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2015年9月27日 (日)

主催者と警察発表の落差

シルバーウイークの最終日、代々木公園で開かれた「さようなら原発 さようなら戦争 全国集会」に参加しました。午後1時30分から始まった2時間近くの集会の後、明治公園まで3キロほどのデモ行進もありました。4年前の5万人集会に参加した時のような密集感はありませんでしたが、自治労の隊列はデモ行進の出発順が後のほうだったため、今回も会場の外に出るまで1時間ぐらい待たされました。

主催者発表で参加者は約2万5千人でした。最近、その落差が取り沙汰されがちな警察発表の数字は目にしていません。そもそも「警視庁ではイベント・デモ・集会などの形態にかかわらず、参加者数については一切発表していない」とのことです。よく報道で見かける警察発表又は警視庁発表は、あくまでも警察担当の記者が警備や広報の担当官から個別に取材して聞き出している数字だそうです。

そのため、「警察関係者によると」という前置きが正確な伝え方だと言えます。このように警察からは参加者数が公表されていないため、最近のメディアの傾向は主催者から正式に発表された数字だけを記事に掲載しているようです。それにもかかわらず、安保関連法案に反対した8月30日の国会包囲行動に関しては参加者数を約3万3千人と警察発表していました。

一方で、主催者側は参加者数を約12万人と発表していました。この4倍ほどの開きに対し、ネット上で様々な意見を目にしていました。特徴的な点として、安保関連法案に賛成する側は警察発表をそのまま信じ、12万人は主催者側の極端な水増しによる数字だと批判していました。そのことから主催者や参加者自体の「胡散臭さ」を強調し、反対運動そのものをネガティブに論じる声を数多く見かけていました。

この件では青山繁晴さんが古巣の共同通信の報道の仕方に激怒されていました。YouTubeの動画「卑怯でおそろしい世論工作が行われている!反安保集会の参加者数の嘘を青山繁晴さんが激怒!」のとおりですが、ここでも12万人のほうを嘘と決め付けた主張が展開されていました。もちろんメディアが世論工作の片棒を担ぐようでは確かに大きな問題です。ただ今さらのような話ですが、以前の記事「二極化する報道」のとおり主要なメディアの立ち位置はそれぞれ明らかになっています。

8月31日の朝刊の紙面で、朝日と毎日は一面に国会包囲行動のことを載せていましたが、読売は社会面でのベタ記事扱いでした。反原発集会の翌朝、その集会のことを朝日と毎日は一面に載せていました。それに対し、私の見落としではないはずですが、読売はまったく取り上げていませんでした。各社の編集権の範囲内の話だろうと理解していますが、それぞれの購読者の得られる情報には大きな差が生じていくことになります。

したがって、このような傾向があることを前提にマスメディアと接していかなければ、より望ましい判断や評価は下しづらくなるものと考えています。論点が少し広がってしまったかも知れませんが、共同通信は12万人のほうが正しいという結論に繋げるような配信記事をまとめていました。青山さんからすれば12万人が嘘だと思っているため、その取材方法なども含めて共同通信に噛み付いていました。

前述したとおり報道の仕方に濃淡があっても仕方ありません。ただ当たり前なことですが、嘘を事実のように決め付けた報道の仕方は絶対認められません。12万人という数字が極端な誇張や偽りであれば、青山さんが憤られるように主催者の嘘を擁護するような記事は論外だと言えます。しかし、今回の件では青山さんのほうが大きなミスを犯していました。緻密で精力的な取材ぶりに定評のある青山さんも安保関連法案の成立に肩入れ過ぎたためか、次のような事実関係を見落とされていたようです。

8月30日に国会周辺で行われた安全保障関連法案に反対するデモの参加者をめぐり、主催者発表では12万人、警察関係者の話では3万3000人という人数が報じられた。この両者の人数がかけ離れていたことから、ネットでは議論を呼んでいたが、9月10日、警察庁・斉藤実審議官が国会で警察庁による人数把握についての説明を行った。

このデモ参加者をめぐっては、デモを支持する人たちからは警察が少なく見積もっているとし、警察による情報操作を疑う声があがっていた。反対に、支持しない人たちからは「参加者の水増しだ」とする意見があり議論を呼んでいた。こうした事態から、ネットでは国会前でのデモの様子を写した空撮写真や、国会前の道路幅からデモ参加者数を試算する人や、国会前の面積から試算する人も現れ、産経新聞も人数を予想するなどした。

議員からもこのデモ参加者数を疑問に思う声があがり、民主党の藤田幸久参議院議員は9月10日の参院外交防衛委員会で「その3万3000人の根拠。どういう方法で3万3000人と判断したのか」と質疑。これに対し斉藤審議官は「警察としては全体の参加者の数を発表する立場にはございません」とし、「あくまでも警察活動に必要な範囲で特定のエリアの一時点における人数の把握に努めている」と回答した。

この答弁を受け民主党の徳永エリ参議院議員はFacebookで「メディアを使った国家権力による情報操作。この国はどうなっているのだ!」と異議。元外交官の孫崎享氏も「過小報道したNHK等報道関係の罪大」「特定地域、特定時間だけの警察発表をあたかも全体如く報道し、かつその意義について社説も書けない大手マスコミが言論・報道のリーダーの様な顔をしてる」と批判している。【アメーバニュース2015年9月11日

実際、その日に国会周辺を訪れた一人として補足します。国会正門前の人数は空撮写真のとおり3万人ほどだったはずです。もともと国会包囲行動であり、私たち組合関係者は議員会館前に集まるように指示されていました。地下鉄の駅を出るところから行列となり、国会周辺の歩道は人で埋め尽くされていました。集会開催中は身動きするのにも気を使う満員電車内と同じような状態でした。そのため、主催者発表約12万人は実数に近いものと判断していました。

それにもかかわらず、あまりにも警察発表3万3千人を鵜呑みにした批判がネット上で散見されていたため、このブログを通して事実関係を伝えようと機会を見計らっていました。より望ましい判断や評価を個々人が下していくためには多様な情報を得ることはもちろん、正しい事実関係を把握していくことが重要です。このあたりは「マイナーな情報を提供する場として」という記事の中で触れたとおりの問題意識を持っています。

実は今回も「主催者と警察発表の落差」という記事タイトルは後から付けています。この話題から論点を広げていくつもりでしたが、長くなっていますので一区切り付けることにしました。それでも最後に、もう一つ民主党側が猛省すべき問題を紹介します。参院特別委員会で安保関連法案が強行採決された時、民主党の津田弥太郎参院議員が自民党の大沼瑞穂参院議員に暴行を加えていました。経緯や事実関係が曖昧だった場合、不特定多数の方々に発信するブログ上では扱い方に注意しなければなりません。

しかし、YouTubeの動画を視聴した際、津田議員が大沼議員を引きずり倒している場面をしっかり確認できるため、そのような心配は無用のようです。与党の不意打ちから緊迫し、委員会室全体が騒然とした中だったとは言え、津田議員に非があり、大沼議員が被害者であることは明らかです。津田議員は「自分が前に行こうとしたところ、大沼氏が妨害していたので、それをよけようと思ったら、大沼氏が倒れた」と釈明しています。暴行を加えようとする意思がなく、気が動転し、津田議員は過剰な行為に及んでしまったのかも知れません。

それでも繰り返しになりますが、動画から判断できる事実関係は津田議員が明白な加害者です。その犯した行為に相応した事後の対応が欠かせないはずです。津田議員から大沼議員に対する真摯な謝罪、津田議員の責任の処し方、それぞれ現時点では不充分なままにとどまっているようです。この問題を民主党としても重く受けとめ、毅然と津田議員に処分を科す姿勢が求められているものと思っています。このような問題での対応を誤っていくと、ますます民主党への信頼感は失墜していくのだろうと憂慮しています。

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コメント

「大本営発表」は割と琴線に触れたのでしょうか(挨拶)KEIです。

>そもそも「警視庁ではイベント・デモ・集会などの形態にかかわらず、参加者数については一切発表していない」とのことです。
まあ、発表してしまうと責任が発生するでしょうしねー、「警察による情報操作」なんて言いがかりをつけられたりとか。

しかし、「警察による情報操作であり、主催者発表が正しい」ってのは、無理があると思うんですよねー。
一つには、警察にとっての参加者数把握は警備計画のためであり、過少に見積もったり過大に見積もったりする意味がない、ということです。多ければ多いほど良い主催者側とは認識が異なるところかと。
もう一つは、把握した数より過少あるいは過大に発表することにはリスクがあるということです。仮にですが、「このデモの参加者数が5千だった」と警察側情報が提示されたとしましょう。それは素直に受け入れられるでしょうか?写真、動画、あらゆる手段を用いて「もっと多いよ!」と検証がなされるのではないでしょうか?
今回、主催者発表12万に対し「もっと少ないだろー」という検証はよく見ます。しかし、警察側情報3万3千についてのそういった検証は見かけません。つまりはそういうことなんでしょう。

…ああ、こういうのは検証とは言いませんからね。
>実際、その日に国会周辺を訪れた一人として補足します。国会正門前の人数は空撮写真のとおり3万人ほどだったはずです。もともと国会包囲行動であり、私たち組合関係者は議員会館前に集まるように指示されていました。地下鉄の駅を出るところから行列となり、国会周辺の歩道は人で埋め尽くされていました。集会開催中は身動きするのにも気を使う満員電車内と同じような状態でした。そのため、主催者発表約12万人は実数に近いものと判断していました。
今回のデモの動画(おそらく主催者サイドがアップしたと思われるもの)を見てみました。OTSUさんたちも動員されたであろう「国会正門前以外」の状況は、国会正門前に比べれば大したことはない、という印象を受けました。…まあ考えれば当然のことなんですけどね。大したことがあったら新聞やテレビでも大々的に取り上げられていたはずで、写真や映像が国会正門前だけになるなんてことは無いはずなんですから。

改めて問いましょう。主催者発表約12万人は実数に近い、つまり「国会正門前以外」に9万人近くいたと、本気で思っているんですか?

投稿: KEI | 2015年9月28日 (月) 18時50分

「片付けて帰ってくれ というか 散らかすんじゃない。鳴り物も時間を考えておくれ」ってのが問題で、人数は比較的どうでも良いというか。
今回の話ではなく、あくまでも地元での話ですけど、周辺で生活したり就労してると、いろいろ大変ですので。

さて、エントリの話ですが、
警察が「正式に人数を数えています」なんて言ってしまうと、「集会の自由」との兼ね合いを持ち出して批判される(監視は許さないみたいな理屈で)という展開を想像します。
ですから、精度の実情はどうであれ、公式に質問されたら、今回のような公式見解になるのは然りかと思います。

で、ワタクシも警察発表の方が実数に近いと思うのです。正しいとは思いませんよ、念のため。
警備や交通整理の関係もあって、デモ隊が占めていた範囲(面積というのかな)はある程度把握されてるはずで、そうすると実数に近い数字が見えてくると思っているので。
ただ、3万3000人という数字を口にした人が、どこまで全体の実情を把握することができる立場の人だったのか?は判りませんので、鵜呑みにはできないと思いますけど。

個人的には、主催者側の12万人という数字が、どうやって把握されたものか?が気になります。主催者側だって、一人ずつ数えたわけではないのでしょう。
予め(人数の割当込みの)動員を掛けていれば、動員分の人数は実数に近い数が判るでしょうが、今回のデモは事前の動員だけで集まったわけではないでしょうし。
昔、地元の某集会で、主催者に直接聞いたら、主催者側の発表は”推定された-のべ-人数”だったりしたことがあったりしたもので、主催者側の発表の根拠にはいつも興味があります。
主催者側の発表は、大きく見せるのが、嗜みというか、お約束だろうとも思いますし。

投稿: あっしまった! | 2015年9月28日 (月) 20時24分

こういうデモや集会って参加している人のうち
どの程度が政治的に共感しているのでしょうか。

例えばわたしの友人の一人は一時期、会社の経営者
が共産党系でデモは仕事(出勤扱い)になるから
政治に関心ないけど参加するといっていましたので。

職場のしがらみから仕方なく。もしくは
(日当がもらえるなら)小遣い稼ぎ。
といった方も結構多いのではないでしょうかね~。

投稿: たろう | 2015年9月29日 (火) 02時20分

私から見ると、人数が3万でも12万でも50万人でもかまわないのですがね。

>このブログを通して事実関係を伝えようと機会を見計らっていました。

この問題で必要なことは主催者側が発表した12万という数字の根拠、どのように人数を把握したかを説明するのが、事実関係をあきらかにする方法と思います。

投稿: | 2015年9月29日 (火) 09時51分

上記コメントにHN抜けていました。すみません。

投稿: nagi | 2015年9月29日 (火) 09時52分

今回の法案成立で、民意を無視した暴挙的な事がよく言われています。

単純な疑問を1つ。

51%の与党と、49%の野党がいました。
与党は社会保障の増加に見合ったそれなりの増税法案を提案しました。
野党は逆に、高齢者や子どもの社会保障費用負担を、大幅に軽減する法案を主張しています。

多くの国民は増税より、負担減に大賛成。
でも、野党案では財源が決定的に不足してしまう。

そのような、根本的に折り合わない主張がぶつかる。
妥協点も折衝案もあり得ないほど、主張が正反対である。

さて、最後はどうしましょう。
多数決を取れば、国民の支持を得ていないと思われる51%の与党案が賛成多数で成立。
かつ、野党の意向は違いがあり過ぎて、修正法案すら一切不可能な状況であった。

49%の意向も、国民の支持も反映されない。
いや、したくても、出来ない。

それでも、強行採決になるのでしょうか?
例えこの例が極論であろうと、あり得る以上は否定できないですよね。

人間は、どうしても自分に都合の良い点だけ見てしまう。
私は逆に、そういった盲目的な危険性を感じてしまいます。

投稿: 下っ端 | 2015年9月29日 (火) 23時02分

>下っ端氏

元々、強行採決という言葉そのものがおかしいのです。またそのこともOTSU氏を含む多くの人が理解してます。それに自民党のそれを非難すると、民主党時代の強行採決はもっと酷いと言われることになります。

野党としては、与党を攻撃するためにはこのような言い方しかないのでしょう。しかし、本気で政権を取るつもりなら、やがて自分の首を絞めることになります。
だから、やたら強行採決をアピールする党は、野党のポジションにしがみ付きたいのだなあと思っています。

とりあえず注目は、共産党と手をくむかどうかですね。
共産党は現在でも共産主義革命を否定していない政党ですからね。まさに自由と民主主義の瀬戸際かもしれませんねw

投稿: nagi | 2015年9月30日 (水) 09時23分

nagiさんこんばんは。
ご無沙汰しております。

戦争に賛成をする人などいないでしょう。

戦争が出来るより、出来ない方が望ましい。
戦争が起こるより、起きない方が望ましい。

でも、現実は綺麗事だけで好転などしない。

そこで議論を終わらせるのか、さらにもう一歩踏み込んで考えるのか。
安保関連法案がベストかどうかはともかく、否定だけでは何も進まないと考えます。

ならば、野党はどうすれば今の東アジア情勢を改善できるのか、もっと真剣に考えてもらいたいです。

民主主義の瀬戸際、注視しています。
もし手を組んだのなら、完全に民主党も終わりですね。

投稿: 下っ端 | 2015年9月30日 (水) 22時00分

ドギツイ、キャッチーな言葉が溢れすぎているのかなと思います。
はっきりいって下品だし、もう、そういう言葉に慣れてしまった私たちは、もっと刺激的でもっと品性下劣な言葉で、この先の将来の道筋を変えられていくような気がします。

昔のバカヤロー解散がまだかわいいよね。委員会室で暴力沙汰だの、女性議員を集めてピケ張っただの。殴る蹴るよりも陰湿。

法に触れなきゃなんでもありというのなら、与党も野党も、そういう論理だけは同じような気がします。気がするだけです。

安倍首相なら、この情勢で今すぐ行けとはなりにくいとは思いますが、では、まったく主張の違う政党がでてきた場合、法を曲解して何かひきおこすようなことがあり得るのではないかと考えますし、また、そうならないように、私たちがキャッチーな言葉に惑わされないように、そういう指導者がでてこないように願うばかりです。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2015年10月 1日 (木) 13時51分

>下っ端氏

ご無沙汰致しております。

理想や理想論は素晴らしいと思います。しかし目の前には現実があり、その現実を理想に近づけるための現実解が存在します。なかなか困難なことですがね。

>ならば、野党はどうすれば今の東アジア情勢を改善できるのか、もっと真剣に考えてもらいたいです。

難しいことですね。脅威が存在しないという方々もいます。もし脅威があると考えれば、どのような答えになるのか。今、岡田代表が過去の発言で一部のマスコミに抗議してますが、マスコミに対する言論統制との批判が聞こえない。与党が同じことをすると一斉に弾圧と反発するのですがね。政権与党が非難されるのは当然としてどうも偏向してるように見えます。
結局、脅威があるとすれば、自民党と同じようなルートになるだけで、違いがわからない。それでは野党は困るので今回のような話になるのでしょうね。私はこのように見ています。

今の欧州の難民問題を見てると理想と現実の対立がよくわかるような気がします。

投稿: nagi | 2015年10月 1日 (木) 13時57分

KEIさん、あっしまった!さん、たろうさん、nagiさん、下っ端さん、でりしゃすぱんださん、コメントありがとうございました。

いつも貴重なご意見やご指摘をいただけることに感謝しています。なお、今回の記事で少し言葉が不足した点などについては新規記事で補足させていただくつもりです。ぜひ、またご訪問いただければ幸いですので、これからもよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2015年10月 3日 (土) 08時16分

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