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2015年5月31日 (日)

横田基地にオスプレイ

週に1回の更新ペースですので、書きたい題材探しに事欠きません。特に最近、国会の審議に注目していますが、安全保障関連法案に対するやり取りなどで問題提起したい点が満載です。来週以降、じっくり自分なりの問題意識を綴らせていただくつもりですが、どうしても取り急ぎ一言だけ添えたい話題があります。安倍首相のヤジを巡る問題です。他党のヤジを強く批判しながら「早く質問しろよ!」と自らもヤジを飛ばす、資質や品格が問われる問題ですが、他者の意見にしっかり耳を傾けるという謙虚さが安倍首相には欠けているように見ざるを得ない非常に残念なエピソードです。

さて、前々回記事「東京の自治と大阪都構想」の最後のほうで三多摩格差の問題に触れていました。新規記事の投稿にあたって「三多摩格差 学校 冷房の普及率」という語句でGoogleを検索してみました。すると当ブログの以前の記事「都議会議員との懇談会」を最初のページで見つけ、その時の記事でも三多摩格差の問題に触れていたことを思い出しました。覚えていれば前々回記事の中で引用できたため、自分の記憶力の脆弱さを改めて知る機会()に繋がっていました。

前々回記事のコメント欄で記したことですが、東京23区と比べれば様々な課題で格差は現存しているものと思っています。最近の具体例では小中学校普通教室の冷房設置率の極端な格差が指摘されていました。徐々に改善されつつありますが、5年前まで23区は95%を超えている中、三多摩地区は10%程度にとどまっていました。とは言え、基礎自治体としての権限問題と表裏一体のような都区財政調整制度の傘の下に三多摩の自治体も加えて欲しいとは考えていません。

前々回記事の本文の中では、そのような仕組みのもと三多摩地区は「区部より薄く他府県市町村より厚い」という認識を示させていただいたつもりでした。ちなみに学校の冷房設置率に絡む三多摩格差の問題を調べたかったため、前述した語句での検索を試みていました。その上で、でりしゃすぱんださんから指摘を受けた三多摩地区には横田基地や立川基地があり、「まちのど真ん中に滑走路」という理不尽な実情の問題はまったくその通りだと言えます。日常的に騒音や墜落の危険性に悩まされている中、特にオスプレイ配備の問題は寝耳に水であり、周辺自治体は揃って反発しているところです。

米軍は2017年以降に特殊作戦を任務とする空軍仕様の新型輸送機CV22オスプレイを米軍横田基地(東京都福生市など)に配備する見通しだ。沖縄には既に米軍普天間基地で米海兵隊仕様のMV22オスプレイを運用している。本土への新型輸送機の配備は初めてとなる。海兵隊仕様のMV22が自軍の展開に使うケースが多いのに比べ、空軍仕様のCV22は捜索・救助など特殊作戦を担う想定だ。米軍は横田基地に10機の配備を計画している。CV22は機動性に定評がある半面、厳しい状況での飛行を迫られることから事故率はMV22より高い。

米国防総省は現時点でCV22の配備について説明をしておらず、横田基地周辺住民が反発する公算は大きい。CV22の配備を巡って米軍幹部は13年に横田基地を軸に検討していると言明していた。特殊作戦機の運用実績がある嘉手納基地も候補の一つだったが、沖縄側の反発が強いため、候補から外した。横田基地は在日米軍と航空自衛隊の双方の司令部があり、朝鮮半島有事など日本周辺有事をにらんだ拠点と目されている。CV22は航続距離が長く、中国が挑発を続ける沖縄県・尖閣諸島付近での不測の事態も念頭に置いているとみられる。【日本経済新聞2015年5月9日

日米両政府が米空軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの米軍横田基地(東京都福生市など)への配備を公表したのを受け、東京都の舛添要一知事は12日の記者会見で、「安全保障は国の政策だが、地元への影響がある。最大限の配慮が必要だ」と述べ、運用に際し安全確保などを求めていく考えを示した。 横田基地に配備されるCV22オスプレイは、沖縄県の普天間飛行場(宜野湾市)に常駐している米海兵隊仕様のMV22オスプレイに比べ事故率が高いとされる。

舛添知事は「(基地周辺に)東京都民が住んでおり、整備不良で機体、部品の落下があっては困る」と指摘。その上で「都民の生命と安全を守るという立場から、申し上げるべきことはしっかりと言っていく」と強調した。また、福生市などは同日、外務、防衛両省から配備について説明を受けた後、5市1町でつくる「横田基地周辺市町基地対策連絡会」としてコメントを発表。「十分な説明責任を果たすことなく配備することがないよう再三にわたり要請して きたにもかかわらず、突然の申し入れは誠に遺憾だ」と政府と米軍の対応を批判した。時事ドットコム2015年5月12日

5月17日にはハワイ州オアフ島の米軍基地で海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイが墜落し、搭乗員22人が死傷するという事故を起こしています。もともとオスプレイの事故率の高さは問題視されていますが、米軍横田基地に配備する計画の空軍のCV22オスプレイは、さらに事故率が高くなっています。今回の重大事故を受けながらも、米国側は日本に配備するオスプレイの運用計画を「見直すつもりはない」と早々に表明しています。そもそも市街地の真ん中にある横田基地への危険なオスプレイの配備は論外な話であり、このような基地機能の強化は横田基地の永続化にも繋がっていきます。

ここで横田基地について少し説明を加えさせていただきます。横田基地には在日米軍司令部及び第5空軍司令部が置かれています。極東地域全体の輸送中継ハブ基地(兵站基地)としての機能を有し、休戦状態である朝鮮戦争における国連軍の後方司令部も置かれています。日本本土では最大の米空軍基地で、2012年3月からは航空自衛隊の航空総隊司令部なども常駐するようになり、日米両国の空軍基地となっています。福生市、瑞穂町、武蔵村山市、羽村市、立川市、昭島市の5市1町にまたがり、周辺人口は50万人だと言われています。事実上、日本の行政権の及ばない治外法権地区であり、民有地はなく、大半は国有地で占められています。

1940年、帝国陸軍航空部隊の立川陸軍飛行場の付属施設として建設され、多摩陸軍飛行場が横田基地の前身となります。敗戦後の1945年9月4日、米軍に接収され、横田基地と呼ばれるようになりました。ちなみに米軍側の所持していた地図に北多摩郡村山町(現在の武蔵村山市)にあった大字名「Yokota」が「Fussa」や「Hakonegasaki」より飛行場近くに記載されていたため、戦中から米軍は多摩陸軍飛行場を「横田飛行場」と呼んでいたそうです。接収後、基地の拡張工事が行なわれ、1960年頃に概ね現在の規模となっていました。拡張に際し、北側で国鉄八高線や国道16号の経路が変更され、南側では五日市街道が分断されました。

そのため、横田基地周辺は常時渋滞しています。まさしく「まちのど真ん中に滑走路」であり、まちの発展に対する阻害や経済的な損失などのマイナス面ははかり知れません。さらに朝鮮戦争当時はB29爆撃機の出撃基地として機能し、ベトナム戦争時も補給拠点として活用されてきた基地でした。このような歴史の対比の中で、立川基地の拡張を阻止した砂川闘争があります。今回の記事では横田基地の話に絞りますが、今年は砂川闘争が始まった日から60年という節目の年であり、機会を見て当ブログの中で砂川闘争についても綴らせていただくつもりです。

続いて、オスプレイについて調べてみました。老朽化が指摘されているCH46(輸送用ヘリ)の後継機として配備が計画され、プロペラの向きを変えることでヘリコプターのような垂直離着陸や飛行機のような高速飛行ができます。離着陸のための長い滑走路が不要となり、ヘリコプターと飛行機の利点を併せ持っていると言われています。時速は約500キロでCH46の2倍、航続距離は約3900キロでCH46の5倍以上です。空中給油も可能で1回の補給で行動半径は1000キロを超え、沖縄を中心に朝鮮半島、中国大陸東部、南シナ海までカバーできる範囲となります。

輸送兵員が24人でCH46の2倍、貨物の搭載量も約3倍、飛行高度は最高約7500メートルで他機からの攻撃も受けにくい輸送機です。オスプレイという名前はタカ科の猛禽類ミサゴの英名ですが、日本でミサゴは絶滅危惧種に指定されています。 利点の多さが強調されている一方、ヘリコプターと航空機の「良いとこどり」のシステムは複雑で、操縦にも高度な技術を要しています。開発段階から8回も重大事故を起こしていますが、いずれも事故原因は解明されていません。

10万飛行時間当たりのオスプレイの事故率は2.12件であり、海兵隊戦闘機の平均2.45件と比べて低く、CH46の1.11件とも大差ないという反論があります。しかし、この数字はMV22に限ったものであり、横田基地に配備される予定のCV22の場合、7.21件という突出した事故率となります。なお、MV22とCV22の基本構造は同一であり、事故率の差異は運用の違いから生じているという説明もあります。CV22のほうが特殊作戦上の運用が多いため、演習場等での事故率が高まっているという見方です。

しかし、米国では民家や公園の上をオスプレイは飛べないように規制され、日本国内でも米軍住宅の上空は飛ばないようです。やはり米国側もオスプレイの安全性を疑問視しているからではないでしょうか。そもそも事故原因が解明されていない中、「設計に根本的欠陥があると疑う理由はない」という米政府の言葉を鵜呑みにし、オスプレイの配備に異論を唱えない日本政府の姿勢には失望しています。横田基地への配備計画が明らかになった直後、舛添都知事も「申し上げるべきことはしっかりと言っていく」と述べられていました。

ただ5月22日の都知事会見で「五輪開催地・東京の横田基地へのオスプレイの配備は不適切、似つかわしくないと思わないのか。五輪施設への墜落の恐れもある」という質問に対し、舛添都知事は「オスプレイはテロ対策や防災に役立つ」と答え、米国への異議申し立てや日本政府に向けた要請を行なう考えは一切ないようです。ちなみにネパール大地震の際に派遣されたオスプレイは活動の最中に住宅の屋根を吹き飛ばしてしまい「使えない」と報じられていました。

横田基地やオスプレイの問題は安全保障全体のあり方を踏まえ、判断していかなければならないという指摘もあろうかと思います。それでも見込まれる危険性や理不尽さは取り除きたいという思いや努力も否定されるものではありません。そのためにも現状認識や問題意識を広く共有化させていく試みが欠かせません。首都に外国の軍事基地がある異例さをはじめ、「横田空域」の問題も見過ごせません。首都圏の空域の大部分は米軍の管理下にあり、日本の航空機は大回りしなければならず、余計な時間や燃料を浪費しています。経済的な損失だけではなく、環境面からも理不尽な負荷を強いられている根深い問題があることを最後に強調させていただきます。

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コメント

>米国では民家や公園の上をオスプレイは飛べないように規制され、日本国内でも米軍住宅の上空は飛ばないようです。やはり米国側もオスプレイの安全性を疑問視しているからではないでしょうか。

某世界的な動画サイトを見てください
大都市ニューヨークの上空を普通に飛んでいます
米本土でも軍用機が訓練で使っているルートはオスプレイも同様に使用しています
何ら特別扱いはされていません
オバマ大統領もたびたび乗っています

オスプレイは世界中を飛行しており、オスプレイにこれだけ騒ぐのは世界で日本だけです

投稿: | 2015年6月14日 (日) 17時50分

2015年6月14日(日)17時50分に投稿された方、コメントありがとうございました。

報道番組で耳にした情報でしたが、市街地上空を一切飛ばないという話ではないものと理解しています。事故の可能性等については記事本文で記しているとおりであり、その上で私自身の問題意識を綴らせていただいています。

投稿: OTSU | 2015年6月14日 (日) 19時55分

>ちなみにネパール大地震の際に派遣されたオスプレイは活動の最中に住宅の屋根を吹き飛ばしてしまい「使えない」と報じられていました。

報じられただけで、ネパール地震の救援活動でオスプレイの活動が中止されたことはありません
運用方法を見直し、連日休みなく救援活動に従事しました
陸自の救援部隊もオスプレイで運ばれています

ネパール政府はオスプレイより大型ヘリ「チヌーク」の方を危険だとして入国拒否しています
ただ、英軍はチヌークでも十分活動できると抗議していました

>首都に外国の軍事基地がある異例さをはじめ

韓国のソウルにも米軍基地があります
最近までロンドンにも米軍基地がありました
NATOの設立理念は

「アメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」

でしたから、ロンドンに米軍基地を置いて「米国を巻き込ませる」戦略を取りました

投稿: hayaike | 2015年6月17日 (水) 03時54分

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