人の答弁だとは思えないですね。
安倍首相と蓮池透さんの言い分、どちらを信じるのかどうか人によって分かれていくのかも知れません。きっと北朝鮮に戻さないという方針が浮上した以降、既定方針通りに戻すことを主張する面々に対し、安倍首相が「戻すべきではない」と断固反対された構図は間違いないものと思われます。もしくは水面下で安倍首相は当初から「戻すべきではない」と画策し、その素振りを蓮池さんらには察知させないように振る舞っていたことも考えられます。
このように考えた場合は両者とも事実を述べていることになります。いずれにしても蓮池さんの「さらりと流したほうが総理としての器を示せたのではないか」という言葉に大きくうなづいてしまいます。「違っていたら国会議員を辞める」と言い切られていましたが、この問題で今後の展開があるのかどうか注目しています。続いて、安倍首相のイライラ答弁に繋がった問題として次のような報道がありました。
衆議院予算委員会で、民主党は、13日も安倍首相の経済観念をただした。「一般的なパートの妻の月収はいくらか?」という話だった。 民主党の山尾衆議院議員は、「(安倍首相の)妻25万(円)という発言が、パートの実態がわかっていないんじゃないか」、「相当、感覚がずれているのではないかと」とただした。先週の国会で、安倍首相が、月収25万円の妻を例え話として出したところ、民主党は、「パートの女性の平均給料はもっと低く、実態がわかっていない」とかみついた。 安倍首相が、「妻がパートで働き始めたらと言ってはいないじゃないですか」、「こうしたことばかりやっているようでは、民主党も支持率は上がらないのではないか」と述べると、山尾衆院議員は、「総理に支持率のことは心配してもらわなくて結構です」と述べた。【FNN2016年1月13日】
安倍首相の「パートで25万円」の発言は海外のメディアでも取り上げられ、ネット上でも話題になっていました。この発言は庶民感覚の欠如という批判に繋がっていたため、安倍首相は「言ってはいない」と発言そのものを否定しました。問題視された発言は「パートで働く人が増えれば、一人当たりの平均賃金が低く出ることになる訳であります。私と妻、妻は働いていなかったけど、景気が上向いてきたから働こうかということで働き始めたら(月収で)私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増える訳でございますが、2人で働いている訳ですから2で割って平均は下がる」というものです。
この文脈であれば、例示した妻の25万円はパートでの収入だと理解してしまいます。確かに後者の例示の妻の前には「パートで働き始めた」と説明されていませんので、「パートで25万円」とは言っていないと本人が主張されればその通りなのかも知れません。しかし、誤解を招いた発言であることも間違いないのですから、感情的な言葉で答弁するよりも誤解を与えたことを謙虚に認める姿勢が必要だったように思っています。
このような質問に対し、安倍首相は「枝葉末節な議論だ」と切り捨てています。枝葉末節なのかどうかは国会でのやり取りを見聞きした国民一人ひとりが判断する話だろうと考えています。ちなみに民主党議員の資質や質問内容を見下し、安倍首相の対応を支持する声をネット上で散見できます。一方で、安倍首相の資質を疑う声もネット上やメディアの一部では見受けられます。
紹介した二つの事例、安倍首相が嘘をついていないことを願っていますが、明らかな事実としてのイライラ答弁は控えて欲しいものです。最も冷静で的確な判断を迫られる内閣総理大臣、そのポストに座る方がすぐ感情的になって他者や他党を見下すような答弁を行なうことを非常に憂慮しています。最後に、「主張すべきことは主張する」という問題意識は一貫しているつもりであり、民主党政権の時には「リーダーシップのあり方は?」「上司としての菅首相」という記事などを投稿していたことも一言添えさせていただきます。
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コメント
予算審議は政府案のナカミを精査する場であるはずですが、予算委員会は、国政に関することなら何でもいい質問ができるとあって、いろいろな予算には直接関係のない質問が飛び交います。
これは、国会運営について、少し考えてほしい。
12月のクリスマスごろに政府案の閣議決定がされ予算が国会に上程されます。
だいたい3月に衆参通過、あるいは自然成立しますが、予算書の中身って変わったことは寡聞にして聞きません。
国会も地方もそうですが、政府・執行部提出予算に対して、議会は、中身にちょっとだけケチはつけます。でも、結局、中身の金額はいじらずに、議会で反対か賛成かしかできません。
国においては、事前に与党とのすり合わせがあります。地方にはすり合わせのないところもあります。
地方の場合、議会で何度も補正予算を組みます。国からゲンナマが項目付き(ひもつき・流用禁止)で入ってくるためで、項目以外には使えません。議会は賛成か反対するだけ。イエスかノーならタヌキでもできるんです。だいたいは、お金を国からもらう立場なので、財政指標なんか後回しで賛成されてしまう。
それは、いいのですが、しょせん予算審議の約3か月間は「ためにやる」ものであり、与党のスキャンダルでも出てくれば野党は儲けもの。
自民が作った憲法改正案はまだまだゼリーぐらいにしか固まっておらず、もうちょっと凝固剤をいれなくてはいけない。それは、国会全体の問題ですから、民主党が自民素案を持ち出して、時間を使ってあげつらうのは、どうかしていると思っています。
結局、与野党とも、通常国会の予算成立までは、時間稼ぎにしか見えない(個人的見解です)。政府案はいじられることはないので、政府部内では、もう来年の契約や地方局への配算作業にはいっているんです。国会の議決を待っていたのでは、4月1日に執行するのには間に合わないから、年度前に回議(稟議)してしまいます。
もう、通常国会前半戦は茶番だ(個人的見解です)としかいいようがない。野党も情けない。材料がないなら、審議時間を返上するくらいしたほうが、政府の下っ端役人も早く帰れるし、超過勤務代も抑えられる。早く帰れないから、お金を使えない。超過勤務代は出る。貯蓄するしかない。
自治労さんは知りませんが、官公労さんは少し考えたほうがいいと思います。
投稿: でりしゃすぱんだ | 2016年1月18日 (月) 00時51分
安倍総理が狭量とか度量がないと言うことは私もそうだろうと思いますし、新聞などで批判されるのもしかたありませんね。
それと、紹介された書籍は読んでないのですが、著者の方の近年の発言を見ると随分変わったなあと思います。どちらかと言えば共和国よりになったなあと率直に思います。
>それにしても、一国の最高権力者である総理大臣がですよ、私のような一介の市民が書いた本で批判されたからといって、本気で対決姿勢を示すというのはいかがなものかと思いました。
憲法において国民は法の下平等ですから、一国の総理であれ、一市民であれ、誹謗中傷と思えばそれに反論することも問題ありませんね。
それと、拉致問題は重要なことですが、民主党がその件を持ち出すのはかなり藪蛇だと思うのは私だけでしょうか。
例えば徳永えり議員のこともそうですし、また共和国との関係が深かった旧社会党の議員も在籍してるし、何よりも共和国が拉致を認めるまで、ホムペに拉致は日本政府の自作自演だと主張していた社民党に在籍していた辻元清美議員もいます。一度そのあたりを社民党の方か、是非辻元清美議員に説明してほしいですね。まあこの方は論点をそらして煙にまくのがものすごく上手いですがね。
民主党が再び政権をとったら、辻元先生にはぜひ大臣になってもらい、国会で追及を受けてほしいと心から願っています。
投稿: nagi | 2016年1月18日 (月) 14時04分
でりしゃすぱんださん、nagiさん、コメントありがとうございました。
このコメント欄での流れを引き継げず恐縮ですが、できれば新規記事は今夜中に投稿したいものと考えています。ぜひ、またご訪問いただければ幸いですので、よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2016年1月23日 (土) 21時35分
結局甘利辞任もなんのそので各紙の調査で内閣支持率上げてしまいました。
たしかに民主党の支持率の横這い具合からみて固定支持者以外は逃げてしまって寄ってこないような印象
投稿: 犬 | 2016年2月 5日 (金) 06時09分
犬さん、コメントありがとうございました。
機会を見て、そのような点の悩ましさについて記事本文で取り上げたいものと考えています。なお、できれぱハンドルネームは固定いただければ幸いですので、よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2016年2月 6日 (土) 20時23分