長島昭久さんとの関係
中谷元防衛大臣は2年ほど前の雑誌の対談で「集団的自衛権は行使できない」と語られていたようです。自民党の高村正彦副総裁も小渕内閣で外務大臣だった時に集団的自衛権を行使することは「我が国の憲法上許されない」と国会で答弁していたことが明らかになっています。それにもかかわらず集団的自衛権の行使に道を開く問題が多い安保関連法案の推進役になっている二人に失望しつつ、さらに村上誠一郎衆院議員以外、表立った反対意見が聞こえてこない安倍内閣や自民党内の現状を危惧しています。
ちなみに時事の話題をブログに取り上げる際、政治家の名前をそのまま掲げることは特段配慮や意識する必要もない慣わしだろうと思っています。一方で、プロフィール欄に記しているとおり管理人の名前は「OTSU」とし、このブログの中に登場される皆さんも匿名を基本としています。その中で前述したとおり政治家、よくマスコミなどに顔を出されている有名人、他に講演会などを扱った記事では本人の了解を得た上で実名で紹介させていただいていました。
インターネット上では「OTSU」としていますが、私どもの組合員や知り合いの皆さんらにとって匿名のブログではなく、実名での発信と同じ扱いとなっています。このあたりの関係性は以前の記事「再び、コメント欄雑感」の中で綴っていました。本題に入る前の前置きが長くなっていますが、時事の話題ではなく、政治家の方と実際にお会いした際のエピソードなどを当ブログの記事に綴る時も少なくありません。その際、基本は匿名での発信ですので自治体議員の名前は伏せるように努め、国会議員のみ実名で取り上げています。
これまで民主党参院議員の江崎孝さんや元内閣府副大臣の末松義規さんらが登場していますが、元防衛副大臣の長島昭久さんが群を抜いた登場回数となっています。地元選挙区の衆院議員であり、私どもの組合も推薦し、連合地区協議会の懇談会などでお会いする機会が頻繁にあるため、長島さんに関する記事は積み上がっていきました。最近の記事「問題が多い安保関連法案」の中で触れたことですが、いわゆる左や右でとらえれば長島さんは民主党の中でも「右」寄りと見られています。一方で、自治労に所属する私どもの組合は「左」に位置付けられがちです。
その両者に推薦関係があるため、時々、違和感や批判的な意見が寄せられていました。そのため、あえて意識的に当ブログの中で長島さんについて触れてきた経緯があります。「インデックス」記事をまとめられるほど長島さんに絡む記事が数多く残されています。3年前に投稿した記事「ある苦言とトラックバック」の中では改めて長島さんと私どもの組合との関係性ついて説明していました。記述した内容の関係性が当時と現在も変わりませんので、そのまま掲げさせていただきます。
長島さんとの関係も少し補足します。そもそも自治労は一つ一つの組合の連合体であり、中央本部や都本部の決定が必ずしも徹底できないケースもあります。長島さんを私どもの組合として推薦できないと判断すれば、そのような選択肢もあり得るのが自治労という組織の特性でした。いずれにしても組合方針の大半が一致できる候補者は極めて限られ、大きな方向性が合致した上で、基本的な信頼関係を築けるかどうかが大事な時代になっているものと思っています。
したがって、長島さんの考え方と私どもの組合方針との差異があることを否定しません。しかしながら以上のような問題意識のもと、私どもの組合は長島さんを推薦してきていました。そして、推薦関係があるからこそ、自治労に所属する一組合の立場や要望を長島さんに直接訴える場を持ち得ることができていました。以前の記事「大胆な改革、オランダのダッチ・モデル」をはじめ、このブログの中で何回か長島さんは登場しています。機会があれば、このような関係性の話を改めて取り上げてみるつもりです。
後段に記した「直接訴える場」があることの貴重さを感じ取りながら、長島さんと意見を交わせる機会があれば必ず問いかけや要望を示させていただいていました。その際、いつも長島さんは丁寧に対応くださっていました。政治家は幅広い層から多くの支持を得ることが欠かせないため、相手から反発を受けるような対応は普段から慎むようにしているはずです。そのため、好意的な受け答えも「リップサービス」に近い面があることを理解しながら接してきたつもりです。
そもそも経験や知識が豊富な国会議員の長島さんに対し、何か影響を与えるような関係性を期待した場合、たいへん僭越なことだろうと考えています。開設した当初、このブログのことも案内していましたが、多忙な長島さんが継続的に閲覧されることは難しい話だと思っていました。それが昨年5月の記事「もう少し集団的自衛権の話」に長島さん本人からコメントをお寄せいただき、驚くとともに「このコメント欄の限界と可能性」に記したような趣旨のもとブログを長く続けている励みに繋がる機会となっていました。
今年1月、この話を切り口に長島さんの秘書の方と雑談したことがありました。すると意外にも長島さんは時々、このブログを見て私自身がどのような考え方や主張を発しているのか、気にされているという話を伺うことができました。「市井の声」をリサーチする一つの機会として利用されているものと思われますが、とても光栄なことであり、いろいろ長島さんが判断されていく時の参考材料に少しでも繋がるようであれば非常に有難い話でした。ただ私の意見が「暴走しがちな長島の歯止めになっています」という秘書の方の話は、それこそ「リップサービス」が半分以上だと受けとめています。
民主党の長島昭久元防衛副大臣は16日までに民間シンクタンク「国家基本問題研究所」(櫻井よしこ理事長)のホームページに「目を覚ませ、民主党!」と題した寄稿を掲載した。党の労組依存体質を批判し、安全保障法制の国会審議では「万年野党の『何でも反対』路線がますます先鋭化している」と警鐘をならした。長島氏は、民主党の現状について「『改革政党』と見なす国民はほとんどいまい」と分析。「改革路線は維新の党にすっかりお株を奪われた」としている。
党内の議論については「民意からかけ離れた組織防衛の論理が跋扈(ばっこ)する低劣なものとなった」と非難した。その上で、自ら関与している安保法制の国会審議の対応についても批判し、「もはや解党的出直ししか道はない」と指摘した。具体的な対策として、(1)労組依存体質からの脱却(2)「大きな政府」路線を見直しアベノミクスに変わる経済政策と地方再生戦略の打ち出し(3)現実的な外交・安保政策への回帰-を挙げ、「目を覚ませ、民主党! さもなくば、消えゆくのみ」と締めくくっている。【産経ニュース2015年6月16日】
今回、上記の報道に接したため、長島さんとの関係を改めて綴る記事の投稿に至っています。ブックマークし、いつも訪問しているブログで「御立派な御意見は、まず身の回りを整理してから…。」という記事が投稿され、「御自分が労組の推薦を外したうえで選挙戦に勝ってから、おっしゃったほうがいいのではないか」という意見を目にしていました。私どもの組合の書記次長も気にして、このニュースのことを私に知らせてきました。発言内容が切り取られ、少し扇情的に書かれているのではないかと思い、長島さんが寄稿した国家基本問題研究所のサイトの全文「目を覚ませ、民主党!」を読んでみました。
私は、平成12年、政権交代可能な政治勢力を結集したいという一念で、敢えて野党第一党である民主党の門を叩き、3年間の浪人生活を経て平成15年に初当選させていただいた。当時の民主党は、何よりも霞が関・永田町改革の気概に燃え、官僚の助けを借りずに国会ごとに何十本もの議員立法を提出し、古い自民党に代わる徹底した分権・改革を唱え、外交・安全保障政策ではこれまでの万年野党体質を克服し、現実路線を追求していた。だから、苦労も絶えなかったが浪人生活は希望に満ちたものであった。
●国民の信頼を失墜 平成17年の郵政解散で大きく議席を減らしたものの、平成21年、遂に悲願の政権交代を成し遂げた。衆参合計で400議席超を占めた民主党は、官僚支配を打破し、政治主導で日本の政治を一新する意欲に燃えた政務三役を各省庁に送り込んだ。しかし、圧倒的な民意を背景に乗り込んだ同僚議員は随所で摩擦を繰り返し、国政に無用の混乱を持ち込んでしまった。
その最たるものが鳩山由紀夫首相その人であった。沖縄へのリップサービスの一言が日米関係を破綻の瀬戸際まで追い詰め、政権は瓦解。菅直人政権を経て野田佳彦首相に引き継がれた時には、もはや国民の信頼は回復不可能なまでに低下していた。野田政権は日米同盟の立て直し、尖閣国有化、消費増税の決断など、 課題を先送りすることなく懸命に努力を重ねたが、民主党は3年余で政権を自民党に戻すことになった。
●「何でも反対」の万年野党体質 それから2年半が経過しようとしている今日、民主党を「改革政党」と見なす国民はほとんどいまい。改革路線は維新の党にすっかりお株を奪われ、労組など組織出身の議員が大半を占める参議院と衆議院の議員数がほぼ同じとなり、党内論議はかつての自由闊達さとは程遠い、民意から懸け離れた組織防衛の論理が跋扈(ばっこ)する低劣なものとなってしまった。特に安保法制を巡る国会審議では、私たちが標榜した「保守二大政党」とは似ても似つかぬ万年野党の「何でも反対」路線がますます先鋭化している。
現状のままでは、政権奪還は夢のまた夢であろう。もはや解党的出直ししか道はない。第一に、労組依存体質から脱却しなければ改革に背を向けた勢力との批判を払拭できない。第二に、社会保障に偏った「大きな政府」路線を見直し、アベノミクスに代わる経済政策と地方再生戦略を打ち出さねばなるまい。第三に、 「政争は水際まで」と腹を決めて、一刻も早く、政権交代前のような現実的な外交・安全保障政策に回帰することだ。目を覚ませ、民主党! さもなくば、消えゆくのみ。(了)
全文を読んでみると産経新聞の記事よりも、もっと大胆に持論を展開されているという印象を強めていました。「書いてある内容は、もっともなことではないですか」と感想を漏らす方が私の周囲にもいます。「目を覚ませ、民主党!」のことは長島さんのフェイスブックのコメント欄でも話題になり、「次世代か自民に行って将来の連立を狙って与党として活躍してほしい」という意見がある一方、「貴方こそ早く離党して自由にやってください」と長島さんを厳しく非難する声も寄せられていました。
機会があれば、この件で長島さんから真意を確かめたいものと考えています。真意が分からない中ですが、これまでの長島さんとの関係を踏まえ、自分なりの感想と要望をブログ記事を通して綴らせていただきます。実は今までも民主党幹部から「労組依存体質からの脱却」という言葉がたびたび発せられてきました。古くは前原元代表であり、2年前には細野政調会長も同じような発言を行なっていました。結局、二人とも「小選挙区で勝つためには労組だけにこだわっていては勝てない」という趣旨であり、労組と距離を置くものではないという釈明に至っています。
長島さんのツイッターでも「党としての政策的主体性を失った依存体質に懸念を表明したのであって、当然、労組の支援や連携まで否定するものではありません」という説明がされていますので、今後、労組からの推薦や支援は一切断るという意味合いでなかったことがうかがえます。そうであれば、もう少し言葉は選ぶべきだろうと考えています。不特定多数の方々に発信する言葉は、他者がどのように受けとめるのか想像力を働かせながら一字一句、より慎重に選ばなければならないはずです。
労働組合の関係者がどのように受けとめるのか、今後も同じように支持協力関係を維持していくことを前提にするのであれば、今回の長島さんの文章は言葉が不足しているように感じています。改革路線などの内容面に関する評価は直接的な論点としませんが、たいへん僭越ながら他にも言葉が走り過ぎている傾向を心配しています。歯切れの良さが長島さんの持ち味だろうと思っていますが、あえて民主党内から反発を受けるような書きぶりは、もう少し抑え気味にすべきだったのではないでしょうか。
民主党から出ていくことを決意された上での寄稿であれば、このような書きぶりもあり得るのかも知れません。そうでないことを願いながら、先ほどの労組との関係性と同様、離党を前提としていないのであれば、やはり言葉が不足、もしくは配慮が不足した文章だと感じていました。確かに民主党に対する国民からの失望感は大きく、政権奪取前の勢いを取り戻すことは至難な現状だと言えます。しかし、政党支持率は10%前後を推移し、他の野党よりも頭一つ抜けたポジションだけは維持しているという見方もできます。
長島さんの寄稿も、まだまだ民主党には期待したい、再生したいという思いが託されていることも充分伝わってきます。以前の記事「外交・安全保障のリアリズム」の中で記したことですが、長島さんの「リアリズムとリベラリズム、二者択一の問題ではなく、まして二項対立にすべきものではありません」という考え方をはじめ、長島さんの語る内容の大半が基本的に私自身は共感しています。安保関連法案を巡る与野党の攻防においても、安倍首相の意図する路線とは一線を画し、明確な対抗軸を長島さんも打ち出した上で特別委員会での質疑を重ねているものと思っています。
政権交代が目的ではなく、与党の行き過ぎをチェックするためにいつでも政権交代できる緊張感や対抗軸を持つ野党の存在が必要だと考えています。その存在感ある野党に民主党が返り咲くためには「リアリズムとリベラリズム」を兼ね備えた長島さんのような政治家が欠かせません。「右」に偏り過ぎた政権は危ういはずですが、安倍内閣の支持率が一気に下降するような気配は感じられません。「左」に偏り過ぎだと見られても政権交代は難しく、だからこそ長島さんのような立ち位置の政治家を包み込んだ野党が必要だろうと思っています。このような声が長島さんに届くことを願いながら、ぜひ、これからも民主党の中で長島さんが奮闘していただけることを強く期待しています。
最後に、ブログ名「公務員のためいき」と長島さんの名前をクロス検索したところ開設した頃の記事「個別的自衛権と集団的自衛権」を見つけました。長島さんが「個別的も集団的も自衛権に違いがない」という考え方を示され、私自身が「個別的自衛権と集団的自衛権の違いをこだわることから出発すべき」という意見を綴ったブログ記事でした。中谷防衛大臣や高村副総裁と違い、長島さんの主張は一貫されていることを思い返す内容でした。ちなみに現在の長島さんは「自衛権の限界を基本法で明記すべき」という立場で、前述したとおり行き過ぎた与党の安保関連法案に長島さんが反対されていることを心強く感じています。
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